9/09/2016

[biz] 枯れてのち迷走するiPhone、音楽を捨て、防水を取る

iPhone7がリリースされました。結論から言えばサプライズはなし。というか誰もが思った所でしょうけれど、どう見てもメジャーアップデートに値するものとは評価出来ません。

というのも、主な変更点は、下記5点に過ぎないわけです。
・カメラの解像度及びレンズ変更(8M->12M,F2.2->F1.8)
・NFC対応
・低レベルの耐水対応(水深1m,30min)
・イヤホンジャックの廃止
・ホームボタンの物理ボタン廃止、タッチパネル化

カメラの変更は改善ではあるものの、無論新機能というわけではないし、改善度合いも飛躍的と言うほどではありません。NFC対応はiPhoneとしては純粋な新機能ではあるものの、完全な競合機の後追い機能であり、当面は普及しているとは言えないApple Payでの利用しか出来ないという制限もあって、訴求の対象となるユーザが限定的です。耐水対応も同様に既存製品のキャッチアップに過ぎず、しかもそのためにイヤホンジャックと物理ボタンを犠牲にしてしまいました。

そして、犠牲による音響部分の変化については、純粋な改悪になっています。ジャックが無くなってしまった以上、イヤホンを接続するためには、アダプタを利用するか、無線(Bluetooth)により接続する他ないわけです。が、アダプタは勿論余計な手間はかかるしこれまでフリーだった下側のスペースに出っ張って使い勝手に悪影響が出るでしょう。また、Bluetoothは元々選択的に使用可能だったものに過ぎず、代替的に使用するにしても、プロファイルの仕様上ビットレートが十分でないため、コーデックをいくら頑張って作りこんでも有線接続との比較ではどうしても音質は劣化しますから、音楽鑑賞には向きません。高音が潰れても聴ければそれでいい、というなら別ですが、iPodからオーディオプレイヤーとして使用して来たユーザの中には劣化に耐えられないと感じる人も多いでしょう。別途イヤホン側の電池管理の手間もかかりますし。

ホームボタンのタッチパネル化も、操作全般に渡って著しく不安定にする可能性が高く、改悪の側面が強い変更と言えます。少なくとも操作性の面では改善とは到底言えないでしょう。従来なら100%確実に押下出来ていたところに失敗が発生するようになれば不満を感じないユーザはいないでしょうし、そうでなくとも使用感は大きく変わりますから、多数のユーザが違和感を覚えるだろう事は間違いないところであって、これも非常にリスキーです。

総じて見ると、主要部分の仕様・機能は殆ど前のモデルから変わっておらず、周辺的な機能の変更に留まっていると言えるでしょう。オーディオ、特に高音周りの音質は重視せず、かつ耐水もしくはNFCのニーズが高い一部のユーザ向けに特化させる形でカスタムしたもの、と理解すべきもののように思われるわけです。

勿論、主要部分が変わっていない、それ自体は必ずしも悪い事ではありません。iPhone6等従来からのユーザは旧モデルを安心して使い続ける事が出来、壊れてもいないのに買い換えるべきか悩む必要はありませんし、アプリやサービスを開発提供する側にしても仕様変更やバージョン間の差異に振り回される事はないのですから。互換性や連続性が求められるプラットフォームの在り方としてはむしろ望ましいところとも言えるでしょう。

ただ、周辺にちょっとしたカスタマイズを加えたに過ぎないものを、これを次世代のiPhone7だ、とまるで従来のような飛躍的な革新があったかのように華々しく喧伝しているところに違和感を感じずにはいられない、というだけの事なのです。もっともApple自らからして、あらかじめ販売台数の発表はしない、として見え見えの予防線を張っているあたり、誰もが発売日にこぞって買い替えに走るようなものではない事は十分に承知しているだろう事も明らかで、どうにもちぐはぐで滑稽に感じられるのですけれども。まあ、一般的にはiPhone7なんて存在せず、iPhone6SWとかそういうマイナーチェンジ版が出たと思ってスルーしてよいのではないでしょうか。

あと気になるのは値段です。マイナーチェンジ程度だと値段は下げても良さそう、というか下げないと売れ行きが鈍るものですが、何やかやで値段は下がってないんですよね。32Gモデルが6の16Gモデルと同じ$649という事なので、実質的には若干下がっていると言えなくもありませんが、それはイヤホン別売と相殺とも考えられるし、販売価格帯が変わらない事には違いありません。この値段のものが、0円販売が禁止された日本でまともに売れる(買い替え需要がある)んでしょうか?iPhoneなら何でもいい向きには売れるでしょうけれども。。。うーん。