杜撰、と言うよりは、バレなきゃ問題ないと高を括った、すなわち故意の結果と言うべきでしょうか。
日産が、法で有資格者がする事を義務付けられている自動車製造の最終検査を、資格を持たない補助的なポジションの社員にさせていた事が、国土交通省の抜き打ち検査で発覚したんだそうです。
当該違法状態は、国内の全工場で常態化していたとの事ですから、日産が出荷・販売した新車のうち多数が法定の検査を経ていない、すなわち無車検と同様の違法車両という事になり、車検を改めて通さなければ公道を走れません。一応、出荷後に車検を経たものは問題なしとされるとの事ですが、納車から間もない新車等は基本的にアウト。日産の国内販売は衰えているとはいえ年間数十万台以上になりますから、ユーザへの対応、あるいは損害賠償の額は大変な事になりそうです。
本件が酷いのは、問題の最終検査における資格というのが、国家資格ではなく、その認定はメーカー各社に任されているものだという点にあります。つまり、社内で所定の研修なり業務なり試験なりを実施して担当者を育成するという当然のルーチンが備わってさえいれば当然に回避出来た事態であって、外部の要因がなく、本件の発生とそれによる被害、そのおよそ全てが日産の責任という他ないものであるという事です。
しかも、抜き打ち検査の結果では、当該検査工程に携わる少なからぬ社員が、そもそも当該資格が必要である事を認識していなかったんだとか。製造の最終検査は実質的に車検を含むものであり、それが相応の資格もなしに行えるようなものではない事は自明の話です。それが認識出来ないとか、これは自分らがそもそも何をどうやって作っているのか全く理解していない、と言っているも同然なわけですが。。。日産の生産工程と人材育成、またコンプライアンスの管理は一体どうなっているのでしょう。
いや、まあ本件を受けて日産が出したコメントが、"無資格者による検査でも問題ない"というのだから、その辺はもう空っぽという事なんでしょうけど。しかしこのコメントの狂いっぷりはあまりにも酷いですね。そんなもん通るわけないでしょう。国土交通省がブチ切れて、あるいは自社内検査の禁止のち陸運局等外部での出荷前検査を義務付けられても仕方ない、そんな状況だという事を理解してるんでしょうか。
言うまでもない事ですが、製品出荷前の検査は、メーカーの、生産における最後の砦です。ここが正常に機能しない、というのは、通常の感覚の持ち主であれば気が遠くなるような話だと思うのですが、日産の担当者、管理者は気にもならなかったのでしょうか。工程の自動化と複雑化、またその品質向上が進み、人がチェックしてすぐにそうと分かる類の不良は一般に発生しづらくなり、気が緩みやすくなっている、といった事情はあるのでしょうけれども、それと担当者の資格の有無とは完全に別の問題です。むしろ工程が高度化すれば、その中に紛れ込む不具合を発見するのに必要な技能・経験も高度化するわけで、それを能力・経験・教育が不十分な者に任せていては話になる筈もないのに、何故その事がわからないのか。おそらくは工程での不具合が無いものと高を括る、その態度自体が、組織的な油断、というよりはむしろ慢心の現れと言わざるを得ません。よくそんなで自動車の製造なんて危険な事業に携われるものだと、他人事ながら冷や汗を掻いてしまった次第なのです。
企業としての日産については、信頼も何もあったものではないでしょう。只でさえ、主力の軽自動車が三菱の粉飾で信頼面で大きなダメージを負っていたのに、その件では被害者ぶっていた当の日産もこれ、というのでは、結局のところ同じ穴の狢であったと看做され、ユーザの落胆、あるいはその結果としての離反を招いても、それは当然の結果と言う他ありません。全く以って自業自得です。しかし規模が規模です。どうやって始末をつけるんでしょうか。交換か、一旦回収して再検査のちの出荷か。どうするにせよ、とんでもない損失になる事だけは間違いないでしょう。つまらない手抜きが高く付きましたね。くわばらくわばら、です。
日産、6万台不適切検査 国内全工場で未認定社員が担当