オンライン決済のトランザクションを偽装するアプリを用いた電子書籍データ等の詐取が初めて摘発されたとか。容疑は電子計算機使用詐欺、被害者は紀伊國屋書店、容疑者は狩野貴仁と菊沢秀和の2名。今回使用されたアプリはiOS用のiAP CrackerもしくはiAP Free、と。
いや、信じられません。何がって、直接サーバにアクセスすれば当然そのアクセスログから簡単に足がつくし、しかも決済を偽装した詐取なんて悪質性も甚だしく見逃される余地もない犯罪、例えて言えば窃盗犯が名刺を残していくに等しい不合理さなわけで、そんな行為を平然と行う人が存在するという事実が。しかしちょっと調べてみると当該決済偽装アプリは他のSNSゲーム等も複数対応していて、それも含めると利用者は相当多数になるんだそうで。既にモラル云々とかいう段階の話ですらなく、犯罪をそうと認識していないとしか思えない、狂気と言っても過言ではなかろう異常性の蔓延に戦慄を禁じ得ません。今回の容疑者の年齢は30代と40代で共に成人、未熟ゆえの出来心というような言い訳も成立しないし、一体どうなってしまっているんでしょう。
一応、個々のユーザがアプリ一個導入するだけで簡単に欺けてしまう決済プロセスというのもそれはそれであまりに杜撰には違いなく、販売者側もその点は若干の批判を免れないでしょうけれども、それは詐取の違法性を減じるものではないし、利用者達が何を以ってその犯罪行為を正当化しているのか、不正と知りつつもその行為を為さしめるのか、あるいは単に有料物を無料で入手出来る事実を前にして理性自体を放棄したのか。いずれにせよその動機は不可解で、結果は残念な限りです。
しかし現実として同様の犯罪行為に手を染めてしまった人は多数に上る筈で、その弁解の余地もない悪質性に加え、その大半は本件同様に容易に特定される以上、司法の側としても見て見ぬふりをするわけにもいかないし、結局のところ原則として全員が検挙されざるを得ないものと思われるわけですけれども。そうであれば、まず人数的に前代未聞の逮捕者が出るものと予想されるわけですが、しかしやはりそのあまりの人数を考えれば通常の処理では捌ききれない可能性も高いでしょうから、実際の所どう処理されるのか、集団検挙に対応する特例的な仕組みを導入しあくまで法の執行を図るのか、あるいは法を曲げてその不正を放置する怠慢に甘んじるのか。極めて強く興味を惹かれるところなのです。
不正決済アプリ初摘発、警視庁が2人逮捕 電子書籍詐取の疑い
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やはり本件の他100名あまりの容疑者は既に特定済み、順次立件予定とのことで。犯行の時期が昨年6月~11月、半年以上経った今になってというのはその辺の準備に時間がかかっていたという事でしょうか。であれば以降は機械的に進むんでしょうけれども、しかし100人そこそこの小規模ですらこれほどの時間がかかるというのでは、他のサイト、サービスにおける同種犯行の摘発も考えるとやはり従来のプロセスによる逐次処理には相当無理がありそうに思われるところです。折しもサイバー犯罪対応の横断部門も立ち上がったところだし、その機能や存在意義を確認するいい機会、となるかどうか。さて。
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二ヶ月以上経ってようやく3人目、会社役員川上征人容疑者の起訴。この調子だと、全員終わるまでどれだけかかるのやら。
電子書籍詐取で会社役員を起訴、東京地検