5/18/2016

[biz law] 計測の体を成していない方法を適切と強弁するスズキに戦慄

スズキの燃費偽装の件ですが。先頃行われた鈴木会長等の釈明会見で判明した驚愕の事実の数々には唖然とさせられてしまいました。

一番驚いたのは、問題の抵抗値の計測について、そもそも計測になっていない、でっち上げと言ってもいいような測り方をして、しかもその方法を恥ずかしげもなく、さも適切であるかのように強弁していた点です。テストコースが風が強くて計測が難しかっただとか、5%の誤差だから問題ないだとか、ホントにプロのメーカーなの?と疑わざるを得ないあまりの非常識ぶりに戦慄しました。

本来言うまでもない話の筈ですが、環境条件の厳密な管理設定は計測の大前提であり、基本中の基本です。逆に言えば、そこに僅かにでも綻びがあれば、それは計測とは言えず、せいぜい目安値程度のものに過ぎない無意味な作業でしかありません。外部的な変動要因を十分無視し得る程度まで排除し、変動を排除不能な内部要因のみに限定した上で、その内部的変動誤差を統計的に十分な精度が得られるまでサンプルを集めて除去し、それでようやく初めて計測値と呼べるのです。しかるに、無風状態を前提にしているのに海岸沿いで風があって計測が困難だったとか、何を言っているのかと。サンプルの計測すら出来ていないという事なわけです。話になりません。

そんな杜撰と言うのも馬鹿馬鹿しいような方法で取ってきた数値を恥ずかしげもなく持ちだした挙句、誤差5%以内だから問題ないだとか、寝言は死んでから言えというのです。自分が何を言っているのか理解していないとしか思えません。

それに、5%の誤差が適切という物言い自体があり得ません。本来計測というのは、まず許容可能な誤差範囲を設定し、その設定した条件を満たすよう計測方法及びサンプル数を設計して行うものです。しかるに鈴木会長の言に従えば、スズキは高々5%の精度しか期待できないような方法かつサンプル数しか用いておらず、かつそれで十分と考えている、という事になるわけです。自動車販売事業における5%のズレ、それがマイナスに振れた場合に引き起こす損失の大きさを誰よりもよく知っている筈の当人の口から、そんな言葉を聞く事になろうとは。。。開発部門が%単位で目標未達、しかもちゃんと計測すればもう少し高いかも知れないが誤差5%だから分からない、なんて報告を上げてきたとして、じゃあそれで、と了承して、あまつさえそのまま市場に投入してしまうメーカーが何処にあるというのでしょう。5%どころか、1%だって許容出来ないでしょうに。

手間を惜しんだ、というのは間違いないでしょう。環境条件の設定と、サンプル数の確保は共にとてもリソースのかかる大変な作業であって、出来れば省略したくなるだろう事は理解出来ます。しかしそもそも簡略化にすらなっていないでっち上げ同然の数値で適切と言い張る姿には、手間を惜しんだという理由では到底説明が付けられない決定的な齟齬があるように見えます。率直に言って、そんな理由ではなく、計測値のでっち上げを取り繕うために無理やりそういうストーリーを作り上げたんだろうな、と考える方が余程自然に思えるわけです。何となくそれらしい説明だけど実はほとんど作り話、というのは大企業の外向けの説明でよくある話ですね。特に理由が後付という辺りが。客観的には虚偽に他ならないわけですが、一般に追求を受ける事もなく横行する業界・社内にあって、当人達にとって既に罪の意識すらなく、むしろ当然のものとなってしまっているのでしょう。

ともあれ。見るからに破綻した説明で、呆れ返った人が沢山出ただろう会見だったわけですけれども。それだけスズキが自動車販売業と日本の法を舐めているという事なのか、それとも本当に理解しておらず、それで問題ないと思っているのか。おそらくは前者なんでしょうけど、いずれにせよ論外と言う他ありません。そんな話を聞かされて、誰が納得など出来るでしょう。

素直に非を認めれば、そのまま生産・販売共にほとんど不可能になって、従って国内事業が三菱自同様終わってしまうのですから、どれほど見苦しかろうとも保身に走ろうとするのも分からないではないですが、それにしても今回の破綻した物言いと、そこで曝け出されたスズキのメーカーとしての最低限のモラルも感じさせない終わりっぷりには、心の底から失望しました。 残念です。他も似たりよったりなんでしょうか。

[前記事 [biz law] スズキも不正発覚で疑惑が全国内自動車メーカーに波及]

[biz law] スズキも不正発覚で疑惑が全国内自動車メーカーに波及

スズキよ、お前もか。

燃費偽装の件、詳細は不明ながら、軽自動車2強の一角であり、カタログ上の燃費性能ではここ数年業界をリードし続けて来た筈のスズキも手を染めていた事が発覚したそうで。いやまあぶっちゃけ疑わなかった向きの方が少なかろうとは思うものの、それでもバレた時のヤバさ加減からして流石に言い逃れ出来る程度には自制しているものと思われていただろうところにこれ。また大変な事になったものです。

正確には計測方法の不正で、おそらくは三菱と同様、数字上良好な抵抗値が出やすく簡便な方法によっていたものと推測されているところ、実質的な不正の程度は明らかではありません。が、その程度の多少は問題ではないわけです。元より他社にも同様の嫌疑はかかっていたところ、本件発覚によりその疑惑は確固たるものとなり、既に疑惑は業界全体に及ぶものになってしまった、その事自体が決定的であり、あるいは致命的と言うべきでしょう。

当局から各社に対し、当然これから積極的かつ強制的に監査等がなされる事は必至です。現在メーカーに任せられている各種のパラメータの測定も第三者機関の検証を受ける事になるでしょう。あるいは検証に留まらず、検査の全てが行政法人の管轄に改められるかもしれません。無論不正がなければ何の問題もないわけですけれども、国内の開発現場において、諸々の対外的な数字への化粧等と称する誤魔化しが横行している事は周知の通り、何も出てこない筈もないのです。従ってその不正の内容と悪質性が問題になるところ、仮に本件のような致命的なレベルの不正が蔓延していたというのなら、連鎖的に主要メーカーが販売停止・多額の損害賠償を強いられる事も必至。結果、国内の自動車産業が壊滅する事態すらあり得るように思われるところです。

国外でも、米国は無論、韓国では日産に排ガス規制絡みで具体的な嫌疑がかかってるそうですし、むしろ国内で済めばまだマシな位と言えるでしょうか。無論最大手のトヨタ(ダイハツ含)の実態もこれから明かされる事になるんでしょうけれども、さてどんなものなんでしょうか。

といって、紛うこと無き詐欺、それも国を相手取ってのものでもある前代未聞の規模なのだし、長年のツケを払う羽目になっただけの話、例え存亡の危機に晒されようと、それも仕方ないというよりむしろ当然の話なのだろうと言わざるを得ません。最低限不正で得た利益は返還されなくてはならないし、損害は償われなければならないし、今後の再発は絶対に許されず、まして不正車の販売継続は論外、それだけの事です。結果的に言えば、本件発覚の引き金は直近の軽自動車需要増に対する競争だった、と言えるでしょうけれども、つまり目先の需要に目が眩んで客を騙した結果身を滅ぼした構図になるわけで。いやほんと馬鹿ですね。救えません。

逆に無事なところがあれば、一気に天下を取る事も可能と言えるでしょうけれども、さてそんな所はあるのでしょうか。日産なんて、余裕こいて救済してる場合じゃなくなったかもしれないんですしね。

スズキ 燃費データ測定 国の方法と異なる形で

そして鈴木会長の会見で明かされた驚愕の実態。そんな出鱈目だったのかと。

[続き [biz law] 計測の体を成していない方法を適切と強弁するスズキに戦慄]

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5/12/2016

[biz] 日産はどうして三菱自の救済に動いたのだろうか

日産が瀕死というか既に死に体の三菱自に出資するんだそうで。

正直行ってどう捉えていいのやら、困惑しております。いや、当面の資金調達が出来なければ即死する三菱自側にとっては願ってもない話なんでしょうけれども、日産が何を考えてしたのか、合理的な説明を付けるのが難しいように思うのです。

というのも、周知の通り三菱自の製品は性能の虚偽発覚によりほぼ全滅しています。特に素の製品の競争力が決定的に競合他社に劣っているのが問題で、仮に法的な問題を解決したとしてもそもそも売り物にならない事も目に見えています。製品として成立させるためには技術面で少なくとも競合他社と競り合う位までキャッチアップしなければ話にならず、その極めて高い技術開発の難度と、その種の技術開発に必要となる標準的な時間の長さを考慮すれば、まずもって5年程度は販売再開は見込めないだろう状況にあるわけです。無論、多額の投資も必要になるでしょう。その間、利益を得ないまま、ずっと資金供給を続けるつもりなのか、そんな判断があり得るのか、と強く疑問を抱かざるを得ません。

加えて、日産と三菱自は、SUV等の軽自動車以外のカテゴリでは従来から強く競合する関係にありました。 日産が属するルノーグループ内では既にプラットフォームも統合済みであり、今更三菱自の独自規格の割って入る余地など無い筈です。従って、軽自動車事業以外は当然リストラする必要があるだろうわけですけれども、それを視野に入れているにしては、3割強という出資割合は明らかに少なすぎます。法的には重要事項への拒否権を持つに過ぎず、その種のドラスティックな措置を強制出来るわけではないのですから。

本当に当面の救済が主目的であって、駄目で元々位で自前の軽自動車部門へと成長する可能性にベットしただけであり、当面は膨らむ事が避けられない損失の本体の財務への悪影響を抑えるために過半数は取らなかった、という事なんでしょうか。だとしたら、その成算云々以前に、今回の件による直接の損失の見積もりすら覚束ないこの段階で、2000億もの資金を捨て金同然に供給する事を即決出来る、というのは極めて大胆な話だと思います。そんな怖い事よくやるな、と戦慄を覚えずにはいられません。少なくとも、国内事業を見れば日産にそんな余裕は無い筈ですから、自然中国はじめ他所で稼いだ分を突っ込んだ形になるわけですけれども、そんな決定が通る社内事情というのも、そんなんで大丈夫なのかと、他人事ながら不安を覚える次第です。

もっとも逆に言えば、日産も国内事業が思わしくないが故に、今軽自動車事業を失うわけにはいかず、こんなリスクしかない案件に突っ込まざるを得ない程に切羽詰っているという事なのかもしれませんが。だとしても、技術面の周回遅れというのは多少資金を突っ込んだところでどうにかなる類の話ではないのだし、まして信用が完全に失われた所から回復を目指すというのでは、既に現実性が無いと言っても過言ではない状況であって、逆に損失を広げるだけに終わる可能性の方が遙かに高いのではないかと思うわけです。しかし、そんな事位日産の経営陣に分からない筈もまたなかろうに何故、とそこで再び首を捻らざるを得ないのです。

色々考えてはみるものの、やはり理解に苦しみます。しかし何にせよ、ユーザーにとっては補償・賠償の担保が得られたという事で、社会的には歓迎すべき事ではあるのでしょう。三菱自は表向き歓迎しつつ、心情的には三菱グループから見捨てられた悲しみに昏れているかもしれませんが、まあそれは自業自得だし、むしろまだ存続の目が残されただけ幸運と思って然るべきところでしょうか。しかしどうなるんでしょうねこれから。

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5/11/2016

[law] Panama papersが晒す形式的合法性の詭弁とその破綻

このところ世界中を悪い意味で賑わせている、Tax Havenの大手法律事務所Mossack Fonsecaから流出した利用企業・個人等のリスト、通称パナマ文書ですけれども、ICIJにより公開されたデータベースファイル一式をダウンロードして眺めてみました。

ダウンロードした圧縮ファイル(offshoreleaks_data-csv.zip or data-csv.zip)を解凍すると、下記の通り4つのデータファイルと、その要素間の関係情報のファイルの合計5つのcsvファイルが入っています。

 ・Addresses.csv : 住所一覧
 ・Entities.csv : 法人一覧
 ・Intermediaries.csv : 仲介者一覧
 ・Officers.csv : 役員一覧
 ・all_edges.csv : 上記各情報間の関係情報

どれもテキストファイルなので、取扱はとても簡単です。個々のデータも余計な情報は皆無の極めてシンプルなものです。ただ、レコード数が半端ないので一々眺めるのも大変。それでも、ICIJのHPで提供されている検索用インタフェースから一つずつ検索するよりは、テキストファイル中を行きつ戻りつ追跡する方がまだやりやすいとは言えるでしょうか。

国内でほとんど一人だけ個人名が取り沙汰されている楽天の三木谷浩史氏を例に取ると、まずOfficers.csvに下記のような形式でレコードが入っています。

 Hiroshi Mikitani,FF94FFD781684756215F927DDB8610C3,The Panama Papers data is current through 2015,SGP,Singapore,12128826,Panama Papers

なお各要素は名前,ICIJの管理番号,有効期限,国ID,国名,ノードID,ソース名となっています。

ここからは住所がシンガポールという事位しかわかりませんが、その他の情報はノードIDから追跡可能になっています。all_edges.csvで12128826を検索すると、

 12128826,officer_of,10068469
 12128826,registered_address,14053224

という2件のレコードが見つかります。 これから、役員を務めている会社と住所のIDがそれぞれ10068469と14053224であるとわかります。で、それぞれEntities.csvとAddresses.csvとから検索すれば、法人と住所の情報が分かるわけです。住所の詳細は流石に個人情報でもあるのでここには載せませんが、法人は下記の通り、香港に本店を持つTradenet investments ltd.という金融系の企業である事がわかります。なお管轄は英領バージン諸島ですね。

 TRADENET INVESTMENTS LTD.,TRADENET INVESTMENTS LTD.,,BVI,British Virgin Islands,,FINANCIAL & CORPORATE SERVICES LTD. SUITES 1904-6; 19/F.; DOMINION CENTRE; 4\
3-59 QUEEN'S ROAD EAST; WANCHAI; HONG KONG WANCHAI HONG KONG,515718,10-NOV-1995,12-JUN-2013,30-APR-2014,,Changed agent,Mossack Fonseca,165794,HKG,Hong Kong,,\
The Panama Papers data is current through 2015,10068469,Panama Papers

国籍は日本なのに住所がシンガポールで会社は香港、という辺り、如何にもと思わざるを得ませんが、その辺の疑惑の真偽、程度は兎も角、どれもこれもそんな感じで中々に香ばしい雰囲気が漂っている事だけは間違いありません。

実際、周知の通り、殆どの法人が現地に営業の実体のない、いわゆるペーパーカンパニーである事はほぼ疑いようのないところでしょう。であれば広く世間から疑いの目を向けられるのも当然の結果と言えるし、或いは各国当局の捜査対象になり、実際に資産・利益隠しや資金洗浄等の違法行為が確認されれば犯罪として摘発されてしまうだろうケースは少なくないものと考えられます。当事者たる役員や法人が揃って戦々恐々とするのもむべなるかな。

名前の載っていた国内大手各社は、判を押したように適法に処理している、とのコメントを出しています。無論形式上は適法な形にはしているのでしょうけれども、しかし今後の捜査で問われるのは形式面ではなく実態面であり、建前上は適法に見えても各法人の営業・活動の実体が伴っていなければアウトになるのです。実体を認められるためには、最低限HQの機能を有する事務所を継続的に保有し、代表権ある役員の常駐も必要だろうところ、まあそんなわけないよね、と誰もが思う時点でもはや建前は通用しないのであって、そこに具体的な実態の説明を伴わず、適法と主張をしてもそれは無意味なわけです。

各国間の法制の齟齬による損失の回避、すなわち二重課税の防止だったり、単なる脱税や資金洗浄とは異なるフェアな事由による場合も多々あるんでしょうけれども、それは企業や個人の側の都合でしかなく、現地での実体を伴わない以上、各国の法に照らせばまず正当な事由とは言えないだろうわけで。一部で、資本誘致の為にはある程度許容すべきものとして正当化ないし擁護を図る論説もあるようですが、それは詭弁と言う他ないように思います。

勿論、当局としてもそこまで捜査するには相当な労力が必要ですから普通ならわざわざ突っ込んだりはしません。というかやりたくても出来ません。が、本件では具体的な、既に整理もされた証拠が提供された事によってそのコストは大幅に縮小しました。むしろ、社会的に広く疑惑が共有されもした以上、もはや何らの捜査もしないというわけにはいかないでしょう。摘発すれば膨大な税収を回収し得る可能性がある事、また今後の税収増も見込めるという事情もありますから、労力を使いながらも当局が突っ込んで行く可能性は低くないと見て良いのではないでしょうか。といって、政府側に後ろ暗い人達が沢山いたりすると、逆に隠蔽に走る可能性は高くなってしまうのですけれども、さて。逆に、中国よろしくもみ消しに走るか否かによって、各国がどの程度汚染されているのかを測る事も可能でしょうから、それはそれで興味深いだろう実態を明るみに出して把握すると共に、可能ならば是正を図る良い機会とも言えるかもしれません。

ともあれ、実際に捜査がなされるとすれば、果たして、そこで明らかになる租税回避の実態はどのようなものなのか。想像の通り、大国の国家予算に迫るようなセンセーショナルなものなのか、実はそこまででもなかったりするのか。いずれにせよ、今後の捜査の行方には、非常に大きな興味をもって注目せざるを得ないのです。どう転んでも、租税回避地の法人絡みの会計処理に規制が強まる事は確実でしょうけれども。

How to download this database

5/10/2016

[law] 俄に注目を集め出したLGBT問題に纏わり付く違和感

俄に社会問題として取り上げられるようになった性的少数者について少し思う所を。

社会から疎外されるsexual minorityの問題自体は別に今に始まった話では全く無く、それこそ何十年も前から散々議論の的になって来たものです。国内でも様々なケースが司法も巻き込んで争われ、様々な権利が法的にも認められるようになり、完全に解決する見込みは得られていないながらも環境の改善が着実に図られてきているところです。それが、何故今になって突然、何らの対策もされず放置されているかのように世論を殊更煽るような形で特別に問題視されるのか、今ひとつ腑に落ちないわけです。

その理由は、と疑問を抱いたところで、一個人が考えても分かる筈もなかろうけれども、色々と仮説を立てる気にもなろうというものではないかと。

おそらく最大かつ直接的な要因の一つは、米North Calorina州で3月に成立したTransgenderのトイレ利用を禁止する州法について、DOJが、連邦法の規定する性差別の禁止に違反している、としてクレームを付けた事でしょう。これを受けた米国内での世論の注目の高まり、それが日本国内に波及したものと考える事は不自然でしょうか。もしそうだとすれば、国内での注目は、ある種の便乗に過ぎないものとも言えるわけで、いささか恣意的な印象を否めません。

そうではなく、純粋に日本国内の問題として、社会的に疎外されているマイノリティの保護・救済が必要であり、その中で特に社会的な対応が緊急に必要になった、という事なのでしょうか。しかし、国内での状況を鑑みれば、本件類似の社会・人権問題としてこれまで特に重点的に取り扱われて来た問題、すなわち身体・精神障害者、外国人殊に少数人種や不法滞在者、宗教的被差別、部落等の地域性に基づく差別等、より深刻かつ大規模な問題は多数存在し、その種の問題意識と政策の主たる対象となって来たところです。これらと比較すれば、個々人の内心の問題に留まり、本来的に社会的な問題とは認識されない傾向の強い性的少数者を、現状のように特別に取り上げ、社会政策上の救済の必要性が強く主張するにはやはりそれなりの特別かつ具体的な理由が必要だと思われるところ、現在各所で流れている様々な報道、論評を見る限り、そのような事情は見受けられません。そこにやはり強く違和感を感じずにはいられないのです。

もっとも、先に挙げたマイノリティの例については、これまで優先的に対処が成されて来たところでありますから、解決したわけではないけれども政策も含め概ねやれる事はやって、もはや劇的な改善は見込めない所まで行き着いた結果、これまであまり組織立って救済されて来なかった比較的小さな問題にも取り組む余裕が出て来た、とかそういう事なのかもしれません。しかしそうだとしても、某不満足な御仁がやらかしたタイミングでというのにも如何にもな因果関係を連想させられてしまうわけで、余裕が出たというよりは、それらの問題に取り組んで来た活動家らが目先を変えただけなのかもしれない、等と邪推も浮かぶわけです。もっとも、御仁は関係なく、手持ち無沙汰になったり、単に飽きて目新しい問題に取り組み出したりしただけな可能性もあると思いますけれど。どうなんでしょうね?

ともあれ。考えても仕方のない理由についてはこの辺にしておきましょう。

で、話を戻して、今回の件についてですけれども。性的少数者を代表する形で取り上げられているところのLGBTの内、LGBまで、すなわちLesbian,Gay,Bisexualについてはいずれも元々広く認知され、一般に個人の性的嗜好の一つとして受け入れられており、結局のところその性的特性によって特に差別を受けているわけでもありません。唯一の例外は、外形上元の性別のままであり、社会生活上で周囲との齟齬が常に顕在化するT、すなわちTransgenderのみです。米国で問題になっているのもやはりこの場合だけなわけですが、何故か日本国内ではLGBTは全て同質のものであり、等しく救済が必要なものとして扱われているようです。この事が便乗感というか、問題提起自体に対する不合理な印象をより強くしているようにも思うのですが、それはさておき。

Transgenderは、周知の通り生物学的(遺伝子的)な性別と精神的(主観的)な性別が不一致を起こしている人もしくはその精神状態の事を指すわけです。手術等の身体的な操作の有無は問いません。人格は一義的に精神と同一視し得るものである以上、彼ら彼女らが、主観的な性別で生きる権利、つまり社会的に生物的性別と異なる性別として認容される権利が、人格権の一つとして保護されるべきものである事には、個々人の好悪はともかくとして、法的な面から言えばおよそ異論のない、というより異論を立てる事は困難なところでしょう。

ただ、その保護を実際に実現するに際して、生物学的には別性であり、客観的にTransgenderである事が判別不能であるが故の社会上の看過し難い困難が発生するのであって、それを法によって如何に解消するか、あるいは調整するのかが問題になっているわけです。

具体的な例で言えば、トイレや更衣室等の、個々人の性的人権の保護のため性的に厳格な隔離が必要な場に、通常の利用者が客観的に見て別性と判断するだろう人間の利用を許容する事の可否と、仮にそれを可とするならばどのようなシステムによって実現するのか、という方法論の問題との二重の問題が存在しているとも言えるでしょう。米国の件の場合は、DOJが抽象的に権利侵害を認定して是正を求めているのに対し、NC州側はそんな事言っても外見上異性がトイレに侵入しているようにしか見えないのだからトラブルになると現実的な事情から反発しているのです。どちらの主張も正当性がありますが、現実的には整合せず、理想と現実が衝突を起こしている形ですね。

個人的には、もしTransgenderの権利を保護するというのなら、トイレの例で言えば転換のない男女と別に、転換男性・転換女性用のエリアをそれぞれ設けるしかないのかな、等と思ったりもするのですが、特定の少数者のためだけの負担としてはあまりに大きすぎるため、実際問題それを強制するのは難しいでしょう。理想的にはいっそ男女の区別も撤廃するという考えもあって、もしそのように変更出来れば様々な面で社会的には望ましい筈ですが、それは逆に性的プライバシーの侵害というより大きな人権侵害を伴うところ、その許容の強制はおそらく不可能であり、やはり実際には極めて困難と言えそうです。

結局のところ、全てを解決し、副作用なしに性的少数者の権利の保護を実現する方法というのは見当たらず、従って理想と現実の齟齬が解消される見込みもないまま衝突を続けているというのが現状なわけです。社会システム上で解決する手段がないのなら、これまで通り個々人の内心や個々のプライベートな場の内に収め、そこで各自が折り合いを付ける他ないのでしょう。

しかし、一度こうして声高に社会問題として取り上げられてしまうと、元に戻すのも困難になるわけで。これも一つの無責任の報いという事になるんでしょうが、どうするんでしょうね?そういう問題提起だけして放り出す、意識だけが高い無責任な人たちには困ったものです。一度取り上げたからには、責任を持って解決までマネジメントして頂きたく思う次第なのです。

The Department of Justice is suing North Carolina over its same-sex bathroom law

5/06/2016

[biz law] 悪質極まる東亜建設工業の空港耐震工事詐欺、すら普通に感じる現状

またか。どいつもこいつもいい加減にしろよ。

東亜建設工業による羽田空港C滑走路の施工不良隠蔽の件ですが、多くの人が似たような事を思ったのではないでしょうか。もっとも、後半部分はもうどうでもいい、だったかもしれませんが。

具体的な事の経緯は次の通り。羽田空港が埋め立て地につき地震時に懸念される液状化の防止策として2015年5月から2016年3月にかけて施工された(事になっている)補強工事について、それを請け負った同社が、自社開発の薬剤注入方式による施工に際し、工法の問題から予定量の5.4%の注入に留まり、ほぼ完全に失敗していたにも関わらず、予定通り全量注入に成功したものとしてデータを改竄、それに基づいて完了の旨虚偽報告を提出し、代金を詐取していた、というのものです。

本件で問題の工法による施工は、今回が初めてではなく、既に複数の実績があったとの事。という事はあれですよね。過去の例でも同様の隠蔽・虚偽報告がなされたのかは現時点で不明ですが、少なくとも入札参加前の段階である程度施工の可否というか薬剤注入の実行可能性は分かっていた筈で、であれば最初から出来ないものと知りながら提案・入札・落札し、施工・完了報告までやり通した、という話になるわけです。

何なんでしょう。あまりの情状酌量の余地のなさ加減に目眩がします。

既存の類似犯罪との比較で言えば、利用者の安全性を犠牲にして自社の利益を図ったという意味では旭化成の件と類似しており、従って前代未聞とまでは感じません。しかし本件は最初から代金詐取を目論んで事に臨んだ点からして、明らかな計画性が認められ、よって遥かに悪質性は高いものと言えるでしょう。その意味では東洋ゴムの件の方が近いと言えるかもしれません。目的が耐震性の確保である所も共通ですし。三菱自動車の件は、安全性について犠牲にしたわけではない、という点では異なりますが、確信性というか、悪意の明確さや計画性等の面ではやはり類似性が高いように思われるところです。こうして比較して見ると、それら過去の類似例の悪い所をかき集めたようにも感じられますね。

そんなわけで、企業犯罪ここに極まれり、とも言うべき酷い事件ですが、しかし近年頻発して来た類似例、そのあまりの多さに既に慣らされてしまったのか、取り立てて衝撃を受ける事はなく、むしろまたか、と思ってしまうわけです。しかしその事実、すなわち社会システムの基幹を担う部分ですら、もはやそれを維持するに欠くべからざる最低限の規律や倫理までもが失われ、しかもそれに衝撃を受ける事すらなくなってしまった、という現実には、改めて戦慄を覚えずにはいられません。まともに是正する気すら起こらないという事なのですから。

福島原発の件ですらあれなわけですし。もう法定刑を大幅に引き上げて見せしめも出し、やれば文字通り会社も人生も終わる、という状況を作り、かつ知らしめる事で抑止を図るしかないのではないでしょうか。経営者・担当も、関与しなかった事を証明出来なければまとめて全員5年以上の執行猶予なしの懲役刑とか。それ位しなければ、根絶はおろか抑制すら期待し得ないでしょう。事実、現状はいたちごっこにすらなっていないのですから。致命的なレベルの罰則が無ければ最低限の倫理すら保てない、というのはとても残念かつ遺憾な事ですけれども、それが現実というのなら是非もなし、です。

羽田滑走路耐震工事改ざん=東亜建設、社長辞任へ-薬液注入、予定の5%

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[note] Lubuntuはやはり軽くて良いけれど

16.04LTSのリリースからしばらくして、それに対応したLXDEによる軽量化環境のlubuntu-desktopもリリースされたので、久しぶりに使ってみました。対象はノートPC2台、内一台はクリーンインストールでもう一台は元々入れてあったUbuntu16.04LTS上でのモジュールのみの追加インストールからの切替です。

なお後者の切替元の環境はcairo-dockです。無駄に画面を占拠するUnityは論外として、cairo-dockは良く出来てると思うんですが、兎にも角にもリソースを食うのが欠点なのです。topで見ると四六時中CPUを使ってるんですよね。特に操作してるわけでもないのに、一体何をやってるのかと不思議に思うと共に、その無駄の多さにはいささか辟易とするところもあって。なのでもういい加減デスクトップ環境は何処も安定してる筈だし、と軽い方に心機一転切替えてみようかと思ったわけです。

インストール自体は特に言うこともありません。クリーンインストールはddでisoを書き込んだUSBメモリからインストーラーを起動して、指示に従い数十分で終了。切替えについても、端末から

> sudo apt install lubuntu-desktop

で入れて、再起動後にgdm等マネージャの環境選択リストから切り替えてログイン、で完了。特にトラブルらしいトラブルもありません。いい時代になったものです。

使ってみると、まず見た目はお世辞にも良いとは言えません。果てしなく古臭さを醸し出すバーのグラデーションとか、何故この色?このパターン?と首をひねる他ない壁紙とか、見た目は非常に時代遅れというかとても野暮ったいし、ウィンドウの挙動もスムーズとは言い難く、スタイリッシュさとかデザイン性の面での配慮は欠片も感じさせません。私がLubuntu環境を使うのはもう何年も前にLooxUに試しに入れた時以来ですけれども、全く進歩が見られないのは感心すべきか呆れるべきか。とりあえず、themeをデフォルトのOnyxからNaturaに変更しました。

しかし、肝心な部分、すなわちデスクトップ環境としての動作・機能は問題ないし、確かに軽い。メモリ消費は最小限です。cairo-dockのように裏でこっそり大量のリソースを消費するプロセスも見当たりません。これはやはりとても良いですね。というより、単なるランチャーの癖に気がつくとGbytes単位でメモリを消費しているcairo-dockがおかしいって話なんでしょうけれども。

とはいえ環境内には問題も色々と見られます。見た目が今一つなのはいいとして、端末のフォントとその色がデフォルトでは極めて見づらいのは頂けません。即はっきりした等幅フォントかつ輝度の高い白色に変更して解決しましたが、何故あのような設定なのか全く以って解せないわけです。

ログイン時の各種常駐プログラムの自動起動設定も、 設定用のGUIが無く、手動で~/.config/autostart以下等をいじる必要があったのも面倒でした。切替の場合だと元々autostartフォルダがあったので、その中の.desktopファイルの取捨選別をしたわけですけれども、これがクリーンインストールの場合だとautostartフォルダ自体が存在しないため、それを作成する所から始める必要があったのも頂けません。~/.config/lxsession/LXDE/autostart等、別途設定項目もあって、優先順位とかどうなっているのかも今ひとつ不明ですし。

また、明らかな不具合もありました。 一定時間非使用時のセッションロックに関連して、ディスプレイがオフの状態から復帰する際に時々マウスカーソルが消える不具合があり、ならばとロックを無効に設定変更すべく設定ツール(light-locker-settings)を起動しようとすると、これが起動しません。

調べてみるとこれもバグで、下記の通りlaunchpadにも報告が上がっていました。
 light-locker-settings does not start
上記報告中のパッチ情報に従って、下記の通りスクリプトの219行目と234行目を修正する事で解決、設定ツールが起動可能になりましたが、ちょっとあり得ないバグだと思います。何故にこんな事が起こるんでしょうね?

<セッションロック設定ツール所在>
 /usr/share/light-locker-settings/light-locker-settings/light-locker-settings.py

<セッションロック設定ツール修正箇所・修正内容>
 219,234行目をそれぞれ下記の通り修正
  (元)  for pid in psutil.get_pid_list():
 (修正後) for pid in psutil.pids():

他にも、私が常用しているランチャーのlaunchyについて、ログイン直後は普通に使えるのに、しばらく時間が経つと使えなくなる(プロセスは生きているが、ショートカットを押してもウィンドウが表示されない)という不具合もありました。autostart回りを色々と整理した所、それなりにマシになったようではあるのですが、なくなったわけではないし、原因も今ひとつはっきりしません。なんとも気持ち悪いのです。何処かのプロセスがショートカットを横取りするのかと思うんですが、何故そうなるのやら。

他にも色々と。それらを一つ一つ潰す手間はかかりますが、それを一通り終えてからの使用感は非常に良いと思います。 余計な事をしていないからか、安定性は非常に高いですし、やはり軽いは正義です。

とまあ、総じてやはりそれなりに自分で設定やworkaroundが出来る人でないと使えそうな気がしない不親切な環境ではありますけれども、とにかくリソースの最適化をしたいという向きには必要十分ではあるのでしょう。いい環境なんですけどね。ともあれ、もうしばらく使ってみて、問題なければ他のPCも切替えてしまおうかと思った次第です。というわけで今回はこれでおしまい。

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