5/12/2016

[biz] 日産はどうして三菱自の救済に動いたのだろうか

日産が瀕死というか既に死に体の三菱自に出資するんだそうで。

正直行ってどう捉えていいのやら、困惑しております。いや、当面の資金調達が出来なければ即死する三菱自側にとっては願ってもない話なんでしょうけれども、日産が何を考えてしたのか、合理的な説明を付けるのが難しいように思うのです。

というのも、周知の通り三菱自の製品は性能の虚偽発覚によりほぼ全滅しています。特に素の製品の競争力が決定的に競合他社に劣っているのが問題で、仮に法的な問題を解決したとしてもそもそも売り物にならない事も目に見えています。製品として成立させるためには技術面で少なくとも競合他社と競り合う位までキャッチアップしなければ話にならず、その極めて高い技術開発の難度と、その種の技術開発に必要となる標準的な時間の長さを考慮すれば、まずもって5年程度は販売再開は見込めないだろう状況にあるわけです。無論、多額の投資も必要になるでしょう。その間、利益を得ないまま、ずっと資金供給を続けるつもりなのか、そんな判断があり得るのか、と強く疑問を抱かざるを得ません。

加えて、日産と三菱自は、SUV等の軽自動車以外のカテゴリでは従来から強く競合する関係にありました。 日産が属するルノーグループ内では既にプラットフォームも統合済みであり、今更三菱自の独自規格の割って入る余地など無い筈です。従って、軽自動車事業以外は当然リストラする必要があるだろうわけですけれども、それを視野に入れているにしては、3割強という出資割合は明らかに少なすぎます。法的には重要事項への拒否権を持つに過ぎず、その種のドラスティックな措置を強制出来るわけではないのですから。

本当に当面の救済が主目的であって、駄目で元々位で自前の軽自動車部門へと成長する可能性にベットしただけであり、当面は膨らむ事が避けられない損失の本体の財務への悪影響を抑えるために過半数は取らなかった、という事なんでしょうか。だとしたら、その成算云々以前に、今回の件による直接の損失の見積もりすら覚束ないこの段階で、2000億もの資金を捨て金同然に供給する事を即決出来る、というのは極めて大胆な話だと思います。そんな怖い事よくやるな、と戦慄を覚えずにはいられません。少なくとも、国内事業を見れば日産にそんな余裕は無い筈ですから、自然中国はじめ他所で稼いだ分を突っ込んだ形になるわけですけれども、そんな決定が通る社内事情というのも、そんなんで大丈夫なのかと、他人事ながら不安を覚える次第です。

もっとも逆に言えば、日産も国内事業が思わしくないが故に、今軽自動車事業を失うわけにはいかず、こんなリスクしかない案件に突っ込まざるを得ない程に切羽詰っているという事なのかもしれませんが。だとしても、技術面の周回遅れというのは多少資金を突っ込んだところでどうにかなる類の話ではないのだし、まして信用が完全に失われた所から回復を目指すというのでは、既に現実性が無いと言っても過言ではない状況であって、逆に損失を広げるだけに終わる可能性の方が遙かに高いのではないかと思うわけです。しかし、そんな事位日産の経営陣に分からない筈もまたなかろうに何故、とそこで再び首を捻らざるを得ないのです。

色々考えてはみるものの、やはり理解に苦しみます。しかし何にせよ、ユーザーにとっては補償・賠償の担保が得られたという事で、社会的には歓迎すべき事ではあるのでしょう。三菱自は表向き歓迎しつつ、心情的には三菱グループから見捨てられた悲しみに昏れているかもしれませんが、まあそれは自業自得だし、むしろまだ存続の目が残されただけ幸運と思って然るべきところでしょうか。しかしどうなるんでしょうねこれから。

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