3/16/2020

[law] マスク転売禁止に公然と違反する人たち

が沢山いると聞いて、少しばかり愕然とした次第です。

周知の通り、コロナウイルスの蔓延に伴うマスクの品不足に付け込んで、マスクを買い占めて法外な高額で転売する行為が横行していたところ、これが3/15に刑法上の処罰対象となりました。具体的には、国民生活安定緊急措置法第26条第1項に基づき、譲渡制限措置の対象に衛生マスクが指定され、卸売取引経由を除く一般向けの売買のほぼ全てについて、購入価格を超える価格での販売が禁止されたわけです。

罰則は一年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金です。これはDV防止法の保護命令違反と同等であり、この種の規制におけるものとしてはかなり重いものとなっています。世間一般的に犯罪者の烙印を押されるレベルは超えている、と言えるでしょう。

なのですが、規制を掻い潜ってのオークション等での出品が続いている旨の報道が相次いでいます。それ自体は予想された事です。転売で高額の利益を得ていた者がその利益を維持しようとするのはごく自然な成り行きでしょう。

問題は、その手段です。ざっと見たところ、今の所用いられている手法は、以下の3つに大別されるようです。

1.卸等からの仕入れを装う
2.他の物品のおまけとしてマスクは無償と称する
3.名目上他の物品を取引し、実際にはマスクを販売する

これらの手法が、報道では抜け道等と表現されているようです。が、これのどこが抜け道なのでしょうか。

規制に対する抜け道、といえば、通常、法的には違法とは言えない手法を指すものです。脱法的、あるいはグレー等と言われるところの、法の趣旨からすれば本来規制されるべきものであり、その点からの非難は免れないけれども、明確に違法とは言えないために、現行法の適用で罰する事が困難な手法、と定義できるでしょうか。

しかし、上記の方法は、いずれもそのようなグレーなものではなく、単なる転売を、そうではないふりをして行っているだけの、すなわち明らかな違法行為であり、紛うことなき犯罪です。ネットオークション等のシステム上の規制、すなわち品名にマスクを含むものの出品禁止措置は回避出来るでしょうけれども、それはあくまで各システムの仕様上の不備を利用して出品禁止を回避するだけであって、法の規制を潜脱し得るものではなく、抜け道とは到底言えないものでしょう。

個別に見ると、1.については、仕入先を偽っているわけですが、その特定はそれほど難しい事ではないでしょうし、2.については価格に対するおまけの占める部分が購入価格より高いと判断されればそれで終わりです。3.については単なる虚偽表示です。いずれも、司法の捜査の手が入れば、極めて容易に露見するだろう程度の子供だましレベルのごまかしでしかありません。

そんな事もわからないのか、理解した上で摘発されないと高を括っているのかはわかりませんが、軽くない刑事罰を伴う犯罪が公然と行われる、しかもそれが多数に上る今の状況は、正直言って異様だと、戦慄を覚えた次第なのです。

ただでさえ施行直後は一罰百戒の意味も込めて特に摘発が行われがちな時期なのですし、これは早い段階で摘発の手が入るでしょうね。恐れを知らないというか、何というか。。。いやはや。

3/11/2020

[note] 別役実死去

不条理劇といえば誰もが思い浮かべるだろう、別役実氏が亡くなられたそうです。82歳。そんな年になってたんですね。近年は表舞台に出る事も殆どなくなっていたとは言え、残念な事です。

近現代の演劇人でその影響を受けていないものはいないだろう巨人サミュエルベケット、その影響を最も強く受けた世代にあって、とりわけストレートに向き合った方でした。時間には誰も逆らえない、とは承知していても、演劇自体に往年程の活況が見られない昨今、一時代を築いた方々がこの世を去っていく事には、演劇界自体が衰退していく様を見せつけられているようで、一層の喪失感を抱かずにはいられません。

10/22/2019

[note] gccの内部仕様変更に伴う不具合に悩まされた話

今回はバグ、というかプログラムのミスの話です。それ自体は別段珍しくもないのですが、その原因がちょっと今まで遭遇したことのない類のものだったのと、それを引き起こしたミスが、かれこれ数十年プログラムを書いてきて、今更こんな・・・と驚いたという中々珍しい組み合わせだったので、戒め代わりに晒してみようかと思った次第です。

何かというと、画像関連の自作ツールで、十年以上前からちょくちょく修正や拡張を積み重ねて来て未だに現役のプログラムがあるんですが、そのLinux版について、速度の最適化をサボっていたところを改善しようと、久しぶりにリビルドしたところ、落ちるようになってしまったのです。

使用言語はCとC++の混在、主なライブラリはgtk3(glade含)とあとgnu関連色々、コンパイラは普通にgcc・・・ということで、特殊なものは使っていないのですが、この辺をそれなりに使っている人はよくご存知の通り、これらの環境は頻繁に仕様変更が入ります。gtkなんか数年で関数や構造ががんがん廃止されますから、その度に修正が必要になってとても面倒なのです。

で、まあ今回もその類の内部仕様の変更による不具合だろう、ということでデバッグを始めたのですが・・・何か妙なのです。どういう風に妙かというと、ステップ実行していると、とある関数で、その関数の実行が終わって最後まで到達すると、通常なら当然呼び出し先に戻る・・・筈なところ、そうならずに関数の途中に戻っていたのです。数十行巻き戻る感じですね。当然、色々と齟齬が出ますので、すぐにバイオレーションになって死亡、というわけです。

正直参りました。この手の挙動は、往々にしてオーバーランや初期化漏れ等のバグに起因する事が多く、その原因箇所が落ちている場所とは全く別の場所である事が殆どで、特定は困難極まるからです。とはいえ直さないわけにもいかず、仕方がないので、まずは絞り込み、ということで、その関数周辺の処理を大まかなブロックに分けて、ブロック別に有効/無効を色々と切り替えて実行を繰り返し、挙動に変化が見られるか観察しました。

結果は、ほとんど変化なし。巻き戻る場所が変わる位で、相変わらず落ちます。絞り込みも出来ない、というのは初めてで、非常に困惑させられたのですね。

埒が明かないので、最適化オプションを変えてみたらどうだろう、とMakefileをいじって試したところ、-O0、すなわち最適化なしだと落ちない事がわかりました。一歩前進です。ただ、完全に治るわけではなく、落ちないながらも無限ループは発生することもあります。こういう再現性が不安定なのは一番困るのですよね・・・ますます困惑は広がるばかり。

とはいえ、この事から、原因の一端が最適化にあるものと推測する事が出来ました。ので、オプションを-O1,-O2等に切り替えたりしつつ、ステップ実行を繰り返して、観察出来る変数の内容をトレースして絞り込みを試みました。が、ご存知の通り最適化が入ると変数(の大半)がデバッガからトレース出来なくなるんですよね。このため、なかなか上手くいきません。

ろくに進捗のないまま、試行錯誤を繰り返す事数時間、これは詰んだか・・・と思い始めた頃、ふと気づいたのです。何にかというと、問題の関数はint型の返り値を返すものなところ、その最後にreturn文がない事に、です。明らかにバグです。

私は基本、関数を書く時は、関数名とその型の次にまずreturn文を書くところから始めるのが常(voidの時は除く)なので、return文が無いというのは個人的には非常に珍しいミスです。あるいは何処かの修正時に誤って消してしまったのかもしれませんけれども、その辺りは不明です。

ともあれ、こんなミスが・・・と驚き、まさかreturn文の有無がそんな致命的な挙動に影響しないだろうし、今回の不具合とは関係ないだろうな、と思いつつも、せっかく気づいたんだし直しておくか、とreturn文を追加したのです。

すると、あにはからんや、件のループが発生しなくなっているではありませんか。どの最適化オプションを付けても問題なく、以前と同様に動作します。図らずも解決した事になります。

正直、嘘だろうと目を疑いました。しかし、色々テストをしてみても、完全に直っています。認めざるを得ませんでした。これが原因だったのです。

この修正で直った、ということは、逆に考えると、今回の不具合は、"現バージョンのgccでは、return文が無い場合、特に最適化をすると関数の終わりを関数内部のループの終わりと誤認する場合がある"、という事なのかと。

なんじゃそら、と思わずにはいられなかったわけです。

無論、返り値が返されない、という状況は正しいものではなく、というか紛うことなきバグで、その状況すなわちバグを作ったのは自分自身である以上、それに苦しめられるのも自業自得であることはわかっているのです。

ただ、常識的に考えれば、その不具合が影響するのは通常その返り値を参照する箇所であるのが普通だと思うし、今回のような不具合の事象からこの原因を連想ないし特定するのは極めて困難、というか不可能だと思うのですね。。。本件解決法は、本当に偶然ふと気づいただけですし、あの気付きがなければ、今でもありもしない、いかにもやらかしそうな類のバグを探して無駄に苦しんでいたのかと思うと、ぞっとします。

gccもgtkも、サイレント修正なんて日常茶飯事ですし、またこういう修正困難なバグに遭遇する可能性も否定できません。そうでなくとも容赦なく行われる改廃に、その際の種々のトラブルの予防を図る事も出来ず、その度に対応を迫られ続けるのだ、という悲しい事実を、改めて噛み締めさせられた一件でした。どうにかならないものなのでしょうか。少なくとも自分で作る部分のバグは0にするしかない?そうですね。。。とほほ。

10/07/2019

[note] タブレットのバッテリー交換

ご無沙汰してます、どころではないですね。一年以上ぶりの更新です。

久しぶりのネタは、先日、使用中のタブレットのうちの一台について、バッテリーが膨張して液晶が浮き上がる状態になってまして、その交換をした際の記録、という事になります。

本件、少し前(数ヶ月?)から、液晶の枠付近の色が黄色っぽくなっていまして、以前にスマホでバッテリーが膨張した際の変化と同じような、楕円形のシミのような変色も出ていたので、そのうち駄目になるんだろうな・・・と思っていたのが案の定、というわけです。膨張の原因はおそらく発熱で、本タブレットは元々性能の割に発熱があり、しかもプラスチック製の筐体で熱の籠もりやすい機種であったところ、本機でプレイしていたソシャゲのイベントがありまして、連続で長時間プレイして負荷が加わり続けたのがトドメになったものと思われます。最終的には、液晶が浮き上がって、横からLEDのバックライトの光が漏れるようになってしまっていました。

機種は、ASUS製Z380M。Zenpadの8インチ型ですね。廉価帯のモデルということで性能は低く、買い替えても1万数千円程度ではあるのですが、購入してから1年半程度で、バッテリー以外には問題もなさそうでしたし、OSもAndroidの6.0と現役、まだまだ使えるだろう、という事で修理する事にした次第なのです。

何はともあれまずは部品、という事でEbay経由で交換用のバッテリーを調達。ASUSのような大手製品は部品も入手が容易なのでこういう時は助かります。上記以前壊れたスマホは交換用部品がなく諦めたのです・・・とそれはともかく、型番は調べた限りてはC11P1510との事で、その互換品を購入しました。中国の深センの業者からの発送で、送料込み約2000円。2週間ほどで届きました。簡単な工具付です。(下図)


 一方、交換対象の方は下図。見事に膨らんでいます。カバーを開ける時、 弾け飛びそうな感じでした。カバーの明け方は省略。ネジを外して、爪を持ち上げつつパキパキと開けるだけです。なお、本体基盤の上側と下側をつなぐフレキケーブルが2本、バッテリーをまたぐ形で繋がれていたのですが、カバーを開けた際に膨張したバッテリーに引っ張られて外れてしまいました。外れたままだと動作確認も出来ないので、暫定的にバッテリーの下側を這わせています。

 

バッテリーの端子を外します。上に持ち上げてパコっと。


取り外したバッテリーユニット。おそらくはアルミ製のトレーに貼り付けられています。


バッテリーをトレーから剥がします。この時、粘着テープはかなり強力なものが使われているため剥がすのに苦労しますが、雑に扱ってバッテリーを損傷して発火したりしてはいけませんので、慎重に、ヘラ等を少しずつ粘着テープ部にコジ入れるようにして剥がすとよいでしょう。ちなみに私は、交換用バッテリーに付属してきたプラスチック製のピックを使いました。なお粘着テープは左右に二本取り付けられています。


交換用バッテリーと並べてみると、元が同じとはとても思えませんね。


トレーに交換用バッテリーを貼り付けます。なお、調達したのはC11P1510なのですが、取り外したバッテリーの型番はC11P1505で若干異なっていました。電圧・容量、サイズは同じなのですが、端子の位置が若干ズレています。交換品は少し外側に端子があるため、トレーに乗せる際に基盤端子に近づくように寄せて貼らないと、端子が届かなくなるので注意。下図で言うと左上ですね。寄せれば届きます。




フレキケーブルを元の通りに繋いで完了。フレキケーブルは端子後側のツメを上げ下げして噛み込むタイプですが、このタイプの例に漏れず華奢なので丁寧に。





ここで一旦動作確認。問題なく起動します。


安心したところで、カバーを閉じて、ネジ類を締めます。




無事修理完了、というわけで、今回はこれでおしまい。やれやれです。

7/18/2018

[note] 浅利慶太死去

あの浅利慶太が、ついに逝ってしまいました。85歳だそうです。

純粋な商業としての劇団の常設、それもあの規模のものを複数、という、唯一無二と言うべき偉業を成し遂げた現代日本演劇界の立役者は、もういないのです。その喪失感は、寂しいという言葉では言い尽くせません。

彼を失った四季は果たしてこれまでと変わらずその存在を確として保ち、さらに発展させて行く事が出来るのか否か、それは誰にもわかりません。しかし、安易な目先の損得に惑わされず、これからも一層その輝きを強くして、社会に潤いを与え続けてくれる事を願う次第です。さよならだけが人生ではない筈なのですから。

5/23/2018

[note] 往生際の悪い犯罪者たちの醜態がメディアを占拠し続ける様にうんざり

日大アメフト部の傷害事件で騒がしいこの頃。誰が見ても組織的に犯罪が行われた事は明らかなのに、この期に及んで自らの非を認めず、責任転嫁や稚拙な詭弁を弄して白ばっくれようとする監督はじめ日大関係者の理解し難い振る舞いには目を覆う他ないわけです。

他にも時を同じくして、政府周りも引き続き、学校法人を巡る権力濫用や、自衛隊の派遣を巡る不都合な事実等についての数々の虚偽・隠蔽が明らかとなり、これまた誰の目にもその事実は疑いようもない程明白なのに、ひたすら知らなかった、担当者や部門の独断、と、政府側にしか利はなく、独断で行う動機も利益もないのに、自らの関与を否定して白ばっくれようとしているわけです。

どちらも構造的には似たような話であるのですが、それが新聞・テレビ・ニュースサイトまで、あらゆるメディアで入れ代わり立ち代わりトップを占めているのですね。それらの間に挟まる話題も、多数の大手メーカー等での品質偽装やリニア談合等、やはり組織的な虚偽とその隠蔽のち言い逃れを続けた挙句に刑事事件になってあえなく御用、的な話が頻繁に表れます。

話題に登る誰も彼もが、規模や位置づけの点で重要な組織と、その責任ある筈の立場にある人物ばかりです。それが、判を押したように言い逃れや詭弁、責任転嫁を繰り返して自らの関与と責任を認めようとしない姿を晒し続けているわけです。彼ら以外のほぼ全員が、疑惑どころか議論の余地もない程に確信を抱いているにも関わらずのその振る舞いは、出来の悪い喜劇のようです。あれですね、裸の王様的な。

本当、どいつもこいつも嘘つきで、往生際が悪いったらありません。それで、こう、見渡す限りの情報がそんな話で埋め尽くされているのを見ると、日本国内のあらゆる組織のトップ周りの人間は皆犯罪者で、嘘つきで、それが明るみに出て、もはや言い逃れのしようもない事は客観的に明らかになってもその事実を認めない、不誠実な輩ばかりであるかのような錯覚を覚えてしまうのです。

冷めた目で見れば、企業やら団体やら、はては家族や隣人等の小さなコミュニティですら、上位者がその権力を有している事をいいことに、それをたやすく濫用し、あるいは部下等、組織内の下位の者に犯罪を強要し、それが露見しても責任逃れを図ろうとする、といった事は残念ながらありふれた事でしかないのだし、そういう凡庸な、愚か者がそのまま大学や政府等の、極めて大きな組織の上位者に就いてしまっている、それだけの事なのでしょうし、別段驚くべき事ではないのかもしれません。

ただ、事がもはや言い逃れのしようもないところまで至っているにも関わらず、見苦しく強弁や言い逃れを図ろうとし、それを広く見せつけ続けられるのは何の拷問だと。流石にいい加減うんざりするので、速やかにやめて頂きたいと思うわけです。。。が、まあそんな潔さがあるのなら最初からこんな醜態は見せないのだろうし、警察なり検察なり市民なりに告発されて、あるいは司法の強制によって退場させられる位しか解決の道はないのかもしれませんけれどもね。であれば、出来る限り早くそうなって欲しいと願う位しか仕方がないのでしょうか。

4/24/2018

[biz] HONDAのモンキー125、価格は約40万円

と聞いて驚きました。いくらマニア向けとは言っても高すぎでしょう。売る気あるのかと。

確かに、諸々の事情で廃版になったモンキー50にはコアなファンが多数いたし、後継モデルを待ち望む声も多数あった事は事実であって、そこに一定のブランド価値があり、その分のプレミアムは許容され得る、というのはわかります。が、これは何か違うんじゃないかと。

そもそもモンキーのアイデンティティはまず第一に超小型バイク、だった筈で、それが巨大化した時点で意味不明だったわけですけれども、加えて値段も高い、という。巨大化に併せて排気量を125ccに上げた点も、モンキーに普通の出力や速度なんて求めてた人はいないだろうし、余計にこれじゃない感が強まったように思います。

ぶっちゃけ、ありふれた普通の125ccバイクなんですよねこれ。見た目をモンキーっぽくしただけの。それでいてデザイン料という事なのか、125ccバイクの相場から見ても値段は明らかに高いです。pcxより10万近く高いし、カブ110比だとほとんど倍。。。

それでもファンは買うんでしょうか。というか、ファンしか買わないでしょう。おそらくHONDAとしても、新規のユーザ獲得は最初から考えてもおらず、コアなモンキーファン向けにぼったくる事で採算をとろう、という考えなのではないでしょうか。

そりゃ2輪ユーザ自体が大幅に減少を続けて台数が期待できない中、少しでも稼ごうと思えばプレミアム路線になるのはある程度自然ではあるのでしょう。ただ、それにしてはコンセプトが崩れすぎなように思います。見た目だけモンキーな普通の大きさの普通の125ccバイク、というのが、超小型バイクを愛するコアなファンに訴求し得るのか、疑問を抱かずにはいられません。

逆にコアなファンであればあるほど、主たるコンセプトが崩れた事に幻滅してもおかしくなさそうなものですが、どうなんでしょうね。しかもこの価格だし、普通に考えればコケる可能性の方が遥かに高そうですが、さて。

新型の原付二種レジャーモデル「モンキー125」を発売

[biz] Kindle storeで海賊版コミックが堂々と販売される

流石に驚きました。先日AmazonのKindle storeに登録された某人気コミックの最新刊、これが丸ごと漫画村で違法公開されていた海賊版だったというのです。

しかもその発覚した理由が、版権者からの指摘ではなく、各ページの隅などに"漫画村"のスタンプがあったから、という誰が見ても一瞬でそうとわかる代物だった、というのだからわけがわかりません。

言うまでもない事ですが、これは著作権法違反の明らかな犯罪であり、著名作品ともなればその摘発を受けた場合の賠償金額は莫大なものになるだろう点で迂闊に犯せる類の罪ではない筈だし、とりわけ漫画村はここ最近の海賊版規制を巡る議論の中心にあって急速にその悪名が広まっているところのソースなわけで、しかもそれを当然ながらある程度の身分登録が必須のAmazonでこれをやるというのは。。。犯人は何がしたかったのかと。自滅願望の類があったとかいうのでなければ理解しづらいところです。

当然ながら本件はあっという間に対処がなされ、既に本件データは購入・参照出来ないようになっています。同時に、Amazon経由で版権者や司法関係にも通報がなされ、あるいは捜査等も始まっているでしょう。これが犯人の望んだ事なのか。世間を騒がせ、各所に騒動を起こすことが目的の愉快犯か、あるいは自身の自滅を臨む破綻者であれば、その望みは概ね達せられたものと言って良いのでしょう。単なる興味本位や、可能性は低いだろうけれども犯罪として摘発される可能性を考慮していなかった場合は大いに後悔する事になるでしょうけれども。

あるいは、販売は最初から目的ではなく、ここ最近俄に活発になっている海賊版規制を建前にした違憲そのものと言うべき通信の秘密の侵害たる検閲を導入しようとする動き、その議論における中心的な対象である漫画村について、あえて漫画村がソースである事を明示し、それにより容易にこうして海賊版を入手する事が出来る、という事実を広く知らしめる事で、世論における検閲によるネット規制の正当化を後押ししたい、というような、ある種の活動家的な意図があったのかもしれません。そうだとすれば、版権者や当局等の規制賛成派のマッチポンプの可能性も無きにしも非ずな感じがしてげんなりするし、そもそも犯罪をその手段にする時点で共感のしようもないわけですけれども。

いずれにせよ、理解し難く、また一々相手にするのも無意味な事件である事は間違いありません。このような馬鹿馬鹿しい行為が繰り返される事のないよう、速やかに摘発されるよう願いたいところです。

「漫画村」のロゴ入り漫画、Amazon Kindleストアで無断販売される 集英社「至急対応する」

3/26/2018

[biz] Facebook個人情報横流し露見でアカウント削除運動、企業も同調

Facebookが俄に社会的な非難の対象となり、袋叩きに遭っているようで。

理由は広く報道されている通り、その保有する膨大な個人情報を第3者(Cambridge Analytica)に横流しし、それが前回の米大統領選挙におけるTrump陣営の選挙活動に利用された事が明らかになった事によります。より本質的には、その事が、Russiagate同様、批判の絶えない、というよりむしろ批判も非難も増える一方であるTrump政権、その成立への加担に利用されたという点が、米国民の琴線に触れた、という事なのかもしれませんね。

というのも、利用された側の市民からすれば、Russiagate等に絡む世論等の情報操作に自分たちの個人情報が無断で使われていた事になるわけで、TrumpやRussiaの支持者はともかく、そうでない人、とりわけ反対派であれば、それは怒るのも当然の話であろうというしかありません。

結果、通常の情報漏洩等の場合とは異なり、FB社に対する非難は爆発的に増加し、ユーザの中でアカウントを削除を呼びかける運動が広がり、その結果、通常この手の運動にはあまり同調する事のない大企業(Tesla含む)までもがそのアカウントの削除や広告の引き上げ等のアクションを起こすに至りました。

事業規模の縮小や収入の減少に直結するだろう、それらの顧客やユーザの起こした一連のアクションが同社の事業へ与えたインパクトは甚大でした。流石に危機感を覚えた筈の同社及び代表のZuckerbergは大手メディアに謝罪広告を出しもしましたが、終息する見込みは一向に立っていません。

同社の惨状を目の当たりにした同業他社も、自身らに波及する可能性を認識し、恐怖を覚えたのでしょう。"あの"Appleさえも、プライバシー保護の法規制の導入ないし強化をすべきとの声明を出しています。個人情報は取得し放題利用し放題、バレたら形だけ謝罪、のスタンスを散々見せつけられてきた側としては、正直どの口で、と思うしかないわけですが、嫌でもそう言わざるを得ないだろう事情は理解出来なくもありません。そういえばGoogleも静かですね。その辺の恐怖感も、全て自業自得の話なのだし、同情の念も全く生じません。せいぜい訴訟やボイコットによる損害の発生に怯えればいいのです。どうせ実際は反省なんてしていないんでしょうし。

ただ、これらの米国内における一連の運動の発生とその激しさを見て、何故今更、と思う面もあります。FB社やApple、Google等、個人ユーザにサービスを提供するほぼ全てのITサービス業者が、ユーザのあらゆる個人情報、またその属性や関係性のデータを収集し、それを利用、あるいは売却して莫大な利益を得るビジネスモデルである事は、もとより周知の話です。ターゲット広告なんてその最たるものなのですし、その運営の過程で、第3者たるクライアント企業へのユーザ情報の横流しなんて、程度はともかくやってないほうがおかしいというものです。加えて、これらの情報利用は、完全に無断というわけではなく、アプリやサービスの利用規定上、情報の利用の許諾を与えているものでもある筈です。それが何故に、今回に限ってここまで特異で苛烈な拒否反応を引き起こしたのか、それにはそれなりの理由があって然るべきでしょう。

色々仮説は考えられます。前述の通り、Trump政権並びにRussiagateの線での政治的な要素が絡んだ事が原因になった可能性は小さくないだろうし、奇しくもFB等のSNSの普及により、この種の草の根的な運動が広がりやすくなった等の環境的な変化に加え、ボイコットのアクションがアカウントの削除等の極めて容易に実行出来る対象であり、呼びかけの広まりからアクションまでが行われやすかったという事情もあるでしょう。もしそうならFBは自分で自分の首を締めた格好になるわけで、皮肉な話という事になるのですが、それはともかく。

あるいは、ユーザの多数が個人情報の収集や利用についての許諾はじめ、利用規約を理解しておらず、そんな事は許した覚えはない、と思ったのかもしれません。これについては、漫然と許諾を与えたユーザの側にも非がないとは言えないのでしょうけれど、そもそも一般人が読んで理解する事を想定していないとしか思えない規約を漫然と提示するだけで、利用許諾を詐取したも同然のFacebook側に第一に責がある話であろうし、それも無理からぬところと言うべきなのでしょう。

いずれにせよ、本件は、ユーザが個人情報の無断利用について、具体的なアクションをこの規模で起こした初の事例となります。そのもたらしつつある影響の大きさ、また不可逆になりそうな様子を鑑みるに、これまで必要性が至るところで主張されながらも見過ごされ、事実上の無法地帯となっていた、ITサービス事業における各種の個人情報の取扱いにおける一つの転換点になる可能性が非常に高いのではないでしょうか。

各社が真摯にその転換に取り組むのか、あるいはやり過ごそうとして破滅するのか、取り組んだとして信頼は得られるのか、規模は縮小するのか拡大を続けるのか。色々と注目に値する事例になるだろう事だけは間違いありません。さてどうなるのやら。

Facebook boss apologises in UK and US newspaper ads

3/20/2018

[biz] Uberが実験中のVolvo製自動運転車が人身事故、予想された無謀の犠牲

やっぱり、と言うべきですね。Uberの自動運転車が人身事故を起こしてしまったそうです。

事故の発生した場所は米Arizona州Tempe、車種はUberが正式採用しているVolvo製XC90。Uber社のSafety driverが乗車した同車が、自動運転モードで走行中に、自転車で走っていたElaine Herzberg(女性、49歳)を撥ね、Herzberg氏は病院に運ばれたものの死亡してしまったとの事です。それ以外の詳細は今の所不明。

事故自体は、技術面で多少なりと実態を知っている者であれば遅かれ早かれ起こるだろうと予想されていたところではありますが、実際に目の当たりにするとやはり酷く陰鬱な気分になりますね。それも当然、自動運転技術が未成熟で不完全、危険を孕んだものである事は元より明らかな一方、あえて公道での実験を行う理由は単に新技術、新製品の開発に先んじたい、等という専ら経済的な事情に過ぎず、到底人命を危険に晒してまで行うべき必要性が認められないものなのですから。

自動運転技術、またそれを搭載した製品の先行開発、そしてそれが実現した際に得られるだろう先行者としての経済的利益、それに目が眩み、安易に公道実験に踏み切ったUberおよび当局には事故の発生に関して何らの正当性もなく、発生も十分に予見出来ただろう以上、未必の故意による殺人と言っても過言ではありません。必要でも何でもない、金に目が眩んだ馬鹿者達の、その短慮の犠牲になったHerzberg氏は完全な被害者です。Uberと州当局はこれからその賠償等を行わなければならないわけですが、その種の過失に対し、殊に人命が失われた場合には懲罰的に巨額の賠償が強制される米国での事ですし、その報いはおそらく小さいものでは済まないでしょう。つくづく愚かな事です。

この残念極まりない事件が、今後幾らかでも同種の無謀な試みに対する歯止めになるのかどうか。率直に言えば、多少懐疑や非難の声が強まるだろうものの、実質的にはあまり影響もないのかもしれない、と言わざるを得ないのが残念でなりません。とりわけ同技術の開発の中心であるCalifornia州等では、safety driverさえも要せず、完全に無人の状態での公道での自動運転車の走行を認めるという、狂気染みた制度の立法作業が進んでいると聞きます。

毎週の如く乱射による大量殺人が発生し、犠牲者の遺族らによる嘆きと抗議の声が上がろうとも、NRAはじめ銃機器メーカーらの経済的利益を優先し、被害の発生を一切抑制しようとさえしない米国社会の事です。自動運転車に関する巨大な経済的利益の前には、1人や2人犠牲者が出たところで、人命を優先するという考え自体が生まれない、あるいは生まれても封殺しようと政財界が動く可能性は残念ながら非常に高いのでしょう。

そうしているうちになし崩しに既成事実化を図り、気がついた時には自動運転車による殺人が日常になっている、そういう未来が見えるようです。そうなったとして、関連する自動車メーカーやIT産業等は潤うのかもしれませんが、同時に生まれるだろう大量の被害者の犠牲の上に成り立つその経済は果たして正当なものと言ってよいのか。個人的には極めて強い忌避感を覚えざるを得ません。

だって、そういう社会になったとして、自分に当てはめてみれば、道を歩く時、自転車に乗る時、また車に乗る時とか、公道に出る時は一々自動運転のエラーを警戒してビクビクしなきゃならないって事になるわけで、そんなの嫌ですし、それで撥ねられて死ぬ、なんて無駄死にそのものな末路はなおさら勘弁願いたいです。誰だってそうでしょう。でも、人が運転するより統計的に安全だ、とか詐欺染みた詭弁を弄しながら、そんな未来を目指して邁進してる人が沢山いるんですよね。残念な事です。絶対に安全、と言えるレベルになるまでは公道での実験もしないでほしいし、リスクを許容するにしても、少なくともその短慮を正してからにしろよ、と思わずにはいられません。

Self-Driving Uber Car Kills Pedestrian in Arizona, Where Robots Roam

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3/14/2018

[pol] 就任から1年でTrumpのブレーキ役が全滅

米国務長官のRex Tillersonがついにクビになりました。これで、Trump政権発足時の主要メンバーで残っているのは副大統領のPenceのみ。Ivankaもいると言えばいますが、彼女は実務面では完全に素人ですし、主要と言うには躊躇を覚えますね。

ともあれ、Tillersonの退場には、主要メンバーがいなくなった、という以上の意味がある、と言われています。というのも、後先を考えない短慮そのものと言うべきTrumpの方針、行動に対し、修正を促す事が出来たほぼ唯一の人物だったからです。外交面では基本的に対話を模索し、北朝鮮や中東諸国との水面下での交渉を一手に担ってきました。まあ、その北関連での方針の対立が彼の罷免の直接の原因になったのだから、もうどうしようもなくなっていた、という事なんでしょうけれども。

後任には当然ながらTillersonとは異なる、すなわちTrumpの方針に迎合するPompeoが就いた事で、ほぼ全面的に実務担当者を事実上失い、これで外交関連での箍が外れるだろうTrump政権が、経済、軍事、環境等、分野を問わず諸外国との軋轢を先鋭化させる事はほぼ疑いようがありません。意味もはっきりしない、おそらくは本人も意味がわかっていないだろう"America First"の下、各種の条約、協定は安易に反故にされ、貿易等での障壁は大幅に強化されるでしょう。そのドラスティックな動きに、米国の議会はじめ国内もさらに混沌とするだろう事も疑いようがありません。

無論、そこに日本の都合など欠片も考慮される筈もありません。不祥事、というより犯罪の露見によって窮地に陥っている政権にとってはまさに泣きっ面にスズメバチの大軍が群がってきたようなものでしょうか。

とはいえ、残念ながら一連の米国の動きは全て正当なものです。その国力を背景にした米国の主権は他者の介入を許さない強大なものであり、その大統領たるTrumpには、その国を代表する権限が国民の信認によって与えられているのですから。日本を含め、その主権の外にある者は、如何にそれが理不尽に見えても、すべからく翻弄される他ないのです。困った事ですが、あきらめましょう。

Rex Tillerson Out as Trump’s Secretary of State, Replaced by Mike Pompeo

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3/05/2018

[pol] 詭弁と強弁、傲慢の果てに政権の面々は罪人に堕ちた

裁量労働制に関する調査データに続き、森友学園への国有地売却の際の記録文書までもが改竄されていた事がほぼ確定となったようです。

いやもう、何と言っていいのか。前者はその規模と内容から偶然による過失とは到底考えられず、後者の改竄箇所の決定的な重要性、その事実が明らかになった場合に関係各局ひいては政権にとって致命的な意味を持つだろうその改竄の内容から、故意によるものである事は疑いようもありません。そして、前者はおそらく無印公文書偽造ないし変造、後者は有印公文書変造と、程度の差はあれ、どちらも公文書の真実性を失わせ、もって国家の基盤たる行政・立法の作用を著しく狂わせる重罪です。

なお、それぞれの罪に課される具体的な刑罰は、無印公文書変造罪は刑法156条により3年以下の懲役もしくは50万以下の罰金、有印の方は刑法155条により1年以上10年以下の懲役であり、森友関連の方が法的には遥かに重い罪に当たるという事になります。文書の存否すら回答出来ないという、既に自白したも同然の国会での答弁から、有罪とみなすならば、通常の不祥事等の場合とは異なり、大臣の辞任程度では済まず、当事者たる首相夫人と財務省・財務局等関係各局の関係者はじめ、その指示をしたであろう首相及びその側近らが大量に検挙され、刑事訴追を受けるべきものと言っても過言ではないでしょう。

実際にそうなれば、規模・程度の両面で、かつてのロッキード事件レベルの、現政権による大規模犯罪と言える事になるでしょう。無論、首相と財務相をはじめとした政権周りの関係者はこぞって強弁や詭弁をもって否定ないしは回避を図るだろうし、その範囲の広さに加え、現在の検察の弱体化ぶりからすれば、現実的には本来検挙されるべき者の大半が実際にはさほどの追及もされないで終わるのでしょう。ただ、ここまで明らかな犯罪の容疑がかかってしまった以上は、それにも限度があろうと言うもの。

少なくとも、最終的に誰も検挙されない、では済まないところに至っていると思うのです。おそらくは、現在逃亡を図っている近畿財務局から財務省前理財局長を経て現国税庁長官の佐川宜寿と、首相夫人の安倍昭恵の両名への追及が徹底的になされ、かつ検挙なりの法的な責任を取らされるところ位までは行かなければ収まるものではないのではないでしょうか。加えて、両名に対する実質上の責任者として、安倍首相と麻生財務相も責任を免れないものと言えるでしょう。

しかし、これまで本件を含め、自分たちに都合の悪い事は逆ギレや強弁を以て全て封殺して来た政権の面々の事です。潔く罪を認めて刑に服する事はおろか、謝罪する事すらせず、非難し追及する野党や国民を逆に非難する、これまでと同じ対応で乗り切ろうとするのでしょう。あるいは、全く関係のない北朝鮮や中国等の国外の問題への対応を打ち出し、本件等はうやむやの内に無かったことにしようとするのかもしれません。そういう、事実を事実と認めない、無反省で傲慢かつ姑息な振る舞いを続けた結果、易易と本件のような重大な犯罪に手を染める結果に至った、という事なのでしょうけれども、この期に及んでまだそれを続けるのでしょうか。つくづく救いようのない事です。政権や官庁の面々は無論、彼らを安易に信認した多数の国民も。

2/20/2018

[biz] KFCの英国内店舗で材料が届かず一斉閉店の珍事

フライドチキンチェーン大手KFCの英国における多数の店舗で、鶏肉が届かないために在庫切れを起こし、閉店する騒ぎになっているようですが。今時こんな事ってあるのか、と驚いた次第です。

公表されているその理由は、先週行った配送業者の切替後に発生した、新業者DHLの不手際というかトラブルに伴う遅延だそうです。その具体的な内容及び原因は明らかにされていませんが、業者の変更と同時に行われたロジスティクスシステムの移行、そのベンダであるところのQuick Service Logistics(QSL)がKFCとDHLと共に本件の対処に当たっているとの話から、ITシステムの障害によるものと推測されます。動かないコンピュータ的な話ですね。

今回の影響を受けたエリアのKFCの店舗数はおよそ900、対象たる鶏肉の供給自体には何ら問題はなく、オペレーション自体には一般に問題になりうるような点は見受けられません。よくある外食チェーンのロジスティクスです。人手やトラック等のリソースが足りないという話も出ていませんし、やっぱりシステムの不具合という事なのでしょう。

だとすると、その解決にはシステムのデバッグ、場合によっては再構築が必要になる話だろうわけで、長引く可能性も相当に高いものと考えられます。とはいえ、高々1000店と配送先もさほど多いわけでもないので、システム側の対処が終わるまでの間、DHLが採算度外視でリソースを突っ込めばしのぐ事は十分に可能ではあるのでしょうけど。

しかし、どうしてこうなった。案件自体は、デポを作って、そこから在庫状況に合わせて配送するだけの話で、何も難しい事なんてありません。普通にやっていればこんな障害なんて起こるはずもないのです。それを、よりによってDHLなんて大手が起こしてしまった事には、いささか驚きを禁じ得ません。ほんと、何があったんでしょうか。

色々見てみると、、、まず、KFCがDHL及びQSLと提携した旨が発表されたのは昨年(2017年)の10月(下記プレスリリース参照)です。それまでに準備期間が置かれていたのかはよく分かりませんが、仮にそこから構築を始めたとすると、開発期間は約3ヶ月になるわけですが、これは明らかに突貫工事、というかパッケージをそのまま適用しただけですね。試験運用とかまともにやったのかどうかも怪しい感じで、トラック関連のリソースはDHLなら直ぐに準備出来たとしても、デポの設置とかオペレータの教育とか、そんなすぐ出来るものなの?等と、これだけでも色々と不可解な感じが漂いますね。

KFC revolutionizes UK foodservice supply chain with DHL and QSL appointment

他にも、上記プレスリリースには、QSLの売りとして、最適化された、鮮度の高い食材の配送を実現、等とそれらしい言葉が並んでいます。文字通りに解すれば、多分に時間や人員等のリソースの余裕を削ぎ落とし、在庫も限界まで削減したシステムに寄せて行った感じでしょうか。目的は経費削減でしょうね。で、それが裏目に出て機能不全に陥った、のかもしれません。まあ、単にITシステムが障害を起こして動かない、ってだけなのかもしれませんけれども。

何にせよ、性急にシステム移行を断行した結果、見事にすっ転んだという事なんでしょう。恐ろしい事です。何がって、その計画とは到底言えないだろう愚行を、たやすく決定し、実行に移してしまえる経営陣とシステム部門の無謀っぷりが。誰か止めなかったの?というか運用を始めるまで気づかなかったの?誰も?いやはや。

KFC shuts more stores in chicken chaos

2/06/2018

[biz] 暗号通貨の価格が株価等と相関を示し始めた理由

何やら、Dow平均株価が史上最大の暴落だとか。日中の最大で1500、終値で1100超の下落です。これが続くのか、それとも下落幅は大きくとも、常日頃からそれなりに生じる一日(+先週末)限りの一時的な下落に過ぎず何もなかったかのように戻したりするのかは分かりませんが、少なくとも市場関係者には"ブラックマンデー"の文字が頭を過った事でしょう。

既に起こった事の評価はさておき。原因は何でしょうか。報道では主として金利政策の動向を踏まえてリスク警戒の思惑が広がり表面化した事、等とされているようです。しかし正直しっくり来ません。というのも、そんな事は常時、とまでは言わずとも頻繁に起こっている事であり、ある種定常的な均衡の範囲に留まるだろうところ、要因記録的な暴落、というような特異な変動、その発生を具体的に理由付けるに足りるものとはとても言えないもののように思われるためです。

要するに、特異な変動には特異な要因がある筈、というだけの事です。そして、金融市場周りでの特異な要因、と言われれば、誰しもが思い当たる事があるわけです。そう、暗号(仮想)通貨のバブル崩壊です。

昨年の暗号通貨の価格の上昇ぶり、またそのここ最近の下落ぶりがまさしくバブルの生成と崩壊そのものである事は疑いようの無いところですが、暗号通貨は通貨との名とは裏腹に他の財貨との交換性に乏しく、それ故にそのバブル崩壊も株式・債権等へは波及し辛いものと考えられていました。実際、先週末に至るまで、暗号通貨の価格がピークから半減するに至っても、株式市場は高騰を続け、市場最高値を更新しさえもしていた事は、その仮説を支持する証拠と言え、反対的な立場、すなわち実体経済との相関を持たない財貨など有り得るのか、といった疑問を封じるに十分なものでもありました。

しかし、先週末からの状況は、その仮説に疑問を抱かせ、あるいは崩壊させるものでした。およそ半値まで落ちた後、下落傾向ながら一進一退を続けていた暗号通貨群の価格が、株式市場の価格下落と前後して、あたかももつれ合うように急激かつ一方的に落ちていったのです。それまでとは全く逆に、その2つの価格の間に相関がない、とは通常考えられないレベルで。

これが偶然ではないとすれば、以前は相関が無かった(ように見えた)のが、今回相関を有するに至った、という事になります。それは何故でしょうか。仮説の上に仮説を立てるような話で、殆ど想像に過ぎないものではありますが、幾つか思い浮かぶものは無いではありません。

例えば、信用の時間差です。暗号通貨バブル崩壊直前には、ブームに乗せられた多数の一般人が資金を投入していましたが、この中の相当数がクレジットを利用していただろう事は間違いなく、その暗号通貨取引から実際の入出金までの時間差がそのまま現実経済と暗号通貨の価格変動とのラグになっていた可能性はあるでしょう。

そして、暗号通貨下落の直近の主要因に、大手クレジット会社による暗号通貨のクレジット決済禁止措置の導入というのがありました。今回、その暗号通貨取引の資金にクレジットを利用していた層が、決済禁止措置により資金調達に障害を生じ、緊急に代替の資金調達を迫られた筈です。あるいは調達に失敗してショートさせた向きもそれなりにあるでしょう。そして、その資金調達先は当然ながら暗号通貨以外の資産の換金であり、その中に含まれているだろう株式、その換金売りが株価下落の要因になった可能性はあるだろうし、信用取引での損失を埋められずデフォルトに陥った分が、これまた信用会社経由で損失として市場に波及する事も有り得ないではないでしょう。もっとも後者はいささか迂遠で、各種ヘッジもされている筈の部分につき、無いではない、位の話でしょうけれども。あと、先物取引については、その他の金融資産の取引も同時に手がけている投資家が殆どでしょうから、各プレイヤーの中で直接的な影響があった筈です。

すなわち、暗号通貨自体は他の財貨との関係が薄くとも、そこに参加するプレイヤーのポートフォリオを介して相関がある、という事です。こう書くと当たり前の事ですね。

そうであれば、相関が生じるまでのラグの理由について、次のような仮説が成り立つでしょうか。まず暗号通貨市場自体がバブルとなり、これに伴ってプレイヤーの資産も膨張を続けていた時期は、当然ながら他の市場に負の影響を与える事はありませんでした。次いで下落を始めた当初は、まだプレイヤーの流入も完全には止まっておらず、再上昇の期待を抱くプレイヤーも相当数残っていたため、多くが暗号通貨に集中し、その損失も現実化していなかった、のではないでしょうか。それが、急激な下落局面にあってクレジット等の主要な資金経路の一部が喪失し、否応なくその損失の確定と補填を迫られた事で、一気に現実化し、その結果ラグが消えて強い相関を示すに至った、と。

であるとすれば、暗号通貨群の、閉じられた楽園的な世界はもはや存在せず、今後その崩壊を進めるだろうその価格下落は、容赦なく他の市場へも波及する可能性がある、という事になるわけです。

元々無価値だったものが無価値に戻るだけ、と言えばその通りですが、膨れ上がった破裂前の価値があるものとして様々な所に生じ、あるいは既に消費された信用が急激に消滅し、その穴埋めないしデフォルトにより経済に混乱や損失が生じる事は避けられないでしょう。過去にバブルの教訓は十分すぎる程得ており、かつ警告も十分にされていた筈なのに、あっさりと同じ過ちを繰り返すその有り様は、人間とは愚かなものなのだと、あらためて見せつけられているようで暗鬱たる思いを禁じ得ないのです。

ところで、ブームに乗せられてクレジットでバブルに手を出して、崩壊して借金返せず破産って、少し前のサブプライムローンの件と全く同じじゃないですか。。。ほんと馬鹿は死ななきゃ治らないんですね。

Bitcoin Ban Expands Across Credit Cards as Big U.S. Banks Recoil

[過去記事 [biz] 無法と無謀の必然、相次ぐ暗号通貨取引所の破滅]
[過去記事 [note] 仮想通貨バブルの狂気性について]

1/30/2018

[biz] NEC国内リストラ3000人

停滞ないし凋落の激しい電機業界にあって、負け組に分類されて久しく、ジリ貧ながらもリストラを繰り返す事で致命的な損失は回避し、しぶとく生き残って来たNECが、来年度にまたしても3000人をリストラするんだそうです。

対象は国内で、通信機器等のハードウェア部門及び間接部門。ハードはともかく、間接部門なんて過去のリストラで削りに削って来た筈で、今更そんなに余剰があるのか、いささか疑問を感じないではないですが、計画ではそうなっているとのこと。

そして、今後注力する分野は、お決まりのSI関連です。プロダクトが不採算に陥った電機メーカーが、ITサービス関連に注力する、というのは判を押したように何処も大体同じなわけですが、それだけだとジリ貧、という事で他社との差別化のために挙げられたのが顔認証です。海外の防犯向けを拡販して主力に育てるつもりだとか。

しかし、顔認証を含むNECのセキュリティ関連事業の売上高は年400億程度、NECの売上高の2%にも届いていないのです。これを主力に育てる、というのは、数年の内に少なくとも数倍以上に成長する、と言っているに等しいわけですが、特に最近特別な新製品が生まれたわけでもないのに、これからそんな急成長する、と言われても、率直に言って現実性に乏しいものと言わざるを得ません。

そもそも、これまでの市場や社会の動向から見て、顔認証にそこまでのニーズがあるかどうかも明らかではないわけで。というか、顔認証の導入で何らかの成功を得た例というのが殆どないのですね。失敗とか無駄に終わったとかいう話なら山程あるのですが。

実際、過去様々なところで行われた監視カメラ等による指名手配犯検挙等のサーベイランスの実験も、成功したという話は皆無でもありますし、国内空港への導入に際しても、実験で散々な結果が出て一度は頓挫したのを、多分に政治的に無理やり復活させてねじ込んだという有り様です。一部アミューズメントパーク等のゲートでの認証に採用されてはいますが、そのようなゲートを、莫大なコストをかけてまで導入する事が、必然的もしくはそこまでいかずとも自然と言えるようなシチューションが果たしてそんなにあるものか、疑問を抱かずにはいられないのです。

結局のところ、訴求するために必要な類の実績が全く足りていない、というか殆ど皆無なのが問題なのであって、それを解決しない事には成長も何もあったものではない、のではないかと。

もっとも、その辺の非情な現実は当のNEC自身が一番良く承知している筈ですし、自分でもそんな夢物語は信じておらず、リストラをするにあたり、夢も希望もなくただ削減、という形になる事を回避するため、体裁を取り繕う建前を探したところ、顔認証位しか使えるものが無かった、というだけの事なのかもしれませんけれども。

だとしたら、一番大変なのは、具体的な見通しも何も無いままに、社全体の未来を背負う、そんな無茶な目標を押し付けられる羽目になるだろう顔認証部門の開発・営業の担当者たちなのかもしれませんね。どうしろっていうんだよ、というところでしょうか。といって、それらの部門は、長い間、近い将来はこう成長する、こんな可能性がある、と色々な建前を掲げ、それで少なくない運転資金や利益を得て来ている筈で、その山のように積み上がったコミットメントを果たす責任はあるわけです。そうである以上、無謀だとしても今更放棄や撤退は許されない、それは仕方ないところではあるのでしょう。

ただ、その辺は全てNECの内部の事情に過ぎません。必要性もメリットもない顧客に押し売りするような真似だけはしないで頂きたいものです。無論、必要性とメリットが十分にあり、かつデメリットが許容可能であり、コストとも釣り合う、というのを顧客がよく理解し納得して、勿論メーカー側から性能や精度その他ごまかしや隠蔽が無い、というのであれば何も問題はないのですが。

NEC、来年度にも国内3千人削減へ 海外展開に出遅れ

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