12/02/2012

[biz] インフラの安全に関する瑕疵、その遍在に

中央道笹子トンネルの崩落事故についてですが・・・。とても驚かされました。何にって、事故自体もそうですが、それ以上に、直前に実施されていたという検査の方法が目視だった、という話にです。

当然ながら目視では表面のみ、それも大まかな状態しかわからないわけですが、高速道路のような内部構造の比率が圧倒的に高い対象に対してのそれは、そもそも検査とは言えないでしょう。5年に一回という検査間隔の長さにも驚愕させられましたが、逆にそのような間隔で実施される、要であるはずの検査ですら目視のみというのでは、もはやそれは何もせず放置していたに等しいものと言わざるを得ません。

従って、本件による被害の責は、完全にNEXCO中日本の保全・保安義務懈怠に帰せられるのであって、当然に経営陣が業務上過失傷害致死に問われるべき事案であろうかと思われるところです。

しかしそういう法的な責任の問題はさして重要な話とも言えないでしょう。それよりも、本件によって明かになった事実すなわち、想像するのも苦痛ですが、一般の高速道路の保安、その前提たる検査基準が本件トンネルのそれに準ずるものであるだろうところ、全国のトンネル、また橋脚等も含めた殆どの構造物の検査状況も同様、従って未検査同然で放置されている劣化箇所がそれこそ山のようにあって、いつ何処が崩壊してもおかしくない状況だろう事が明らかになったわけで、その事実の方が遥に深刻と言うべきでしょう。このような状況が、命が失われる惨事に至るまで放置され続けた事自体、極めて残念な話です。

この二年、原発事故を巡って曝け出され、今以て利害関係者がその隠蔽に汲々としているところの、国内インフラの安全における体制・基準・運用の各々に渡る重大な瑕疵、それは道路においても同じであった、とそのように見てみれば、それはむしろ国内の公的事業体に共通する体質の帰結として当然の話ではあるんでしょう。これから泥縄的に全道路に対する非破壊・破壊両方による内部構造の検査確認および補修工事を行う事になるんでしょうけれども、原発のそれと違い、取り返しがつかない性質の話ではないだろう点だけが救いでしょうか。といって失われた命はその例外なのだし、救いというのも躊躇われますが。