3/26/2018

[biz] Facebook個人情報横流し露見でアカウント削除運動、企業も同調

Facebookが俄に社会的な非難の対象となり、袋叩きに遭っているようで。

理由は広く報道されている通り、その保有する膨大な個人情報を第3者(Cambridge Analytica)に横流しし、それが前回の米大統領選挙におけるTrump陣営の選挙活動に利用された事が明らかになった事によります。より本質的には、その事が、Russiagate同様、批判の絶えない、というよりむしろ批判も非難も増える一方であるTrump政権、その成立への加担に利用されたという点が、米国民の琴線に触れた、という事なのかもしれませんね。

というのも、利用された側の市民からすれば、Russiagate等に絡む世論等の情報操作に自分たちの個人情報が無断で使われていた事になるわけで、TrumpやRussiaの支持者はともかく、そうでない人、とりわけ反対派であれば、それは怒るのも当然の話であろうというしかありません。

結果、通常の情報漏洩等の場合とは異なり、FB社に対する非難は爆発的に増加し、ユーザの中でアカウントを削除を呼びかける運動が広がり、その結果、通常この手の運動にはあまり同調する事のない大企業(Tesla含む)までもがそのアカウントの削除や広告の引き上げ等のアクションを起こすに至りました。

事業規模の縮小や収入の減少に直結するだろう、それらの顧客やユーザの起こした一連のアクションが同社の事業へ与えたインパクトは甚大でした。流石に危機感を覚えた筈の同社及び代表のZuckerbergは大手メディアに謝罪広告を出しもしましたが、終息する見込みは一向に立っていません。

同社の惨状を目の当たりにした同業他社も、自身らに波及する可能性を認識し、恐怖を覚えたのでしょう。"あの"Appleさえも、プライバシー保護の法規制の導入ないし強化をすべきとの声明を出しています。個人情報は取得し放題利用し放題、バレたら形だけ謝罪、のスタンスを散々見せつけられてきた側としては、正直どの口で、と思うしかないわけですが、嫌でもそう言わざるを得ないだろう事情は理解出来なくもありません。そういえばGoogleも静かですね。その辺の恐怖感も、全て自業自得の話なのだし、同情の念も全く生じません。せいぜい訴訟やボイコットによる損害の発生に怯えればいいのです。どうせ実際は反省なんてしていないんでしょうし。

ただ、これらの米国内における一連の運動の発生とその激しさを見て、何故今更、と思う面もあります。FB社やApple、Google等、個人ユーザにサービスを提供するほぼ全てのITサービス業者が、ユーザのあらゆる個人情報、またその属性や関係性のデータを収集し、それを利用、あるいは売却して莫大な利益を得るビジネスモデルである事は、もとより周知の話です。ターゲット広告なんてその最たるものなのですし、その運営の過程で、第3者たるクライアント企業へのユーザ情報の横流しなんて、程度はともかくやってないほうがおかしいというものです。加えて、これらの情報利用は、完全に無断というわけではなく、アプリやサービスの利用規定上、情報の利用の許諾を与えているものでもある筈です。それが何故に、今回に限ってここまで特異で苛烈な拒否反応を引き起こしたのか、それにはそれなりの理由があって然るべきでしょう。

色々仮説は考えられます。前述の通り、Trump政権並びにRussiagateの線での政治的な要素が絡んだ事が原因になった可能性は小さくないだろうし、奇しくもFB等のSNSの普及により、この種の草の根的な運動が広がりやすくなった等の環境的な変化に加え、ボイコットのアクションがアカウントの削除等の極めて容易に実行出来る対象であり、呼びかけの広まりからアクションまでが行われやすかったという事情もあるでしょう。もしそうならFBは自分で自分の首を締めた格好になるわけで、皮肉な話という事になるのですが、それはともかく。

あるいは、ユーザの多数が個人情報の収集や利用についての許諾はじめ、利用規約を理解しておらず、そんな事は許した覚えはない、と思ったのかもしれません。これについては、漫然と許諾を与えたユーザの側にも非がないとは言えないのでしょうけれど、そもそも一般人が読んで理解する事を想定していないとしか思えない規約を漫然と提示するだけで、利用許諾を詐取したも同然のFacebook側に第一に責がある話であろうし、それも無理からぬところと言うべきなのでしょう。

いずれにせよ、本件は、ユーザが個人情報の無断利用について、具体的なアクションをこの規模で起こした初の事例となります。そのもたらしつつある影響の大きさ、また不可逆になりそうな様子を鑑みるに、これまで必要性が至るところで主張されながらも見過ごされ、事実上の無法地帯となっていた、ITサービス事業における各種の個人情報の取扱いにおける一つの転換点になる可能性が非常に高いのではないでしょうか。

各社が真摯にその転換に取り組むのか、あるいはやり過ごそうとして破滅するのか、取り組んだとして信頼は得られるのか、規模は縮小するのか拡大を続けるのか。色々と注目に値する事例になるだろう事だけは間違いありません。さてどうなるのやら。

Facebook boss apologises in UK and US newspaper ads

3/20/2018

[biz] Uberが実験中のVolvo製自動運転車が人身事故、予想された無謀の犠牲

やっぱり、と言うべきですね。Uberの自動運転車が人身事故を起こしてしまったそうです。

事故の発生した場所は米Arizona州Tempe、車種はUberが正式採用しているVolvo製XC90。Uber社のSafety driverが乗車した同車が、自動運転モードで走行中に、自転車で走っていたElaine Herzberg(女性、49歳)を撥ね、Herzberg氏は病院に運ばれたものの死亡してしまったとの事です。それ以外の詳細は今の所不明。

事故自体は、技術面で多少なりと実態を知っている者であれば遅かれ早かれ起こるだろうと予想されていたところではありますが、実際に目の当たりにするとやはり酷く陰鬱な気分になりますね。それも当然、自動運転技術が未成熟で不完全、危険を孕んだものである事は元より明らかな一方、あえて公道での実験を行う理由は単に新技術、新製品の開発に先んじたい、等という専ら経済的な事情に過ぎず、到底人命を危険に晒してまで行うべき必要性が認められないものなのですから。

自動運転技術、またそれを搭載した製品の先行開発、そしてそれが実現した際に得られるだろう先行者としての経済的利益、それに目が眩み、安易に公道実験に踏み切ったUberおよび当局には事故の発生に関して何らの正当性もなく、発生も十分に予見出来ただろう以上、未必の故意による殺人と言っても過言ではありません。必要でも何でもない、金に目が眩んだ馬鹿者達の、その短慮の犠牲になったHerzberg氏は完全な被害者です。Uberと州当局はこれからその賠償等を行わなければならないわけですが、その種の過失に対し、殊に人命が失われた場合には懲罰的に巨額の賠償が強制される米国での事ですし、その報いはおそらく小さいものでは済まないでしょう。つくづく愚かな事です。

この残念極まりない事件が、今後幾らかでも同種の無謀な試みに対する歯止めになるのかどうか。率直に言えば、多少懐疑や非難の声が強まるだろうものの、実質的にはあまり影響もないのかもしれない、と言わざるを得ないのが残念でなりません。とりわけ同技術の開発の中心であるCalifornia州等では、safety driverさえも要せず、完全に無人の状態での公道での自動運転車の走行を認めるという、狂気染みた制度の立法作業が進んでいると聞きます。

毎週の如く乱射による大量殺人が発生し、犠牲者の遺族らによる嘆きと抗議の声が上がろうとも、NRAはじめ銃機器メーカーらの経済的利益を優先し、被害の発生を一切抑制しようとさえしない米国社会の事です。自動運転車に関する巨大な経済的利益の前には、1人や2人犠牲者が出たところで、人命を優先するという考え自体が生まれない、あるいは生まれても封殺しようと政財界が動く可能性は残念ながら非常に高いのでしょう。

そうしているうちになし崩しに既成事実化を図り、気がついた時には自動運転車による殺人が日常になっている、そういう未来が見えるようです。そうなったとして、関連する自動車メーカーやIT産業等は潤うのかもしれませんが、同時に生まれるだろう大量の被害者の犠牲の上に成り立つその経済は果たして正当なものと言ってよいのか。個人的には極めて強い忌避感を覚えざるを得ません。

だって、そういう社会になったとして、自分に当てはめてみれば、道を歩く時、自転車に乗る時、また車に乗る時とか、公道に出る時は一々自動運転のエラーを警戒してビクビクしなきゃならないって事になるわけで、そんなの嫌ですし、それで撥ねられて死ぬ、なんて無駄死にそのものな末路はなおさら勘弁願いたいです。誰だってそうでしょう。でも、人が運転するより統計的に安全だ、とか詐欺染みた詭弁を弄しながら、そんな未来を目指して邁進してる人が沢山いるんですよね。残念な事です。絶対に安全、と言えるレベルになるまでは公道での実験もしないでほしいし、リスクを許容するにしても、少なくともその短慮を正してからにしろよ、と思わずにはいられません。

Self-Driving Uber Car Kills Pedestrian in Arizona, Where Robots Roam

[関連記事 [biz] Uberが大規模情報漏洩、かつ1年超隠蔽]
[関連記事 [biz note] 繰り返す詭弁、致命的欠陥を抱える新技術とそのビジネスの限界]  
[関連記事 [biz law] 自動ブレーキ試乗デモ失敗で衝突事故]
[関連記事 [biz] 相変わらず暴走事故等の相次ぐTesla、果てなき無謀]
[関連記事 [biz] 自動運転を責任を持って利用しろとか無茶言うな]
[関連記事 [biz] 米TeslaのModelSが自動運転による死亡事故]
[関連記事 [biz] 自動運転製品化の動きが性急過ぎて心配です]

3/14/2018

[pol] 就任から1年でTrumpのブレーキ役が全滅

米国務長官のRex Tillersonがついにクビになりました。これで、Trump政権発足時の主要メンバーで残っているのは副大統領のPenceのみ。Ivankaもいると言えばいますが、彼女は実務面では完全に素人ですし、主要と言うには躊躇を覚えますね。

ともあれ、Tillersonの退場には、主要メンバーがいなくなった、という以上の意味がある、と言われています。というのも、後先を考えない短慮そのものと言うべきTrumpの方針、行動に対し、修正を促す事が出来たほぼ唯一の人物だったからです。外交面では基本的に対話を模索し、北朝鮮や中東諸国との水面下での交渉を一手に担ってきました。まあ、その北関連での方針の対立が彼の罷免の直接の原因になったのだから、もうどうしようもなくなっていた、という事なんでしょうけれども。

後任には当然ながらTillersonとは異なる、すなわちTrumpの方針に迎合するPompeoが就いた事で、ほぼ全面的に実務担当者を事実上失い、これで外交関連での箍が外れるだろうTrump政権が、経済、軍事、環境等、分野を問わず諸外国との軋轢を先鋭化させる事はほぼ疑いようがありません。意味もはっきりしない、おそらくは本人も意味がわかっていないだろう"America First"の下、各種の条約、協定は安易に反故にされ、貿易等での障壁は大幅に強化されるでしょう。そのドラスティックな動きに、米国の議会はじめ国内もさらに混沌とするだろう事も疑いようがありません。

無論、そこに日本の都合など欠片も考慮される筈もありません。不祥事、というより犯罪の露見によって窮地に陥っている政権にとってはまさに泣きっ面にスズメバチの大軍が群がってきたようなものでしょうか。

とはいえ、残念ながら一連の米国の動きは全て正当なものです。その国力を背景にした米国の主権は他者の介入を許さない強大なものであり、その大統領たるTrumpには、その国を代表する権限が国民の信認によって与えられているのですから。日本を含め、その主権の外にある者は、如何にそれが理不尽に見えても、すべからく翻弄される他ないのです。困った事ですが、あきらめましょう。

Rex Tillerson Out as Trump’s Secretary of State, Replaced by Mike Pompeo

[関連記事 [pol] もはや理解不能、混沌極まる米政府人事]

3/05/2018

[pol] 詭弁と強弁、傲慢の果てに政権の面々は罪人に堕ちた

裁量労働制に関する調査データに続き、森友学園への国有地売却の際の記録文書までもが改竄されていた事がほぼ確定となったようです。

いやもう、何と言っていいのか。前者はその規模と内容から偶然による過失とは到底考えられず、後者の改竄箇所の決定的な重要性、その事実が明らかになった場合に関係各局ひいては政権にとって致命的な意味を持つだろうその改竄の内容から、故意によるものである事は疑いようもありません。そして、前者はおそらく無印公文書偽造ないし変造、後者は有印公文書変造と、程度の差はあれ、どちらも公文書の真実性を失わせ、もって国家の基盤たる行政・立法の作用を著しく狂わせる重罪です。

なお、それぞれの罪に課される具体的な刑罰は、無印公文書変造罪は刑法156条により3年以下の懲役もしくは50万以下の罰金、有印の方は刑法155条により1年以上10年以下の懲役であり、森友関連の方が法的には遥かに重い罪に当たるという事になります。文書の存否すら回答出来ないという、既に自白したも同然の国会での答弁から、有罪とみなすならば、通常の不祥事等の場合とは異なり、大臣の辞任程度では済まず、当事者たる首相夫人と財務省・財務局等関係各局の関係者はじめ、その指示をしたであろう首相及びその側近らが大量に検挙され、刑事訴追を受けるべきものと言っても過言ではないでしょう。

実際にそうなれば、規模・程度の両面で、かつてのロッキード事件レベルの、現政権による大規模犯罪と言える事になるでしょう。無論、首相と財務相をはじめとした政権周りの関係者はこぞって強弁や詭弁をもって否定ないしは回避を図るだろうし、その範囲の広さに加え、現在の検察の弱体化ぶりからすれば、現実的には本来検挙されるべき者の大半が実際にはさほどの追及もされないで終わるのでしょう。ただ、ここまで明らかな犯罪の容疑がかかってしまった以上は、それにも限度があろうと言うもの。

少なくとも、最終的に誰も検挙されない、では済まないところに至っていると思うのです。おそらくは、現在逃亡を図っている近畿財務局から財務省前理財局長を経て現国税庁長官の佐川宜寿と、首相夫人の安倍昭恵の両名への追及が徹底的になされ、かつ検挙なりの法的な責任を取らされるところ位までは行かなければ収まるものではないのではないでしょうか。加えて、両名に対する実質上の責任者として、安倍首相と麻生財務相も責任を免れないものと言えるでしょう。

しかし、これまで本件を含め、自分たちに都合の悪い事は逆ギレや強弁を以て全て封殺して来た政権の面々の事です。潔く罪を認めて刑に服する事はおろか、謝罪する事すらせず、非難し追及する野党や国民を逆に非難する、これまでと同じ対応で乗り切ろうとするのでしょう。あるいは、全く関係のない北朝鮮や中国等の国外の問題への対応を打ち出し、本件等はうやむやの内に無かったことにしようとするのかもしれません。そういう、事実を事実と認めない、無反省で傲慢かつ姑息な振る舞いを続けた結果、易易と本件のような重大な犯罪に手を染める結果に至った、という事なのでしょうけれども、この期に及んでまだそれを続けるのでしょうか。つくづく救いようのない事です。政権や官庁の面々は無論、彼らを安易に信認した多数の国民も。