とうとう?ようやく?それとも今更?富士通が携帯事業を売却して撤退する方針を決定したんだそうです。
やはり今更、というのが適切なのでしょうか。もとより海外では試みはしたものの殆ど販路を開拓出来ず、スケール面では年300万台がせいぜい、競合するApple、Samsungら大手の10分の1にも遥かに及ばない同事業に競争力などあろうはずもなく、少なくともここ数年、ただドコモを中心とした国内キャリアの保護の下、延命されていたに過ぎない事は誰が見ても明らかだったのですから。
らくらくホンを世に送り出した点は評価されてしかるべきでしょうが、それは過去の遺産と呼ぶべきもの、スマートホンへとカテゴリ自体が移行するに伴い、また新たにその市場に適した製品を生み出す必要があったわけです。
しかし同社は、そのキャリアの特別な保護に胡座をかき、生き残るために必須であるところの製品の品質向上や新機軸を開拓する、どころか逆に障害を連発、発売日の全回収等といった信じ難い失態までも演じて、多くの人に甚大な被害をもたらしもしました。火傷しかねない程発熱してフリーズを頻発する機種もあり、それによる動作不良を仕様と言い張り、携帯カイロ等と揶揄された事も、忘れられないという人は多いでしょう。
度重なる失態によって、コンシューマ向け製品としては通常なら致命的だろう程に高まった不評にも関わらず、キャリアが買い上げる事業構造と、その筆頭たるドコモが保護を続けた事により、同事業は利益は落としつつも存続が許されました。が、それもiPhoneの優先販売契約をドコモがAppleと結び、それに伴って富士通を含む既存他社の機種を販売奨励対象から外し、その保護自体が大きく崩れ、その下がりきった素の製品の競争力が表に出るようになるに及んで、早晩の撤退は避けられないだろう、と誰もが予想するところとなっていたわけです。結局のところ、市場や消費者を軽んじ、適応を怠り続けたツケが回ってきたと言うべき、当然の結果と言えるでしょう。
加えて、同社が事業をリストラする場合、大抵事前に本体からの切り離しが行われるのが通例ですから、分社化された時点で、売却が近々行われる事は客観的にも明らかになっていました。ただ、同時に分社化されたところのPC事業が、Lenovoへの売却が報じられて以来停滞していて、携帯の方が先に片付きそうな雰囲気なのは少し意外な気もしますが。PCの方が事業期間も長いし、社内的には政治力が高かったりするとかそういう事なんでしょうか?傍から見れば大差ないように見えもしますが、それも遅かれ早かれ、行き着く先は同じでしょうし、あまり気にしても意味はないのかもしれません。
しかし、何処が買うんでしょうね?というか、買い手は付くんでしょうか。大手からすれば、独自性もない周回遅れの技術に、あまりに小さい生産能力、加えて国内特化で使い勝手のよくない技術者、と殆どメリットは無いような気もしますし。ファンドが転売目的で手を出す可能性がある、との見方もありますが、しかし転売なんて出来るのか?と。国内向けローカライズ要員としてならあり、でしょうか?だとしてもその分の価値なんて知れたものだろうし、相当に買い叩かれそうですね。FreetelのようなMVNO系の日本向けSIMフリー端末の供給、とかでなら需要もあるんでしょうか。でもそれにしてはコストがねえ。。。うーん。
ユーザの立場から見ると、Arrowsはどうでもいいとして、らくらくホンはどうなるのか、シニア中心に気になる人は結構いそうです。もっとも、(SIMフリー端末を除いて)ユーザの相手はあくまでキャリアであって、端末メーカーがどうなろうと、既存のユーザはキャリアに保証されますし、将来の選択肢が減るだけなのだから、実質的にはさほど問題が顕在化する可能性は高くないのかもしれませんけど。何にせよ、お疲れ様です。
富士通、携帯事業売却へ=来月にも入札
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