フライドチキンチェーン大手KFCの英国における多数の店舗で、鶏肉が届かないために在庫切れを起こし、閉店する騒ぎになっているようですが。今時こんな事ってあるのか、と驚いた次第です。
公表されているその理由は、先週行った配送業者の切替後に発生した、新業者DHLの不手際というかトラブルに伴う遅延だそうです。その具体的な内容及び原因は明らかにされていませんが、業者の変更と同時に行われたロジスティクスシステムの移行、そのベンダであるところのQuick Service Logistics(QSL)がKFCとDHLと共に本件の対処に当たっているとの話から、ITシステムの障害によるものと推測されます。動かないコンピュータ的な話ですね。
今回の影響を受けたエリアのKFCの店舗数はおよそ900、対象たる鶏肉の供給自体には何ら問題はなく、オペレーション自体には一般に問題になりうるような点は見受けられません。よくある外食チェーンのロジスティクスです。人手やトラック等のリソースが足りないという話も出ていませんし、やっぱりシステムの不具合という事なのでしょう。
だとすると、その解決にはシステムのデバッグ、場合によっては再構築が必要になる話だろうわけで、長引く可能性も相当に高いものと考えられます。とはいえ、高々1000店と配送先もさほど多いわけでもないので、システム側の対処が終わるまでの間、DHLが採算度外視でリソースを突っ込めばしのぐ事は十分に可能ではあるのでしょうけど。
しかし、どうしてこうなった。案件自体は、デポを作って、そこから在庫状況に合わせて配送するだけの話で、何も難しい事なんてありません。普通にやっていればこんな障害なんて起こるはずもないのです。それを、よりによってDHLなんて大手が起こしてしまった事には、いささか驚きを禁じ得ません。ほんと、何があったんでしょうか。
色々見てみると、、、まず、KFCがDHL及びQSLと提携した旨が発表されたのは昨年(2017年)の10月(下記プレスリリース参照)です。それまでに準備期間が置かれていたのかはよく分かりませんが、仮にそこから構築を始めたとすると、開発期間は約3ヶ月になるわけですが、これは明らかに突貫工事、というかパッケージをそのまま適用しただけですね。試験運用とかまともにやったのかどうかも怪しい感じで、トラック関連のリソースはDHLなら直ぐに準備出来たとしても、デポの設置とかオペレータの教育とか、そんなすぐ出来るものなの?等と、これだけでも色々と不可解な感じが漂いますね。
KFC revolutionizes UK foodservice supply chain with DHL and QSL appointment
他にも、上記プレスリリースには、QSLの売りとして、最適化された、鮮度の高い食材の配送を実現、等とそれらしい言葉が並んでいます。文字通りに解すれば、多分に時間や人員等のリソースの余裕を削ぎ落とし、在庫も限界まで削減したシステムに寄せて行った感じでしょうか。目的は経費削減でしょうね。で、それが裏目に出て機能不全に陥った、のかもしれません。まあ、単にITシステムが障害を起こして動かない、ってだけなのかもしれませんけれども。
何にせよ、性急にシステム移行を断行した結果、見事にすっ転んだという事なんでしょう。恐ろしい事です。何がって、その計画とは到底言えないだろう愚行を、たやすく決定し、実行に移してしまえる経営陣とシステム部門の無謀っぷりが。誰か止めなかったの?というか運用を始めるまで気づかなかったの?誰も?いやはや。
KFC shuts more stores in chicken chaos
2/20/2018
2/06/2018
[biz] 暗号通貨の価格が株価等と相関を示し始めた理由
何やら、Dow平均株価が史上最大の暴落だとか。日中の最大で1500、終値で1100超の下落です。これが続くのか、それとも下落幅は大きくとも、常日頃からそれなりに生じる一日(+先週末)限りの一時的な下落に過ぎず何もなかったかのように戻したりするのかは分かりませんが、少なくとも市場関係者には"ブラックマンデー"の文字が頭を過った事でしょう。
既に起こった事の評価はさておき。原因は何でしょうか。報道では主として金利政策の動向を踏まえてリスク警戒の思惑が広がり表面化した事、等とされているようです。しかし正直しっくり来ません。というのも、そんな事は常時、とまでは言わずとも頻繁に起こっている事であり、ある種定常的な均衡の範囲に留まるだろうところ、要因記録的な暴落、というような特異な変動、その発生を具体的に理由付けるに足りるものとはとても言えないもののように思われるためです。
要するに、特異な変動には特異な要因がある筈、というだけの事です。そして、金融市場周りでの特異な要因、と言われれば、誰しもが思い当たる事があるわけです。そう、暗号(仮想)通貨のバブル崩壊です。
昨年の暗号通貨の価格の上昇ぶり、またそのここ最近の下落ぶりがまさしくバブルの生成と崩壊そのものである事は疑いようの無いところですが、暗号通貨は通貨との名とは裏腹に他の財貨との交換性に乏しく、それ故にそのバブル崩壊も株式・債権等へは波及し辛いものと考えられていました。実際、先週末に至るまで、暗号通貨の価格がピークから半減するに至っても、株式市場は高騰を続け、市場最高値を更新しさえもしていた事は、その仮説を支持する証拠と言え、反対的な立場、すなわち実体経済との相関を持たない財貨など有り得るのか、といった疑問を封じるに十分なものでもありました。
しかし、先週末からの状況は、その仮説に疑問を抱かせ、あるいは崩壊させるものでした。およそ半値まで落ちた後、下落傾向ながら一進一退を続けていた暗号通貨群の価格が、株式市場の価格下落と前後して、あたかももつれ合うように急激かつ一方的に落ちていったのです。それまでとは全く逆に、その2つの価格の間に相関がない、とは通常考えられないレベルで。
これが偶然ではないとすれば、以前は相関が無かった(ように見えた)のが、今回相関を有するに至った、という事になります。それは何故でしょうか。仮説の上に仮説を立てるような話で、殆ど想像に過ぎないものではありますが、幾つか思い浮かぶものは無いではありません。
例えば、信用の時間差です。暗号通貨バブル崩壊直前には、ブームに乗せられた多数の一般人が資金を投入していましたが、この中の相当数がクレジットを利用していただろう事は間違いなく、その暗号通貨取引から実際の入出金までの時間差がそのまま現実経済と暗号通貨の価格変動とのラグになっていた可能性はあるでしょう。
そして、暗号通貨下落の直近の主要因に、大手クレジット会社による暗号通貨のクレジット決済禁止措置の導入というのがありました。今回、その暗号通貨取引の資金にクレジットを利用していた層が、決済禁止措置により資金調達に障害を生じ、緊急に代替の資金調達を迫られた筈です。あるいは調達に失敗してショートさせた向きもそれなりにあるでしょう。そして、その資金調達先は当然ながら暗号通貨以外の資産の換金であり、その中に含まれているだろう株式、その換金売りが株価下落の要因になった可能性はあるだろうし、信用取引での損失を埋められずデフォルトに陥った分が、これまた信用会社経由で損失として市場に波及する事も有り得ないではないでしょう。もっとも後者はいささか迂遠で、各種ヘッジもされている筈の部分につき、無いではない、位の話でしょうけれども。あと、先物取引については、その他の金融資産の取引も同時に手がけている投資家が殆どでしょうから、各プレイヤーの中で直接的な影響があった筈です。
すなわち、暗号通貨自体は他の財貨との関係が薄くとも、そこに参加するプレイヤーのポートフォリオを介して相関がある、という事です。こう書くと当たり前の事ですね。
そうであれば、相関が生じるまでのラグの理由について、次のような仮説が成り立つでしょうか。まず暗号通貨市場自体がバブルとなり、これに伴ってプレイヤーの資産も膨張を続けていた時期は、当然ながら他の市場に負の影響を与える事はありませんでした。次いで下落を始めた当初は、まだプレイヤーの流入も完全には止まっておらず、再上昇の期待を抱くプレイヤーも相当数残っていたため、多くが暗号通貨に集中し、その損失も現実化していなかった、のではないでしょうか。それが、急激な下落局面にあってクレジット等の主要な資金経路の一部が喪失し、否応なくその損失の確定と補填を迫られた事で、一気に現実化し、その結果ラグが消えて強い相関を示すに至った、と。
であるとすれば、暗号通貨群の、閉じられた楽園的な世界はもはや存在せず、今後その崩壊を進めるだろうその価格下落は、容赦なく他の市場へも波及する可能性がある、という事になるわけです。
元々無価値だったものが無価値に戻るだけ、と言えばその通りですが、膨れ上がった破裂前の価値があるものとして様々な所に生じ、あるいは既に消費された信用が急激に消滅し、その穴埋めないしデフォルトにより経済に混乱や損失が生じる事は避けられないでしょう。過去にバブルの教訓は十分すぎる程得ており、かつ警告も十分にされていた筈なのに、あっさりと同じ過ちを繰り返すその有り様は、人間とは愚かなものなのだと、あらためて見せつけられているようで暗鬱たる思いを禁じ得ないのです。
ところで、ブームに乗せられてクレジットでバブルに手を出して、崩壊して借金返せず破産って、少し前のサブプライムローンの件と全く同じじゃないですか。。。ほんと馬鹿は死ななきゃ治らないんですね。
Bitcoin Ban Expands Across Credit Cards as Big U.S. Banks Recoil
[過去記事 [biz] 無法と無謀の必然、相次ぐ暗号通貨取引所の破滅]
[過去記事 [note] 仮想通貨バブルの狂気性について]
既に起こった事の評価はさておき。原因は何でしょうか。報道では主として金利政策の動向を踏まえてリスク警戒の思惑が広がり表面化した事、等とされているようです。しかし正直しっくり来ません。というのも、そんな事は常時、とまでは言わずとも頻繁に起こっている事であり、ある種定常的な均衡の範囲に留まるだろうところ、要因記録的な暴落、というような特異な変動、その発生を具体的に理由付けるに足りるものとはとても言えないもののように思われるためです。
要するに、特異な変動には特異な要因がある筈、というだけの事です。そして、金融市場周りでの特異な要因、と言われれば、誰しもが思い当たる事があるわけです。そう、暗号(仮想)通貨のバブル崩壊です。
昨年の暗号通貨の価格の上昇ぶり、またそのここ最近の下落ぶりがまさしくバブルの生成と崩壊そのものである事は疑いようの無いところですが、暗号通貨は通貨との名とは裏腹に他の財貨との交換性に乏しく、それ故にそのバブル崩壊も株式・債権等へは波及し辛いものと考えられていました。実際、先週末に至るまで、暗号通貨の価格がピークから半減するに至っても、株式市場は高騰を続け、市場最高値を更新しさえもしていた事は、その仮説を支持する証拠と言え、反対的な立場、すなわち実体経済との相関を持たない財貨など有り得るのか、といった疑問を封じるに十分なものでもありました。
しかし、先週末からの状況は、その仮説に疑問を抱かせ、あるいは崩壊させるものでした。およそ半値まで落ちた後、下落傾向ながら一進一退を続けていた暗号通貨群の価格が、株式市場の価格下落と前後して、あたかももつれ合うように急激かつ一方的に落ちていったのです。それまでとは全く逆に、その2つの価格の間に相関がない、とは通常考えられないレベルで。
これが偶然ではないとすれば、以前は相関が無かった(ように見えた)のが、今回相関を有するに至った、という事になります。それは何故でしょうか。仮説の上に仮説を立てるような話で、殆ど想像に過ぎないものではありますが、幾つか思い浮かぶものは無いではありません。
例えば、信用の時間差です。暗号通貨バブル崩壊直前には、ブームに乗せられた多数の一般人が資金を投入していましたが、この中の相当数がクレジットを利用していただろう事は間違いなく、その暗号通貨取引から実際の入出金までの時間差がそのまま現実経済と暗号通貨の価格変動とのラグになっていた可能性はあるでしょう。
そして、暗号通貨下落の直近の主要因に、大手クレジット会社による暗号通貨のクレジット決済禁止措置の導入というのがありました。今回、その暗号通貨取引の資金にクレジットを利用していた層が、決済禁止措置により資金調達に障害を生じ、緊急に代替の資金調達を迫られた筈です。あるいは調達に失敗してショートさせた向きもそれなりにあるでしょう。そして、その資金調達先は当然ながら暗号通貨以外の資産の換金であり、その中に含まれているだろう株式、その換金売りが株価下落の要因になった可能性はあるだろうし、信用取引での損失を埋められずデフォルトに陥った分が、これまた信用会社経由で損失として市場に波及する事も有り得ないではないでしょう。もっとも後者はいささか迂遠で、各種ヘッジもされている筈の部分につき、無いではない、位の話でしょうけれども。あと、先物取引については、その他の金融資産の取引も同時に手がけている投資家が殆どでしょうから、各プレイヤーの中で直接的な影響があった筈です。
すなわち、暗号通貨自体は他の財貨との関係が薄くとも、そこに参加するプレイヤーのポートフォリオを介して相関がある、という事です。こう書くと当たり前の事ですね。
そうであれば、相関が生じるまでのラグの理由について、次のような仮説が成り立つでしょうか。まず暗号通貨市場自体がバブルとなり、これに伴ってプレイヤーの資産も膨張を続けていた時期は、当然ながら他の市場に負の影響を与える事はありませんでした。次いで下落を始めた当初は、まだプレイヤーの流入も完全には止まっておらず、再上昇の期待を抱くプレイヤーも相当数残っていたため、多くが暗号通貨に集中し、その損失も現実化していなかった、のではないでしょうか。それが、急激な下落局面にあってクレジット等の主要な資金経路の一部が喪失し、否応なくその損失の確定と補填を迫られた事で、一気に現実化し、その結果ラグが消えて強い相関を示すに至った、と。
であるとすれば、暗号通貨群の、閉じられた楽園的な世界はもはや存在せず、今後その崩壊を進めるだろうその価格下落は、容赦なく他の市場へも波及する可能性がある、という事になるわけです。
元々無価値だったものが無価値に戻るだけ、と言えばその通りですが、膨れ上がった破裂前の価値があるものとして様々な所に生じ、あるいは既に消費された信用が急激に消滅し、その穴埋めないしデフォルトにより経済に混乱や損失が生じる事は避けられないでしょう。過去にバブルの教訓は十分すぎる程得ており、かつ警告も十分にされていた筈なのに、あっさりと同じ過ちを繰り返すその有り様は、人間とは愚かなものなのだと、あらためて見せつけられているようで暗鬱たる思いを禁じ得ないのです。
ところで、ブームに乗せられてクレジットでバブルに手を出して、崩壊して借金返せず破産って、少し前のサブプライムローンの件と全く同じじゃないですか。。。ほんと馬鹿は死ななきゃ治らないんですね。
Bitcoin Ban Expands Across Credit Cards as Big U.S. Banks Recoil
[過去記事 [biz] 無法と無謀の必然、相次ぐ暗号通貨取引所の破滅]
[過去記事 [note] 仮想通貨バブルの狂気性について]
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