6/23/2024

[IT biz] KADOKAWA・ドワンゴ経営陣発狂の理由

KADOKAWA、派手に逝ってますね。 

ニコニコ動画を中心にサービスがほぼ完全に壊滅し、復旧の目処すら立たない同社ですが、殆ど対外的な説明はなされておらず不明なために混乱に拍車がかかる一方の中、状況的に具体的な原因は恐らくはランサムウェアに引っかかったのだろうと言われていましたが、どうもそれが正しかったようです。

で、あろうことかKADOKAWAは要求された身代金を払ってしまったのだというのです。当然、味をしめた犯人側は要求を追加し、そこで話は止まっているのだとか。アホですね。

その旨を報じたのはNewspicksというニュースサイトですが、ざっと見る限りありそうな話だなという印象は受けました。一般市民としては、普通に怖いなと思うだけの、言ってしまえば普通の報道記事です。スクープに舞い上がっているのか、いささか誇張気味というか煽り気味な感じはしますが、1を100万位にするのが当たり前なYoutubeの動画やそれこそニコニコ動画上に溢れていたそれらよりはまだしも普通の感じです。つまり、現時点で報道の内容等に特段の法的な問題等があるようには思われません。ありふれたニュースの一つでしかないわけです。

ですが、KADOKAWAというかドワンゴの夏野社長(とKADOKAWA取締役の川上氏ら)がこれに噛み付いたのだそうです。曰く、「犯罪者の脅迫に加担する」等として。

もちろん意味不明です。少なくとも一般の第三者にとっては。事件を報道したからと言って、脅迫者に有利になると考える理由は一般にはありませんし、むしろ公的機関等の出動が促されたり、世間一般に対する教訓・警告・啓発等となって将来の被害を減少させる効果も期待できるだろう、と考える事も可能でしょう。というかそう考えるのが普通です。夏野社長の言う通りなら、脅迫事件一般の報道が不可能になってしまいます。そんなわけがないでしょう。誘拐事件のように、報道によって人命に危険が及ぶような恐れもありません。

夏野社長達の非難は不可解に見えます。では、夏野社長も川上氏も非常識なのでしょうか?勿論そんなわけはないでしょう。知識経験ともに豊富で、世間一般の平均以上には頭も回るだろう人達です。その事は承知の上で、それでもそういう発言をせずにはいられなかった、と考えるのが自然です。それはなぜでしょうか?

まず本件の状況を確認すると、KADOKAWAとドワンゴ、またニコニコ等のサービスがこれからどうなるのかはいまだに不明ですが、過去のランサムウェア被害の事例に倣えば、抜かれた諸々の情報は戻らないし、ロックの解除も行われない可能性がきわめて高いでしょう。つまり、もう取り返しがつかないという事です。この種の犯罪について、身代金を払えば解除してもらえる、等と期待するほうがどうかしているのです。従って、もうリカバリーは諦めて後始末をするしかないだろうわけです。再構築にもコストがかかりますから、見合わなければ事業を終わらせる事も決断せざるを得ないでしょう。これが発生直後の状況です。

この時点での損害は、主にユーザー情報の漏洩とシステムの破壊の2点で、損害は大きいもののいずれもKADOKAWAとその経営陣側には過失はあっても故意の損害は存在しません。ですので、ここで諦めて後始末に入っていれば、痛恨かつ残念無念、だけど仕方がない損害だ、としてそれで終わっていた筈の話なわけです。

なのに、身代金を払ってしまった。ほぼ確実に無駄になる金を。しかもおそらくは独断で。これは外部からの攻撃による単純な被害ではありません。経営陣の判断ミスによって会社に新たに生じた損害です。つまり、株主に損害を与えたものとして、取締役としての背任を法的に追求され得るのです。

経営陣としては、身代金を払っていなくても株主の責任追及、非難は避けられなかったでしょうが、単なるサイバー攻撃の被害という事であれば、取締役の注意義務には違反していないとの釈明が可能だったでしょう。つまり法的には何も問題がなかった。しかし、身代金を払ってしまった事で、取締役としての注意義務違反の疑いがかかってしまう状況になっているのです。KADOKAWA位の大企業であれば、大勢いる株主の中にそう判断する人がいる可能性は高いでしょう。現実に告訴される可能性は小さくないものと予想されます。

社会的にも、犯罪者ないし犯罪組織への利益提供を行い、犯罪を成功させ、もって犯罪行為の助長に寄与したとの評価も免れないでしょう。夏野社長は報道を指して脅迫に加担すると非難しましたが、自分たちこそが犯罪に加担するに等しい事をしていたと言えるわけです。もっともこの点は必ずしも法的に責任を問われるものではないでしょうからただちに致命傷とまでは言えないかもしれませんが、経営者として不適格との烙印を押されかねない失態ではあって、株主の信任喪失、すなわち解任につながる恐れも否定できないものと思われます。(なお、利益の提供先やその方法によってはこちらも普通に犯罪になっている可能性もあります。例えば送金先がロシアとか北朝鮮だった場合等)

無論、夏野社長達経営陣にそれがわからないわけはありません。当然にそれを認識し、しまったと思っても後の祭り、なんとか株主からの告訴等を免れたいと思っている事でしょう。顧問の弁護士は何をやっていたんでしょうね?弁護士に相談する余裕すらなかったのでしょうか。経営陣の誰かがランサムウェアを踏んで、その事実自体も隠蔽しようとして失敗したとか?まさかね。

ともあれ、もはや彼らには、できる限り身代金を支払ったという事実を隠蔽し、株主の注意をそらす位しかできることが無いのでしょう。それが件の意味不明な発言につながったと言えるのではないでしょうか。あるいは、この期に及んで犯人との交渉で解決する事で、身代金支払いが正当化される事を期待しているのでしょうか。まさかそんな無茶な。でも声明の文面はそうとも読めるんですよね。。。

おそらくKADOKAWA経営陣は今本当に追い詰められています。身代金支払いしかり、その後の意味不明な発言しかり、錯乱していると言っても過言ではないだろうテンパり具合です。流石にちょっと気の毒な感じはしますね。まあ、彼らについては、これまで莫大な報酬を得てきているのだから、こういう時に責任を取るのも当然というだけの話なのですが、その発狂に付き合わされる社員はじめ関係者には地獄でしょう。くわばらくわばら。

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