1/25/2016

[biz] 彷徨う東芝、医療機器事業売却の意味不明

先頃の不正発覚に伴い、色々と噂が飛び交う東芝ですが。どうにも解せないのです。何がというと、この所公然と流れているところの、資金調達のアテとして、既に既定路線になっている家電に加えて医療機器事業等を売却する、という話についてです。

その他、フラッシュメモリ以外の半導体も売り払い、フラッシュメモリと電力に注力する、という事らしいのですけれども、正気かと。半導体はともかく、医療機器に関してはむしろ逆だと思うのですよ。

というのも、東芝の医療機器事業と言えば超の付く優良事業です。シェアも技術面の強みも十分、安定性将来性ともに申し分ない、どころかフラッシュメモリや原発より明らかに上。規模は若干小さいものの、原発以外の電力系と並んでグループの中核を担う事が可能な虎の子事業、だった筈なわけで。

それは資金を幾ら出そうとも得難い、シャープやソニーはじめ、経営の柱を失って苦しむ他のグループからは羨まれる程のものである事は間違いないわけですが、それを売り払い、家電や原発事業の損失填補、またメモリ事業の投資資金に充てるというのです。いささか信じ難く思われてなりません。普通に考えれば逆、すなわち医療機器事業を残し、不安定なメモリやお先真っ暗の原発事業によって失われる信用への備え、あるいは破綻の際に寄るべき柱とするものではないかと。 しかし今の所流れている話は医療機器事業を売り払ってリストラの資金に充てるとかいう話ばかり。意味がわかりません。

そりゃ、他社は喜んで手を上げるでしょう。国内だけで言っても、日立は言うに及ばず、パナソニックも医療機器は強化したいでしょうし、オリンパスと組むソニーもですか。それも当然。収益力等の純粋な事業の価値からすれば、液晶や家電等より余程価値がある筈なのですから。海外勢も当然興味を示しているでしょうけれども、にも関わらず経産省はじめ政策面では全く気にもされていない様子なのは如何にも奇妙に思われるところですが、手が回らないというだけなのでしょうか?それとも原発の方を優先しているからでしょうか?それは相対的なものに過ぎない筈なのですが。。。と、それはともかく。

もっとも、医療機器関連はコンシューマで稼げなくなった他社等が相次いで参入もしくは強化を打ち出していて、これから競争が強まる見込みではあるので、シェアが高い今の内に売るという判断も無いではないのでしょうけれども。それでも、その非常に長い事業のスパンからすれば、少なくとも一時の資金需要のために売買するというのはやはり短慮な印象は否めません。

こう、どうにも腑に落ちない点が多々あるところからすれば、今回の決定、やはり社内の政治力学的な理由とかそういう非合理的な要素による話なのかな、等と疑わざるを得ないのです。そうであれば、一連の施策もまた非合理性を帯びるだろう事は避けられず、その結果も推して知るべし、なものになってしまいそうで、想像するだに残念な気持ちにならざるを得ません。あれだけの事を仕出かし得る程にまで狂ってしまった組織、またその中の個々人の性質が、そう簡単に改善される筈もない、それもまた当然の話なのでしょうけれどもね。 

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<その後の経過>

国内からはCANON、富士フィルム。海外からはKKRも争奪戦に参戦とのこと。本当に売っちゃうんですかね。いやはや。コニカミノルタも入札するんだそうですが、そんな資金が調達出来るんでしょうか?規模的に厳しそうだし、何処か大手と組まないと難しいんじゃないかと思うんですけど。