ようやく、というべきでしょうか。自動車部品メーカー大手のタカタが民事再生法の適用申請を行ない、破産しました。お騒がせ、と言うにはあまりにあまりだった同社を巡る一連の事案も、これで一応の一区切りです。というわけで少し思うところなど適当に。
同社製エアバッグの欠陥による死者の発覚から、ここに至るまでの経緯は周知の通り本当に酷いものでした。その規模の大きさ、被害の深刻さから、米国で早々に社会問題化し、官庁や議会が総出でした追求を受けてなお頑なに自身の責任を認めようとせず、その後も被害の生じるに任せて何ら自発的な対策を取ることすらなくとも恥じるところを全く見せなかった、あまりに無責任かつ非合理的で不可解なその態度は正しく見るに耐えないものという他無く、その態度から必然的に生じた米国社会との対立、それが決定的になった時点で、誰が見てももう詰んでいる、と言うところまで至ってから早数年。その間の事態の予想に違わぬ悪化ぶりからすれば、むしろあれだけ先行きの見込みも皆無な中、よくここまで延命させられたものだと、その意味では少しばかり感心せざるを得ないわけです。無論碌でもない話ではあるのですが。
未だその原因たるエアバッグのリコールすら完了の目処も立たない現状、同社が破産して債務の整理・清算がなされたからといって何が終わるわけでもないのですけれども、メーカーはじめ本件を通じて損害を被った向きには同社の資産をもって可能な範囲ながら賠償がなされるだろうし、それには十分ではなくとも一定の意味はあるものと言えるでしょう。逆に言えば、それすらタカタは怠ってきている、というより拒否してきたという話でもあるのですが。。。ともあれ、こうなった以上は、速やかにメーカー各社はタカタから賠償を取り、それを以ってユーザーへの補償等が速やかに拡充されるよう願いたいところです。あと、これで踏ん切りも付くでしょうから、他社品への切替えも進められるでしょうか。
ところで、もう終わった話だし瑣末な事でもあるのですが、、、下落を続けていた同社の株価が突然ストップ高になっていたそうですが、あれは何だったのでしょうね?ちょっと理解が及ばなくて困惑してしまいました。というのも、今回タカタが不可避とされ、この程申請された民事再生法、その適用は、言うまでもない話でしょうが要するに破産であって、同社が大幅な債務超過にある以上、株主資産もまた当然マイナスであり、株主責任の有限性により追加の徴収こそ無いものの債権者への清算後に株主に分配される残余財産は無く、株は文字通り紙屑にしかならない、というか今は振替なのでただの記録にしかならない事は明らかなわけです。それもすぐに。ですので、その取引価格がその直前に急上昇する、などという事は合理的に考えれば本来あり得ない話と言えるでしょう。
きっかけはメーカー各社が資金面の支援を行う、という報道がなされた事によるわけですが、この点から、幾つか仮説は立てられます。 例えば、圧倒的多数を占めていただろうショートポジションの向きが一斉に利確を図って一時的に需給が逼迫しただとか、あるいは、件の支援により再生法の申請を回避する可能性を生じさせたと、要するに単に勘違いした向きが多数出た、という仮説も成り立つでしょう。本当のところはよくわかりませんけれども、何はともあれ、理屈の通じない世界の出来事には違いなく、その意味では恐ろしい話です。やはりこの種の不安定な局面では、下手に市場に関わるべきではないですね。くわばらくわばら。
また、その原因たるメーカー各社の支援というのも、この局面での資金は当然回収される可能性はなく、従って通常回収を図る筈のところに逆にみすみす損失を追加する話ではあって、一義的には奇妙な話ではあります。メーカー各社とも、実際問題として同社の部品を使用している以上、今供給が途絶えられると困る、という面はあるのでしょうけれども、それにしても近年は冷酷とも言える程にドライな関係にある事が多い下請けとの関係にあって、異様とも言える厚遇ぶりには、やはり違和感を感じずにはいられないのです。どういう事なんでしょうね?これから始まる切り売りの中で美味しいところを持って行くための準備とかそういう事でしょうか?まあ、本件の処理に使える資金が増えるのは社会的には歓迎すべき事ではあるのだろうし、そんな思惑は放っておけばいい話なのかもしれませんが、どうにも気持ち悪いですね。
ともあれ、色々と腑に落ちない本件もようやくこれから本番です。何もかもが一筋縄ではいかないだろう事は明らかですが、さてどうなることやら。
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