3/23/2017

[pol law] 証人の証言を検証もせず否定する政府の反応について

先日設立認可申請が取り下げられた森友学園関連の不正疑惑の追求のため、同学園理事長の籠池氏の国会での証人喚問が今まさに実施されています。

とりあえず前半の、主に籠池氏側からの全体的な説明について拝見しました。ざっと確認したところでは、文理上の矛盾は特になく、また言及されている事実の表現、内容についても、明らかに不自然と言える点はないように見えます。

内容自体はこれまで五月雨的になされてきた諸々の発言と異なるところはないものですが、今回のそれはこれまでの私的な状況での一方的な発言とは異なり、宣誓を経た証人として偽証罪に問われるリスクを負っての尋問を受ける中での発言です。そこに明らかな矛盾等が認められない以上は、ある程度の、少なくとも主観的な真実性が担保されるものと考えるべきでしょう。無論証明されるわけではなく、虚偽を述べている可能性もあるわけですが、通常はそれを判断するために、さらに詳細な検証に進むべき状況でしょう。例えば通常の訴訟なら、その証言中の個々の事実について真否等を検証するため、さらに尋問をするなり、言及された人物を証人尋問するなりされて然るべきところです。

なのですが、菅官房長官はじめ政府側は検証を経る前に頭から否定する旨の声明を出しています。根拠は特になく、従って籠池氏が偽証をしていると断定するものに他ならないわけですが。。。これはどうなんでしょう。証人として呼び出したのは政府側です。それに応じ、宣誓も経た上でなされた、明らかな不備が認められるわけでもない、むしろこの種の尋問では異例と言えるだろう程に具体的で詳細な証言を、政府側の主張するところと整合しないからと言って、頭から特に根拠もなく否定するというのは、いささか軽率かつ理不尽に過ぎると言わざるを得ないと思うのです。事実上、一個人に対し、政府の意に沿う証言を強制するも同然の圧力を掛けるものでもあるでしょう。

当然ながら、そのような圧力等がかかるようでは、そもそも証人喚問手続の正当性が損なわれ、そのかかった労力等諸々が無為に帰してしまうことでしょう。あるいは虚偽の証言により冤罪が生じるやもしれません。厳に慎まれるべきことです。

思うに、政府は本件に関してあまりに結論ありきで、それを担保するための事実の検証等の手続を軽視し過ぎているように見えます。少なくとも、首相夫人と籠池氏ならびに森友学園が密接な関係にあった事は疑いようがないのだし、その時点で本件で生じている諸々の疑惑も、根拠なしと頭から否定するには無理がある事も明らかなわけです。そうである以上、個別の証言等を個別に否定しようとするのではなく、疑惑が否定されるにせよ肯定されるにせよ、全ての事実を明らかにする事で、包括的に処理すべきだろうと思われるところ、政府の対応は真逆なわけで、これでは収拾のつけようがないだろう、と思わざるを得ないのです。

もっとも、証人喚問が当初門前払いされていた時の対応ぶりを見るに、政府・与党側に後ろ暗いところが多々ある事はほぼ確実なのだし、もとより事実が事実として明らかになれば終りで、従って事実に沿う証拠も発言も頭ごなしに否定し、証人には偽証を強いる、すなわち強権を以って事実を否定する以外にその責を逃れる術がない、というだけの事なのかもしれませんけれども。だとしたらあまりに救いようがなく愚かな話、という事になってしまうのですけれども。。。

[関連記事 [pol law] 強弁と虚言の稲田朋美防衛大臣を擁護する首相・与党の狂気]