前職死去に伴う衆議院北海道5区の補選が終わりました。本選挙はこのところの政治を巡る諸々の変化を反映するものとして注目されていましたが、期待通りというか、やはりその結果は中々に興味深いものであったようです。
前提として、前職が大物議員だった事もあり、当然ながら地域の地盤面ではその後継者として擁立された与党候補が圧倒的に有利でした。ただ新人ではあるので、コア層以外の支持は得られておらず、とりわけ無党派層の動向に現状のマクロな情勢を反映する余地があり、その結果は現状の、特に夏の参院選についての指標になるものと言われていたわけです。
その変動に影響する要因としては、政策面では
・安保法施行、及び政権の改憲(9条廃止)推進姿勢の鮮明化
・TPP(特に北海道につき)の推進と大臣更迭に伴う頓挫
・経済指標の悪化及びマイナス金利等金融政策、
またそれに伴う運用難からの年金等社会保障の破綻懸念
・消費税増税
等、主に経済面の政策とその結果への賛否等の評価が挙げられ、政府・政党自体については、
・甘利前大臣を筆頭とした政府・与党側の不祥事とその自己弁護
・山尾衆院議員ら野党側の不祥事とその自己弁護
・民主党と維新の合併・共産党の選挙協力による批判受け皿の一本化
等、主たるものだけでも色々とあって、与党候補・野党候補への支持・不支持が差し引きどのようになるかは極めて読みづらい状態だったわけです。強いて言えば、金融政策への批判の程度が一番の争点であっただろうとは言えるでしょうか。
結果から言えば、僅差での与党側候補の勝利に終わりました。報道によれば、各党の支持層はほぼ崩れる事はなく、注目の無党派層は野党候補への支持が大勢を占めたようです。投票率は低くはなく、60%弱。この結果をどう解釈すべきか。
無党派層での与党への支持が明らかに少数だった点からすれば、政策等への批判は相当にあるものと言えるでしょうし、野党の選挙協力による受け皿一本化の効果も有意にあったものと見て良さそうです。ただ、そもそもここ数年で拡大していた与党と野党の支持基盤の規模の差を埋める程ではなかった、とそのように解釈し得るでしょう。
そのような傾向が他の地域にも通じると仮定すれば、都市圏等の流動性の高い地域では、野党候補が逆転する可能性は以前より高まっていると推測出来るだろうし、逆に流動性の低い地域では批判票は増えても及ばず、結局のところ与党側が勝利する傾向が強くなるものと予想されます。今回の北海道が農業セクターが強く、従ってTPP絡みで批判が強い地域であったにも関わらず与党側が勝利した点を重視すれば、流動的な部分での逆転の可能性は高まったとは言っても、平均的にはまださらに弱いと考えるべきかもしれません。総合すれば、以前ほど圧倒的ではないものの、全体的には与党側が優勢と考えるのが妥当なところでしょうか。
一言で言えば、批判は相当に強いけれども、野党は基本的な支持地盤自体が貧弱で過半の支持には大半の地域で届かない、と言えそうです。その要因は、無論民主党の政権時代の致命的な失敗が大元の原因だろう事は明らかです。また直近では、完全に黒と見做されている中、誰もが反感を覚えるだろう詭弁と強弁を弄し続ける山尾衆院議員を処分せず、それどころか今回の選挙戦も含め看板として晒し続けた事も相当に影響したでしょう。あれでは支持の獲得など期待しようもないところです。
言うまでもなく本番は次の参院選ですが、既に固定されたと言っていいだろう野党への不信・嫌悪はもはや回復不能と言うべき程であって、おそらく参院選までに野党側に打てる、この状況を改善し得る手立ては殆どないでしょう。ただ、批判票を集められるよう、障害を除いておく位がせいぜいです。といっても元々それが基本な筈なのですが、それが出来ていないからこその現状なわけです。少なくとも、山尾氏のような例を抱えている内は変わりようがないでしょう。せめてその辺位は処理して臨むのか、それともこのまま、そこそこ批判の受け皿になるに留まり玉砕するのか。どう転ぶにしても経済等の改善が期待出来るわけではないのですけれども、悪化を緩和する可能性はあるわけだし、せめて見える部分だけでも見苦しくないよう取り繕う位はして頂きたく願う次第なのです。
一方その陰で旧維新の大阪部門はひっそりと爆死しました。目的も組織も名前からしても大阪の地域内に特化した政党が、大阪の外で、しかも唯一の売りだった看板もなく、政党としての存在意義も既に乏しく、聞くに耐えない暴言を吐く所属議員だけが顔になっている現状を以って臨んだというのだから、むしろ当然の結果なんでしょうけど。というかそもそも何の勝算があって他所の選挙に出てきたのか謎です。協力関係を強める他の野党連とも競合し、足を引っ張る位しか出来ない事は明らかなのだから、潔く諦めた方が良さそうなものですけど、そんな空気を読む能力すらもうないのかもしれません。残念な話です。