6/29/2016

[PC] win10強制アップグレードによる被害に初の損害賠償認容判決

とうとうと言うべきか、やっとというべきか。意図しないWindows10のアップグレードにより業務が停止された事により発生した損害を賠償すべき旨Microsoftに命じる判決が、米Seattleで出ました。Microsoftは控訴せず確定したそうです。

原告は現地で旅行業に携わるTeresa Lynn Goldstein氏。2015年8月に、自身が知らない内に業務用PCがWindows10にアップグレードされ、そのためにPCが機能しなくなり業務が停止させられた上、当該PCの買い替えも余儀なくされたとの事。主張によれば、それ以前にWindows10について全く知らず、アップグレードの適用の可否について問われた事も無かった、といいます。認容された賠償額は$10000、100万程度。日本ではまずないだろう額ではあり、殆ど争われなかったにしては高いようにも思われるものの、米国の大企業が初手から勝てないと白旗を挙げる程責任が明白な割には低い気もします。が、それはともかく。

周知の通り、勝手にアップグレードされて業務に支障を来したユーザは数知れず。世界中でありふれた話なのであります。私用でも利用出来なくなって諸々の損害を被った、という人もまたあまりに多すぎて一々取り上げる気にもなりません。よって潜在的に損害賠償を請求可能なユーザもそれだけ多数いるだろうと思われていたところに出た本件、その意味が小さいわけもありません。まあ当然の結果なので、驚くわけではないのですけれども。むしろ米にしては時間がかかったなと思う位でしょうか。

しかも今は、MSが設定した無償アップグレードの期限まで残りわずかとなり、追い込みとばかりにユーザの拒否を事実上不可能にするとも言われるアップグレード適用の同意画面の構成をより悪意を強める形に(元々明確な拒否の選択肢が無かった意思確認ウィンドウに加え、汎用の[閉じる]ボタン押下によりウィンドウを閉じた場合も承諾とみなす)変更した直後という事で、被害者の急増が懸念され、非難・不満の声が高まっていたところでした。

本件の被害発生がアップグレード開始直後と古いものである点からしても、それ以降の強制性の飛躍的な強化ぶりを鑑みれば、以降に同様の被害を被ったユーザが同様の訴訟を起こせば、同程度の責任は認定されるものと予想されるし、悪質性の高さから賠償額も高まる可能性が高いと言えるでしょう。となれば、企業単位の訴訟は当然あるだろうし、個人ユーザの集団訴訟も予想されます。米国内だけでも大変な規模になり得るわけです。MSにとっては普通に危機的状況ですね。

しかし、完全にMSの自業自得です。あれだけ山程の被害が報告され、広く厳しい非難もされていたというのに、それを改めるどころかより強化し続けて来たのは他ならぬMSなのですから、責任は完全にMSにあります。各所で指摘される通り、本件で賠償額や責任の有無を争わず素直に認めたのはその種の賠償請求の拡大を防ぐ意図があったのでしょう。またおそらくは本件を受け、ようやく意志確認ウィンドウに拒否の選択肢を追加する旨が発表されました。しかしいずれも今更な話と言わざるを得ません。悪意の下発生拡大された被害はもはや消えない、というか延々と繰り返された後だし、もとより撤回で済む時期は完全に過ぎてしまったのです。撤回が可能だったとすれば、まだ本件のような最初の被害の発生時期である2015年8月頃しかなかったでしょう。あの時に非難を無視して延々続けて来た結果なのですからもうどうにもなりません。

調査から周辺含む多数の個別の対応まで、散々手間を掛けさせられたユーザの一人としては、存分に報いを受けて頂きたいと心から願う次第なのです。私だってその分の労力の賠償を請求したい位なのですよ。だって私、Windows7やWindows8.1のPC複数について、アップデートの度に手動で一つずつ内容をチェックしてWindows10絡みのものを除外・非表示にしているのですが、当然ながら非常に面倒でありまして。これが必要な事ならまだしも、本来なら必要性のかけらもない手間とあっては、いやもう全く以って死ねMicrosoftと言う他ありません。

Microsoft pays woman $10,000 over forced Windows 10 upgrade

[過去記事 [note] Windows10の表示周りに不具合頻発]
[過去記事 [note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードはやはり地雷]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードの無効化]

6/25/2016

[pol] 無責任なEU首脳、醜態を晒す市民

そしてCameronは匙を投げました。あれだけ離脱によるデメリットばかり主張していたのだから当然と言うべきでしょうけれど、今後の話を一切せずに辞任だけ表明するとは、無責任な話です。今回の投票は経緯はどうあれ、自分が公約に基づいて実行したものである以上、引き継ぎなり離脱手続開始の宣言なりする義務は当然あるし、それ以外にも今回の決定で分裂した国内の対立の緩和やら、最低限の後始末をする義務もある筈なのですけれども。

その他EU首脳も、離脱ならEUは終わりだ、とか散々言っていた手前、EUが分裂するだろう見通しを事前に自ら認めてしまった形になるわけで、今後の対応、特にEUの維持を図るにあたり色々と苦しそうです。というか普通に致命的ですかね。結果がどうなろうとEUは問題ない、とか言って保険を掛けておけばよかったものを、後の祭りとはこの事です。そんな迂闊な対応をしてしまうような首脳陣を抱いた各国民はさぞ嘆いているか、それとももう諦めているか。いやはや。何が起ころうと問題ないようにあらかじめ対処しておくのが指導者の責任というものでしょうに、どいつもこいつも無責任甚だしいと言わざるを得ません。と言って、最終的にはそういう指導者を選んだ各国民に帰責される話ではあるのですけれども。

ところでUK内では、離脱派の政治家を取り囲んでリンチ紛いに非難を浴びせる残留派が多数いたそうで。その政治家が独裁的に決めた事でもなし、まして国民投票の結果に対し、自分の意見が通らなかったからと、そのような無法に及ぶとは。。。それだけ今回の決定がドラスティックなものだという事であって、破滅的な暴動に至らなかっただけまだマシとも言えるのかもしれませんが、それでも法治国家の市民としてあるまじき醜態には、目を覆わざるを得ないのです。

もっとも近い将来、日本でも改憲の是非が現実に問われる可能性は高いわけで、その際の状況によっては似たような事が国内でも起こりうるのかもしれません。そんな光景は見たくない、と思わずにはいられないのです。

ああでも、公に見えている所はまだマシなのかもしれませんね。本件に絡んで大変な利害が動きましたし、予想と真逆の結果になりましたから、その辺から色々と個人では背負いきれない責任も生じただろうわけで、文字通り首が飛んだ人がいても全く驚きもしません。金融関係なんて、死ぬほど罵声や脅迫が飛び交ったところも多々、というよりそうでなかった所の方が少なかっただろうし、その中には暴力に発展した事も少なくないでしょう。とはいえその辺の大体は自業自得と言うべきでしょうから、あまり同情する気にもならないのですけれども。

(追記)

ロンドンでは市の独立とEU加入を叫ぶ人がいるんだそうで呆れました。そもそも出来るわけがない、というのに加え、それを主張するという事は、当然スコットランドや北アイルランドの独立は認めるという事になるし、さらには英国全体、EU全体について都市単位での分裂権を要求しているのに等しいわけです。仮に実現したとしても、内陸につき外国となるその他英国を通らなければEUと行き来出来ない地域でEUに加盟して何の意味があるのでしょう。結局のところ人も物も航空を除いて外国を経由する事になるのだから、彼らが重視するところの人や物の流通はじめ経済面で見れば逆効果でしかないだろう事は明白なわけで、本末転倒も甚だしく、全く以ってアホかと言わざるを得ないわけです。そんな事言うならもうEUに移住した方がいいんじゃないでしょうか。おそらくは本人達も自分が何を言っているのかわかっていないのでしょうけれども、これが世界でも有数の知識階級であり上流階級とも言われるロンドンのリベラリストの姿かと思うと泣けます。そんな戯言がリアリズムと反骨心の塊のような労働者階級に受け入れられる筈もなし。そりゃ負ける筈だ、と逆に納得出来るところでもありますけれども。本当に酷いですね。

ただ、あのロンドン等で暴れている人達のどれだけが英国籍なのかはいささか疑問に思うところではありますけれども。数百万に上るという国民投票のやり直しを求める署名にしても、署名はオンラインにつき外国からでも出来てしまうし、詐称まみれになるに決まっています。要件は自己申告の氏名等だそうですが、在住者なら外国籍でも可というあたりからしてもうね。元より離脱で決定的に困るのは外国籍の人なのですから、彼らが殆どいないと考えるのには無理があろうというもの。むしろ大半がそうなんでしょう。外国人が国民のふりをして権利を主張するというのは国内でもよくある話なわけですが、その辺の事情はどこも同じという事でしょうか。だとしたら極めて無法かつ姑息な話であって、遺憾な限りです。そういう自己中心的な振る舞いこそが今回の離脱賛成多数の原因だろうと思うのですけれどもね。

英国の就労ビザは要件が厳しい事で有名です。個別の審査に合格出来るだけの要件を満たさない移民の方々にはご愁傷さまではありますが、外国籍である以上、大人しく諦めたほうがいいでしょう。法的にも外国人に主権はないのだし、何より移民の制限ないし排斥こそが今回の決定で示された国民の意志そのものなのですから。

[前記事 [pol] EUの終わり(多分)に]
[前々記事 [pol] 英国は独立を取り戻すか > 取戻します。さらばEU]

6/24/2016

[pol] EUの終わり(多分)に

9割方開票が終わって2%程の差がある、という事で、英国のEU離脱が確実となりました。直前の予想とは真逆の結果になりましたから、素直に予想を信用していた向きは地獄の底に叩き落とされてしまったわけで、各市場とも大混乱です。今頃になって日本含め各国政府も右往左往。不謹慎ですが、第三者の立場からすればとても愉快な事になっていますね。まあそういう博打打ち界隈の話はそれぞれが勝手にすればいいと思います。

本件投票が予想と異なった結果になった事については、平日の投票につき残留賛成派の都市部のホワイトカラーの投票に障害があった事、大雨で投票を取りやめた人がおそらく多数出た事やら、色々と要因は考えられます。少なからぬ有権者の意思表示が妨げられた点はよくない事なのでしょうけれども、一方で逆に言えば、その程度で投票を取りやめるような、いわば不安定な意志は弱まり、逆にその程度の障害は意に介さない確固たる意志が相対的に強まった結果、より積極的な意志表示としてのEU離脱が選択されたとも言えるし、その意味では理解しやすくなった面はあるように思われるところです。もっとも、全数調査ではない以上、単に数%のズレは当然起こりうる調査方法だったというだけの事なのかもしれませんが。暗殺事件前への揺り戻しが直前で閾値を超えた可能性も考えられます。いずれにせよ、少なくとも、不当な結果とは言えないでしょう。

個別の地域で見ると、最も離脱反対の比率が高かった地域が、先だって独立を阻止され、UKに留まる事を余儀なくされたスコットランドだったいう事実は、中々に皮肉を感じずにはいられません。もっとも、UKとEUの分離を拒んだというよりは、単にスコットランドとしてEUに残りたいだけで、UKからは離れたい事には変わりないというのが本音なのでしょうけれども。北アイルランドも同じく離脱反対が多数ですが、おそらくはこれも同じでしょうね。従って両地域ともに独立した国家としてのEU再加入を目指す運動の再燃が当然に予想されるところです。

ともあれ、離脱は決定事項であり、既に問題はこれからの動向に移っています。EU離脱にあたり、英国はEUと具体的にどういう関係であろうとするのか。FTAのような協定を結ぶのか否か。そもそも一貫して明確な反対論者であり続けたCameronにそれを担う事が可能なのか。最悪、EU加盟前に戻せばいい話だし、どうとでもなると言えばそうなのでしょうけれども、前記の通り北アイルランドやスコットランドの問題もあるところ、あまり短慮に走らず、現実的な選択が着実に為される事を望みたいと思います。とは言っても所詮人の国の話、英国人の自由なのであって、部外者がとやかく言う話ではないのですけれども。

そして、EUは初の離脱、それも主要国の一角である英国がという事で、その存在意義や性質について否応なく決定的な変化を迫られる事になりました。従来からの加盟国の経済的な破綻続出、移民とテロによる社会の不安定化とそれに伴う分離主義の台頭に加え、要であるドイツの経済事情が思わしくない点もあって、その存続にも疑義を付けざるを得ない状況にあったEUですが、ここに英国の離脱による金融はじめ経済面の弱体化、軍事力の殆ど半減までもが重なれば、もはやその存続の基盤自体が危ういものと言わざるを得ないところです。

少なくとも、英国はこれから移民の制限を強める、というかおそらく完全に拒否するようになるだろうし、対してフランスは兎も角、ドイツが今更排斥に転じるわけにも行かず、各国で対応方針が異なる以上、人的な流れに歪な制約が強まるだろう事は間違いないでしょう。そして、英国がそれを為し得る以上、北欧はじめドイツ以外の各国も排斥を求めてドイツと対立を強めるだろう事も必至なわけです。一気に崩壊に進む可能性も否定出来ないでしょう。

果たしてこの流れを押しとどめる事は可能なのか。各国とも、国家の中の自治体ではなく、文字通りの固有の主権国家であって、独立して個々の利益を追求する事もむしろ当然の権利である以上、本来的に困難な事なのでしょう。そう思いつつ、しかしそうなった場合に、ギリシャはじめ破綻済の各国はどうなるのだろうか、と想像すると、幻想は所詮幻想、都合の悪い現実の前には無力なのだなと、諦観を抱かざるを得ないわけです。どうせやるなら国家自体を統合する方法を取るべきだったのでしょう。それをせず、上辺の形だけ整える手段に出た時点で、こうなる事は必然だったのかもしれません。残念な事です。

(追記)
Cameronはあっさり投げ出しました。いやあ無責任ですね。自分でやった話なのに、引き継ぎとか今後の手当とか一切なしとは。
[続き [pol] 無責任なEU首脳、醜態を晒す市民]

[関連記事 [pol] 英国は独立を取り戻すか]

6/23/2016

[pol] 英国は独立を取り戻すか > 取戻します。さらばEU

英国のEU離脱の是非を決する国民投票、その期日がやってまいりました。現地の世論調査によれば、概ね賛否拮抗で結果の予測は困難な感じで、特に金融関係者を中心とした世界中の利害関係者が、そのポジションを右往左往させながら固唾を飲んで見守っているわけです。

本件の主要争点は、実質的には概ね移民と経済の2点。いずれも現実問題として極めて深刻なものであり、英国の地理的特性から、EU離脱とそれに伴う人的・経済的な出入りの管理規制の導入がそれらの問題への決定的な効果をもたらす対策となるだろう事が予想されています。往々にして現実的な見通しの薄弱さから単なる右翼的なイデオロギーの発露に留まり、成立しない事の方が圧倒的に多いこの種の分離・独立運動にあって、実体面での整合性も兼ね備えた珍しい例とも言えるでしょう。むしろ立場は逆転して、残留を主張するリベラル派の方が通常の右翼よろしく抽象論に終始しているように見えもするわけです。旗色が悪いのもむべなるかな。

そもそもEU自体がほとんど経済的な利益のみを当て込んで作られた中途半端な組織だけに、その経済面がリスクに転じた以上、解消すべきと判断する者が多数になるのも当然と言うべきところなのでしょう。そもそも経済的な面だけならば、EUの枠組みでなくとも、個別の協定でも同等の関係は構築可能なのですし、それ以外の国家的な権能の面で言えば制約、それも国民の付託を受けておらず、民主主義の観点からは間接的で根拠の弱いものでしかないのですし。

無論、制度の解消・移行には相応のコストが必要になりますから、問題はそれが見合うかどうかというところであって、その評価で揺れている結果が賛否拮抗した原状とも言えるでしょうか。

ただ、直近の反対増加は、件の暗殺事件の反動という面が少なからず見受けられるわけですけれども、国家の根幹を定める意思決定が、そういう本来の問題とは関係ない要素に左右されるというのには、他人事ながらいささか残念に思わずにはいられないのです。結果がどうなるにせよ、個々の有権者が、自分が何を望むのか、そのために国家はどうあるべきなのか、明確に認識した上で、一時の衝動に流されず、個人としての確固たる意思の下に為されるべきものな筈なのですから。

(追記)

結果は離脱。さようならEU、と言うにはまだ早いでしょうか。
[続き記事 [pol] EUの終わり(多分)に]

[過去記事 [pol] Scotland独立運動への部外者の反応が一様に酷すぎる]
[過去記事 [pol] ギリシャの社会保障削減拒否、瓦解する欧州の夢]
[過去記事 [pol] 泥沼と無謀、暗鬱たるテロ社会は一夜にして成らず]
 

6/12/2016

[pol] 舛添知事の汚職追求を不毛にする法と社会の齟齬について

舛添都知事の汚職の件ですけれども。表面的な部分もあるにせよ、ここまで四面楚歌というのも今時珍しい、とある意味感心してしまうのです。

個々の行為は正直言って真面目に議論するのも馬鹿馬鹿しいようなしょうもない話ばかりです。それへの知事のおよそ真実味の欠片も感じさせない釈明もどきを含め、いずれも論外である事は間違いないけれども、議員は無論一般職員も似たような行為は程度の差こそあれ日常茶飯事と言っていいだろうところ、そんな事まで一々議会はじめ社会全体で大々的に取り上げてたらキリがないし、本来的にかかずらわっていられないようなものなわけです。

単発であればそれなりに非難を受けた後で謝罪なり返金なりで始末がつき得る筈の行為が、当人が認めたものだけでも少なくとも数十件以上も積み重なり、それが結合してマクロ的に一つの看過し難い重大な汚職犯として認識されてしまった結果ということなのでしょうか。そうであれば、個別の行為は、法的にはともかく、個々の市民の認識はじめ社会的な意味ではもうどうでもいいのであって、その是非や個別の釈明等は既におよそ意味を成さないものになったのかもしれません。

ならば、本件にありうべき始末も、個々の行為への処理を重ねるのではなく、全体に対する総括的なものになる他はないだろうと思われるわけです。すなわち、個々の行為は致命的ではない以上それが数多くあっても許され得る、として失職を回避するか、個々の行為は致命的ではないものの、その頻度と常習性から到底許されないものとして排除されるか、その2択になるでしょう。

法的には、前者の可能性も当然にある筈です。刑法的には、複数の罪が集合した場合の評価はその中で最も重い罪を基準として、それに何割か加重される程度のものですから、致命的でない罪がいくら多数集まろうともその評価はさほど飛躍的に変わるわけではありません。民事的には賠償額は累積的に増えますが、それでも賠償さえすればそれで始末が付くものには違いないわけです。従って、法的には失職を回避する道もあり得ると解釈すべきところなのでしょう。けれども、現実的にはその立場からの擁護はほぼなく、後者すなわち排除を求める意見ばかりになっています。本件はそこに齟齬があると言えるでしょう。そしてその齟齬が、本件を殊更面倒なものにしているように思われるのです。

社会的な評価は致命的、しかし法的には致命的とは言い切れず、非難がどれほど加えられようとも、具体的な個々の行為に基づいて法的に辞任・退任を強制する事は困難、というわけです。この状態がそのまま現在の議会等での非難や追求、それに対する知事の対応について感じられる不毛さの原因なのではないでしょうか。

そうであれば、個別の行為に対する非難や追求は、意味がないわけではないものの、一定以上については実質的に意味があるとは言えないのでしょう。従って本件の始末を付けるには、個々の行為の追求以外の手段による他はないだろう以上、知事の立場そのもの、すなわち委任者たる市民の不信任による他はないのではないでしょうか。

無論リコールには相応のコストが必要になるところ、議会が不信任決議で引導を渡せば省略出来る話だし、可能ならそれが望ましいんでしょうけれども、今の所議会はそういう話には消極的な感じのようです。参院選直前で色々と面倒という事情があっても、法的に実行可能になり次第、とか時期を定めて予告する位は普通に出来る筈なんですけどね。何故それをしないのか、と考えると、やはり自民・公明ら与党系はこの期に及んで知事への支持を捨てられない、という事なんでしょうか。元々担いだ側ですから仕方ないんでしょうけれども、担いだ責任と手のひらを返す責任と、どちらも負いたくないという思惑の結果が今回の対応だとすれば、いささか姑息に過ぎると言わざるを得ないわけです。せめて自分たちで進んで始末を付けるのが最低限の責任と言うものでしょうに。

というわけで、さっさとリコールの準備なり、議会の不信任なりするべきだと思うのです。あの知事の、それが理解されると本気で思っているのかと耳を疑わざるを得ない、人を小馬鹿にしたような妄言とか、もういい加減みんな聞き飽きたでしょうしね。