戦闘機を偵察機に改修する120億円程の事業で、担当分の偵察機能部分、特に赤外線カメラ部分を期限までに開発出来ず、期限を超過しても納品出来なかったために、防衛庁から契約を解除されて、違約金も請求されたとか。これに対し、東芝は開発遅延が防衛庁の仕様変更によるものとして解除不当の確認及び費用等の請求を求める訴訟を起こしたそうで。
一般によくある類の紛争ですね。まず本契約は請負契約でしょうから、納品後でなければ報酬等の請求は出来ないところ、事実として期限後も納品していないのだから、防衛省には報酬支払い義務はないし、履行の催告は当然しているだろうから解除権も発生している筈で、さらに普通は期限厳守の旨も契約に入れますから、防衛庁のした契約解除及び損害賠償請求は、原則として共に法的に有効な筈です。
その一方で、東芝の主張するところの、その請負契約自体に注文者の指示による変更があった、との主張が真実であれば、ひっくり返ってしまうのもその通りです。とはいえ、あくまで例外的な事情によるものですから、その事実が司法的に立証されなければなりません。ですので、東芝がその旨を主張するなら、訴訟による他はないんですよね。
かように、双方にそれなりの言い分がある格好ではあります。ただ、この種の技術開発案件についての一般論から推測するに、それは本当に仕様変更と呼ぶべきものだったのか、怪しい気がするのがどうにも。というのも、今時偵察機で赤外線カメラを備えるなんて当たり前の話、米軍はじめ前例が山程あるわけで、枯れたとまでは行かずとも、機能、性能にはモデル的なものが当初からあった筈だし、開発期間の短さや予算額からも、世界初とかいうような、独自の新技術を開発する事が想定されていたとは到底考えられないのですよね。既存機の改修でこの機能を付加、性能は何々と同等で、とか位の話だった筈で。
後で防衛省が血迷って、世界最高のものでなければ意味が無い、やり直せ、とか言い出した可能性も無いではないんでしょうけれども、それよりも、赤外線カメラを用いた認識技術とかについては何かとその機能・性能や精度について詐欺的な話が横行する現状を鑑みるに、東芝の営業が、契約欲しさに、自動認識とかの機能やら精度やらについて、あれもこれも十分出来ます、的に無責任なレトリックを弄した結果、契約当初から納品物の認識に齟齬を生じさせた帰結である可能性の方が高いのでは、との疑念を抱かざるを得ないわけです。
いずれにせよ、現時点では推測に過ぎないんですけれども。詳しい事実関係も早晩明らかになるでしょうし、とりあえずは続報を待つとしましょう。現時点で明らかな事は、機能のレベル云々以前に、防衛省、また国内の防衛産業は、少なくない資金と時間を確保しておきながら、偵察機を作る事が出来なかった、という残念な事実だけです。そうである以上は、両者とも役立たずとの謗りを免れるものではないでしょう。挙句に責任の擦り合いとか、醜態を晒すのも大概にして頂きたいものです。
東芝、93億円支払い求め国提訴 戦闘機改修契約解除で