ありがちかつ眠いタイトル、テーマで失礼。冤罪事件の発端になった、掲示板書き込みによる威力業務妨害の容疑者が逮捕された件ですけれども。
警察、メディアともにあっという間に完全な犯人扱いの袋叩きで愕然としました。犯行声明の媒体となった野良猫への接触は事実のようですし、前科がある点と合わせて、容疑者として嫌疑をかけられる、それはまあ自然だと思うんですけれどもね。しかし報道の内容を見る限り、それ以上の事実はない、すなわち容疑たる遠隔操作による当該掲示板書き込み行為についての直接的な証拠はおろか、間接的な状況証拠すら明確にあるわけではないようですし、かかる現況におけるこの扱いはいくら何でも酷すぎるように思われるのです。
容疑の数少ない根拠であるところの猫につけられた犯行声明メモリにしても、確認されたのは容疑者が猫に近づいていた事だけで、その取り付けが容疑者によってなされた事実の証拠は示されていないし、そもそもそのメモリの原所有者が書き込みの実行犯である事の根拠とされる、メモリ内に保存されていた遠隔書き込み操作ソフトからして、それ自体はソースを含めて誰にでも入手も使用も可能なのだから、当該容疑すなわち書き込み行為を容疑者が行った事実の証拠にはなり得ないわけで。
要するに現段階では疑わしい程度の容疑者に過ぎず、今警察が血眼になって調べてるだろう押収PCやらから当該書き込みの通信ログが出てこなければ、多分に証拠不十分につき不起訴、すなわち冤罪に終わってしまう可能性が相等にある段階と考えるべきでしょう。容疑者というより参考人として取扱う方が妥当に見えるくらいです。
しかるに、警察もメディアも共にもはや現行犯と同等の確定扱い、逮捕連行時の写真やプライベートな各種個人情報を大々的に喧伝する有様で、冤罪を作り出した当事者としての反省はかけらも伺えず、正気を疑わざるを得ません。大体、本件において最も重大な犯罪は冤罪すなわち警察による無実の一般市民に対する誤認逮捕並びに自白強制であって、公益と人権侵害のいずれにおいてもその罪の重さは威力業務妨害など比較にならないわけで。しかし当該犯罪に関わった警察、検察の各担当者は司法による裁きどころか氏名の公表すらなされていない。一方で本容疑者に対する現段階でのかような扱い、控えめに言っても甚だ不当であり、法の正義に反するものと言わざるを得ません。仮に本件の容疑者が結果として真実の犯人であったとしても、そのようなあり方は、確実にこれからも少なからぬ冤罪を作り続けるだろう事が容易に予想されるのです。
本件の本質は、犯罪そのものではなく、これまで警察が冤罪の常習犯であり、しかもそれが発覚しても罪に問われない無法組織である事実、そしてこれからもおそらくはそうあり続けるだろう暗鬱たる現実、それを晒している点にあるように思うのです。自浄など望むべくもないし、改善には独立の外部機関による強制が必須でしょう。警察・検察の監視摘発を専門に担う国会直属の組織とか。
----追記
本件容疑については勾留期限が来て処分保留となり、式的には一旦釈放。結局、本件については不当逮捕であって冤罪の可能性が限りなく高い状況に至ってしまいました。しかしその非を認めるどころか別容疑で再逮捕し引き続き勾留する始末。もう処置なしな事は分かってはいましたけれどもね。近いうち、多分に再逮捕の勾留期限になる月末位には、大方の予想される通りにその報いを受ける事になるでしょうが、無残なものです。