ここ数年、毎年のようにGMはじめ大手自動車メーカー不正等が明るみになって訴訟その他の大問題になっている米国で、今度はVolkswagenが摘発されたそうです。
容疑はディーゼル車の排気ガス環境規制適合試験における不正。具体的には、ECUに試験時にのみ動作する制御プログラムを仕込み、排気ガス中の有害物質含有量を本来のすなわち通常運転時の制御プログラムによる走行時と比較して遥かに小さく見せかけていた、というものです。通常時だと規制基準の数十倍超過だとかいうのだから酷い話です。試験用プログラムに一本化すれば今回の問題は生じなかったんでしょうけれども、そうしなかったという事は、多分に試験用プログラムでは燃費の悪化や急激な変化に対応出来ない等、実際の運転時には許容し得ない問題があるのでしょう。
ともあれこれに伴い、当然ながらリコール命令も出されています。如何に問題があろうとも試験時の設定すなわち排気ガス制御モードで走行するよう改修が強制される、というわけで。対象は2009年から現在までに製造され、米国で販売されたVWとAudiの自動車約50万台。米国では非主流のディーゼル車のみとはいえ、販売台数世界一を争うメーカーの主力カテゴリーを直撃したにしては意外と少ない気がしなくもありませんが、それでも大した数ですね。元々VWは米国でのシェア獲得には長年苦労していて、直近でもトヨタの数分の一に過ぎない事が台数の少なさに繋がったのでしょうけれども、逆にそのシェア拡大への焦りが本件のような不正に走った原因と推測されますし、結局の所とても残念な話、と言うべきなのでしょう。
しかしこれ、米国で規制基準違反だった、というだけでは済まない筈なわけで。というのも、問題のディーゼル車自体、欧州等では言わずと知れた主力製品なのであって、しかも長年この環境性能を売りにして普及させて来たところ、それが虚偽であったものと疑われる、その影響が小さい等という事は有り得ないのです。これから欧州でも調査・追試が行われるでしょうし、その結果次第ということになりますが、その如何によっては欧州の環境規制自体が事実上虚偽だったという事になり、そのものが崩壊しかねず、控えめに言っても大混乱です。無論、VWに対する信用や製品の競争力等、あらゆる企業体力面での悪影響も半端ではないでしょうから、経済的にも大打撃必至でしょうし。
さらに、本件の発覚した経緯を鑑みれば、本件類似の調査が展開されるのはこれから。すなわち他社へも波及するでしょうし、これからこの種の試験用モードの仕込みに対する摘発も排気ガス規制以外の燃費や衝突防止機能等、広く試験一般に対して実施される事になるでしょうから、その種の不正に依存していたメーカーや部門は文字通り崩壊・壊滅の危機に叩き込まれる可能性があるわけです。
電子制御が一般に普及し、ECUのリコールも頻発する昨今、このような不正が現れる事も当然に予想されたところではありますが、実際に目の当たりにして、しかもそれがこれほど悪質とあってはやはり失望せざるを得ません。ユーザに対しては完全に詐欺なわけですから、その倍賞請求もされて然るべきところですしその額は半端では済まない筈なわけですが、メーカーにしてみればその愚行の報いを受けるだけの事です。ただ、社会・経済に対する影響もまた小さくないわけで、これにどう始末を付けるのでしょうか。もっとも、不正をしていなかったメーカーにはシェア獲得の絶好機到来とも言えるだろうし、全体的に見れば不正一掃のいい機会と見るべきなのかもとも思うわけですが。。。やれやれです。
VW Is Said to Cheat on Diesel Emissions; U.S. Orders Big Recall
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