12/26/2016

[biz] 恒例行事化したMRJ納入再延期、漂う諦観

三菱重工が開発中の短距離向け旅客機MRJの納入予定、さらに延期の運びになったんだそうです。同機の予定延期は1年ぶり、通算で実に5回目。もはや殆ど毎年の恒例行事と言っていいだろう現状、驚いている人は殆どいないのでしょうけれども。

度重なる延期のもたらす帰結、その詳細については既に各所で散々言い尽くされて来たところですし、ここで繰り返す意味もないでしょうから省略しますが、これでembraelとbombardierはじめ競合他社への顧客流出はさらに進み、既に回収不能と評価する他ない巨額に達した開発費等初期投資の額もさらに積み上がる事となりました。その意味するところは明らかです。

今回の延期の理由はいつもの通り、要するに品質管理の不手際による開発の遅延。直接的な事象としては、型式取得に必須の評価試験の開始が予定から大幅に遅れている事と、主に米国での規制当局の動向を読み間違え、重量超過に対する仕様変更が必要な見込みとなった事、と言われます。

前者は兎も角、後者は擁護のしようもありません。当然ながら、重量は航空機における最も基本的な仕様であり、基本設計に影響を与えずにそれだけを削減することなど出来ません。座席数や航続距離を減らすなら用途自体が変わって顧客の計画も練り直しになり、当然受注も(ANAのような特殊な顧客を除き)やり直しになるし、そこは変えずに機体の軽量化で乗り切るというのなら、それこそ基本構造や材質の設計から修正する事になり、もはや延期では済まなくなってしまうわけですから、いずれにせよ致命的と言うべきところです。もっとも、その理由がなんであれ、どうせリリースされないのなら結果としては同じだし、一々云々する意味もさほどない、とも言えるわけですが。ただ、どうもその辺が定まらないからか、今回は延期先の見積もり自体が困難になっているっぽいのが不穏ではありますけれども。

結局のところ、再延期がなされても驚きも感じられないという、ある種の諦観が広まっている事実それ自体が、同事業の先行きがもはや絶望的と言っていい状況にある事を証明しているのではないかと思うのです。少なくとも世間の大半がそう認識している、とは言えるでしょう。

この種の、当初の見込みの甘さ、準備段階の不備、実行における能力不足、それらがもたらす費用超過による不採算化、といった事業の立ち上げ全般に渡る失敗により泥沼に陥った状況、そしてそこに至ってなお有効な修正も撤退も出来ず、ただ損害を積み上げながら死の行軍を続ける以外に何も出来ない、という有様は、正しく惨状という他ないものです。東京五輪も似たような状況ですが、あちらは単発につき上限や終りが見えるだけまだマシと言えるでしょうか。

航空機事業を甘く見て、無謀にも突っ込んだ報いを受けているだけ、とも言えそうですが、何にせよ、さてこれからどう始末を付けるのか。事業規模の大きさとそのスパンの長さから、自ずと損害の桁も洒落にならないものになる事は避けられないだろうところ、他の事業も火の車な事もあるし、場合によっては自動車よろしく、とまではいかずとも、近い所まで行ってしまう可能性も否定できないところですが、さて。

MRJ開発で追加負担=納期時期「読めず」-三菱重工社長