そしてCameronは匙を投げました。あれだけ離脱によるデメリットばかり主張していたのだから当然と言うべきでしょうけれど、今後の話を一切せずに辞任だけ表明するとは、無責任な話です。今回の投票は経緯はどうあれ、自分が公約に基づいて実行したものである以上、引き継ぎなり離脱手続開始の宣言なりする義務は当然あるし、それ以外にも今回の決定で分裂した国内の対立の緩和やら、最低限の後始末をする義務もある筈なのですけれども。
その他EU首脳も、離脱ならEUは終わりだ、とか散々言っていた手前、EUが分裂するだろう見通しを事前に自ら認めてしまった形になるわけで、今後の対応、特にEUの維持を図るにあたり色々と苦しそうです。というか普通に致命的ですかね。結果がどうなろうとEUは問題ない、とか言って保険を掛けておけばよかったものを、後の祭りとはこの事です。そんな迂闊な対応をしてしまうような首脳陣を抱いた各国民はさぞ嘆いているか、それとももう諦めているか。いやはや。何が起ころうと問題ないようにあらかじめ対処しておくのが指導者の責任というものでしょうに、どいつもこいつも無責任甚だしいと言わざるを得ません。と言って、最終的にはそういう指導者を選んだ各国民に帰責される話ではあるのですけれども。
ところでUK内では、離脱派の政治家を取り囲んでリンチ紛いに非難を浴びせる残留派が多数いたそうで。その政治家が独裁的に決めた事でもなし、まして国民投票の結果に対し、自分の意見が通らなかったからと、そのような無法に及ぶとは。。。それだけ今回の決定がドラスティックなものだという事であって、破滅的な暴動に至らなかっただけまだマシとも言えるのかもしれませんが、それでも法治国家の市民としてあるまじき醜態には、目を覆わざるを得ないのです。
もっとも近い将来、日本でも改憲の是非が現実に問われる可能性は高いわけで、その際の状況によっては似たような事が国内でも起こりうるのかもしれません。そんな光景は見たくない、と思わずにはいられないのです。
ああでも、公に見えている所はまだマシなのかもしれませんね。本件に絡んで大変な利害が動きましたし、予想と真逆の結果になりましたから、その辺から色々と個人では背負いきれない責任も生じただろうわけで、文字通り首が飛んだ人がいても全く驚きもしません。金融関係なんて、死ぬほど罵声や脅迫が飛び交ったところも多々、というよりそうでなかった所の方が少なかっただろうし、その中には暴力に発展した事も少なくないでしょう。とはいえその辺の大体は自業自得と言うべきでしょうから、あまり同情する気にもならないのですけれども。
(追記)
ロンドンでは市の独立とEU加入を叫ぶ人がいるんだそうで呆れました。そもそも出来るわけがない、というのに加え、それを主張するという事は、当然スコットランドや北アイルランドの独立は認めるという事になるし、さらには英国全体、EU全体について都市単位での分裂権を要求しているのに等しいわけです。仮に実現したとしても、内陸につき外国となるその他英国を通らなければEUと行き来出来ない地域でEUに加盟して何の意味があるのでしょう。結局のところ人も物も航空を除いて外国を経由する事になるのだから、彼らが重視するところの人や物の流通はじめ経済面で見れば逆効果でしかないだろう事は明白なわけで、本末転倒も甚だしく、全く以ってアホかと言わざるを得ないわけです。そんな事言うならもうEUに移住した方がいいんじゃないでしょうか。おそらくは本人達も自分が何を言っているのかわかっていないのでしょうけれども、これが世界でも有数の知識階級であり上流階級とも言われるロンドンのリベラリストの姿かと思うと泣けます。そんな戯言がリアリズムと反骨心の塊のような労働者階級に受け入れられる筈もなし。そりゃ負ける筈だ、と逆に納得出来るところでもありますけれども。本当に酷いですね。
ただ、あのロンドン等で暴れている人達のどれだけが英国籍なのかはいささか疑問に思うところではありますけれども。数百万に上るという国民投票のやり直しを求める署名にしても、署名はオンラインにつき外国からでも出来てしまうし、詐称まみれになるに決まっています。要件は自己申告の氏名等だそうですが、在住者なら外国籍でも可というあたりからしてもうね。元より離脱で決定的に困るのは外国籍の人なのですから、彼らが殆どいないと考えるのには無理があろうというもの。むしろ大半がそうなんでしょう。外国人が国民のふりをして権利を主張するというのは国内でもよくある話なわけですが、その辺の事情はどこも同じという事でしょうか。だとしたら極めて無法かつ姑息な話であって、遺憾な限りです。そういう自己中心的な振る舞いこそが今回の離脱賛成多数の原因だろうと思うのですけれどもね。
英国の就労ビザは要件が厳しい事で有名です。個別の審査に合格出来るだけの要件を満たさない移民の方々にはご愁傷さまではありますが、外国籍である以上、大人しく諦めたほうがいいでしょう。法的にも外国人に主権はないのだし、何より移民の制限ないし排斥こそが今回の決定で示された国民の意志そのものなのですから。
[前記事 [pol] EUの終わり(多分)に]
[前々記事 [pol] 英国は独立を取り戻すか > 取戻します。さらばEU]