11/08/2016

[biz] ニコン国内1000人リストラ、露光装置・カメラ等主力事業から

ニコンがリストラだそうです。国内人員の約1割にあたる1000人程を、主に露光装置とカメラ事業から削減する、との事で、その規模、また両事業が同社の主力事業である事からして、事業全般に渡る業績不振によって追い込まれた結果の事業縮小策と解釈すべきところでしょうか。主原因がスマホ等の普及、また市場縮小による半導体産業の不振、及び先行き見通しの暗さにあるだろうあたり、色々と既視感も覚える次第なのですが、それはさておき。

一応レンズ関連は直接的な対象ではない様子ではあるものの、関連が深く、その主たる出口でもあった上記事業の縮小の影響が及ぶ事は避けられないでしょう。光学周りの技術については今更一々論ずるまでもなく最先端の技術を維持し続けている同社をして、あっけなくもかような状況に至った事実には、やはりこうなったか、といったある種の納得とともに、幾らかの残念な思いも感じずにはいられないのです。

同事業の周辺を見渡しても、ここ数年以上に渡ってもはや画期的と言えるような飛躍的な技術の進歩はなく、それによって生産含め技術・製品が成熟するとともに、従来は世代交代を頻繁に繰り返していた殆どの製品群、とりわけ同社が最も強みを持つところのハード類は、必要十分な性能を備えた低コストの汎用品に集約されて行きました。それを受けて、技術面での優位性を強みとし、しかしスケールとそこから得られる種々のメリットの面で全く太刀打ち出来ない既存各社は、必然的に数よりも高単価を志向せざるを得ず、結果として、高級路線や法人向け特殊用途等の、ほとんどニッチと言えるような、全体からすれば部分に留まる特別な需要向けに特化する事で生き残りを図って来たわけです。

しかし、画期的な進歩が途絶えてしまった以上、技術・製品全体の陳腐化は避けられず、従って生き残りを期したそれらの高級路線等についても時間の経過と共に困難さを増す事はあってもその逆はないだろう事はもとより殆ど明らかでした。事実、一時は持ち直した需要は減少に転じ、競合は強まり、売上は減少していったのです。しかしその路線を維持するためには、如何に費用対効果が悪かろうとも開発費を減らす事は出来ませんから、その減少分を補うために価格に転嫁したところ、さらに急激な需要の減少を招く悪循環にも陥ってしまっていました。露光装置のような特殊用途については、元々トップ1社の総取りになり易い製品の性質もあり、シェアの面で競合に大きく差を付けられた時点で挽回は極めて困難になっていました。

結果だけを見れば明らかに失敗と言う他ないところです。しかし、それ以外にやりようはなかったのか、といえば、おそらくはなかったのでしょう。技術をその根幹とする事業の先行きは、既存技術を誰よりも知り、あらゆる可能性の追求を続けているところの、その技術開発を担っている者が一番良く知っているものです。その分野のトップに長年在り続けているニコンが、この程度の状況認識を出来ていなかった、等という事は有り得ません。遅くとも、数を追う事を諦めた時点では、もはや先は長くないだろう事も理解していた筈です。個々の施策に対する批判も多々ありました。それでもこうなってしまったその理由は、結局のところ他に取り得る手段が無かったから、という事なのでしょう。その意味で、この成り行き、及びその結果は、一種の必然であったと言えるのだろうと思うのです。

このような成り行きすなわち、汎用品や上位シェアとの競合に敗れて衰退するという流れは、既に国内の携帯電話やテレビ等で経験されたところであって、それ自体は特に目新しいものでも何でもなく、特に注目すべき点があるわけでもない事は明らかです。ただ、そこまで壊滅的ではないにせよ、かつて唯一無二とも言えた筈の技術的な優位によって独自のポジションを築いていた筈のニコンもまたその例に倣う事になった、という事実は、技術革新による発展を続けた時代の完全な終わりを象徴するもののように思えて、殊更に印象深く感じられるような気がするのです。

無論それは必ずしも悪い事とは言い得ない一方、歓迎すべき事とも言い難く、どう捉え、評価すべきものなのか、判然としないのですけれども。ところで、本件のような話はニコン以外も人事ではないはずなのですが、どうするんでしょう。どうもしないのか、それとも再編ブーム再び、とかあるのか。ただ、再編するにしても、以前ですらほぼ押し付け合いな状況だったのに、今の状況で最終的な引き取り手とかあるのかどうかは疑問ですけれども。さて。

(追記)

レンズの開発・生産についても担当子会社間で統廃合が行われるそうです。当然といえば当然なんでしょうけれども、大変ですね。