8/29/2017

[PC note] 今更ながらのApollo lakeが意外といい感じ

とても今更かつ需要なさげな感じの話なのですが、先日Apollo lakeオンボのマザーでサーバーを新しく立てまして。その際に性能の計測等をしたのでメモ。

殆どの方には言うまでもない事でしょうけれども、Apollo lakeは要するにAtom系列のIntel製省電力SoCです。Atomは、基本的に省電力性を最優先として処理性能はばっさり切り捨てる設計となっていて、使いどころの難しい代物である事も周知の通りです。かつて、D5xx系等に省電力PCの決定版としての期待を抱き、しかしそのあまりの能力の低さに落胆した人も多いでしょう。

演算性能もメモリ帯域もキャッシュも、何もかもを犠牲にして消費電力の削減に特化していたAtomは、当然ながらモバイル分野で一定のポジションを維持し続けました。しかしそれすらも現在ではARMアーキに押されて斜陽となり、****-Trailと名付けられていた超省電力なタブレット等のモバイル端末向けのシリーズの開発は中止、デスクトップ(とノート)用、IoTの組み込み向け、あとサーバ向け等の限定されたラインのみが存続している状態にあります。

で、その追い詰められつつもかろうじて残っているラインの一つであるところのデスクトップ向け、その現行品がApollo lakeです。別に新しいものではなく、既にリリースからおよそ1年も経過しているものですが、その割にはお世辞にも普及したとはいい難く、一般にはむしろ前世代のBraswellの方が遥かに多く流通していて、さらに次世代のGemini Lakeが投入されると言われる2018年も近づく中、殆ど忘れられた世代になりつつあるのですね。

そんな影の薄いApollo lakeですが、各所でのベンチを見る限り、実は性能面では飛躍的に進歩しているようで。とりわけシングルスレッドの演算性能の向上は目を見張るべきものがあります。初期のIn-order型世代との比較では実に数倍、Out-of-order型に変更された後の世代、例えば前世代のBraswellとの比較ですら数割程度も向上しているのです。この点、キャッシュ容量等の数値上のスペックはBraswellとほぼ同じなので、基本的なアーキテクチャの変更、すなわち14nmプロセス採用によるシュリンクで得た分の余裕を拡張に回す事によって実現している、という事なのでしょうけれども、だとするとその開発には相当な労力がかかっていそうで、そのプレゼンスの無さにはいかにも不釣り合いな感じもします。尻に火がついた開発チームが頑張ったのでしょうか。消費電力は流石に増加していて、クアッドコアモデルでTDPが6Wから10Wになっていますが、絶対値としてはさほど問題になる程のものではないでしょう。というわけで、問題ないレベルのレスポンスが得られる省電力サーバを構築出来るのでは、と期待して、手を出してみる事にしたわけです。

具体的なSoCの選択に際しては、殆ど悩む必要はなかった、というかその余地がありませんでした。というのも、まずサーバーとしての処理性能を考えると必然的にクアッドコアが対象になるのですが、この時点でJ4205とJ3455のいずれかを積んだマザーしかありません。N系はノートPCのみ採用のようです。そして、サーバ用途につき後々のために拡張スロットを複数備えているものが望ましいわけで、そうなるともう国内で流通しているものはJ3455を積んだASUSのJ3455M-Eだけしかないのです。(海外ではASRock製のJ3455Mも流通しているようですが、入手が面倒なので外れます。)これを適当なMicro-ATXのケースに突っ込み、とりあえず2.5inchのHDDとメモリ(DDR3-12800、デュアルチャネル)を積んだだけのシンプルな構成で試してみる事にしました。OSはlinux(ubuntu17.04server)で、小規模なLAMP環境やDNS等、一般的なサーバーをセットアップした他、LXDE等のローカルの環境も入れてあります。

実際に諸々の作業をしてみた感触やWEBサーバ等へアクセスした際のレスポンスも悪くありませんが、一応は確認しておこう、という事でベンチマークを計測してみました。結論から言えば概ね良好。十分なパフォーマンスがあると言えるだろう結果になったのです。詳細は下記。

使用したベンチマークツールは、unixbenchです。基本的なところが分かればそれでいいということで。その結果(の抜粋)が次の表になります。表が2つありますが、そのうち1つ目の表はシングルスレッド、2つ目はマルチスレッド(4スレッド)の結果です。比較対象として、Core i3-2100T(2.5Ghz、2C4T)のLinux PCでの計測結果も並べました。なおi3-2100TのPCは、メモリの規格がDDR3-10600と若干落ちるものになっています。とはいえ、大半の処理はCPU内部が中心になりますから、その影響は大きなものではないかもしれません。

表中の各項目は、上から順に次のような点を評価しています。表の各項目中、[J3455]と[i3 2100T]の列がそれぞれのPCでの値で、最後の列はその比(J3455の結果をi3 2100Tの結果で割ったもの)になります。なお、最後の[System Benchmarks Index Score]は総合スコアですが、これはプロセッサの性能にあまり左右されない、HDD等へのファイルアクセス処理のスピードが加味されたものになっているため、参考程度と考えるべきでしょう。というわけで、結果をどうぞ。

[ベンチマーク結果]

・Dhrystone 2... 整数演算性能
・Double-Precision... 浮動小数点演算性能
・Execl... システムコール呼び出しの速さ
・Pipe Throughput: CPU内キャッシュのデータパイプ処理性能
・Pipe-based...: プロセス間通信の処理速度
・Process Creation: プロセス生成速度
・Shell Scripts(1...: sort, grep等のテキスト処理性能
・Shell Scripts(8...: 上記の並列処理性能(8並列)
・System Call...: システムコールの処理効率
・System Benchmarks Index...: 総合スコア

1 Parallel processesJ3455i3 2100TJ3455/2100T
Dhrystone 2 using register variables1669.12343.50.71
Double-Precision Whetstone595.4656.60.91
Execl Throughput610.71004.30.61
Pipe Throughput843.81326.20.64
Pipe-based Context Switching393.1381.61.03
Process Creation349.3972.30.36
Shell Scripts (1 concurrent)1019.42214.50.46
Shell Scripts (8 concurrent)2883.63755.90.77
System Call Overhead1198.82165.40.55
System Benchmarks Index Score969.31512.70.64

4 Parallel processesJ3455i3 2100TJ3455/2100T
Dhrystone 2 using register variables6389.65441.71.17
Double-Precision Whetstone2279.12178.71.05
Execl Throughput1769.52218.30.80
Pipe Throughput3221.62885.41.12
Pipe-based Context Switching1495.91710.20.87
Process Creation2102.122150.95
Shell Scripts (1 concurrent)3388.44185.90.81
Shell Scripts (8 concurrent)3270.94147.50.79
System Call Overhead3532.85121.20.69
System Benchmarks Index Score24182839.10.85

シングルスレッドの性能でも、Sandy世代のi3と比較して少なくとも6割以上の性能はある事が見て取れます。単純な計算処理については7割を超えています。さらに並列処理時の総合的なパフォーマンスでは、8割を超える性能がある事が見て取れます。i3は2コア+HTTなのに対し、J3455は4コアですから、並列処理で有利になる事は当然といえば当然ではありますが、内部的な処理については概ね互角、場合によってはそれ以上と言えるでしょう。大抵の用途で置き換えも可能なレベルです。

加えて、消費電力は通常時で19W、高負荷時で25W位です。i3-2100Tは省電力版(TDP35W)ですが、それとの比較ですら殆どの状況で半分以下。ワットパフォーマンスは極めて優秀と言ってよいでしょう。

総じて、その影の薄さ、存在感の無さにそぐわない性能の高さです。いいですねこれ。後は耐久性ですが、発熱が小さいというのはそれだけで耐久面では有利に働くもの、大いに期待出来そうで喜ばしい限りです。

[注意点について]

かようにポジティブなApollo lakeですが、注意すべき点もあります。何かと言うと、Apollo lakeはその仕様上、使用可能なメモリに制限があるのです。具体的には、現状市販のマザーは全てDDR3(DDR3L)のみの対応ですが、DDR3規格の内、DIMM一枚当たりの容量が2GB以下のメモリは殆どが使用不可で、4GBのメモリは、基本的に1rankのもののみ対応で、2rankは原則不可となっています。8GBは特に制限なし。

ここで4GBの場合に問題になるrankというのは、メモリの密度的なものです。現行のメモリは64bitを単位としてデータの送受信をするのですが、それがモジュール上に1系統だけあるものが1rank、2系統あるものが2rankとなっています。メモリ上のブロック数と言ってもいいでしょうか。これが複数あると、複数を制御しなければならない分、手間がかかるので、当然コントローラは対応していなければならないし、速度が落ちる場合もあって、不利になる、すなわちランクが落ちるというわけです。最近だとRyzenでメモリのRank毎に速度が違うという話がありましたが、Apollo lakeではその影響がもっとドラスティックで、ユーザを困らせるものになっている、という事です。

というわけで、4GBのメモリを使用する場合、その調達に際してはあらかじめRankを識別しなければならない、のですが、これが大変です。各メモリのRankは、メモリ上のラベルに記載がある場合もあるし、メーカーの仕様で明記されている場合もありますが、確認出来ない場合も多々あって困るわけです。少なくとも4GBのDIMMで、片面実装(片側のみに8枚のチップが乗っている)ものであれば確実に1rankなのですが、そもそも片面実装かどうかを事前に確認する事が難しい場合も多いでしょう。

しかも、全ての2rank(4GB)や2GBのメモリが使用不可かというとそうではないというのがまた。メーカーの公表している適合表中には、2GBのメモリも少ないながら記載があります。また、手持ちのメモリを幾つか試してみたところ、2rankの4GBメモリ(両面実装で、モジュール上のラベルに2rankとの記載もある)も認識しました。かと思えば、2GBのものは2種類試してみるも両方アウト。一体どういう事なのだろう。。。こういう曖昧な仕様はいけませんね。メーカーの適合表も市販品を網羅しているわけではないのですし、多くのメモリで互換性があるのかどうか試してみるまでわからない、というのは困ります。新規にメモリも調達する時はさほど問題ではないでしょうけれども、この種のオンボードの省電力マザーは余ったメモリの再利用先としてよく使われるものだろうし、それが結局再利用出来ずメモリを買い足す羽目になったりすれば、誰でも遺憾に思うところでしょう。困ったものです。

ともあれ、その辺りを回避し得て稼働している限り、優秀なチップである事は間違いありません。私は使いませんが、グラフィック周りも高い性能を示しているそうですし、このラインが今後とも継続・発展を続けるよう願いたいところですね。というわけで、今回はこれでおしまい。

8/25/2017

[biz] 富士通が携帯事業から撤退

とうとう?ようやく?それとも今更?富士通が携帯事業を売却して撤退する方針を決定したんだそうです。

やはり今更、というのが適切なのでしょうか。もとより海外では試みはしたものの殆ど販路を開拓出来ず、スケール面では年300万台がせいぜい、競合するApple、Samsungら大手の10分の1にも遥かに及ばない同事業に競争力などあろうはずもなく、少なくともここ数年、ただドコモを中心とした国内キャリアの保護の下、延命されていたに過ぎない事は誰が見ても明らかだったのですから。

らくらくホンを世に送り出した点は評価されてしかるべきでしょうが、それは過去の遺産と呼ぶべきもの、スマートホンへとカテゴリ自体が移行するに伴い、また新たにその市場に適した製品を生み出す必要があったわけです。

しかし同社は、そのキャリアの特別な保護に胡座をかき、生き残るために必須であるところの製品の品質向上や新機軸を開拓する、どころか逆に障害を連発、発売日の全回収等といった信じ難い失態までも演じて、多くの人に甚大な被害をもたらしもしました。火傷しかねない程発熱してフリーズを頻発する機種もあり、それによる動作不良を仕様と言い張り、携帯カイロ等と揶揄された事も、忘れられないという人は多いでしょう。

度重なる失態によって、コンシューマ向け製品としては通常なら致命的だろう程に高まった不評にも関わらず、キャリアが買い上げる事業構造と、その筆頭たるドコモが保護を続けた事により、同事業は利益は落としつつも存続が許されました。が、それもiPhoneの優先販売契約をドコモがAppleと結び、それに伴って富士通を含む既存他社の機種を販売奨励対象から外し、その保護自体が大きく崩れ、その下がりきった素の製品の競争力が表に出るようになるに及んで、早晩の撤退は避けられないだろう、と誰もが予想するところとなっていたわけです。結局のところ、市場や消費者を軽んじ、適応を怠り続けたツケが回ってきたと言うべき、当然の結果と言えるでしょう。

加えて、同社が事業をリストラする場合、大抵事前に本体からの切り離しが行われるのが通例ですから、分社化された時点で、売却が近々行われる事は客観的にも明らかになっていました。ただ、同時に分社化されたところのPC事業が、Lenovoへの売却が報じられて以来停滞していて、携帯の方が先に片付きそうな雰囲気なのは少し意外な気もしますが。PCの方が事業期間も長いし、社内的には政治力が高かったりするとかそういう事なんでしょうか?傍から見れば大差ないように見えもしますが、それも遅かれ早かれ、行き着く先は同じでしょうし、あまり気にしても意味はないのかもしれません。

しかし、何処が買うんでしょうね?というか、買い手は付くんでしょうか。大手からすれば、独自性もない周回遅れの技術に、あまりに小さい生産能力、加えて国内特化で使い勝手のよくない技術者、と殆どメリットは無いような気もしますし。ファンドが転売目的で手を出す可能性がある、との見方もありますが、しかし転売なんて出来るのか?と。国内向けローカライズ要員としてならあり、でしょうか?だとしてもその分の価値なんて知れたものだろうし、相当に買い叩かれそうですね。FreetelのようなMVNO系の日本向けSIMフリー端末の供給、とかでなら需要もあるんでしょうか。でもそれにしてはコストがねえ。。。うーん。

ユーザの立場から見ると、Arrowsはどうでもいいとして、らくらくホンはどうなるのか、シニア中心に気になる人は結構いそうです。もっとも、(SIMフリー端末を除いて)ユーザの相手はあくまでキャリアであって、端末メーカーがどうなろうと、既存のユーザはキャリアに保証されますし、将来の選択肢が減るだけなのだから、実質的にはさほど問題が顕在化する可能性は高くないのかもしれませんけど。何にせよ、お疲れ様です。

富士通、携帯事業売却へ=来月にも入札

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8/09/2017

[note] USB-LANアダプタ購入

ちょっとファイアウォール等のサーバをセットアップする事になりまして。テスト用等に余っているノートPCを使おうと思い、LANポートの追加のためにUSB接続のイーサネットアダプタを購入してみました。

ほぼテスト用なので、一番安く単純なものでいいかな、と輸入したアダプタは、何の変哲もない、長細い筐体にポートが一つにちょろっとUSBケーブルが出ているだけの代物です。転送速度は100Mbps。いつもの如くebay経由で送料込み$1.42、約150円という文字通りの超安物。国内で出回っている類似の製品は、メーカーの正規品だと何か1000円以上はするようで、毎度のようなのですが酷いボッタクリぶりに眉を顰めたりもしたわけです。と、それはともかく。

パッケージ等はなし。クッション封筒に下図のような感じでドライバのCD-Rと同梱されています。型番?は、HLF1081A、No:9700となっています。普通に読めば、9700というのはシリアル番号にあたるものと読めるところなのですが、これも型番の一部っぽいのですね。理由は後述。


CD-Rが全く保護されず剥き出しで同梱されているのにはさすがにどうかと眉を顰めつつ、取り出します。


とりあえずPCにつないでみます。Linux(ubuntu17.04)ではあっさり認識。ですが、windowsでは標準ではドライバが入っていないようで、そのままでは使えません。XPとWin10の両方でアウトだったので、多分他のバージョンでも駄目でしょう。ということで、CD-Rの出番です。

なのですが・・・まずCD-Rが結構汚れていて、掃除をしなければ読み取る事が出来ませんでした。さらに、その中には[RTL8152]と[USB.LAN,RD9700Driver]という2つのフォルダがあって、まず[RTL8152]-[xp]の下にあるsetup.exeからドライバを入れたのですが、これはハズレです。[RTL8152]のフォルダは何のために入っているのだろう、まさか罠?と訝しみつつ、[USB.LAN,RD9700Driver]の下にある、[XP-WIN8-32](32bitの場合)か[winXP-WIN8-64]の中のRD9700.infを手動で当ててやる必要があったのでした。手動でドライバを当てる方法は通常通りなので割愛しますが、しかるのちに再起動すれば認識。inf等に記載されているところからすると、RD9700が正式型番という事なんでしょうか。紛らわしいです。

ちなみに、サブフォルダには、WINCE用、MAC用、Linux用と各OS用のフォルダもあり、何とandroid用もあります。ただ、android用はビルド用のソースコードがMakefile付で入っているだけなので、普通のユーザには使いようがないでしょうね。開発者向けである事は明らかですが、その開発者にしてもぶっちゃけこれ使う人いるんだろうか。。。何気にandroid用のドライバのソースコードって珍しいし、むしろその意味で興味を惹かれる人もいるんでしょうけど、大多数のユーザにとっては紛らわしいだけでしょうね。マニュアルもReadme.txtすらないのですし。

ともあれ、挙動、機能面は特に問題なし。 普通に通信出来ます。ただ気になったのは、これ光るんです。いや、LANアダプタにLEDランプがついている事自体は普通なのですが、本機の場合はLEDが機体の内部に埋め込まれ、本体自体を発光させる仕様になっているんです。具体的には下図のような感じです。


光り過ぎです。私はLANアダプタを調達したのであって、間違ってもランプの機能なんて求めていないのです。当然トラフィックに応じて点滅するわけで、なおさら嫌でも目に入ります。が、常時通信状態をこれでチェックしようなんて人は皆無でしょうし、意味がわかりません。むしろ嫌がらせなのかとすら思うわけです。無駄に長い筐体だと思ったら、このためという事なんでしょうか。それとも逆で、無駄に長くなってしまった筐体を有効活用しようとした結果なんでしょうか。いずれにせよ、ここまで派手に光られると、率直に言って目障りです。まあ、派手なだけで、発熱は殆ど感じられませんから、適当に何か被せて隠しておけばそれで済む話なんでしょうけど、何考えてこんな仕様にしたのかちょっと開発者を問い詰めたい気分になってしまったのでした。ともあれ、それほど常用する予定でもないし、動いたのでよしとしましょう。というわけで今回はこれでおしまい。

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8/07/2017

[pol] 何がどうして"日本"ファーストの会なんて名前にしたのだろう

いたるところで噂されていた通り、東京都の地域政党であるところの都民ファーストの会が国政に進出すべく全国版の政党を立ち上げたそうです。その名も「日本ファーストの会」・・・。

はい、完全に維新の二番煎じです。もしかしたら、と誰もが考えた名前ではあるんでしょうけど、まさか何のひねりもなくその選択をするとは驚きました。勿論悪い意味で。

悪い、との印象を受けるのには、大きく分けて2つ原因があるように思います。一つは、既に期待はずれの失敗に終わったところの、維新の会による地域政党からの国政改革を目指す試みの、そのさらに二番煎じにつき、失敗を前提にしているような、非常にネガティブかつ安っぽいイメージを連想させる点です。只でさえ二番煎じは劣化版的な印象を与えるのに、パクリ元からしてお世辞にも良いイメージも実績もない、というのだから、どういう意図でその名前を選んだのか、ちょっと正気を疑わざるを得ません。やる気ないんでしょうか。

もう一つは、その名前の帯びる意味合いです。まず、元々の"都民ファースト"は、若干の安直さや建前感は否定し難いものの、政党や一部の業界の利益ではなく"都民"、すなわち広く住民や市民の権利、利益を最優先にする、というポリシーを簡潔に表現出来ており、民主主義の理念に沿う名前としてポジティブに評価され得るものでした。これに対して"日本"ファーストでは、最優先にされるのは"日本"、すなわち国家であって、都民とはまさに真逆の、右翼団体の如きナショナリズム優先主義的な意味合いに解すべき表現になっているわけです。同じ意味合いの国政版、というなら、その範囲のみを変えて"国民"ファースト、とでもするべきところだったでしょう。まあ、それだと民主党等と殆ど同じになるだけなわけですけれども。また、"日本"を国際社会における文脈で捉えるならば、世界的な調和、国際協調等を軽視し、自国の利益を最優先にするという、エゴイスティックなポリシーをも意味する表現にもなってしまっています。排外的、とも言えるでしょうか。良い印象など感じようもありません。

政党の名前、それも新規に立ち上げようとするものの名前、その印象や読み取りうる意味合いが重要である事は言うまでもありません。まさか意図したわけではないんでしょうけれども、意図があろうとなかろうと、特に穿った見方をせずともそう読めてしまう、というのは致命的です。安直さ、安易さといったネガティブな性質も感じさせますし。無論、どのような名前にしようと、それが違法でない限りは当事者の勝手ではあるわけですし、第三者がとやかく言う話ではないのですが、落胆に終わった第三極ブームの過ぎし後、久々に追加されるだろう国政における選択肢がこれ、というのは、一有権者として落胆を禁じ得ないのです。

そもそも母体となるべき都民ファースト自体、実質小池都知事と若狭議員との2人しか公には対応出来る者がおらず、残りは不安があるからと殆ど雲隠れしているような状態なのだし、加えてよりによって無残な失敗に終わった維新を真似て作られる政党なわけです。どうやってこれに期待しろと言うのでしょうか。都知事個人に一定以上の人気、期待がある事は疑いようのないところですが、都知事の職を放り出さない限り、国政への関与には自ずから限度があります。小池都知事のシンパの一人に過ぎない若狭議員一人にその全てを担えるとは到底考えられません。国政で都議のメンバーの如く箝口令を敷く事など出来よう筈もないし、どうするつもりなんでしょうね?維新や民進からいくらか引き抜いたとして、どうにかなるとも思えませんけれども、さて。

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8/01/2017

[pol] もはや理解不能、混沌極まる米政府人事

いや、何がどうなっているのやら、もうわけわかんないですね。

無論、Donald Trumpの合衆国大統領としてする振る舞いの殆どが支離滅裂かつわけのわからないものであり、国内外の大多数からの非難を免れないものでもあった事は今更言うまでもないところなのです。

しかし、こと人事に関して、とりわけMichael Flynnに始まったところの、選挙時からのRussiaと密接な接触があり、情報操作や選挙システムへの介入が成されたとの疑惑通称Russiagateの捜査に絡んで相次いだこれまでの更迭については、その是非は兎も角として理由が見えただけまだ理解し得るものではありました。対してここ最近のそれは、最早その理由を推し量る事すら困難なわけで。

その原因というか直接の要因には、Trump政権のスポークスマンであったSean Spicerが最近になって兼務していた広報責任者のポジションの後任として、またしてもGoldman Sachs出身のヘッジファンドマネージャーであり、つまるところ政治や広報については素人に過ぎないAnthony Scaramucciが据えられた事にあるのは間違いないでしょう。

しかしこの人事自体が意味不明なのです。Spicerが、Trumpの愚かな振る舞いによって当然に受けるべき非難に晒されながらも、政権のポリシーに忠実に従い、大本営発表をもって対し続けた末に投げ出した事は記憶に新しいところですが、その辞任の理由は、まさにこのScaramucciが広報責任者の職、すなわち形式上の上司として就任した事による、と言われています。兼任していた職務のうち上の方が引き継がれたため、後任であると同時に上司になった、という事です。ややこしい話ですね。

その是非は兎も角として、広報のプロフェッショナルとしてその困難な職責に忠実に対応し続ける事が出来たSpicerと、そもそも政治については金融関連に限定したアドバイザーやリエゾン的な立場での経験しかなく、また頻繁にFox Newsに出演していたとは言っても好き勝手に放言をするだけのコメンテーターとしてであり、広報の職についてまず経験すら乏しい筈のScaramucciと、そのどちらが重要であったかと言えば、Spicerの方であった事は明らかです。何故このような措置をしたのか、まず理解が困難で、大多数の人を困惑させました。

あまつさえ、その後Scaramucciは、同僚であり当然に協力せねばならない筈のReince Priebusはじめ政府の要人複数に対し、職に就くやいなや公然と非難を加え、驚くべき事にこれに応じてわずか数日後にはPriebusは更迭されてしまいます。これも意味不明です。というのも、Priebusの職はChief of staff、すなわち副大統領や国務長官等の主要閣僚級の数人を除く殆どの政権スタッフのトップであり、広報責任者のScaramucciは当然に彼の部下に当たるのにも関わらず、その彼の意向によって上司が更迭された事になるわけです。それに、そもそも同僚・上司の非難をする事は間違っても広報の仕事ではありません。そのような職務ないし権限を与えるというのなら、それこそ最初からPriebusの後任としてScaramucciを当てるべきだったところなのでしょうが、彼の就いた職は間違いなく広報責任者です。全く以って理解し難いところですが、ともかくにもScaramucciには実質的にそれだけの権限が与えられているように見えていたわけです。広報ってなんだろう、と誰しもが思った事でしょう。

しかしさらにわけがわからないのは、その実質的に支配的な権限が与えられていた筈のScaramucci自身が数日後にはあっさり解任されてしまった事です。そしてこの措置は、Priebusの後任としてChiefに就任したJohn F.Kellyの主張が通った結果だとも言われています。前述の通り、Chiefの方が上位に当たるため、本来あり得べき話ではあるのですが、だとしたら、Priebusが更迭されたのはどういう事なのか、逆に理解出来なくなってしまうわけです。そこに常人が理解しうる合理性を見て取る事は出来ません。もっとも、Scaramucciに広報の職責を果たす能力があるとは誰も(おそらくは彼自身も)思わなかったでしょうから、理由はさておき結果としては当然と言うべきなのかもしれませんが。

結局、何故その人事をしたのか、その理由が彼に関する限りわからないのです。そして、その人事権者であり、決定者である筈のTrump自身は、殆ど何も語っていません。彼にしては珍しく、と言うべきか、更迭される者について苛烈な非難を加える事もなく、逆に"彼はいいやつだ"等と意味不明なフォローをしてもいます。この点、最早Trump自身既に実質的に人事を掌握出来ていないのではないか、とする見方もありますが、その真偽は定かではありません。

何もかもが意味不明なまま、通常なら政権の要として実力者が配され、辞任も更迭も滅多な事では起こらない、起こしてはいけない筈のポジションが、まるでアルバイトのシフトの如くすげ替えられていく様は異様という他なく、第三者の立場からでさえそのもたらす機能不全、その影響を想像して冷や汗が出る位ですから、当事者であり、直接の影響を受けるだろう米国民の困惑はさぞかし大きい事でしょう。しかし状況が改善する見込みはありません。少なくともTrumpが大統領であり続ける間は。そもそも、おそらくは本件の原因となっただろうRussiagateの具体的な追求自体、まだ殆ど始まってもいないのです。さて、本件が決着を付けた時、米国は一体何処まで行ってしまっているのでしょうか。

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