12/04/2017

[biz] FREETEL破綻

安価帯のSIMフリー端末関連事業の(比較的)大手、FREETELのプラスワン・マーケティングが民事再生手続を申請して破綻したんだそうです。

と言っても、債務総額は26億、債権者数も100強に過ぎず、知名度の割にその規模は大きいものとは言えませんし、本件自体はさほど騒ぐ程のものではないのでしょう。

本件破綻について、同社が運営していたMVNO事業とそれ向けのSIMフリー端末事業とを切り離して論じる意味はあまりないのかもしれませんが、まずFREETELブランドのMVNO事業は既に譲渡済みにつき、本件倒産は回線契約ユーザには影響しません。また、端末のユーザについても、同社の端末は大半が一般の小売業者からの買い切りでしょうから、保証・修理等のアフターサポートを受けられなくなる以上の不利益は殆どないでしょう。サポートが無くなる点にしたところで、もともとこの種の端末はそれらを必要としない層が中心で、かつ1万〜2万前後の安価な端末につき、使い捨てと割り切って気にしないユーザも多いだろうと推測されます。これらの点を鑑みても、実質的に見てさほど大きな問題にはならないのではないでしょうか。なんかCoinとかポイント的なものも発行していたようですが、その規模も推して知るべしですし、特に考慮すべきものでもないでしょう。

むしろ、プラスワン社周り以上に、本件でユーザからの問い合わせ等が殺到するだろう、FREETELブランドのMVNO事業を引き継いだ楽天の方が面倒な事になりそうです。まあ、名義を続用している以上、法的に言ってもその辺は予想された範囲内の責任につき仕方のないところと諦めてもらう他ないのでしょうけれども。

数多あるMVNO事業者や端末メーカーの中で、同社が破綻に至った原因は、概ね明らかです。要するに事業計画が甘く、広告や出店に予想される収益に不釣り合いな巨額の資金を投じたため、採算が取れなくなって破綻したというだけの事です。

というか、あの強気さ加減は、率直に言って意味不明でした。資本力、ブランド、ノウハウ等、およそあらゆる面で競合他社に対して特別優位にあったわけでもなく、むしろ体力面ではIIJは無論として大手系列の事業者には著しく劣っていたわけで。また、同社が一応競合他社と差別化し得る強みと考えていただろう自社ブランドの端末にしても、安価ではあるものの、値段相応の価値しかないもので、とてもマジョリティーに訴求し得るようなものではありませんでした。保証等アフターで稼ごうにも、高額の保証料・修理代金等を、最安価帯のSIMフリー端末に支払うユーザなど殆どいません。何の根拠があって同社があれほどに強気な投資を行っていたのか、ちょっと理解し難く思われるところです。

果たしてその結果はご覧の通り。MVNO並びにそれ用の安価帯の端末の需要が急拡大する中ですらトントンないしは赤字であった同事業が、その市場全体の拡大フェーズが終了し、おそらくは同社の予想に反してiPhoneが過半のシェアを維持するに伴ってMVNOへの移行も滞る中、国内の限られたSIMフリー端末の買い替え・買い増しの需要をさらにHuawei、ASUS等大手を含む多数で取り合うとなれば、投資の回収など出来るわけもなく、破綻は必然であったと言う他ないでしょう。一応、破綻直前にMVNO事業を切り離して延命を試みはしたものの、その時点で既に採算が取れなくなっていた端末事業単体で業績を回復させ得る可能性がある筈もなし、単なる悪あがきに過ぎなかった事は明らかです。同社が事業計画を立てるにあたり、その基礎たる市場の動向の見通しをおそらくは根拠のない楽観論に立って見誤った時点で、既に詰んでいたという事なのでしょう。

ただ、これがMVNO周りのトレンドになるかというと、そうとも考えづらいところです。その他の業者の大半は、実店舗を持たず、広告も殆ど打たず、端末は外部調達のみであり、そもそも自前の投資自体殆ど行っていません。加えて、大手関連業者との資本関係、またそれに基づく抱き合わせ販売等の協力関係を有するところも多々あります。これらの差異を考慮すれば、FREETELが破綻したからといって、他のMVNO業者が一気に淘汰される、というわけでは必ずしもないように思われるわけです。 かつて同様に多数の業者が乱立し、その後淘汰されたプロバイダ事業等と比較してもMVNO関連事業は規模・収益性共に高く、成長の余地もあるのですしね。

他の業者には、これを教訓に無謀な投資は控え、堅実・誠実な事業運営がなされるよう願いたいところです。過渡期の事業分野で淘汰がなされるのは致し方ない事とは言え、情報通信は既に社会に欠くべからざるインフラの一つなのですから。その点、MVNO事業を事前に他社に譲渡した判断は、ユーザへのサービス提供を途切れさせる事なく保護したものと言えるでしょうし、一定の評価に値すると言ってよいかも知れません。

「FREETEL」元運営会社、民事再生法申請 負債額26億円