東芝の再延期された2016年度3Q決算の発表予定についてですけれども。またしても正気を疑うような話が流れているのは一体どういう事なのでしょうか。
本決算について、先頃破綻した米原発子会社Westinghouseの会計粉飾疑惑に絡み、監査法人が過年度に遡って再度監査する必要があるとの見解を取っているために監査が完了せず、そのため決算発表が出来ないだろう見込みとなっている事は周知の通りなところ、監査意見なしでの決算発表をしようとしているんだとか。東芝経営陣以外の誰もが嘘だろと思ったんじゃないでしょうか。
法が上場企業等の大規模な法人に資格者による監査を義務付けている趣旨は、誤った会計情報の流布及びそれによる市場の正常性・公正性の毀損を防止し、投資家をはじめとするステークホルダー、ひいては社会経済全体を保護する事にあります。しかるに本件で監査法人が適正意見を付けられない理由は、今回の決算の基礎たる過去の決算に不正があったとの疑義が強いためであって、すなわち現時点での東芝の作成した決算に重大な誤りが存在する可能性が極めて高い事は明らかです。それを発表するという事は、法が保護しようとした市場・経済の安全をあえて毀損しようとする、明らかな違法行為と解さざるを得ないものなわけです。それを承知で発表に及ぶ以上、仮に過年度の決算訂正等が実際に行われた場合、東芝経営陣はそれに絡んで生じた損害の賠償等、不法行為に基づく法的責任を問われる事になるでしょう。
3回の決算発表延期は前例がなく、さらに延期したとしても次の期限になるだろう一ヶ月後に 適正な決算を発表出来る見込みが立たない現状、本決算を発表しなかった場合にそれを理由として上場廃止の措置が取られる可能性はないとは言えないだろう事から、形式的にでも決算の提出をしておきたい事情はあるのでしょうけれども、そうだとしても、市場の安全性はそのような東芝の事情、利益とは比べるべくもなく侵すべからざるものなのであって。
既に現時点で東芝に関連するその辺の市場の公正性は失われているのだから、この上に不正な決算が発表されたところで今更実質的な損害は発生しない、という見方も出来なくはないのかもしれませんが、それを言ったらおしまいというか、それを認めるならば、今回の決算の発表云々以前に、東芝は既に上場廃止に相当するものと言わざるを得ないわけなのです。
いずれにしろ、監査なしの決算など百害あって一利なし、そんなものを公表する位ならいっそそのまま潰れてしまった方がいいだろうと思うし、それを強行しようとする東芝には改めてその狂気に戦慄を禁じ得ないところなのです。もう諦めていいんじゃないでしょうか。
(追記)
・・・等と思って見ていたら、真逆の監査法人交代方針発表がなされたわけです。何という本末転倒。そもそも東芝規模の、しかも現在の収拾のつかない惨状を前に引き受ける余力のある監査法人が存在するのかも不明だし、仮に見つかったとしてもその監査にどれだけ時間がかかるか、と考えると、3Qどころか期末決算までもを実質的に諦めたものと受け止めざるを得ないわけですが。東芝経営陣は一体何がどうしてそんな方向にいっちゃったのか、と考えると。。。まだ他にも明るみに出るとまずい話がある、とかそういう事なんでしょうか。それこそ刑事罰に直結する類の。解体もさらに進んでるし、もうどうにもなりませんね。
よく考えてみれば、監査法人変更の理由は上記の通り過年度決算の見直しの是非であるだろうところ、その見直しがなされた場合、前年度以前から債務超過にあったという事になります。そうすると、債務超過になった時点以降になされた配当は違法配当にあたる事となり、経営陣はその一人あたり最低でも数十億にはなるだろう配当の返還義務を負う事になります。また、今回発表してしまった監査なしの決算につき、その誤った情報を流布した事に伴う責任も当然に負う事になります。いずれも自業自得、というか後者についてはわざわざ自分で罪を荷重して追い込んだ形なわけですが。。。流石にそれ位は承知の上で、毒を喰らわば皿まで的な話なのでしょうか。
何にせよ、経営陣はその大本営発表を追認して自分たちを守ってくれる、すなわち粉飾決算の共犯者となってくれるような監査法人がある、と考えている事になるわけです。・・・このような状況で?その種の不正自体は東芝の政治力をもってすれば不可能ではないのでしょうけれど、そうだとしても、それをこれだけ注目が集まっている中で堂々とやってしまおうとしている事については、もはや正気ではない、と言わざるを得ません。
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