5/31/2023

[biz] 日野自動車がトヨタ離脱、三菱ふそうに吸収

日野自動車がトヨタから見捨てられたとか。現実は非情です。

エンジンの型式指定取得に際しての検査不正が発覚、多数のエンジンについて型式指定が取り消され、複数車種につき事実上販売が不可能になってしまっていた日野自動車ですが、トヨタグループから切り離される事になってしまいました。

分離後は三菱ふそうと一緒になるんだそうで。状況から言って、事実上の三菱ふそうによる日野自動車の吸収になる事は明白です。不正発覚前なら想像も出来なかったような話ですね。

問題の型式指定については、その後主力の大型車関連につき再申請を行い、販売再開にこぎつけた車種も出ていたのですが、23年4月時点でまだ以前の1/4は販売出来ない状態だったそうです。完全な回復まではまだ時間がかかる事は明らかでしたが、それを待つ余裕はない、という事だったのでしょう。

それも当然というか、商用車なのだから、当然顧客は事業者なわけで、事業上必要な時に供給出来ないメーカーからは当然顧客は離れるでしょうし、さらに一度離れた顧客が戻ってくることもほぼ無いでしょう。結局のところ、信用を失ったメーカーは顧客に見放される、というだけの事です。そして、そんな状況に陥った日野自動車には、もはや自力で事業を維持出来る見込みが十分持てなかったという事なのでしょう。元々単価が高い一方で顧客数は少ない業界ですからね。リプレースのサイクルも長めですし。

それにしても、相手が三菱ふそうですか・・・。大半の人がそうでしょうけど、どうしても不祥事がちらつきます。4社しかない国内大型トラック業界内の序列的にも下位なのだし、負け組連合な感は否めません。それでも台数で言えばこれから首位になるんでしょうけど、信用とか企業としての評価は最低、ですか。どうなるのやら。

もっとも、まだ三菱ふそうの親会社であるところのダイムラーとトヨタを含む4社間で覚書を交わした段階で、時期等の具体的な条件はこれから決めるという話ですから、二転三転するかもしれませんけどね。内外の反発も半端ではないでしょうし。

[biz] 日野自動車、全車販売不能・・・まさか廃業? 

[biz] らくらくホン消滅

だそうで。南無。

シニア向けフィーチャーフォンの先駆けとしてかつて富士通から発売されたらくらくホンですが、その後のフィーチャーフォン自体の消滅に伴うスマホへの移行を経て、海外メーカーによる国産スマホメーカーの駆逐に伴い著しい不採算に陥り、テレビ関連事業等と同様、あえなく富士通から分離売却されていました。

事業売却の前後を通じて、ドコモ及びau向けに端末を供給し続けてはいたものの、その後も皆無に等しいブランド力から予想された通り事業規模が縮小していました。そしてついに事業会社であるところのFCNT株式会社が、中間持株会社のREINOWAホールディングスおよび端末製造を担う兄弟会社ジャパン・イーエム・ソリューションズと共に民事再生を申請するに至ったわけです。

なんだかんだで発売から20年以上。大きな文字とアイコンを基本にした見やすいUIを採用し、あえて機能を限定して操作性及び可用性を上げるその設計思想はフィーチャーフォンの一つの到達点であった事は間違いありません。しかし、基本メールと通話だけできればよかった時代が遠く過ぎ去り、たとえシニアであってもキャッシュレス決済や各種SNS等、人それぞれに多種多様な機能の利用がなされ、しかもそれらが頻繁に入れ替わるような現状にあっては、その方法では広く利用者のニーズに応える事は困難というより不可能になっていた事は明白でした。

一方で、らくらくホン等で採用されたものと類似のUIはandroid系のスマホの一部では一つのモードとして採用されており、望む人はそれに切り替えれば良い、という形に落ち着いたようです。いつまで残るのかも怪しいですが、もはやそちら方面のニーズにはそれで十分なのでしょう。その意味で、ハードウェアとしてのらくらくホンは既に使命を終えたと言えるでしょう。端末事業については事業の引き取り手も今の所ない模様ですし、本当に終わりという事になりそうです。どれくらい残っていたのかも不明ですが、もしいたなら、開発者の方々にはお疲れ様でした。

なお、今回破綻したFCNTでは、かつて富士通で製造されていた他の携帯端末事業も引き継いでおり、その中には当然通常のスマホブランドであるところのArrowsも含まれていましたが、こちらも同じく終了という事になります。また、富士通時代の末期には一足先に見切りを付けた東芝から携帯端末事業(REGZA phone等)を引き継いでもいましたが、これも同じく終了。東芝から富士通への売却がされた当時は、むしろこんなに長引くとは思いませんでした。当たり前ですが、事業を終わらせるのも大変だという事ですね。

ところで、FCNTの持株会社のREINOWAホールディングス以下が倒産したわけですけれども、そのさらに親会社のポラリスについてはどうなんでしょうか。結構な損失を被っている筈なんですが・・・。REINOWA近辺については全然情報がなくて、どれくらいの影響があるのかよくわからないんですよね。

周辺の情報から推測すると、まず富士通からポラリスへの売却額は譲渡した70%持分に対して当時300億とか言われていて、その後全株式売却もしたので総額はおよそ450億程度で、その株が全部0になった筈です。一方ポラリス傘下のファンドの総額は公式HPで見る分には1900億とかなので、FCNT関連は少なく見積もって1/4位の比率があった筈なのです。そんなに吹っ飛んでも大丈夫なものなのでしょうか。さて。

5/14/2023

[note] Ubuntu23.04にアップグレード

半年に1度のUbuntu更新の時期がやってきました。

今回のバージョンは23.04でコードネームLunar Lobster、月のロブスターさんです。いつものようにupdate-managerから。今回からインストーラ等がsnapパッケージ化された新バージョンに変更されているそうですが、アップグレードについては関係ないらしく、特に変更もなく、もちろん問題もありません。いつものように待つこと数時間、特にエラーもなく終了。

問題らしい問題はただ一点だけ、初回ログイン時にPicom(Xコンポジター)がクラッシュした旨エラーが表示された位でした。何かゴミが残ったんでしょうか?それ以外は特に問題なし。日本語入力も問題なし。一番気になっていたところの、22.10で悩まされていたサウンド関連の問題も、とりあえず解消されたっぽいです。一安心ですね。

<関連記事>

[note] Ubuntu22.10へのアップグレードでオーディオの不具合に遭遇

<追記>

Picomのクラッシュメッセージはその後も毎回表示されます。軽く調べたところでは、同様の事象が複数報告されていて、既にバグ認定もされており、現在対処中だそうです。やれやれ。

<さらに追記>

Picomのクラッシュメッセージが鬱陶しいので対処しました。公式はいつものように次バージョンまで放置を決め込んでいる模様ですし。

そもそもPicomとはなんぞや、というと、ウィンドウの透過等のエフェクト類を処理するcompositorで、要するに見た目部分の処理モジュールです。もともとLubuntuを使用していて余計な処理は減らしたい身としてはこの手のモジュールは一利もなしなので、無効化してしまう事にしました。

修正点は2点。 

1点目はメニューから。[設定]-[LXQt設定]-[セッション]でLXQtセッションの設定ウィンドウを開き、[基本設定]中の[LXQtモジュール]の中から[Picom (Xコンポジター)]のチェックを外し、さらに[停止]ボタンも押して止めます。

2点目はコンソールから。autostartに移動します。

$ cd /etc/xdg/xdg-Lubuntu/autostart/

このフォルダ中にあるlxqt-picom.desktopをpicom.desktopにリネーム。

$ sudo mv lxqt-picom.desktop picom.desktop

以上の後、再起動すればクラッシュメッセージは出なくなりました。なお、1点目の変更のみ行い、2点目のリネームをしない場合も試してみましたが、その場合もクラッシュメッセージは出たので、単純に多重起動でバッティングしているとかいう訳ではないようです。 なんなんでしょうね。

ともあれ、この件はこれでおしまい。やれやれです。

5/13/2023

[law] 生成系AIに手を出す前に

 AI関連が色々騒がしいこの頃ですが。法の統制が追いつくはずもなく、無秩序に拡大する利用に一旦ストップがかかる流れになったようですね。

Chat-GPTにしろ、各種の画像生成ツールにしろ、法的な面は無論、実用上も問題だらけの現状では致し方ないところというべきでしょうか。

一般にこの文脈でAIと呼ばれるプログラムは、その全てが機械学習に基づくものです。数理モデルと学習データ及びその学習方式(数理モデルのパラメータ決定方法)の組み合わせからなるという事ですが、情報量的に見て出力されるデータに対しモデルの構造や学習方式の影響する割合は相対的に小さく、実質的な情報の大部分は基本的に学習データに依存します。それこそが最近の生成系AIの特性であるところの多様で情報量の多い出力を裏付けているのです。当然ながら、旧来の、構造が固定された比較的少数のパラメータをフィッティングさせるようなモデルを用いるものは含まれません。

そのため、学習データが正しければ、その出力も原則として正しいものである可能性は高くなりますが、逆に学習データに抜けや誤りがあれば、出力にもそれが反映されてしまいます。学習データ内に矛盾があれば、その出力も矛盾に満ちたものになるわけです。

また、学習データに個人情報や機密情報等、センシティブな情報が含まれる場合も、出力にそれらの情報が含まれてしまいます。これを避けるためには学習データとその出力プログラムの双方で正確に区別・管理出来るような仕組みを導入しておかなければなりませんが、その実現は容易ではないでしょう。膨大な学習データを全て人力でチェックしてマーキング等をしなければなりませんし、そんな手間をかけるだけのメリットを見出す事は難しいでしょう。かと言ってその手間を惜しめば、あっという間に情報漏洩で大損害、に留まらず、法的にも個人情報保護法違反やら不正競争防止法違反やらに問われてしまうだろうわけです。

画像生成等についても同様ですが、この場合にはさらに厄介な問題が生じます。著作権です。画像生成の場合、学習データは既存の画像という事になりますが、著作権者が放棄した、というのでもない限り、それらの画像には原則として著作権が付随しています。

言うまでもない事ですが、日本国内の著作権法においては、著作権者以外による著作物の扱いには様々な制限がかかります。もちろん著作権法上では生成AIに関して直接の規定はまだ存在しませんし、判例もありませんが、だからと言って著作権法の適用外になるわけもありません。いずれ訴訟も起こるでしょうし、法改正もなされるでしょうけれども、その時になって巨額の賠償責任を負うことのないように備えておく必要はあるでしょう。

例として、画像生成の場合について考えてみます。画像生成AIで生成されるものは画像データです。その点で、著作権法上では"絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物"か、"写真の著作物"(著作権法10条4,8)に準じて扱われるべきものです。そして、出力される画像は、学習データに用いた画像を変形・翻案したものと言えるでしょう。すなわち、学習データ画像の二次著作物に準じて扱うべきものと言えるだろうわけです。

であれば、まず前提として、原著作権すなわち学習データ画像の著作権は出力画像に及んでいる事になります。従って、学習データ画像の著作権者の同意がない限り、複製や公表等は出来ない事になるわけです。同意のないままそれらの公表・頒布等を行えば、著作権法違反にあたるものとして扱われる可能性が極めて高いと言えるでしょう。

また、原著作権者には、同一性保持権(著作権法20条)が認められています。そもそも同意なしの改変・翻案等は許されていません。つまり、学習データ画像の著作権者の同意なく画像生成を行った時点で著作権法違反にあたる可能性がある、と言えるわけです。なお、AIに学習データを入力する事自体は、技術開発や情報解析として認められており問題ありません。(著作権法30条の4)画像が生成・出力された場合にその著作権が問題になるという事です。

ところで、私的利用ならいいのでしょうか?私的利用の場合は一般に複製権(著作権法30条)、すなわち著作権者の許可なく複製する事が認められていますが、翻案や改変については認められてはいません。実際、ゲームの改造等で私的利用のために改変等をした場合に違法と認められたケースもありますし、私的な作業であっても違法のおそれがないとは言えないでしょう。ただ、実際には複製に準じて問題なしとされる事の方が多いだろうとは思われますが。

斯様に、画像生成一つとっても、少し考えただけで様々な違法の恐れがあるわけです。文章や映像、プログラム等その他のメディアもおよそ殆どが生成AIの対象に含まれていますが、それぞれに同様の、あるいは特有の問題が山積みになっています。結局のところ、安易に手を出していいものではありません。少なくとも金銭のやりとりが絡むような場面ではとても危なくて使えないでしょう。モラルの問題ではなく、法的なリスクの観点から、一旦ストップがかかるのも致し方なし、と言わざるを得ないのではないでしょうか。

5/11/2023

[note] androidタブレットのメモリ容量詐称急増にうんざり

世間的にはオワコン扱いなタブレットですが。個人的には、比較的安価な、主に中華製のAndroidタブレットを長らく愛用していまして。これが、大体2〜3年程度で高確率でバッテリーが膨張するかヘタるかするので、結構頻繁に買い替えが必要になるのです。なのでそれに備えて、定期的にその主たる購入窓口になっているAmazonで現行機種について価格等をチェックしているのですけれども。なんか最近、メモリ容量を水増し表示する業者が激増してるんですね。これがとても迷惑です。

どういう事かというと、まず前提として、タブレットに限らず計算機には1次記憶すなわち揮発性の読み書きが高速なRAM(DRAMやSRAM)と、2次記憶すなわち不揮発性のストレージ(SSDやHDD)がデータを記憶する装置として備えられています。で、計算機のスペックを表示する際には、通常1次記憶のDRAM容量とストレージ容量を区別し、それぞれの容量を併記する方式が標準とされています。この内、アプリ実行時に問題になるのは基本的に前者のDRAM容量の部分なので、こちらの数字がタブレットの仕様として最も重要な点にあたり、従ってチェックの際にはこれを主に見るわけです。何GB未満は足切り、とかそんな感じで。多い方がいい事は言うまでもありません。

例: DRAM4GB,SSD64GBの場合は、4GB+64GB や 4GB RAM + 64GB ROM等 

※なお、SSD等もRAMですから、ROM(Read Only Memory)表示は誤りなのですが、2次記憶媒体を示す表示としてよく使われてしまっています。まあ分かるから別にいいじゃないかという事なんでしょうけれど、困ったものですね。

なのですが、最近になって、実装されているDRAMの容量より大きい容量を表示、記載する品が激増しているのです。本来4GBなのに8GBとしていたり、8GBなのに14GBと表示するだとかです。

これはどういう事かというと、仮想メモリを使っているのですね。この記事を読みに来ているような人には説明不要でしょうけれども、仮想メモリというのは、プログラムの実行の際にメモリ容量が足りなくなった場合に2次記憶の領域(の一部)を1次記憶として使うものです。swapも仮想メモリの一種ですね。元々メモリが少なかった時代にプログラムが1次記憶に入り切らないような事態になっても破綻しないようにするための苦肉の策として導入された機能ですが、メモリ容量が何桁も増えた今になっても、それと競うように肥大化したプログラムに対するフェイルセーフ的な意味で生き残っているものです。

当然ながら、DRAMと仮想メモリの割当先であるフラッシュメモリとではその読み書きのスピードは桁違いに違います。とても同じように扱えるものではありません。用途にもよりますが、大抵の場合、仮想メモリ領域を使用するようになった途端、ほとんどフリーズする状態になってしまうでしょう。同一視など狂気の沙汰です。仮にそのつもりで使えば地獄を見るでしょう。つまり、仮想メモリをメモリ容量に加えてはいけないのです。少なくとも端末の性能表示としては虚偽表示にあたります。

加えて、仮想メモリとしてSSDを使用すれば、当然膨大なデータの書き込み負荷がSSDにかかります。言うまでもなく、SSDは書き込み回数に制限があります。数万回以上の書き換えに耐え得るSLCならまだしも、現在の主流はMLCですらないTLCで、下手すればQLCやそれ以上の、耐久性が著しく低い構造のフラッシュメモリが使われている事も珍しくありません。安価な中華タブのSSDに耐性の高いものが使われているわけはなく、書き換え耐性は1セル当たり概ね千回程度でしょう。その上PCに搭載されているものに比べてタブレットのSSDは容量にあまり余裕がない事が多く、数十GBの空き容量がせいぜいでしょうし、実質的な書き換え容量は10TBWにも満たない事が多いのではないでしょうか。そうと仮定すれば、毎日数GB程度仮想メモリ領域が使用されただけで、3年もすればそれだけでSSDが壊れてしまう事になります。つまり、タブレットの寿命が著しく縮まってしまうのです。

つまるところ、仮想メモリを有効にして販売する事は、処理性能面と耐用年数面の両方で優良誤認を惹起する違法なものと言わざるを得ないのです。禁止されるべきです。今すぐ。

仮想メモリの性質を理解している人なら分かるからいい、というものでもありません。実メモリのサイズを逐一確認しなければならないのは極めて面倒で、手間もストレスもかかります。 只でさえAmazonの検索画面は見づらいのに、そんな事までやってられませんよ。正直見る気が失せます。Amazonには一刻も早い対処を求める次第です。まあしばらくは買い換える予定はないので、次にタブレットが壊れるまでにしてもらえればいいんですけれども。

ちなみに、本記事を書くに際して、Amazonでの検索結果を集計してみました。検索ワードは"Android タブレット"で、ソート方法は標準の"おすすめ"、でブラウザのCookie等はクリア済で検索しました。

結果、検索結果に表示された48件の内、商品の見出しとサムネ画像のいずれかで仮想メモリをメモリ容量に加えて表示していたものは16件、全体の1/3にも上っていました。 さらに16件の内、メモリの内訳すなわちDDRメモリの容量と仮想メモリの部分の容量を表記していたものは5件に過ぎませんでした。残りの11件は、仮想メモリを容量に入れている事すら隠していたのです。1件を除き、各商品の本文(商品の説明)中には流石に内訳の記載がありましたが、そこまで確認する人はどれくらいいるのでしょう?

なお、16件の販売業者名と件数の内訳は以下の通りです。 見事に全部中華系です。公式っぽい名前のセラーもいますね。中華タブなので当然ではあるのですが、やはり中華業者にモラルを期待する方が馬鹿だと言うことなのでしょう。今更な話ですが、残念です。速やかに排除される事を願います。

Teclast Authorized Store  3件

Mobile Global JP 2件

Headwolf Official Store 1件

Bvhandy-JP 1件

Blackview日本公式ショップ 5件

OSphone shop-JP 1件

Nanma Direct 1件

Tbshop-JP 2件

[note] AmazonのPrime Dayが普段の価格とほぼ同じっていうよく知られた話

5/02/2023

[biz] 貧すれば鈍す。Softbank、PayPayサービス改悪

QRコード決済国内最大手のPayPayが大幅にサービスを改悪したそうですね。

具体的には、口座への振り込みに際し、他社のクレジットカードを使用する場合等に多額の手数料を取るようになるんだそうです。

手数料の割合は、概ねクレジットカード決済の手数料と同レベルで、ポイントの還元率等より遥かに高く、利用すればするほどユーザは損をする事になりますから、事実上他社クレジットカードの利用拒否という事になりますね。決済手数料の転嫁は信販会社との関係では規約違反な筈で、信販会社から契約を打ち切られてもおかしくない筈ですが、いいんでしょうか?まあPayPay側としては打ち切られてもいい、という判断なんでしょうけれども。

何にせよ、今回の施策は、自社サービスへの誘導による増収と、誘導に乗らないユーザの締め出し又は搾取、すなわちコストの削減が目的である事は疑いようがないところです。赤字を減らそうというだけの話で、その意図自体には特におかしな点はありません。

ただ、この種の、純粋にユーザにとって不利益にしかならない、しかも無視出来ない程大きな変更というのは、当然ながらユーザの強い反発を招き、他社サービスへの乗り換え・流出の動機になり、サービス自体の縮小、引いては売上・利益の低下を招いてしまいます。下手をすれば消滅すら有り得ます。そうなってしまえば元も子もありません。なので、通常は流出が起こらない状況、すなわち他に選択肢がないレベルでのサービスの寡占に成功した場合にのみ行われるものです。

しかるに、PayPayはQRコード決済の中ではトップシェアではありますが、キャッシュレス決済全体で見ると、クレジットや交通系、またそれらをまとめたスマホ等でのタッチ決済等も一定の支持を得ており、それらを圧倒する程の地位は築いていません。さらに決済手段全体で見れば、当然現金とも競合する状況にあります。

それら競合との比較で見れば、元より利便性ではタッチ決済には及ばず、汎用性では現金に及びません。普及度合いについても、QRコード決済の強みであるところの店舗側での導入コストの低さから利用可能な店舗の数では優位ではあるものの、現金以外はPayPayだけしか使えないような店舗はごく一部にとどまり、そもそもPayPayが使えない店舗も少なくはありません。通用性の面では現金とは比べるべくもないという事です。というか、規格乱立の弊害で、現金以外には一本化すら困難なのが現状です。実際問題、PayPayをよく使うユーザですら、現金や他の決済手段と併用している人が大半でしょう。

つまるところ、寡占というには程遠く、ユーザは自由に他の決済手段への切り替えが可能な状況にあります。

こんな状況で、今回のような強烈なインパクトのある改悪をすれば、当然にユーザの流出を招く事は火を見るより明らかで、それはPayPayの側もわかっている筈です。にも関わらず今回の改悪に踏み切った、という事は、そうせざるを得ない程、財務状況が悪いという事でしょう。ある程度ユーザの流出を招いたとしても、コストを削減しなければならない程に追い詰められているのではないでしょうか。

周知の通り、PayPayはこれまで無理をしてきました。持ち出しで大規模な還元サービスを乱発し、現状のシェアの確立と引き換えに積み上げた負債は数千億レベルで、毎年の決算を見ても営業損失が売上高を上回る惨状です。利益剰余金が年間売上を上回るというのは、いくら成長中の事業と言っても限度があるというべきでしょう。普通は株主が許さないし、むしろなぜ継続出来ているのか不思議な位です。

加えて、PayPayの莫大な損失を補填し続けて来た親会社のSoftbankグループは、周知の通りここ数年投資に失敗して、こちらはこちらで二年連続で兆単位の空前の損失を計上する体たらく。グループ各社に財務体質の改善を指示している事は容易に想像されます。とりわけ赤字事業への風当たりは強烈でしょうし、おそらくは、PayPayには年600億規模の損失は容認出来ないと強く通告されたのではないでしょうか。数年以内に黒字化しろとか言われたかもしれませんね。いやまあむしろ当たり前の話ではあるんですが。Softbankにしてみれば、成長が見込める数少ない事業なのですし、藁にもすがりたいだろうこの状況下では希望を持ちたくもなるでしょう。だからといって無理が通るわけではないのですが・・・。ユーザは信者でもボランティアでもないのです。

こういったPayPayの置かれた状況を鑑みるに、結局のところ、今回の改悪は、ユーザの流出と目先の財務の間で進退窮まった結果、前者を取った、という事ではないかと推測されるわけです。貧すれば鈍す。寡占する前にこんな事をしても、焼け石に水か、下手すれば油を注ぐような事になりかねないでしょうに。PayPayとしては背に腹は代えられない、という事なのでしょうけれども、客観的に見た場合、決済サービスにとってはむしろユーザの方が重要なように思えますし、単に目先の金を取ったという方が適切なのかもしれませんね。だとしたら、もうPayPayは終わりが近いのかもしれない、と半ば確信をもって想像せざるを得ない次第なのです。

3/31/2023

[biz] Virgin Orbitが資金調達失敗でほぼ全従業員解雇

航空機を利用した衛星打ち上げ事業を手掛けている、米Virgin Orbit社が資金繰りに窮して従業員をほぼ全員解雇、事実上の破綻に追い込まれてしまったそうです。

同社は、Richard BransonのVirginグループで宇宙事業を手掛けるVirgin Galactic社のスピンオフ社ですが、売上的に当初から事業が回っているとは到底言えず、少なくとも追加出資を受けなければ運転資金も足りないという自転車操業ですらない惨状だったところ、それに加えて、少し前に主要出資者のBransonが見切りをつけ、追加出資をしない旨宣言されてしまい、あっという間に窮地に陥ってしまいました。慌ててBranson以外の新規出資者を探していた同社ですが、当然ながら出資者を見つける事は出来ず、今回の措置と相成ったわけです。普通に破綻ですね。お疲れ様でした。

同社が今後再生を目指すのか、精算してしまうのかは定かではありませんが、元々収入が無きに等しい位だったのだから、経営的には元々破綻していたと言うべきところですし、むしろよくここまで持ったと言う方が正しいのかもしれません。ろくに事業収入が得られないまま際限なく資本を食いつぶした挙句破綻した、ということで、三菱重工のMRJと似たような感じですが、一応打ち上げに成功した案件も少ないながらある点でこちらのほうがいくらかマシだった、とは言えるかもしれません。

周知の通り、ここ最近の金融環境は急激に厳しくなっています。欧米での金融緩和の終了、続いてインフレ対策のための利上げが続き、米国中心にベンチャー関係に近く、不安定なスタートアップへの資金供給を担ってきた部類の金融機関の破綻も相次いでいる。当然、この種の事業が成り立っていない、話題先行型の企業の資金調達はコストも含め極めて厳しくなっているだろうし、その事が同社の破綻の決定打になった面はあるでしょう。その意味で、運が悪かったと言えなくもないかもしれません。

しかし、そもそもの話として、追加出資が得られなければ立ち行かなくなるような事業の構造は正しいとは到底言えないわけで。需要が不安定な位なら全然ましな方で、本来淘汰されて然るべきだろう採算性の壊滅的な事業や、それ以前に事業の立ち上げが許されるべきではなかったと言わざるを得ない程に見通しが甘いものも当たり前に見られます。そんなもの、破綻して当然でしょう。ですが、そういう、耐震性能0の高層ビルのような企業が山ほどあるのが現状なのです。それらが、雪崩を打って崩れ落ちようとしている。

この種の、ただ徒に資本を食いつぶすだけの赤字事業の存在を許容してきた主たる要因であるところの、資金供給の名目の下に資金調達があまりに容易であった金融環境、そこに溜まったツケの大きさとその精算がもたらす応報の厳しさに、改めて戦慄を覚えます。しかし放置すればそれはさらに肥大化するだけである事もまた明白、そろそろ覚悟を決めるべきかと、半ば諦めとともに思う次第なのです。 

 Virgin Orbit fails to secure funding, will cease operations and lay off nearly entire workforce

3/18/2023

[sci] 新型コロナウイルスの第一被害者はタヌキらしい

タヌキが犬の親戚だと知ってました?知ってた?そう。。。

とある英文記事を読んでいると、Racoon dogという言葉が出ていまして。えっこれタヌキ?と思って調べてみるとやはりタヌキでした。直訳するとアライグマ犬、という事ですね。その見た目からして、アライグマに近い種なんだろうと勝手に思っていたのですが、生物学的に見るとタヌキはイヌ科に属していて、アライグマの属するアライグマ科ではないんだそうです。意外でした。生物に詳しい人なら常識なんだろうな、とか。

それはそれだけの話なんですが、 その読んでいた記事というのが、新型コロナウイルスの起源を遺伝子的に分析したら武漢の市場で売られたタヌキの可能性が高い、というもので。またタヌキが風評被害を受けそうな話ですね。周知の通り、武漢はコロナウイルスの流行が始まった地であり、そこにあったウィルス研究所、及び家畜市場は状況証拠的に見てコロナウイルスの発生地である事が確実視されてきたところですが、そこに物的証拠が追加されたということです。

具体的には、コロナ発生後中国政府により閉鎖された後の家畜市場について、調査団はその壁や床、ケージ等をモップ等で拭って採取したサンプルを確保しており、それを分析したところ、コロナウイルスと共に動物のDNAが検出され、その大部分がタヌキのものだという事が判明したんだそうです。

壁を拭うだけでそんなに出るくらいだから、市場内で蔓延していた事は確実でしょうし、これをもってタヌキが宿主だと断言できるわけではありませんが、タヌキが主たる宿主の一つであった事はほぼ間違いないだろう、というわけですね。そりゃそうでしょう。

しかし、この分析がどれくらい意味があるかというと微妙ですね。というのも、これでコロナウイルスの起源が特定できたわけでもなく、その感染拡大経路が判明したわけでもありません。市場に持ち込まれたタヌキがウイルスを運んで来たのか、市場に出入りする他の生物(人間を含む)が持ち込んだのかもわからないのです。同じ場所にあった、というだけなのですから。

その意味で、ウイルスの起源に関する他の仮説、すなわち武漢の研究所からの漏洩説やコウモリ起源説等が否定されたわけでもありません。実質的にはあまり変わらず、従来説にタヌキ起源説が追加された程度でしょうか。強いて言えば、コウモリ起源説がいくらか弱まる位でしょうね。

証拠は既に中国政府により隠滅され、それを検証する術はほとんどない事にも変わりありません。今更言うまでもない事ですが、それらを知ることができれば、どれほどの知見が得られ、将来の被害への備えが出来たことでしょうか。おそらく、真実が明らかになる事はこれから先もないのでしょう。それら全ての喪失、それこそが中国政府の犯した過ちであり、取り返しのつかない罪であると、改めて最大限の無念と非難を込めて断言せざるを得ません。

今回の話にしても、単にタヌキがコロナウイルスと結び付けられ、ほとんど無意味に忌避されるだけで終わるのではないでしょうか。タヌキが悪いわけではなく、単なる被害者の一つに過ぎないのにも関わらず。虚しい事です。

New Evidence Supports Animal Origin of COVID Virus through Raccoon Dogs 


3/09/2023

[pol] 虎を失った狐

高市早苗氏が公文書記録を捏造と主張している件ですが、見るに耐えませんね。

詳細は今更繰り返すまでもありませんが、大まかにまとめると次の通り。同氏が総務相であった際の、省内で特定のテレビ放送局に関係して放送に対する公権力の中立性に抵触する氏の発言、有り体に言えば暴言と言うべき類のものが記録された文書が公表され、国会の質疑の中で追求を受けた際にその文書自体が捏造だと断言し、後にその文書が総務省により行政文書、すなわち公文書である事が確認された後も、内容が不正確だ、等と言い方を変えつつもなお捏造と主張し続けている、というものです。

内容自体は、周知の通り故安倍氏と同じく右翼の中でも最強硬派の代表として知られる高市氏の過去の発言を踏まえれば、まあそれ位の事は普通に言うだろう、というようなもので、逆に言えば今更それが判明したところで驚くにはあたらない程度のものです。おそらく当初から氏が本文書の記載を事実と認めていたとして、言い過ぎだったと陳謝撤回すればそれで済んだでしょう。実際に圧力がかかっていなければ、ですけれども。

が、公文書と判明する前に、もし文書が本物であれば議員辞職する旨明言してしまい、その辞職を回避する、すなわち保身のために、文書自体が捏造であったとの主張を撤回出来なくなってしまったのですね。

状況は以上の通り。次に、氏の主張の真偽について検討してみましょう。

まず、氏の主張するところの本文書(及びその記載事項)が捏造である旨については、その主張を裏付ける客観的な根拠は何もなく、従って考慮に値しないと言わざるを得ません。氏の主張も、"そんなレクを受けた筈はない"等、根拠は自身の記憶のみ、しかも"筈だ"とか曖昧な部分すら残っています。証拠性というか、第三者に対する説得力は一切ないわけです。明らかに覚えているだろう事柄についてすら都合よく覚えていないと主張する政治家が記憶にないと言ったところで、何の意味もありません。

一方、文書の内容、すなわち氏の発言等については、捏造を疑わせるような点は見当たらないわけですね。仮に捏造であるとしてみましょう。公文書である事ははっきりしているのだから、その作成者は官僚、しかも大臣とのやり取りに同席する程度の高官です。文書の正確性は間違いなく高いでしょうし、その重要性からして省内の多数の部署間で共有もされ、多数の目に晒されていたでしょう。そのような文書の、それも最も重要な部分である大臣の発言、しかも行政としては何ら必要性も必然性もない類のものを、総務省の高官がわざわざ創作捏造してねじ込んだ、という事になります。有り得ません。

氏の修正された主張であるところの、文書の不正確性についても、あったとしてせいぜい軽微な表記ミス程度でしょうし、発言の主旨に影響を与えるほどのものとは到底考えられません。

結局のところ、氏の主張には根拠がなく、一方の文書の真性については根拠は十分でありかつ否定する根拠もない。高市氏は本件の争点に関してはもう詰んでいると言わざるを得ません。にも関わらずなおも自身の主張を通そうとする氏の試みは無謀という他ないでしょう。

意図的なのか、それとも忘れているのかは不明ですが、解せません。積極的に過激な主張を行う事で知られ、従ってこの種の舌禍への対処については慣れている筈の高市氏が、何故こんな無謀な振る舞いに及んでしまったのでしょうか。

多分に、高市氏は強力な後ろ盾だった安倍氏がいた頃のやり方を忘れられないのではないでしょうか。本件文書は、故安倍首相による官僚の統制が強力に作用していた時期のものです。おそらく、安倍首相が存命であれば、その統制によって文書自体が外部に出る事もなかったでしょうし、外部に出たとしても、安倍氏の威光により総務省の側が公文書と認める事もなく、捏造との主張が通っていたのかもしれません。森友学園関係の一連の事件のように。

しかし安倍氏はもういないのです。当然、その威を借りる事は出来ず、しかしその代わりになる後ろ盾を得る事も出来ず。にも関わらず、虎がいた頃の生き方を変えられなかったために、容赦なく外敵に淘汰されようとしている、孤独で愚かな狐。今の氏は、そういうものなのかもしれません。

3/08/2023

[pol] 東谷とその支持者、無知と無責任が招いた惨事

やっと一区切り、なんでしょうか。東谷義和参院議員(通称ガーシー)の国会法違反の件、除名処分が確実な見込みとなりました。

本件は、前回の参議院選挙で比例当選した同議員につき、当選後半年以上に渡り一度も議会に出席せず、国会法第五条の集会義務違反に問われたものです。これに伴い国会法の規定に従い懲罰委員会にて国会法122条第二項の"公会議場における陳謝"を課され、同氏はこれに同意の旨返答したにも関わらず、期日にそもそも帰国せず、履行拒否となりました。

これを受けて、当然に陳謝よりもさらに重い懲罰を課される運びになったのですが、国会法122条に定められた懲罰の方法の内、陳謝よりも重いものは登院停止と除名の2つしかなく、うち登院停止は登院懈怠者であるところの同氏には懲罰としての意味をなさないため、もはや除名する他ない、というわけです。

同氏は懲罰に応じないだろうという見込みは当初からありました。周知の通り、同氏は暴露系と言われるその活動に伴い、名誉毀損や業務妨害、さらには詐欺や脅迫等の刑法犯の容疑者として多数の告発を受けており、帰国すれば逮捕・訴追を受けるだろう事はほぼ確実で、それを回避たるために帰国しないだろうと見られていたためです。

ただ、国会議員には不逮捕特権があり、少なくとも会期中は原則として逮捕されません。すなわち会期中であれば帰国の可能性もないではないとも考えられるため、一足飛びに除名にはせず、念の為に陳謝処分が課されたのですが、これも無視された、というわけです。逮捕の恐れはないにも関わらず何故同氏が帰国しなかったのか、いささか理解し難いようにも思われますね。

これは推測ですが、同氏は本件に関わる国会法及び憲法の規定を理解しておらず、そのために今回のような対応になったのではないでしょうか。まず国会法を軽くでも読んでいれば、国会議員がどのような義務を負い、実際に議院がどのように運営されているかが分かるし、議員が議会に出席する事がおよそ全ての活動の前提になっている事が理解できた筈です。陳謝の懲戒への対応についても、出席の代わりに動画を送りつけたそうですが、国会法の規定上"公会議場における"と明記されている事から、動画を送りつけたところで意味がない事も明らか。法を理解しているとは到底思えない振る舞いです。議院側も話が通じないと困惑したことでしょう。

大抵のことがオンラインで事足りるようになって来た昨今にあって、登院・出席を前提とした国会運営のあり方は時代にそぐわない、という考え方はあり得るでしょうけれども、実際にオンラインの方式を議院運営に組み込むのは容易な事ではなく、少なくとも国会法の全面改正と各種規則の改定、各種設備の導入、何より現在議院を中心に運営されている各省庁はじめ行政との連携のあり方すなわち政府中枢の運営の形態等も根本から変更が必要になります。

そもそも、新しい方式がメリットばかりをもたらすわけはありません。デメリットも小さくはないでしょう。ビデオ会議では必ず生じる遅延からして影響は甚大です。絶対に必要となる議員の本人確認及び議員以外の排除も困難を極めるでしょう。末端の事務程度ならいざ知らず、事は国権の最高機関の運営すなわち国家運営の根幹に関わるものです。その是非も含め、広範囲に渡って慎重かつ詳細な検討と判断が必要になります。民法や憲法の改正ほどではないにせよ、それに準じる程度の困難なプロセスになるでしょう。

それだけの労力を払い、デメリットを受け入れてでもその制度変更が必要だと主張するなら、その主張はまさに国民の代表たる議員が法に則って行うべき事であって、当たり前ですが現在の制度を無視する言い訳にはならないのです。現状がそうなっていない事を批判するなら、その対象はまず第一に議員である筈なのですし、議員でありながら議院運営を妨げている東谷氏は最も責任が重いと言うべきでしょう。それが法の無知によるというなら、そもそも同氏に議員の資格がなかったものと断ぜざるを得ません。立候補などするべきではありませんでしたね。やれやれです。

もっとも、同氏の人となりやその活動を少しでも知っていれば、氏に議員の職責を果たすに足る資質があると考え得る筈もなかったでしょうけれども。投票は権利であり自由でもありますが、他の権利と同様、相応の責任が伴うのです。この事態を招いた、すなわち国会運営の妨害に加担したに等しいところの、氏に投票した20数万の愚かな有権者達には深く反省を求める次第です。一定期間選挙権の剥奪、位してもいいくらいだと思いますよ。不可能ですけれども。

なお、同議員は比例区選出につき、除名後の後任について補欠選挙は実施されず、同名簿中の次順位以降の候補者が繰り上がり当選という事になります。同党の候補者は基本未経験者しかおらず、しかも知名度等の議員としての能力とは全く関係ない事柄のみによって選定されている筈ですから、期待など出来よう筈もありませんが、せめて国会運営の邪魔だけはしないで頂きたいと思う次第です。

3/07/2023

[note] 失敗を失敗と認めなかったJAXAの必然

H3ロケットが打ち上げ失敗だそうで。

延期に延期を重ねた末に先日打ち上げを実行したものの、噴煙を上げながらも不具合が検知され打ち上がらなかった本機ですが、周知の通り運営体であるJAXA(及びその下請けで実質的な開発担当である三菱重工)は失敗ではなく中止であると強弁していた本件。

打ち上げを任意でやめたのではなく、実行しながらも機器の問題で遂行できなかったのですから、それはまごうこと無き失敗であり、当然ながら、本来ならその障害となった技術的問題を解決すべく、その原因究明がなされ、その上で対策が行われるべきものでした。それをせず、そのまま再チャレンジなど無謀という他ないでしょう。

しかしその失敗をそもそも認めず、従って機器に問題はないとして対策もないままに漫然と再実行した結果が今回の失敗というわけです。今度は途中で自動停止もせず打ち上がってしまい、あえなく爆破となりました。中止と強弁する余地はありません。完全に失敗です。

この失敗は、単なる偶然による失敗ではありません。前回の失敗を失敗と認めなかった、そのJAXAの運営、意思決定のプロセスにこそ原因がある、すなわちJAXAのロケット事業自体の構造的な機能不全を示している事は明らかです。平たく言えば、JAXAには少なくとも新型ロケット事業を行う能力がないという事でしょう。

本事業を巡っては、予算の都合等でこれ以上延期は出来ないとかそういう内部の事情があったのでしょうが、その種の社内政治的な事情を優先し、技術面のプロセスを軽んじた時点でこの失敗はほとんど決まっていたのでしょう。

これから後始末という形でJAXAと三菱重工はじめ担当各所が責任のなすり合いやらを始めるんでしょうが、無惨なものです。救いはありません。今回の失敗が今後の糧になる事すらないのですから。本当に最低ですね。

12/20/2022

[gov] 日銀がゼロ金利放棄

 ついにこの日が来ました。

日銀が長期金利の上限を0.25%上げ、事実上の利上げを行ったのです。

形式的というかレトリックとしては目標金利自体は据え置きで、許容する変動幅を従来の0.25%から0.5%に変更した、という言い方ではあります。が、周知の通り長い間苛烈な金利上昇圧力に晒され、0.25%を超えては介入で戻し、を繰り返していた長期金利の現状からすれば、その上昇の許容は実質的に利上げに他ならない、というわけですね。

つい先日、発行済の日本国債の実に50%超を保有し、先日の0.25%を僅かに超えた金利上昇の時点で1兆円近い評価損が生じていた日銀のバランスシートの崩壊は必至です。試算では0.5%で既に引当金の額を超え、債務超過に陥るとされます。満期保有が前提とはいえ、中央銀行が甚だしい債務超過に陥るという事実の与える影響は小さいものである筈がありません。多岐にわたって甚大な影響、それも悪い方向で、が出るでしょう。

どうするんでしょうね。増資とかするつもりでしょうか。するとしたら財源は国債になるんでしょうけど、少し金利が上がったところで他国債と比べれば著しく低金利な日本国債の買い手が日銀以外にほぼいない現状、日銀の自己資本の増資のための債権を日銀自身が買うとかいうわけのわからないことになってしまうわけで、実質的に無意味な話な筈なのですが。いやはや滅茶苦茶ですね。もっとも、これまでゼロ金利を続けていた事自体が滅茶苦茶だったのだから、その末路が滅茶苦茶なものになる事もまた当然ではあるのですが。

年の瀬になって、俄に風雲急を告げる日銀、ひいては日本の金融。下手をすれば無事に年を超えられない人が出かねない激流に晒される方面の方々に置かれましては、可能ならば自衛を、出来なければ諦めて諸々手仕舞い等されますよう。

※9月時点での評価損は引当金の額債務は超えていなかったとの事。修正しました。

11/26/2022

[note] Ubuntu22.10へのアップグレードでオーディオの不具合に遭遇

した件についてメモ。

しばらくぶりのUbuntuのアップグレード。今回は22.04LTSから22.10への移行になります。コードネームはKinetic Kudu。Kuduはレイヨウの一種でヤギとか牛の親戚ですね。ともあれいつもの通り、リリースからしばらく待って、特に大きな不具合は報告されていないらしいと判断してから実行したのです。結果としてこれが間違いだったわけですが。。。

アップグレード自体は特に問題もなく完了しました。が、いつもの通り日本語入力やらブラウザやら一通り動作確認をしていたところ、オーディオ周りに不具合が発生している事が判明してしまったのですね。

具体的には、動画の閲覧や音楽ファイルを再生する際、ブラウザやmplayer等が止まるのです。アプリ自体が完全にフリーズするのではなく、再生前の初期化が終わらないような感じで、そこから先に進まなくなるのです。不可解なのは、pulseaudioのコントロールパネルを開くと再生されたりされなかったり挙動が一貫しない点です。ブラウザ(firefox)で動画サイトを閲覧する場合には、動画を閉じてもサウンドデバイスがリリースされないらしく、pulseaudioのパネルにどんどんfirefoxのエントリが増えていって、処理が(恐らくは)スタックする事象も起こりました。

日常の利用に甚大な支障をきたすであろう致命的な不具合です。これはいかん、とすぐさま対処方法を調査する事に。しかし、同様の不具合の報告はなく、わずかに22.10にアップグレードした場合にbluetoothの再生デバイスが動作しなくなる、という報告が見られた位でした。

一ヶ月経っているのにこれだけ報告がないという事はおま環案件の可能性が高いかも、と愕然としつつ、対処しないわけにもいかない、という事で、22.10でのオーディオ周りの変更点から調査を再開。すると、長らくlinuxの標準オーディオサーバとして採用され続けて来たpulseaudioが廃止され、pipewireに置き換えられるという大変更がなされていた事をここで初めて認識しました。もしかしなくてもこれが原因であることは明白です。事前に知っていればもうちょっと警戒したのですが、と言っても後の祭り。リリースノートとかはちゃんと読みましょう。。。

ただ、pipewireに置き換えられた、と言っても、現状linux上では大半のアプリ等がpulseaudioを前提として構築されていますから、例によってpulseaudioのラッパーを被せる形で導入されているわけで、本来は従来と同様に動作するし、ユーザーが気にする必要はなかった筈です。それが不具合を起こしている、という事は、このラッパー周りかそれと応答するpipewireのインタフェース部分あたりに不具合があるという事か、というところまでは容易に推測出来ました。

しかし、設定ファイル等も確認してみても、特段の問題点も見つかりません。そもそも設定ファイルとかいじれるところが殆ど無いのですね。仕方がない、こういう時は再インストールだ、という事でpipewireを入れ直してみました。具体的には下記の通り。

まず、上記bluetooth関連不具合の報告中にあったライブラリの内、22.10のデフォルトでは入っていなかったpipewire-audio-client-librariesを入れます。

$ sudo apt install pipewire-audio-client-libraries 

次いで、サービス類の設定をやり直し。

$ systemctl --user --now disable pulseaudio.{socket,service}
$ systemctl --user mask pulseaudio
$ systemctl --user --now enable pipewire{,-pulse}.{socket,service}

オーディオサーバーの状態表示コマンド $ pactl info  で以下のようになっていればOK。

サーバー名: PulseAudio (on PipeWire 0.3.58)

もしなっていなければ、pipewireモジュールの入れ直しからやり直しになるでしょう。むしろ中途半端に設定の書き換えからするより、最初からやり直した方がいいのかもしれませんね。

ともかく、私の環境だとこれである程度改善したのです。ただ、残念ながらまだ不具合は残っていました。何かというと、何故かpulseaudioのコントロールパネルを開くまで再生が停止するのです。パネルを開くと再生が即始まる。わけがわかりません。オーディオサーバの方で何か応答が止まる部分があって、それがパネルを開く際に解除されるのでしょうけれども、それが何かも不明。PCを再起動しても駄目。意味不明な現象を前に、ここでああでもないこうでもないと迷走することしばし、最終的に、pipewireを再起動すると治りました。下記コマンド。

$ systemctl --user restart pipewire

これで、再生毎にpulseaudioのパネルを開く必要もなく、pulseaudioのエントリが無限増殖する事もなく、以前と同様にオーディオが動作しました。いつも通りに動くってありがたい事なのですね。。。

しかし久しぶりですこの新機能特有のわけのわからないバグり方とその治り方。こういう、不具合の原因もわからないけれど再起動したら治りました、だと、根本的には全く治っていないものとしか思えないし、これからしばらくオーディオ絡みで同様の不具合に悩まされるのだろうかと思うとげんなりせざるを得ないのですが、もう考えても仕方ないし、諦めましょう。

ともかくも、ひとまずはこれでおしまい。お疲れ様でした。

10/21/2022

[pol] Liz Truss英首相辞任、濁流に呑まれる英国

英国首相のLiz Trussが辞任を表明しましたというか、させられたというか。就任からわずか45日の事です。もちろん前代未聞。正確には保守党の党首を辞任すると言ったのですが、与党党首が首相になる事が事実上決まっているため首相を辞めるのと同義なのですね。なお、既に新国王チャールズ三世にも伝達済みだそうで、既に撤回は不可能です。

まあまあ衝撃的ではあるのですが、と言っても、そういう事もあるだろうなと。というのも、元々、Trussの党首就任は、党首としてやっていくのに最も必要な筈の、保守党内の議員の十分な支持が得られないままに決まったものでした。なのに何故首相になれたのかというと、保守党の党首選挙は、議員による予選を経て、最終候補2名による決選投票で決定する仕組みを取っているのですが、この決選投票は議員以外の全党員も含めて各自1票を持つので、議員の支持で劣っていても、一般党員の支持があれば当選出来るのです。要するに保守党の党首というのは、党内における大統領のようなものなのですね。ちなみに議員の支持は決選投票で敗れたRishi Sunakの方にありました。

なものだから、Trussは最初から与党内をまとめられない、死に体の少数派党首だったわけです。その影響か、Trussに近い者を中心に選任された大臣は、非主流派の経験に乏しい未熟な議員ばかりでした。財務相に任命したKwasi Kwartengも含めて。

その未熟さとそれに伴う実行力の無さはすぐに露呈します。Kwartengは経産相としての経験はありましたが、財務に関しては素人でした。後先を考えず、恐らくはその乏しい政権への支持を増やすために、単なる経済対策として大規模な減税、その財源としての国債の増発等を安易に打ち出し、ポンドの大暴落はじめ多数の住宅ローンの提供停止等の経済的な大混乱を引き起こして、減税等の撤回とあわせて辞任に追い込まれます。その被害は甚大で、Kwartengの後を継いだJeremy Huntにも、もはや出来る事はありませんでした。当たり前の話ですが、撤回後も経済周りの状況は改善していません。

これにより、保守党員のみとはいえ一般市民の支持によって選ばれた筈のTrussはその市民からの支持を急速かつ決定的に失います。元々議員の支持を得ていなかった事と併せ、もはや首相としても党首としても、その基盤たる信認を失ってしまったのです。直近での英国国民からの支持率は10%を大きく割り込んでいたとか。いやはや。現実は非情ですね。まあ、党員以外はそもそもTrussの選任に関与すらしていないのだから、冷淡なのも当然ではあるのですが。

一応、保守党の規約では、党首は就任(もしくは信任投票)から1年は任期が保証されているので、自ら辞任しない限りは原則在任し続ける事も可能ではあるのですが・・・さすがにここまでの不支持となると、次の選挙での保守党の壊滅的敗北は避けられないだろうわけで、それに危機感を覚えたのでしょう、ほぼ周りの全員が辞任を要求する状況になっていましたし、自らの政治家としてのキャリアを党諸共に終わらせかねない状況を前に、抗い続ける事は殆ど不可能だったという事なのでしょう。本来味方である筈の大臣が、その辞任の際にTrussに責任を問う捨て台詞を吐く位でしたからね。。。その振る舞いは流石にどうかと思わなくもないですが。

さて。Trussはもう終わったとして。次は誰?という話になるわけですけれども、これはもう殆ど決まっています。余程の事が無い限り、前回の決選投票で敗れたRishi Sunakになる見込みですね。元々議員の支持はあるのだし。一応、前首相のJohnsonの名前なんかも挙がってはいますが、Sunakが余程の失言をして、就任前から駄目とでもならない限りいきなり再登板というのはない、と言われています。

ただ、Sunakも別にそんな評価が高いわけでもないんですよね。MBA取得から富豪の娘と結婚してGoldman Sachsに勤務してさらに財をなし長者番付にも載り、政治家に転身した若い経済畑の人物、という時点で、通常政治家に期待されるべき安心感や信頼感は皆無。実際普通の政治家としてのキャリアはほぼなし。割と無謀な類の博打な感しかしません。増税派である事は無論、決選投票で敗れたところからしても、一般市民からはむしろ反感を買う可能性が高いでしょう。Johnson政権時に財務相の職を放り出し、政権崩壊の端緒になった事から、信用ならない裏切り者と見る向きが内外にある点も小さくない懸念材料です。

とはいえ、ここまで保守党自体の支持もボロボロになってしまった現状、未熟な人物から普通の政治家レベルの人物に代わったところで立て直せそうな気は全くしないし、だからこそJohnsonに代わる者として尖った人物が推されているという事なのかもしれませんけれども。さてどうなることやら。

10/13/2022

[gov] 誰からも望まれないマイナンバーカード

マイナンバーカード取得・使用の強制化が打ち出されたわけですが。

率直に言って、うまく行くとは思えません。理由は色々と思い浮かびますが、何よりも根本的かつ致命的な点は、利用者たる国民のおよそ全てが望んでおらず、そもそも制度へのニーズが皆無な事です。平たく言えば、これはいいね、使いたいね、と言う人がいないのです。肯定的なのはほぼ評論家の類だけですね。お仕事ご苦労様。

当たり前の話ですが、制度の普及の是非を決めるのは政府ではなく利用者です。どんな優れた(と提供する側が思っている)製品であろうと、サービスであろうと、その受け手が自然と利用するに足るだけのニーズやメリットがなければ利用されません。例外がないわけではありませんが、それはそのサービス等に代替手段がなく、かつ必要不可欠な場合だけなわけで、マイナンバーカードにはそのどちらにも当てはまらないのです。

そんな状態でカードを強制的に取得させて、さあ使え、と言ったところで無意味です。それに、従来の保険証は使えません、これからはマイナンバーカードだけです、と言うのは簡単ですが、実際にそのような運用を実現するための条件は明らかに非現実的なのであって。全員がカードを取得するところからして無理ですからね。紛失時の再発行に数ヶ月かかるというのも論外ですし。その間は車に乗れない、病院にも行けない。身分証明も出来ない。生活が立ち行かなくなる人も出るでしょう。

にも関わらず、カード非所持者の問題はじめ、往診時や僻地での医療時、また必ず想定して然るべきシステムダウンや通信障害の際等、マイナンバーカードの利用が不可能な状況については代替手段すら用意していない、というのでは話になりません。まさか全部保険なしにしろと?車にも乗るなと?今の制度なら対応出来ているのに?出直してこいと言う他ありませんね。

医療機関等の側にとっても、カードの取り扱い自体に高度な注意が必要となる上に、個人情報云々や患者からのクレーム等、諸々のリスクが激増し、かつ対応のためシステムの導入・運用・更新に多額のコストがかかる本制度など百害あって一利なしです。得をするのはITベンダーだけですね。

それでも、マイナンバーカードを使う事に多くの人が利点を見出し、歓迎しているというのならまだ見込みもあろう話ではあるのですが、肝心のそれが無い、というかむしろ個人情報保護の面を中心に否定的というのだから、これで制度として成立すると考える方がどうかしているというものです。ほんと日本政府は馬鹿ですね。