8/31/2024

[note] Ubuntu24.04.1がようやくリリース

ついにこの日がやって来てしまいました。当初予定の2週間遅れです。 

LTS版にも関わらず、バグまみれのβ版同然の状態でリリースされてしまった24.04。案の定というか、頻繁に固まるだの、アップグレードに失敗するだの、音が出ないだのと、大量の致命的な不具合の報告が溢れていて、安定的な動作を望む一般ユーザとしてはとても手を出せる状態ではありませんでした。

通常はリリース後に発覚したバグを修正した安定版としてリリースされる.1版ですら、アップグレード時の致命的な不具合が残っているとしてリリースが延期される始末で、ユーザとしては殆ど恐怖を感じる状況でしたが、なんとか24.04.1の再延期は免れました。そして運命の時がやって来たのです。

リリース後に一日様子を見たところでは、明らかに致命的な問題は生じていない様子。あくまで修正版なのだし、それは当たり前でしょうけれども、とりあえず一安心。

とはいえ、流石にいきなりサーバー(22.04LTS)に適用するのは怖すぎます。幸いというか、クライアント利用が中心の作業用PCはLTS以外もアップグレード適用してきていて現在は23.10。23.10は既にサポートは切れているので嫌が応にもアップグレードするしかありません。というわけで、こちらのアップグレードを恐る恐る適用してみた次第です。

結論から言えば、成功しました。

ただ、アップグレードインストーラの挙動は怪しいところがあり、実際に致命的ではないものの問題も発生しました。以下にそれをいくつか。

手順はいつもの通り、update-managerからアップグレードを選択しました。概ねいつもと同じような挙動なのですが、途中で2点、終了時に1点割とシャレにならない問題が発生。

問題1.  一部パッケージのインストールに失敗

 そのまんまです。thunderbirdパッケージがインストール前のsubprocessでエラーが出て、インストールできない旨メッセージが出ました。"アップグレードを続けますが、パッケージが動かない状態にある可能性があります。この件に関してバグレポートを送信することを検討してください。"的なメッセージも出て、実際インストール完了後にはaptの修復等を行う必要も生じました。致命的なものではありませんが、肝は冷えましたね。24.04からthunderbirdもsnapに移行しているのですが、それ関係の不整合によるものでしょう。

 なお、aptの修復等は、

  $ sudo apt --fix-broken install 

 とかです。autoremoveなんかも、普通のアップデートコマンドをやればOK。

問題2. grubのインストール先設定要求

 これは厳密には問題とは言えないかもしれません。何かと言うと、これまでアップグレードではgrubのインストール先、すなわちプートローダ周りをどの記憶媒体に入れるかを聞かれる事はなく、単に従来の設定を踏襲するようになっていて、例外的にgrubのバージョン変更時に以前のバージョンを保持するか否かを聞かれる事がある程度でした。

 それが、PCに接続されている、grubを設定可能なHDDやSSDとそのパーティションを検出し、その内のどれにgrubを入れるかを選択するよう要求するようになっていたのです。具体的には、/dev/sda,/dev/sda3,/dev/sdbとかが表示されて、それぞれの横にあるチェックボックスをチェックする形ですね。

 当然、困惑させられたわけです。何だこれはと。こちらとしては特に変更するメリットもないし、従来通りにして欲しいだけです。わざわざ聞くという事はユーザーにとって意味がある話な筈なのですが、それが何なのかわかりません。なので、最初はどれにもチェックボックスを入れずに進めようとしたのですが、そうすると、"grubをインストールせずに進めますが、よろしいですか"的な警告が表示されたのです。これは最悪起動出来なくなるやばいやつだ、と理解したので、慌てて戻って従来grubを入れていた筈のドライブをチェックして進めました。結果としては別段問題はありませんでした。何だったんでしょう。

 なおチェックして進めた時、即時にgrubの設定をしているのか、数分間程度ダイアログが先に進まず固まります。これも心臓に悪いので表示をどうにかした方がいいと思います。

問題3. 終了時に、"インストールに失敗しました。"的な表示が出る

 これもまんまです。おそらくは問題1.のパッケージインストール失敗に起因するものだと思うのですが、そんな細かい事情は示されず、ただ失敗した旨だけが表示されます。そりゃもう血の気が引きましたね。ロールバックする旨も表示されましたし、アップグレード全体が失敗したとしか読めないものでしたから。しかし、実はこれは表示だけだった様で、実際にロールバック等が行われる事はなく、すぐにアップグレード完了の旨表示され、そのままインストーラは終了しました。

 ただ、途中終了の形にはなっていたのか、パッケージのクリーンアップ等は行われず、その後(再起動後)に手動でする必要がありました。結果的にはアップグレード自体は成功したと言って良い結果ではあります。ほんと一安心。この間の私の気持ちは、久しく感じた事がない程つらいものでした。勘弁してほしいです。

その他、ライブラリのバージョンが変わっていて自作プログラムの一部をリビルドする必要があったりはしましたが、基本的にビルトインのアプリケーション等には目立った不具合は見当たりません。日本語やビデオ・オーディオ周りも特に問題はありません。

というわけで、23.10からのアップグレードは致命的な問題はなく終了。結果だけ見れば拍子抜けとも言えなくもないですが、やってる最中はそんな事はわかりませんから、精神的には非常に消耗しました。サーバーについてはもっとシビアだし色々準備も必要なので、また後日。 というわけで、今回はこれでおしまい。お疲れ様でした。

[note] Ubuntu24.04LTSリリース、いつになくやばげ?

[note] Ubuntu24.04.1のリリースが延期、やはりヤバい模様

<追記>

やっぱり(22.04からの)アップグレードにはバグがあるようです。特にserverでのアップグレードに使うubuntu-release-upgraderにはcriticalなbugがある、との事で、現在24.04.1はLTSリリースから一時的に取り下げられており、通常のコマンドではアップグレード出来なくなっているとの事。

一応develop版としてなら24.04.1にアップグレードする事は出来るとの報告もありますが、いずれにせよサーバーへの適用は修正版のリリースを待った方が良さそうです。というわけで私の所もサーバーのアップグレードはペンディング。やれやれです。

Unable to upgrade from Ubuntu Server 22.04 to 24.04.1

Noble missing from meta-release-lts

<追記2>

22.04->24.04.1のアップグレードパスが復活したので、サーバーについてもアップグレードを実施しました。しかし問題だらけのようです。

[pc] ubuntu22.04LTSから24.04LTSへのアップグレードに伴う障害について

8/15/2024

[note] Ubuntu24.04.1のリリースが延期、やはりヤバい模様

LTS版にも関わらず、基本部分の仕様変更に伴うリビルドが追いついておらず、デバッグも満足にされないままにリリースされ、当然にバグだらけでとてもアップグレードする気にはなれなかった24.04LTSですが。

そのあまりのヤバさから、22.04LTSからのアップグレードは一通りのfixが反映される24.04.1で実装される事とされていました。そして、その24.04.1のリリースは2024年8月19日に予定されていた・・・のですが、これが延期になったそうです。延期先は8月29日、10日間の延期ですね。

理由はインストーラの深刻なバグ等の修正のためとのこと。要するにまだデバッグが終わっていないというわけです。ひどい話ですね。そもそも、そのレベルの不具合というのは最初のリリースまでに解消されていなければならない筈です。少なくとも、LTS版である以上はそんなバグを残したままリリースしていいものではありません。

それが放置されたままリリースされ、あまつさえリリースから四ヶ月近く経っても修正できていない、というのは、もはやCanonicalのマネジメントは破綻していると言わざるを得ません。そんな体たらくで、あと2週間で完璧な状態になる等と、どうして信じられるでしょうか。

率直に言って、24.04.1が29日にリリースされたとして、依然としてバグまみれである可能性は極めて高いでしょう。少なくとも、リリース直後にアップグレードに踏み切る勇気は私にはありません。引き続きしばらく様子見ですかね。バックアップ用の記憶媒体等も調達して、移行の準備を進めていたのですが。。。

23.10のPCについても悩ましいです。サポート期限までにまともになるのでしょうか。

Ubuntu 24.04.1 point-release delayed until August 29 

[note] Ubuntu24.04LTSリリース、いつになくやばげ? 

※当初のリリース日が間違っていました。8/15ではなく8/19でした。

<追記>

24.04.1がリリースされました。が、アップグレードツールに深刻なバグがあるとの事で、一旦LTSリリースから取り下げられており、通常のupgradeコマンドでは(22.04LTSからの)アップグレードが出来なくなっています。困ったものです。

[note] Ubuntu24.04.1がようやくリリース

8/09/2024

[law] 検察官の違法取り調べにつき刑事裁判開始決定

画期的な決定が下されました。検察官がその職務上の言動に関して刑事事件の被告人となる裁判が行われる事になりました。

今回被告となるのは元特捜の、田渕大輔検察官です。容疑は、2019年に不動産会社社長の山岸忍氏に対する横領容疑の捜査に関し、共犯の容疑者として山岸氏の元部下を取り調べた際に、机を叩き、大声で恫喝する等の威圧的な言動を行った事が特別公務員暴行陵虐にあたる疑いがあるというものです。

山岸氏の容疑は2021年に地裁で無罪判決が下され、検察は控訴せず無罪が確定しています。これを受けて山岸氏は国家賠償請求訴訟を提起し、それに併せて検察官2名に対し証人威迫の容疑で刑事告発をしました。が、大阪地裁及び検察審査会で不起訴とされ、山岸氏がさらに大阪地裁へ付審判請求をしてこれも退けられ、さらに大阪高裁へ付審判請求をして、今回これがようやく認められたものです。山岸氏の執念の賜物と言えるでしょう。まだこれからが本番ですが、ひとまず山岸氏にはお疲れ様でした。

しかし、検察官は明らかに保護されすぎですね。問題となった当該検察官の言動については、当然ながら全て記録が残っています。つまり動かぬ証拠があるわけで、容疑も明確です。勿論刑事事件として起訴される為の要件は全て揃っている。にも関わらず、被害者がここまでしないと検察官を罪に問う、すなわち裁判にかけることすら出来ないというのは、制度上の欠陥と言わざるを得ません。山岸氏のように追求に労力を注ぎ込める人はそうはいないでしょうし、ほとんどの場合において、一般人に対する検察官の違法行為の追求はほとんど事実上不可能と言ってよいものなわけですから。

検察官の職務上の言動について、一般人のそれと同様に扱う事には難しい面もあるでしょう。容疑者は罪を逃れようとするものですから、その取り調べは基本的に容易ならざるものになり、それを乗り越えて犯罪者の罪を問うためには容疑者の心を折るような言動が効果的だろうし、それ以外に有効な手段がないという事もあり得るのでしょう。何より、有罪が立証出来なかった場合に、検察官がその職務の執行について容易に責任を問われるようでは検察官の職務の安定性が損なわれるだろう事も理解出来ます。

しかし、です。当然ながら、それは目的のためなら手段が正当化されるという事は意味しないのです。容疑者はあくまで容疑者であり、自ら罪を認めているので無い限り、取り調べ時点では犯罪者ではない一市民です。犯罪者同然に扱われる謂れはありません。それ以前に、犯罪者であっても人権は侵すべからざる権利です。冤罪の虞が大いに生じるような方法でなければ自白を引き出せないというのなら、それはもはや追求をあきらめる他ないのです。そもそも威迫によって引き出された自白や証言など、意味がないのですし。

その、司法に携わる者であれば当然にわきまえていなければならない筈の原則を忘れ、自分勝手な、独善的正義を優先して、絶対的に守られるべき人権を侵害する。そのような者にはもはや法の中でも最も公正かつ厳格たるべき刑事法の執行者たる検察官としての資格などありません。

そうは言っても、おそらく程度の差こそあれ、同様の違法な取り調べは他でも、というか至る所で横行しているんでしょうね。。。それは、検察組織が司法上の聖域となってしまっているという我が国の司法制度の構造上の問題であると言えるでしょう。この点は改善が必要です。すなわち、抑止力として、検察官と言えども法を犯せば罰せられるという、当たり前の仕組みが必要なのです。何人たりとも、法の上には立たないのです。裁判官も、検察官も。制度の改正が強く望まれるところですね。

8/05/2024

[biz] 令和のブラックマンデー記念。

はい。本格的にバブルが弾けたようです。すなわち本日、令和6年8月5日は最新のブラックマンデーに(多分)なりました。日本が世界の歴史に残る(かもしれない)よ、おめでとう!

というわけでブラックマンデーです。もっとも下落は先週末から始まっていたので、オリジナルのブラックマンデーと比較するのは適切ではないかもしれませんが、まあ株価・為替相場の変動幅が格段に大きい点で本日の方が決定的な感はありますから、間違いというわけでもないでしょう。

きっかけは、先週末の米国の雇用統計で失業率の大幅な悪化が出た事です。そこから当然のように米国株は下落し、元々予想されていた秋頃の利下げの見込みにつき確信を抱いた向きが大勢を占めた事からドル安が起こり、その直前に日銀による利上げ実施と今後の追加利上げ見通しの発表がなされていた事と相まって、ここ数年の円安と歩調を合わせて、主に日銀の投信の購入による公的資金と近々でのNISAの拡充による無知な一般人の資産をも吸い込んで膨張を続けていた国内株式市場及び為替市場のバブルが諸共に一気に弾けた、というわけですね。

日銀は投信の購入を既に縮小していましたから、買い支えがなく、また今後もない見通しである事も明らかであり、それが底が抜ける要因になった事も疑いようのないところでしょう。

何より、バブルはいつか弾けるもの。そしてその膨らみが大きければ大きいほど、弾けた時の反動は大きくなる、それが形になって現れたという事です。つまり、極めて合理的な結果という他はないわけです。

なのですが、取引関係者は当然に阿鼻叫喚です。とりわけ、信用取引をしていた、また今もしている向きはとんでもない地獄になっているでしょうね。ここまで変動が大きいと、買いも売りも読み切る事はほぼ不可能でしょうし、いわゆる落ちてくるナイフを掴んだ哀れな者も多かろうと思います。一時的に利益を出す幸運に恵まれた者もいるでしょうが、ここまで無茶苦茶な動きだと、何人たりとも参加し続ければいつかは破滅が避けられないでしょうし。常識的にはポジション解消のリスクオフ一択です。

一方で、取引云々は別にしても、単純に株価の大幅な下落は、当然ながらその権利者にとって金融資産の減少を意味します。株式を担保にした取引については、すべからく追加担保を求められるか、あるいは差し替えや清算を余儀なくされる事になるでしょうし、多くの企業が保有株式について評価損の処理を迫られます。

それは大手金融機関や日銀も例外ではありません。というか今や日銀がその影響を受ける筆頭です。日銀が購入した投信は大半がまだ含み益がある状態だとは思われますが、今後の下落の程度次第では、利上げで日銀が債務超過になる前に、株式の評価損で債務超過に陥りかねないわけです。本格的な利上げもこれからだというのに。一体日銀はどうなってしまうのでしょうか。まさか本当に破綻してしまうのでしょうか。日銀が公的資金のお世話になる、とか冗談みたいな話が本当になるのかもしれません。そんな資金をどこからどうやって持ってくるのかは知りませんが。

しかしまあ、見事に弾けたものです。馬鹿は死んでも治らないというか、バブル崩壊を経験しておきながら、再発を防ぐどころか目先の利益に見事に目が眩み、アベノミクス等と寝言を言ってバブルを膨らませる事に全力を尽くし続けた日本政府と日銀、それに全力で乗った金融界隈の面々、そしてそれに粛々と従った多くの日本国民、みんなほんとアホばかりです。それらの全てが自らの浅はかさと欲深さの報いを存分に受けるのかと思うと、清々しい思いがしますね。

とはいえ、諸々の市場に直接の関係を持たない第三者としては、馬鹿馬鹿しくも非情に興味深い一大事象ではあります。その行く末を、高みの見物的に観察させてもらうとしましょう。さしあたってはどこまで広がるのか、そこに注目ですかね。

7/22/2024

[pol] Old man leaves. Who comes next?

ようやく、です。Joe Bidenが次期大統領選からの撤退を表明しました。お疲れ様でした。

後継指名は当然に副大統領のKamala Harris。人気がない、Trumpには勝てない、と言われ続けて来た彼女ですが、そういったよくない評価は、そのBidenの影に控えるべき立場から来る制約によるところもあったでしょう。

選挙までさほど日数はありませんが、Harrisはこれから制約のない立場で、先頭に立って自由に言葉を発する事が出来るようになります。そこで、自らの、国民を導く指導者たる資質を証明できるならば、逆転の可能性は残されているでしょう。

そもそも、Trumpはあまりにも瑕疵にまみれた候補です。年齢もBidenと大差はなく、その主張に合理的な根拠はなく、社会に無用の争いや対立、また混乱を招き、自身も在職時から今まで収監されていないのが不思議な位の紛争を抱えてもいます。Trump自身の人気は健在ですが、多くの人にとって、未来を託す事の出来る、その期待を持てる候補ではない事も疑いようのない事実でしょう。

年老いた、過去の栄光に縋る老人を選ぶより、不確かでも未来を切り開く事を望む人は数多くいます。彼ら彼女らは、これまでの大統領選には殆ど絶望していたでしょう。長く続いた閉塞を打ち払い、人々の期待に応え、アメリカを、世界を導くに足る指導者としての姿が示される事を望みます。

もっとも、まだHarrisで確定したわけではありませんけどね。しかし誰が出るにしても同じ事です。 偉大なるアメリカに幸いあれ。

[pol] Joe Bidenに救いあれ

7/12/2024

[pol] Joe Bidenに救いあれ

Joe Bidenに決断の時が迫っています。迫っている筈なのです。もしかしたら、本来訪れるべきだったその時は既に過ぎ去っているのかもしれません。しかしまだその決断はなされていません。果たしてその時は来るのでしょうか。だとしたらどのような形で?

彼の歴代最高齢での大統領就任から3年余り、その間にもしばしば明らかな加齢に伴う認知症から来る痛ましい姿を見せ続け、殆どの人がもはや次の4年には耐えられないだろうと予感し、そして先日のDonald Trumpとの公開討論で全世界に無残な姿を晒した事で、公然と立候補を取りやめるべきだと支持者からも主張されるようになった事は周知の通りです。

もはや人の名前を覚える事も、正確に思い出す事も出来ず、公の場にあってさえ頻繁に自失の態を見せるようになった彼に、指導者としての責務を果たす事を期待するのは酷と言うより不可能です。 

何より、誰もが知る通り、大統領選では競争相手、比較相手がおり、例え本人が万全かつ支持層が強固であったとしても相手の評価と情勢如何でギリギリ勝てるかどうかというシビアな選挙です。民主党支持層ですら公然と不安を覚えるような状況で、Trumpを上回る票を集められるわけはありません。その意味でBidenはとっくに詰んでいます。議論の余地もありません。

しかし、そんな状況でも、本人は未だ撤退しようとはしていません。少しでも迷いを口に出したり弱気な態度でも見せたりしようものなら、その時点で終わってしまう事がわかっているから、撤退を決断するその時までそのそぶりは見せない、それは当然の事ではあります。そして、そのあまりに重く残酷な決断をするにも相応の時間が必要、それはその通りなのでしょう。

ただ、彼のあのあまりにあまりな衰えぶりを見るにつけ、不安を感じずにはいられません。そもそも彼は本当にそういう、撤退を検討するにあたっての合理的な判断、そのための多岐に渡る要素を総合検討するといった、合理的な思考が出来ているのでしょうか。出来る状態なのでしょうか。

認知症は、本当に残酷なものです。程度の差こそあれ、その名の通り自分の置かれている状況を認識出来なくなるのですから。抗う事も許されず、時に世界で一番大切な人の事すら容易く永遠に奪い去ってしまう。認知症に侵された彼は、一体どこまで自分の置かれている状況、殊に周囲の人の彼に対する評価を把握出来ているのか。おそらく短期記憶は壊滅的で、長期記憶の部分もかなり破損が進んでいるようですから、もはや彼がリーダーシップを取れるとは思われていない、その現状を把握出来ていなくても全くおかしくはありません。むしろ正確に把握出来ているわけはないでしょう。

今の彼は、現在を正確に認識出来ず、壊れつつある過去の記憶によって立つだけの、まさに全てに別れを告げ、人生の終わりを迎えようとしている一人の老人に過ぎません。その、彼に残された、公僕としての仕事に一生の大半を捧げた記憶から、大統領としての、あるいは大統領候補としての責務を全うせねばならないとの、殆ど妄執のような思考に取り憑かれて、そこから抜け出せなくなっているだけなのだとしたら。

彼には、もはや大統領選からの撤退を、撤退せざるを得ない自らの現状を、認識する事すら出来なくなっているのかも知れないのです。そんな彼に、社会は容赦なく大統領としての責任を課し、再選を目指す候補としての振る舞いを要求し、それに応えられない彼を、その振る舞いをあげつらって批判するのです。だとしたら、それはなんと言う残酷な事なのでしょうか。

その悲劇の責任は、もはや彼にはありません。その年齢から、彼がそうなるかもしれないと知っていながら現在の状況に追い込んだ周囲の責任です。この上は、速やかに彼が解放され、他の多くの老人と同じく、心安らかに人生の最期を迎えられるよう、その周囲の者がケアするのが責任というものでしょう。もちろん簡単な事ではないでしょうけれども。

それで彼の代わりの大統領候補を今から立てるのは大変でしょうし、Kamala Harrisをはじめ、その代替として名前の上がる候補は誰一人として全米で広範な支持を得られるとは考えられず、高確率でDonald Trumpに負けるでしょうが、それも致し方のない事、言ってしまえば自業自得だと思うのです。

他の候補者達が名乗りを上げない、上がらないのは、負けるとわかっているから、Trumpに負けたらキャリアやイメージに傷が付いて今後の戦略上好ましくない、とかそういう理由で、Bidenに敗北を押し付けようとしているのかもしれません。そうだとしたら、卑劣と断ぜざるを得ません。そんな卑怯者が大衆の支持を受ける事は未来永劫ないでしょう。

Highlights from Biden’s high-stakes news conference

 <追記>

それから粘る事しばらく。Bidenは次期大統領選からの撤退を表明しました。一安心と言っていいのか。お疲れ様でした。

[pol] Old man leaves. Who comes next? 

7/11/2024

[note] シャレにならない(かもしれない)石丸氏

先日都知事選に出ていた石丸伸二氏が、その後のメディアへの露出時の言動を巡って各所で話題になり続けているようです。

取り上げられ方は、その話をはぐらかす詭弁的な応答をネタにして茶化すもの、話し相手によって露骨に態度を変える様を指して眉をひそめるもの、そして大半の相手を見下しつつ小馬鹿にしたりして貶めようとする様を非難するもの等、様々ですが、いずれにも共通するのは、到底肯定的なものとは言えない事です。

もちろん全てではなく、ごく一部に共感を示す人もいますが、明らかに少数で、その他の大勢からは石丸氏のそれと同様の扱い、すなわち否定的な反応か無視かを受けています。

公職に就いていたもの、就こうとしたものとして、その言動が注目され、また広く厳しく批判にさらされるのは当然の事ではありますが、行き過ぎはしないか心配になるほどです。もっとも、私自身も先日否定的な評価をブログに書いたのであまり言えた口ではないのですが。

今の所、当の本人はあまり気にした様子でもなく、むしろ嬉々として批判する人達を小馬鹿にし続けているようにも見えますし、実際のところ問題はないのかもしれません。

ただ、彼の言動を嗜めるとか、擁護しようとしたりする味方とか、つまりは仲間とか友人的な人が皆無なのですよね。肯定的になるにしても一部の発言に限って理解を示すとか位がせいぜいです。第三者的な立場からの擁護すらほとんどありません。という事はつまり、ほとんどの人が、他人事としてではなく、自ら石丸氏とその言動について否定的な感情を抱いているということなのではないでしょうか。もしこんな人が近くにいたら到底受け入れられない、といった類の。

そこから推測される事は、要するにこの人はこれまでずっとこうやって、ひたすら自分の衝動のままに周囲の人を意味もなく攻撃し続けて、誰の事も理解しようともせず、当然の結果として距離を置かれ、言ってしまえば嫌われて生きてきたのだろうという事です。直接関わったわけでもなく、選挙とそれに関連する報道を通じて見聞きしただけでこれだけ嫌われるのですから、直に接してあのような言動を浴びせられればどうなるか、それはあまりにも想像に容易いことです。

誰からも距離を置かれる、嫌われる、というのは、場合によってはいじめのような状況になる事もあったかもしれません。しかしそれを非難する事は出来ません。誰彼構わずあのような振る舞いをしていれば、そうなる事は当然の結果と言う他はないのです。それでも今なおそうしているのだから、きっと彼自身かけらも気にしてはいないのでしょう。あるいは人と馴れ合うような真似は死んでもしたくない、位にさえ思っているかも知れません。

だったら何故人と関わる仕事に就こうとするのか、あまつさえ全体の奉仕者たるべき公務員、しかもその責任者になどなろうとするのか、という疑問も生じますが、もしかしたら真逆で、権力を得て人を見下したい、苦しめてやりたい、気に入らない人を排除してやりたい、とか考えているのかも知れませんね。安芸高田市長時代の振る舞いはまさにそんな感じでしたし。

つまりパワハラや権力の濫用こそがしたい事で、それが出来る権力者になりたいから首長に立候補した、とか。そうだとしたら最悪なのですが、ある程度辻褄は合ってしまうのがなんとも。自己満足以外に何の意味もないというか社会的には害悪にしかならないし、第一基本多数決の論理で動く政治の場で周囲の支持もなしにそんな事をしようとしても、自分が排除されるだけでしょうに。

とはいえ、孤独であろう事は間違いないし、ある種の痛々しさも感じずにはいられないのです。少なくとも、面白半分で茶化したり、いくら嫌悪感があったとしても人格への批判を無制限に加え続ける事には、健全な社会の倫理からの躊躇いがあってしかるべきでしょう。

個人的には、そもそも彼は誰もが目にするようなメディアには出てほしくないですね。子供の教育にもよくないと思います。子供が彼の真似をしたりすれば、彼のように友人を無くすだろうし、下手をすれば社会に適応出来なくなってしまいます。シャレになりません。youtubeで動画を配信する位ならフィルタ等で目に入らないように出来るので、それ位に留めておいてもらいたいと思います。多分無理なんでしょうけれども。

 [pol] 大山鳴動した都知事選

7/10/2024

[pol] パワハラ告発者を逆ギレの末に殺した兵庫・斎藤知事と維新

やはり維新の人間だったか、というか。兵庫県の斎藤知事と維新所属議員が人を死なせたようです。胸糞の悪い話ですが一応。

経緯はさんざん報道されているので省略しますが、簡単に言えば、県職員相手に散々パワハラをし、それを元県幹部職員に告発され、事実無根の嘘八百だとして告発者に逆ギレし、あまつさえ罵詈雑言を浴びせていたところ、告発に事実が含まれている事が明らかになり、それ以外の点についても告発内容の真偽を問うために地方自治法100条に基づく委員会が県議会に設置され、追求の手続きが進められていたところ、まさにその開催直前になって証人として出席する筈だった告発者が死亡したという話です。

おそらくは自殺、という事ですが、自殺か他殺かはさておき、その原因が斎藤知事はじめ維新議員のパワハラ告発・100条委員会開催に向けての、告発者たる元県幹部職員への対応というか仕打ちにある事は殆ど疑いようがない状況です。

というのも、当該委員会の審議等は裁判に準ずるものであり、証人の出頭義務や偽証への罰則等も法定されているため、当然ながらその権限を目的外に濫用する事は許されないところ、維新所属の議員は告発書以外の、告発書と共に押収された告発者のプライバシーに属する事項についてもいわゆる黒塗りをせず公開し、審理の対象にしようとしたのだそうです。

これは純然たる人権侵害に他なりません。もちろん違法です。そもそもの前提として、100条委員会の喚問は刑事事件のそれにも等しいものです。証人には出頭義務があり、各種書面の提出義務もあり、黙秘権も制限されます。この場で上記のような事が証人に対してなされる、というのは、例えれば、刑事事件の裁判で、その告訴者が証人として出廷するとして、事件とは何ら関係のない、証人のプライベートな事柄の開示を被告弁護人が求め、あまつさえ裁判長がそれを認めたようなものです。ありえません。公の裁きの場を何だと思っているのでしょうか。

それを知った告発者は、プライバシーへの配慮すなわち告発に関係ない事項の非開示を求め、しかし聞き入れられず、追い込まれていたとのこと。当たり前です。公益性も正当性も何もない、単なる報復のために、そのプライベートな事柄を、公の、しかも証言の拒絶も許されない裁きの場であげつらわれ、理不尽な人格的非難を知事と維新から受けるだろう事になった告発者の心情は察するに余りあります。まさしく絶望と言うにふさわしいものだったでしょう。それこそ自殺を選んでも何ら不思議はありません。

被害者が亡くなった後、これはまずいと思ったのか、慌てて委員会の方では告発書の記載内容以外については非公開とし、審理の対象からも外す旨緊急決議を行ったそうですが、無意味です。委員会側の、特に唯一その公開を求めていたと言われる維新所属議員の泥縄の言い訳・取り繕い的な保身に出たものである事は疑いようがありませんし、むしろその卑劣さに吐き気がしますね。謝罪の言葉もありません。議員云々以前に、およそ人間の所業ではないと言わざるを得ませんね。

当の斎藤知事については何をか言わんや。自分が殺したも同然の相手に、お悔やみを、とかどの口が言うのか。人にお悔やみの言葉を述べる前に自分の行いを悔いるべきです。ショックを受けた?何に?自分が人殺しになってしまった事にですか?何を今更。

代表の馬場しかり、維新はゴロツキやらチンピラが政治やってるようなものとはよく言ったものです。よくこんなのが住民の、国民の代表になろうとするものですね。それをもてはやす人も含め、悔い改める必要があるんじゃないでしょうか。

これは関係ない蛇足ですが、先日終わった都知事選で、もし石丸氏が当選していたら、似たような事が起きていたのかもと思わずにはいられません。ぞっとします。もっとも、彼には維新のようなそのパワハラに加担し擁護するような仲間はいないので、ここまで酷いことにはなりにくいだろうとは思いますけれども。 

斎藤知事のパワハラを告発した兵庫県元幹部が死亡 百条委員会出席で紛糾していたプライバシー問題 

[pol] 大山鳴動した都知事選

7/09/2024

[pol] 大山鳴動した都知事選

東京都知事選が終わりました。

首都とはいえ、あくまで一地方自治体の首長選挙であって、それ以外の地域の住民には基本関係ない話の筈だったのですが、それ以外の地域でも国政選挙であるかのような報道されっぷりでした。その事に多少の違和感はあります。

が、地方選挙の中では群を抜く注目度・影響度がもたらす副作用として、それもある程度までは自然な事だったと言えるでしょう。選挙広告の目的外利用や選挙妨害のような、多分に今後他の地域の地方選や国政選挙にも波及しかねず、それ故に規制の是非が議論され得るだろう事象もありましたし。

しかしそれ以上に、蓮舫氏と石丸氏という特徴的な対立軸を象徴する候補が立候補していた事がその過熱の主たる要因であったのだろうと思います。往々にして単に著名人であるというだけの候補が乱立し、単なる人気投票と化す事も珍しくない都知事選ですが、その2人は程度の差はあまりに大きいにしても、他分野の著名人というわけではなく、いずれも元より政治家として認識されている候補でした。結果、本命・対抗ともに全員が政治家同士の対決という構図になったのです。人気投票の要素は副次的なものとなりました。

この違いは大きいものでした。何故かというと、「現状に不満はあるが、それでも政治の素人はダメ」と考える、投票に関心は十分にあるが消極的に現職か、いなければ最有力候補に投票していた層に現実的な選択肢が出来たのです。実際、小池氏の得票は前回より数割減少し、石丸・蓮舫両氏の得票の合計数は小池氏を上回っています。

これはもちろん歓迎すべき変化です。単に選択肢がないために消去法的に信任を受けるだけの無意味な選挙とは意味合いが全く異なります。況や、人気投票とは比べるべくもありません。無論、有力候補が数人増えたところで、その体現しうる選択肢の軸はたかが知れていると言えばその通りではあるのでしょうが、単なる消去法よりは随分とマシです。

実際問題としては、現職が一定以上の支持を受けている場合等に、その選択肢が現実性を持つには対立候補は一人でなければ共倒れになるという問題もあります。これはジレンマですが、一発勝負の現行の選挙制度の下ではどうにもなりません。決選投票制を導入する他に解決の方法はないように思われます。選挙コストは上がりますが、私は必要なコストだと思います。

話が逸れました。かように、今回の選挙は地方選と言えども現在の日本国内で行われる直接選挙の最も重要なものとして、あるべき姿を指し示すいい選挙だったのではないでしょうか。こういうのを見ると、首相についても直接選挙による公選制を導入したくなりますね。もちろん議院内閣制の(ほぼ)廃止、すなわち憲法の大幅な改正が必要なので、現実問題としておよそ不可能なのですけれども。

ところで、今回の選挙の結果について、負けた側では色々敗因等の分析がなされています。個人的にはあまり意味はないと思いますが、石丸氏、蓮舫氏についてそれぞれ一点だけ触れておきます。

まず蓮舫氏。彼女については、当初対立候補の筆頭と目されていた氏が3番手になったという点が注目されています。それを受けて、その所属団体であるところの立憲民主党では、蓮舫氏や立憲民主党は支持されていないのかと落胆する向きも多数出ているようです。

が、これは的外れだと思います。今回の選挙を通じて、蓮舫氏や立憲民主党の側に、殊更これまでの実績やそれに基づく評価を大きく変動させるような要素はありませんでした。ではなぜこうなったのかと言えば、それは蓮舫氏とその属する立憲民主党という組織の元々の立ち位置によるものであると言う他ないでしょう。

すなわち、氏も立民も、元々、批判票の受け皿になる、という以上の評価を受ける存在ではないからです。これまでも、おそらくこれからも、現状に不満があって、現職等を支持したくない人の消極的な選択肢、その中での(それなりに)相対的な優位を得ているに過ぎないのです。

であるから、他に選択肢が現れれば、そしてそれが積極的な選択肢として成立し得るならば、元より消極的な選択肢が太刀打ちできる筈もなかった。これはただそれだけの話です。仮に石丸氏が立候補していなければ、おそらく蓮舫氏は善戦していたでしょう。場合によっては当選していた可能性も否定出来ません。そうであれば、自身の関係ない要素に左右される、あまりにも不安定な立ち位置と言わざるを得ません。

蓮舫氏というか同党については、その消極的で脆い立ち位置を、積極的な支持を受ける確固たるものに変える事が出来なければ、おそらく今後の選挙でも同じ事になるでしょう。つまり、他に有力な選択肢が現れれば支持されず、現れなければ与党への支持の有無・程度に結果が左右されるのです。いずれにせよ、そこに立民自身の寄与するところは殆どないでしょう。

従って、次の衆院選で立民が勝利する可能性は十分にあります。維新は未だ積極的な選択肢とは言い難く、むしろ万博絡みを中心に将来性への期待さえも失いつつあるようですから。ただ、仮にそうなったとしても、おそらくそれは全く長続きしないでしょう。与党への批判だけを頼りに票を得ても、それは党や政権への支持とは言えません。そんな党が与党になる、という事は、すなわち票を失うという事を意味します。そしてすぐさま議席を、政権を失う。元々実質的な信任がないのだから当然の事です。

そんな見え透いた、誰にとっても不幸にしかならない未来を回避するには、彼ら自身が責任を持って積極的な支持を受けられるだけの、すなわち与党よりよい政権、行政組織を構築・統括し、立法・行政ともに他者に左右されない絶対的な信任を得るに足る実体を備える他はありません。

今更そんなことが可能なのか、正直不可能なのでは、と思わざるを得ませんが、それでもそうするしかないのです。でなければ、実質的に選択肢にはなり得ないし、文句を言う口だけの無責任な人たち、といった不名誉な評価も拭えないでしょう。汚職や不正行為も、単に政権を担っていないから出来ないし追求もされにくいというだけで、自民議員のそれよりマシかというとそんなわけはないでしょうしね。むしろ自民より酷くなる可能性も小さくはないでしょう。評価出来るところが全くない、というわけでは無論ないのですが。それでは全然足りないのです。

次に石丸氏。彼については、色々と批判もそれへの反論も激しくなされています。パワハラ気質だとかアスペだとか、色々言われてもいるようです。どれも自治体の首長たるべき者として、問題なしというわけではありません。しかし、個々の点は、程度問題もあるにせよそれ自体がさほど大きな問題とは思いません。行政を担う者としては、その職務を全うする事が最も重要なのですから。極論すれば、違法の性質を帯びない限り、仕事が出来るならそれ以外は二の次です。

逆に言えば、仕事に支障が出るような点があればそれは問題と言わざるを得ないわけです。で、彼の場合はどう見ても仕事、すなわち行政機関の運営が出来るようには思われないのです。何故か?およそ人と協力する事が出来ないだろうからです。

彼の振る舞い、特に言動を見る限り、彼はそもそも他者とコミュニケーションを取る能力に深刻な障害を抱えています。なぜその言葉を受けてその応答なのか、相手が理解出来ず困惑する事態も頻繁に起こっています。

行政機関は言うまでもなく人の組織です。行政機関の事務の相手も地域の住民を中心とした人です。その運営において、何よりも必要なものはコミュニケーションの能力です。多種多様で時に複雑な人々の話を理解し、適切に対応出来なければならないのですから。そこで誤れば、場合によっては人命にも関わります。当然ながら、この点を軽視する人は、少なくとも自治体の首長としては失格です。

翻って、石丸氏はかなり極端な理想主義者のようです。やり取りを見ると、何事につけ「こうあるべきだ」という理想があって、それに沿わない発言があると、そのやり取りのコンテキストを無視してその点を批判し出します。

確固とした理想がある事、それ自体は美点と言えるでしょうが、状況によらずそれに拘り、話の本題をも無視するようでは本末転倒というもの。しかも石丸氏にはその理想やそれに拘る理由を相手にわかるように説明する気もなく、また相手の事を理解する気もないのだから、相手にとっては普通に(常識的な言葉で)話をしていた筈なのに、わけもわからず突然非難を受けるだけの状況に追い込まれるわけです。文字通り話になりません。

そんな彼が行政組織に入り、決定権や指揮権を持つとどうなるか。確実に機能不全を起こすでしょう。本来そんな事にかかずらわっていてはキリがないというかそんな暇はない筈の些末な事にこだわって時間を浪費し、無駄に事務を停滞させ、組織内の人員を疲弊させ、事務の遅延・遅滞により地域に損害を生じさせ、住民に不満を生じさせるでしょう。議会・議員と協力関係はかけらも築けず、最初から決定的に対立し、予算・人事の承認すらままならなくなるでしょう。

組織・設備等の改廃を独断かつ安易に強行しようとし、地域社会にリスクをもたらす可能性も小さくはないでしょう。もっともこの点については、偶然成功する場合もあるかもしれません。が、多数の経験豊富なスタッフによる行政組織の施策と素人の賭けとでは常識的に考えてそのリスクは比較になりません。相対的に悪い結果になる可能性は極めて高いでしょう。

そして必然的にその過程で受けるべき膨大な正当な非難と、それ以上に膨大な理不尽な非難を受け、その尽くと対立し、何もできなくなるでしょう。

そんな未来が見える、それが彼の決定的な問題だと思うのです。もちろん、実際に職につけばそれなりに現実的な対応をするようになるのかもしれませんが、今の時点ではその期待を持つ事は出来ません。単なる希望的観測による妄想に過ぎないのですから。

以上、簡単にと思いつつも長々と考えを巡らせてみたわけですが、結局のところ、小池氏の再選は妥当だったのだろうと言わざるを得ないですね。学歴詐称問題だとか、公約無視だとか色々非難は受けていますが、知事として最も重要な実績、すなわち安定的に知事職を全うしてきた事実はやはり何よりも重かった、それだけの事なのでしょうから。いかに知名度や話題性、そこそこの対立軸があろうとも、それを凌駕するのは容易ではないのです。

結果としては、大山鳴動して鼠一匹、いや狸一匹か、な感じではあるので、無駄に騒ぎすぎだとの思いも消えませんけどね。それでは。

6/23/2024

[IT biz] KADOKAWA・ドワンゴ経営陣発狂の理由

KADOKAWA、派手に逝ってますね。 

ニコニコ動画を中心にサービスがほぼ完全に壊滅し、復旧の目処すら立たない同社ですが、殆ど対外的な説明はなされておらず不明なために混乱に拍車がかかる一方の中、状況的に具体的な原因は恐らくはランサムウェアに引っかかったのだろうと言われていましたが、どうもそれが正しかったようです。

で、あろうことかKADOKAWAは要求された身代金を払ってしまったのだというのです。当然、味をしめた犯人側は要求を追加し、そこで話は止まっているのだとか。アホですね。

その旨を報じたのはNewspicksというニュースサイトですが、ざっと見る限りありそうな話だなという印象は受けました。一般市民としては、普通に怖いなと思うだけの、言ってしまえば普通の報道記事です。スクープに舞い上がっているのか、いささか誇張気味というか煽り気味な感じはしますが、1を100万位にするのが当たり前なYoutubeの動画やそれこそニコニコ動画上に溢れていたそれらよりはまだしも普通の感じです。つまり、現時点で報道の内容等に特段の法的な問題等があるようには思われません。ありふれたニュースの一つでしかないわけです。

ですが、KADOKAWAというかドワンゴの夏野社長(とKADOKAWA取締役の川上氏ら)がこれに噛み付いたのだそうです。曰く、「犯罪者の脅迫に加担する」等として。

もちろん意味不明です。少なくとも一般の第三者にとっては。事件を報道したからと言って、脅迫者に有利になると考える理由は一般にはありませんし、むしろ公的機関等の出動が促されたり、世間一般に対する教訓・警告・啓発等となって将来の被害を減少させる効果も期待できるだろう、と考える事も可能でしょう。というかそう考えるのが普通です。夏野社長の言う通りなら、脅迫事件一般の報道が不可能になってしまいます。そんなわけがないでしょう。誘拐事件のように、報道によって人命に危険が及ぶような恐れもありません。

夏野社長達の非難は不可解に見えます。では、夏野社長も川上氏も非常識なのでしょうか?勿論そんなわけはないでしょう。知識経験ともに豊富で、世間一般の平均以上には頭も回るだろう人達です。その事は承知の上で、それでもそういう発言をせずにはいられなかった、と考えるのが自然です。それはなぜでしょうか?

まず本件の状況を確認すると、KADOKAWAとドワンゴ、またニコニコ等のサービスがこれからどうなるのかはいまだに不明ですが、過去のランサムウェア被害の事例に倣えば、抜かれた諸々の情報は戻らないし、ロックの解除も行われない可能性がきわめて高いでしょう。つまり、もう取り返しがつかないという事です。この種の犯罪について、身代金を払えば解除してもらえる、等と期待するほうがどうかしているのです。従って、もうリカバリーは諦めて後始末をするしかないだろうわけです。再構築にもコストがかかりますから、見合わなければ事業を終わらせる事も決断せざるを得ないでしょう。これが発生直後の状況です。

この時点での損害は、主にユーザー情報の漏洩とシステムの破壊の2点で、損害は大きいもののいずれもKADOKAWAとその経営陣側には過失はあっても故意の損害は存在しません。ですので、ここで諦めて後始末に入っていれば、痛恨かつ残念無念、だけど仕方がない損害だ、としてそれで終わっていた筈の話なわけです。

なのに、身代金を払ってしまった。ほぼ確実に無駄になる金を。しかもおそらくは独断で。これは外部からの攻撃による単純な被害ではありません。経営陣の判断ミスによって会社に新たに生じた損害です。つまり、株主に損害を与えたものとして、取締役としての背任を法的に追求され得るのです。

経営陣としては、身代金を払っていなくても株主の責任追及、非難は避けられなかったでしょうが、単なるサイバー攻撃の被害という事であれば、取締役の注意義務には違反していないとの釈明が可能だったでしょう。つまり法的には何も問題がなかった。しかし、身代金を払ってしまった事で、取締役としての注意義務違反の疑いがかかってしまう状況になっているのです。KADOKAWA位の大企業であれば、大勢いる株主の中にそう判断する人がいる可能性は高いでしょう。現実に告訴される可能性は小さくないものと予想されます。

社会的にも、犯罪者ないし犯罪組織への利益提供を行い、犯罪を成功させ、もって犯罪行為の助長に寄与したとの評価も免れないでしょう。夏野社長は報道を指して脅迫に加担すると非難しましたが、自分たちこそが犯罪に加担するに等しい事をしていたと言えるわけです。もっともこの点は必ずしも法的に責任を問われるものではないでしょうからただちに致命傷とまでは言えないかもしれませんが、経営者として不適格との烙印を押されかねない失態ではあって、株主の信任喪失、すなわち解任につながる恐れも否定できないものと思われます。(なお、利益の提供先やその方法によってはこちらも普通に犯罪になっている可能性もあります。例えば送金先がロシアとか北朝鮮だった場合等)

無論、夏野社長達経営陣にそれがわからないわけはありません。当然にそれを認識し、しまったと思っても後の祭り、なんとか株主からの告訴等を免れたいと思っている事でしょう。顧問の弁護士は何をやっていたんでしょうね?弁護士に相談する余裕すらなかったのでしょうか。経営陣の誰かがランサムウェアを踏んで、その事実自体も隠蔽しようとして失敗したとか?まさかね。

ともあれ、もはや彼らには、できる限り身代金を支払ったという事実を隠蔽し、株主の注意をそらす位しかできることが無いのでしょう。それが件の意味不明な発言につながったと言えるのではないでしょうか。あるいは、この期に及んで犯人との交渉で解決する事で、身代金支払いが正当化される事を期待しているのでしょうか。まさかそんな無茶な。でも声明の文面はそうとも読めるんですよね。。。

おそらくKADOKAWA経営陣は今本当に追い詰められています。身代金支払いしかり、その後の意味不明な発言しかり、錯乱していると言っても過言ではないだろうテンパり具合です。流石にちょっと気の毒な感じはしますね。まあ、彼らについては、これまで莫大な報酬を得てきているのだから、こういう時に責任を取るのも当然というだけの話なのですが、その発狂に付き合わされる社員はじめ関係者には地獄でしょう。くわばらくわばら。

【極秘文書】ハッカーが要求する「身代金」の全容 

【検証】専門家は、KADOKAWAをどう見るか

KADOKAWA、一部報道に抗議 

5/11/2024

[note] Ubuntu24.04LTSリリース、いつになくやばげ?

UbuntuのLTS版、24.04がリリースされています。 

しかしこれが長らく見なかった位に不具合の恐れがてんこ盛りのリリースらしいのです。何でも、time_t型の64bit化のために大量のリビルドが発生し、それに伴うデバッグ等の検証修正が満足に行われていない様子なのですね。リリース直前までまともにパッケージが揃っていなかったとか、インストールやアップグレードが失敗する状態だったとかいう信じがたい話も聞こえてきます。

当然ながらLTS版はサーバー等の基本不具合等が許されない環境で使われるものなわけで、それがこの状態というのではとてもアップグレードする気にはなれません。恐ろしすぎます。

それに加えて、インストーラ等の刷新も加わっているというのですから、尚更です。失敗する気しかしません。以前snapが入った時にサーバーのアップグレードが上手く行かず、何度もやり直して四苦八苦した時の事を思い出しました。あんな怖い思いは出来れば二度としたくありません。

というわけで、今回はアップグレードを見送ります。勿論LTS版につき最終的には上げざるを得ないだろうのですが、通常通りなら夏頃に修正版が出る筈なので、それが出て、かつ問題ないと確信出来てからにしようと思います。

<追記>

修正版がリリースされました。 が、アップグレードプログラムに深刻なバグがあり、数日後に一旦取り下げられてしまいました。通常のコマンドからは22.04LTS->24.04.1LTSのアップグレードが出来なくなっています。駄目だこりゃ。

[note] Ubuntu24.04.1のリリースが延期、やはりヤバい模様

[note] Ubuntu24.04.1がようやくリリース

5/10/2024

[IT biz] Dellの顧客情報漏洩のお知らせが責任逃れ一色な件

やりやがった。そしてやられました。

先程、[Dellからの重要なお知らせ]とかいう怪しげな題名のメールが届いたのです。

詐欺かと疑いつつヘッダーを確認したところ、経路情報等からして珍しく本物らしかったので内容を確認したのですが、以前利用した際の私の個人情報が漏洩した、との極めて残念なお知らせでした。

調べてみると、2017年から2024年の間に利用した顧客の情報約4900万人分が漏れたそうです。私はその間にノートPCを購入していたので、ばっちり該当しています。

Dell曰く、漏洩したのは下記の情報だそうです。

・氏名

・所在地

・Dell製ハードウェアと注文情報

 (サービス タグ、製品説明、注文日、関連する保証の情報など)

併せて、財務情報・支払情報・Eメールアドレス・電話番号・その他機密性の高いお客様情報は含まれていない、との注意書きがありました。

つまり、Dellとしては氏名と所在地は機密性が低い、と主張しているわけですが、勿論そんなわけはなく、個人情報保護法に規定されている、保護されるべき個人情報に該当します。そして、Dellのような企業がその顧客情報(のデータベース等)をマーケティング等事業活動に利用していないわけはありませんから、諸々の規制の対象に該当する事にも疑問の余地はありません。漏洩時の個人情報保護委員会への報告義務等も発生している筈ですし、行政処分の対象になる可能性も否定出来ないものと思われます。

なのに、当該メール中では、一貫して「影響を受けた情報は限定的」で、「お客様への重大なリスクはないと考えています」等として問題を矮小化しようと詭弁を弄しています。謝罪はおろか、非を認める言葉すら一言もありません。

さらに、[Dellの対応]の項目では、調査・(今後の)対策・法的機関への通知を行った旨を告げ、「今後は状況を注視する」としています。要するに、顧客が被る損害に対する責任は何も取らない、というわけです。

まさしく無責任という他ありません。

何がどうすれば、こんな不誠実な対応が出来るのでしょうか。顧客の大半は納得しないでしょう。私も納得していません。強い憤りを覚えています。二度とDellとの取引はしないと思う位に。そんな人は他にも沢山いるでしょう。多分に、被害に遭った4900万人の相当割合がそう思っているのではないでしょうか。全く以て不愉快な話です。

Dell discloses data breach of customers’ physical addresses

4/25/2024

[IT] SNS上の投資詐欺について

ここ最近、Facebookや旧Twitter等のSNS上での投資詐欺について盛んに報道されています。

それ自体は以前からありふれた話でしたが、有名な企業経営者や起業家、また投資家等を騙るものが頻発したために、騙られた側の有名人側がSNSの運営側を非難したり、対応が不十分だとして訴える等の積極的な行動に出るのに併せ、各種メディア上で個別に一種のプロパガンダ的な発信をし始めたのがきっかけとなって広く報道されるようになったようです。

個々の詐欺の内容自体は以前からあったものと何ら変わりません。要するに非現実的なレベルの収益率を示して容易に莫大な利益が得られると騙り、投資資金もしくは手数料と称して金銭を騙し取るだけの話です。率直に言って騙される方がどうかしている、と言わざるを得ない程の使い古された稚拙なものです。

今回の詐欺は、それに著名な投資家の肩書がついただけで、勿論内容を見れば嘘だとすぐに分かります。専門知識など要りません。にも関わらず、それに騙される人が後を絶たないと言うのです。欲に目が眩む人というのは何時の時代も変わらず多いのですね。信じがたい事ですが。

昔なら、そういうリテラシーの低い人と詐欺師の接点があまりなかったために起こらなかっただろう被害が、SNSという個人同士が容易に濃密な情報のやり取りを行える場を得て顕在化してしまったのが現状という事なのでしょう。その意味では時代的に必然の結果だとも言えそうです。

その必然的な現状に対し、SNS業者等は否応無しに対応を求められているわけです。彼らは勿論この種の問題について昔から把握していたでしょうし、おそらく今のような、被害が看過出来ない程に拡大し、抜本的な対処を社会的に迫られる事態も想定していたでしょう。ですが、実際にはなかなか対応は出来ていないようです。そして、それを非難されている。サービスの管理運営者として、またそのサービスから収益を得る者として、責任を負っている以上はある程度はそれも仕方ないのでしょう。実際問題として、彼らがシステム的に対処する以外に有効な手段がないというのも事実です。

ただ、今回の話で一義的に非難されるべきは詐欺師です。SNSはあくまで不特定多数が相互に自由なやり取りをするコミュニケーションの場であって、SNS事業者は、その場上で行われるコミュニケーションの内容には原則として中立であるべき立場にあります。通信の秘密や表現の自由の観点からは、内容には立ち入るべきではないし、その義務があるとも言えます。

言い換えれば、SNS事業者による介入は、必然的に検閲の性質を帯びるのです。とりわけ、今回問題になっているような投資詐欺への対処のためには、個別のやり取りの内容をリアルタイムにチェックし、詐欺行為が行われているかどうかを判断する必要があります。

著名人を騙っているかどうかを判断するにも、前提として投稿される全ての画像や音声等を解析し、かつそれぞれの投稿者の素性を調べておき、本人かどうかを照合する必要があります。まさしく検閲です。

疑わしい場合のみチェックすればいいじゃないかと言う人がいるかもしれませんが、疑わしい場合というのを洗い出す時点で、全ての投稿データを調べる必要があるのです。調べなければ、疑わしいかどうかもわからないのですから。

当然、その処理には莫大なリソースが必要です。悪名高い中国の検閲システムと同等かそれ以上の事をしようというのですから当然です。国家権力の裏付けのない一民間事業者には、地理的な優位性も、SNS外のユーザーのバックグラウンドデータ等もありません。そもそも個別のデータをチェックし、詐欺かどうかを判断するのにも、技術的にも著しい困難を伴うでしょう。

NGワードを設定すれば済むような話ではないのです。通常の投資関連の話題と投資詐欺を正確に区別し、かつ厳密な本人確認もしなければなりません。完全な対処はおよそ不可能で、典型的なパターンをフィルタリングする経験的方法による対処もいたちごっこになるのは目に見えているし、事実上不可能と言ってもいいかもしれません。なお汎用的なAIは正確性が不十分なため、補助的にしか使えません。

 つまり、SNS上での投資詐欺へのシステム的な対処は、法的な面と技術的な面の両方で容易ならざる障害を抱えていると言えるのです。対処がなかなか進まないのも無理からぬところと言うべきでしょう。

今回の件で著名人やそれに倣うメディアはSNS事業者を非難しています。対応が遅い、甚だ不十分だ、等として。しかし、上記のようなSNS事業者の置かれた立場とその困難さを考えれば、それは理不尽な要求であり、やってはいけない事だと思うのです。あくまで要望のレベルに留めるべきでしょう。

詐欺行為に自身の名前や画像を利用される著名人の方々が不満を覚えるのは当然の事だとは思いますし、それにメディアが同調するのも自然な事だとは思いますが、詐欺を行っているのはあくまで個々の悪意あるユーザーであって、SNS事業者ではないという前提を改めて認識する必要があるのではないでしょうか。

個人的には、あの程度の、およそありえない投資話に騙されるようなアホな人を減らす方が現実的だと思いますね。あと、詐欺師を積極的に摘発するとか。

そういう事を思うのです。

3/20/2024

[biz] マイナス金利政策終了で開く地獄の釜

ようやく。長きに渡り続いたマイナス金利が終わりました。もっとも、事実上は既に終わっていて、それを今回ようやく追認したというだけの事なのですけれども。

当初は異次元の金融緩和の一環として、短期間の例外措置という体で始まった同政策ですが、その目的であった経済の成長が全く得られないまま、従って止め時を見失い、失敗を認められない政府・日銀の無能によって、延々と続いていた事は誰もが知っている通りです。

得られたものは株式等のバブルだけと言っても過言ではないでしょう。

一方、債権市場の機能喪失をはじめ、ゾンビ企業の大量発生に各種のバブル等、その副作用により決定的に取り返しがつかなくなったものの大きさも尋常なものではありませんでした。ただ、これだけ長く続けばそれも恒常的なものとなり、表面的にはそれなりに安定を見せるようになっていたのも事実です。バブルが安定というのもおかしな話ですが。

しかし、その歪で危うい安定もとうとう終わります。

原因は複合的ですが、直接の原因はインフレと言ってよいでしょう。ただ、目標としていた経済成長に伴うそれではなく、世界的な物価高と円安の二重要因による単純な物価上昇です。それによる国内経済への影響、特に国内消費の減少は既に深刻なレベルにあります。もはや輸出の増加では補えないほどに。

この状況を作り出した張本人である故安倍元首相と黒田元日銀総裁は、既に退場しました。安倍元首相が暗殺された事が、この異常な経済政策を終わらせる契機になった事に疑いの余地はありません。逆に言えば、氏が退場させられる事がなければ、今もまだマイナス金利は続いていた事でしょう。

それが良い事だったのか、悪い事だったのかは誰にもわかりません。個人的には、ここまで諸々の債務が膨張し、売ることも出来ない資産を日銀が抱えて身動きが取れなくなってしまっていては、多少時期が前後したところで大した違いはないだろうと思いますが。

ところで、マイナス金利解除の影響はどういうものでしょうか。既に各所で山ほど議論されているように、その予測は非常に困難です。言うまでもなく、各種の要素が絡み合って、時に増幅したり反発したりで混沌的な挙動を見せる関係にあるからです。例えば以下のような。

・円金利上昇=円の価値上昇

 主な影響 円高・円建て資産の価値上昇

      輸入コスト減・輸出減・国内物価低下・消費増

・資金調達コスト上昇 

 主な影響 投資減・経済活動縮小・倒産増・不動産市場縮小・バブル崩壊

      債権価値減

      金融機関増収(利息のみ)

上記の項目だけを見ても、各種の資産や通貨の価格への影響はプラスに働くものとマイナスに働くものが混在している事は明らかです。例えば、金利上昇により通貨単体として見た円の価値は上がりますが、国内経済の縮小や債権の価値下落(の見込み)によって経済活動と結合した資金としての円の価値は下がります。また同時に、消費の増加により資金としての円の価値は上がる側面もあります。さらに、為替市場を通じて投機的な動き等も加わりますし、貿易を行う企業はそれぞれレートを一定期間固定して実質的に独自の金利を用いた取引を行います。

本来なら、金利はその予測も制御も困難な経済活動を規律するための数少ないツールとして決定的な役割を果たす筈のものだったのですが、その喪失を政府・中央銀行が自ら進んでやってしまっていたのです。日銀があの状況、政府も債務で押しつぶされそうな現状にあっては、今更その機能を取り戻す事が出来るのかすら怪しいでしょう。

特に資金調達コストの増加は、およそ全ての商取引の現場に甚大な影響を及ぼします。長らくほぼ0だったものがそうでなくなるとなれば尚更です。

ゼロ金利解除と言っても、当然ながら金利が上がれば、1000兆円を越えて積み上がったあの国債残高は利払い費という形で政府の支出を破滅的に増大させます。他国のように数%の水準にまで上げる事は極めて困難というか、そこまで上がった時点で既に財政は破綻しているでしょう。1%の利払いにつき国家予算の1割超を持っていくのですから、数%となれば利払いだけで当然に支出の半分とかになります。無理です。借り換え前に償還すればいいと言うかもしれませんが、それはそもそも不可能です。

当然、その引受を担っている日銀も道連れになります。つまり国家の財政部門は崩壊します。従って、逆に言えば、破綻を避けるために金利は上げられない筈です。実際、それこそがこれまでマイナス金利が維持されてきた主たる理由なのですし。

しかし、だからと言って、例えば1%以内等の低水準に留めておけるものでしょうか。海外各国は当然のようにそれを遥かに超える水準にまで利上げをし、それでもインフレを制御出来ていないというのに。繰り返しますが、経済活動は元々制御困難なものです。今回の措置に追い込まれた原因たるインフレ等の流れが、金利を少々上げただけで落ち着くと楽観できる根拠は何もありません。

金利を本格的に上げる他に術がない、という残酷な現実が明らかになった時、政府・日銀は、どうするのでしょうか。何が出来るのでしょうか。何も出来ないのでしょうか。

要するに、溜まりに溜まったツケを払わされる時が、迫っているのかもしれません。

[gov] 日銀がゼロ金利放棄

2/01/2024

[biz] トヨタ本体も消えそう

・・・と言ってしかるべき状況になったわけですが。 

流石の影響力というか資金力というかスポンサー力というか。日野・ダイハツの場合と比べ、非難・追求の動きが明らかに鈍いようです。

今回不正が発覚したのは豊田自動織機で、内容は前2社と同じく検査不正、すなわち性能偽装による認証の不正取得です。対象のディーゼルエンジンを搭載する10車種が生産・出荷停止となり、その中にはランクル・ハイエース等の主力車種が含まれています。特にハイエースはトヨタを代表する主力中の主力です。やっぱりというか、ついに来たかとかいう感じがしますね。

豊田自動織機は形式的には子会社ではありますが、周知の通りそれは形式的なもので、実質的にトヨタ本体の一部、すなわち今回の件はトヨタ本体の不正と言えるものです。対象車種からもそれは明らかです。

そして、不正の内容やその原因たる企業体質等はまず間違いなく日野・ダイハツの場合と同様であろうと思われるわけです。というか、2社の体質等はトヨタ本体の体質・方針が波及したものと考えるべきでしょう。本体が子会社を支配し、人事権や組織の編成権も握っている以上、その逆はあり得ませんし、2社が本体の影響を受けず独立に同体質になったというのはもっと考えられません。

まあ、ぶっちゃけ日野とダイハツのあの上から下まで腐り切った状態を見せられて、その親玉であるトヨタ本体は違うと思える人なんて、最低限の認知・判断能力さえあればありえないでしょうけど。 やっぱりね、と納得するだけの事です。

そうである以上は、トヨタ本体も当然に日野・ダイハツと同様の末路を辿って然るべきなわけです。少なくとも、そうでないと考える理由はなく、そうだろうと予想する理由・前例は既に十分です。

そもそも、今回対象になった豊田自動織機はトヨタの巨大な開発部門のごく一部に過ぎません。その他の各子会社や本体の開発部門・検査部門等でも同様の不正はまず間違いなくあったでしょう。少なくともその疑いは非常に強い。これから広範に捜査・摘発がなされて然るべきだし、そうなれば山ほど違法行為が発覚するだろうと思われます。当然予想される結果として、世界有数かつ国内トップの生産台数を誇る自動車メーカー、その生産の全部とまではいかずとも、相当部分が停止する事になるものと思われます。信用も失墜します。

その影響は言うまでもなく甚大です。トヨタ側も役員・部門・各社員共に保身に走るだろうし、利害関係者は追求に及び腰にもなるでしょうね。何しろ自分が失職したり、会社・部門が潰れたりする可能性があるわけですから。トヨタレベルの得意先が消滅でもすれば、立ち行かなくなる会社も多々あるでしょう。

お得意様No.1の攻撃に及び腰になったメディア各社はじめ、国交省や財界、全国・全世界に散らばる数多の取引先等がこぞって忖度という名の擁護・自己防衛に励む姿が目に浮かぶようです。

クソ喰らえです。スペックの偽装などという自動車メーカーとして絶対にやってはいけない犯罪を組織ぐるみで犯し、それが一部発覚してなお改めようとしない姿勢は到底容認できるものではありません。お得意のカイゼン、その対象は自分の目先の利益になる事だけだったようです。

そうであれば、この惨状も、TPSの結果と言えるのでしょう。果てしなく思えたカイゼンの行き着いた先が粉飾まみれ、犯罪組織になっての破滅とは、皮肉が効き過ぎてませんかね。

それを擁護するメディア・政財界・取引先等も同罪と言う他ありません。ユーザーや社会の事なんかよりトヨタ様の方が、正確にはトヨタ様との商売の方が大事って事なんでしょう。そんなに大事なら、一緒に破滅すればいいと思います。

[biz] 日野に続いてダイハツも消えそう

[biz] 日野自動車、全車販売不能・・・まさか廃業?