4/05/2015

[note] 故障した掛時計を分解修理

知人所有のとある掛時計、これもう10年以上前から使ってたものの、最近突然調子が悪くなってしまったという事だそうで、ダメ元で修理を試みて欲しいと依頼を受けたのです。具体的な症状は、単純に遅延が酷いというもの。針の進みが本来の5分の1も進まず、使い物にならないという事でした。

というわけで早速作業開始。なんか蜘蛛の死骸とか出て来て驚きつつ、早速ムーブメントを取り出してみると、どうも贈答向けの比較的特種な製品らしく、振り子とか音楽演奏機能とかと連携するための配線なんかもあって特種な型でした。これだと交換部品なんて手に入らないだろうし、ギヤとかが破損してたら実質修理不能になるだろうなと思いつつ開けてみると、意外にというか個々の部品は特に破損はしていませんでした。



なので、とりあえず潤滑用にシリコン系の潤滑剤を吹いてみます。


そして組み直し、蓋を閉める前に電池を入れてみると、なんか磁石コマ(上図中央の部品、スプレー先に納まる)の回転が不規則になっていました。一秒毎に半回転する筈が、時々回り切らなかったりするんですね。回る場合もトルク不足でギヤがついて来なかったり。これが原因か、というわけで、ここからコマの刺さり具合とか、コイル端子との位置関係とか微調整する事しばし、最終的にコイル端子と繋がる、コマを囲む形の金属端子の上下位置が若干斜めにズレていた事だったようで、それを直してやるととりあえず規則的に回るようになった様子につき、これで動かしてみる事にします。実際には蓋を閉じる時にギヤの軸を蓋の窪みに嵌める必要があるところ、これが中々上手く本来の位置に嵌らず何度もやり直すハメになったのですが、試行錯誤の末に一応クリア。


これで戻すと、果たしてカチコチとギヤが回る音も規則的になり、長針短針共に概ね正確に動くようになったのです。念の為時刻合わせをして一日程試運転してみましたが、ズレ等の問題もなし。枯れ切った機構につきその度合いはたかが知れてるとはいえ、精密機器の修理は色々と気を使わなければならず疲れましたが、成功すれば全てよし。お疲れ様でした。

ちなみに、修理の過程で、ダメ元で部品交換に使えないかと思って100均で掛時計を買ってきて分解したりもしてみました。結論としては使えなかったんですけれども、一応下記にその時の様子を載せておきます。

購入したのはこんなの。直径10数センチ程度の小さいものですが、ムーブメントのサイズは同じです。


これを分解して、



ムーブメントの蓋を開けたところが下図。部品の構成はほぼ同じですが、時報用の外部端子が無かったり、修理した時計と比べると直径が小さいためか、コマやコイルをはじめ個々の部品が小さくなっています。当然磁石も。なので残念ながら交換は断念。なお、半回転を繰り返すタイプと言うことは、それに伴ってカチカチと音がするわけで、従って最近の製品では標準的になっている連続秒針タイプとはそもそも機構面で互換性がありません。電波時計なら尚更でしょうか。いずれにせよ、この手のムーブメントの部品を流用した修理というのは一般に困難なものと言えそうです。残念ながら。


まあ、今回は部品の交換はせずとも修理出来たので結果としては問題なかったし、とりあえず喜んでおきますかね。というわけで今回はこれでおしまい。