とうとうと言うべきか、やっとというべきか。意図しないWindows10のアップグレードにより業務が停止された事により発生した損害を賠償すべき旨Microsoftに命じる判決が、米Seattleで出ました。Microsoftは控訴せず確定したそうです。
原告は現地で旅行業に携わるTeresa Lynn Goldstein氏。2015年8月に、自身が知らない内に業務用PCがWindows10にアップグレードされ、そのためにPCが機能しなくなり業務が停止させられた上、当該PCの買い替えも余儀なくされたとの事。主張によれば、それ以前にWindows10について全く知らず、アップグレードの適用の可否について問われた事も無かった、といいます。認容された賠償額は$10000、100万程度。日本ではまずないだろう額ではあり、殆ど争われなかったにしては高いようにも思われるものの、米国の大企業が初手から勝てないと白旗を挙げる程責任が明白な割には低い気もします。が、それはともかく。
周知の通り、勝手にアップグレードされて業務に支障を来したユーザは数知れず。世界中でありふれた話なのであります。私用でも利用出来なくなって諸々の損害を被った、という人もまたあまりに多すぎて一々取り上げる気にもなりません。よって潜在的に損害賠償を請求可能なユーザもそれだけ多数いるだろうと思われていたところに出た本件、その意味が小さいわけもありません。まあ当然の結果なので、驚くわけではないのですけれども。むしろ米にしては時間がかかったなと思う位でしょうか。
しかも今は、MSが設定した無償アップグレードの期限まで残りわずかとなり、追い込みとばかりにユーザの拒否を事実上不可能にするとも言われるアップグレード適用の同意画面の構成をより悪意を強める形に(元々明確な拒否の選択肢が無かった意思確認ウィンドウに加え、汎用の[閉じる]ボタン押下によりウィンドウを閉じた場合も承諾とみなす)変更した直後という事で、被害者の急増が懸念され、非難・不満の声が高まっていたところでした。
本件の被害発生がアップグレード開始直後と古いものである点からしても、それ以降の強制性の飛躍的な強化ぶりを鑑みれば、以降に同様の被害を被ったユーザが同様の訴訟を起こせば、同程度の責任は認定されるものと予想されるし、悪質性の高さから賠償額も高まる可能性が高いと言えるでしょう。となれば、企業単位の訴訟は当然あるだろうし、個人ユーザの集団訴訟も予想されます。米国内だけでも大変な規模になり得るわけです。MSにとっては普通に危機的状況ですね。
しかし、完全にMSの自業自得です。あれだけ山程の被害が報告され、広く厳しい非難もされていたというのに、それを改めるどころかより強化し続けて来たのは他ならぬMSなのですから、責任は完全にMSにあります。各所で指摘される通り、本件で賠償額や責任の有無を争わず素直に認めたのはその種の賠償請求の拡大を防ぐ意図があったのでしょう。またおそらくは本件を受け、ようやく意志確認ウィンドウに拒否の選択肢を追加する旨が発表されました。しかしいずれも今更な話と言わざるを得ません。悪意の下発生拡大された被害はもはや消えない、というか延々と繰り返された後だし、もとより撤回で済む時期は完全に過ぎてしまったのです。撤回が可能だったとすれば、まだ本件のような最初の被害の発生時期である2015年8月頃しかなかったでしょう。あの時に非難を無視して延々続けて来た結果なのですからもうどうにもなりません。
調査から周辺含む多数の個別の対応まで、散々手間を掛けさせられたユーザの一人としては、存分に報いを受けて頂きたいと心から願う次第なのです。私だってその分の労力の賠償を請求したい位なのですよ。だって私、Windows7やWindows8.1のPC複数について、アップデートの度に手動で一つずつ内容をチェックしてWindows10絡みのものを除外・非表示にしているのですが、当然ながら非常に面倒でありまして。これが必要な事ならまだしも、本来なら必要性のかけらもない手間とあっては、いやもう全く以って死ねMicrosoftと言う他ありません。
Microsoft pays woman $10,000 over forced Windows 10 upgrade
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