1/23/2015

[biz] ヤマトメール便廃止の明らさまな建前

ヤマト運輸がメール便を廃止するそうですね。チェックが無い、もしくは甘いのをいい事にして大量の廃棄だとか未配だとか色々と酷い事件を頻発させ、その度に世間の顰蹙を買って来た同サービスですけれども、その料金の低さからリスク覚悟の小口通販で広く利用されて来ただけに、結構な規模の混乱が起こりそうです。当面の代替はゆうメールという事になるんでしょうけど、競合が撤退したとなってはこちらもいつまで継続されるか怪しいわけで、ユーザはメール便を利用する事業形態自体の見直しを考慮せざるを得ないでしょう。ご愁傷様です。

メール便自体は特に法規制がかかっているわけでもないし、廃止するのも事業者の勝手ですから、それはまあいいのですけれども、その表面上の理由としたところの「顧客が信書利用した場合に顧客が違法に問われるリスクをなくすため」という建前は不自然不合理極まりなく思われるのです。それは個々のユーザが責任を負うべき話であって事業者の責任ではありえません。別に幇助してるわけでもなし、件数もここ5年で一桁台に過ぎない、とあっては事業自体に問題があるとは到底言えないでしょう。まして継続の是非にかかる要素などとどうして評価し得るのか、全く以て理解出来ないところです。ヤマトは自分達が何を言っているのかわかっているのでしょうか。もしこの論理を是とする、すなわち顧客が違法に問われるリスクは絶対に許容出来ないとの立場を取るなら、そもそも日本郵便の信書便以外、民間の運送業自体が成り立たないだろう結論になるのです。それすなわち自己否定というものです。

ですが、流石に自殺する意図があったわけもないでしょう。であれば、今回の説明の方が建前と結論付ける他ないわけです。メール便事業の実態を見れば、その低料金から個別小口の利用について採算が取れていないだろう事は明らかで、これを廃止したいだろう事もまた明らかなのですし。後継サービスが法人の大口顧客に限定したものという点からしても、結局は単に個人客向けメール便サービスを廃止するだけの事です。

ただ、それを面と向かって言うと単なる営利目的で一方的にユーザへのサービス提供を廃止した、すなわちインフラ事業者としての社会的責任を放棄した形になって体裁が悪いし、とりわけユーザの反発も激しくなるだろうから、責任を利用者側に転嫁した表現を使って回避を試みた、というだけの事なのでしょう。よくある話だし別段違法でも無いのですけれども、臆面もなくそういう姑息な振る舞いを見せつけられるのはとても不愉快に感じるわけです。 こういうのは見えないところでやって頂きたいし、本件のように事案の重大さ等からそれが無理なのであれば、建前を取り繕うにしてももう少し考えて欲しいと思うわけです。こんな明らさまでは逆効果というものですよ。

ともあれ。本件の個人向けメール便廃止ですけれども。おそらくは昨今のコスト高に伴って値上げを検討した際、いっその事面倒な個人客は切り捨ててしまうのが最も採算的には良いだろうと判断したんでしょう。そういう傾向は他の業界でも顕著で、自然な流れとも言えるでしょうけれども、どうにも安直に思えてなりません。個々の企業の判断としては合理的でも、業界、また経済の全体からすればどうなんでしょうか。本件について言えば、需要、それもインフラ部分の、相当な規模のそれを切り捨てているのですから、素直に考えれば社会経済自体を相当に縮小させる方向なのではないでしょうか。と言ってもどうしようもないのですけれども。これも時代の流れと言うことなのかもしれませんね。やれやれです。

ヤマト、メール便廃止 利用者の「信書」同封防ぐ