3/31/2023

[biz] Virgin Orbitが資金調達失敗でほぼ全従業員解雇

航空機を利用した衛星打ち上げ事業を手掛けている、米Virgin Orbit社が資金繰りに窮して従業員をほぼ全員解雇、事実上の破綻に追い込まれてしまったそうです。

同社は、Richard BransonのVirginグループで宇宙事業を手掛けるVirgin Galactic社のスピンオフ社ですが、売上的に当初から事業が回っているとは到底言えず、少なくとも追加出資を受けなければ運転資金も足りないという自転車操業ですらない惨状だったところ、それに加えて、少し前に主要出資者のBransonが見切りをつけ、追加出資をしない旨宣言されてしまい、あっという間に窮地に陥ってしまいました。慌ててBranson以外の新規出資者を探していた同社ですが、当然ながら出資者を見つける事は出来ず、今回の措置と相成ったわけです。普通に破綻ですね。お疲れ様でした。

同社が今後再生を目指すのか、精算してしまうのかは定かではありませんが、元々収入が無きに等しい位だったのだから、経営的には元々破綻していたと言うべきところですし、むしろよくここまで持ったと言う方が正しいのかもしれません。ろくに事業収入が得られないまま際限なく資本を食いつぶした挙句破綻した、ということで、三菱重工のMRJと似たような感じですが、一応打ち上げに成功した案件も少ないながらある点でこちらのほうがいくらかマシだった、とは言えるかもしれません。

周知の通り、ここ最近の金融環境は急激に厳しくなっています。欧米での金融緩和の終了、続いてインフレ対策のための利上げが続き、米国中心にベンチャー関係に近く、不安定なスタートアップへの資金供給を担ってきた部類の金融機関の破綻も相次いでいる。当然、この種の事業が成り立っていない、話題先行型の企業の資金調達はコストも含め極めて厳しくなっているだろうし、その事が同社の破綻の決定打になった面はあるでしょう。その意味で、運が悪かったと言えなくもないかもしれません。

しかし、そもそもの話として、追加出資が得られなければ立ち行かなくなるような事業の構造は正しいとは到底言えないわけで。需要が不安定な位なら全然ましな方で、本来淘汰されて然るべきだろう採算性の壊滅的な事業や、それ以前に事業の立ち上げが許されるべきではなかったと言わざるを得ない程に見通しが甘いものも当たり前に見られます。そんなもの、破綻して当然でしょう。ですが、そういう、耐震性能0の高層ビルのような企業が山ほどあるのが現状なのです。それらが、雪崩を打って崩れ落ちようとしている。

この種の、ただ徒に資本を食いつぶすだけの赤字事業の存在を許容してきた主たる要因であるところの、資金供給の名目の下に資金調達があまりに容易であった金融環境、そこに溜まったツケの大きさとその精算がもたらす応報の厳しさに、改めて戦慄を覚えます。しかし放置すればそれはさらに肥大化するだけである事もまた明白、そろそろ覚悟を決めるべきかと、半ば諦めとともに思う次第なのです。 

 Virgin Orbit fails to secure funding, will cease operations and lay off nearly entire workforce

3/18/2023

[sci] 新型コロナウイルスの第一被害者はタヌキらしい

タヌキが犬の親戚だと知ってました?知ってた?そう。。。

とある英文記事を読んでいると、Racoon dogという言葉が出ていまして。えっこれタヌキ?と思って調べてみるとやはりタヌキでした。直訳するとアライグマ犬、という事ですね。その見た目からして、アライグマに近い種なんだろうと勝手に思っていたのですが、生物学的に見るとタヌキはイヌ科に属していて、アライグマの属するアライグマ科ではないんだそうです。意外でした。生物に詳しい人なら常識なんだろうな、とか。

それはそれだけの話なんですが、 その読んでいた記事というのが、新型コロナウイルスの起源を遺伝子的に分析したら武漢の市場で売られたタヌキの可能性が高い、というもので。またタヌキが風評被害を受けそうな話ですね。周知の通り、武漢はコロナウイルスの流行が始まった地であり、そこにあったウィルス研究所、及び家畜市場は状況証拠的に見てコロナウイルスの発生地である事が確実視されてきたところですが、そこに物的証拠が追加されたということです。

具体的には、コロナ発生後中国政府により閉鎖された後の家畜市場について、調査団はその壁や床、ケージ等をモップ等で拭って採取したサンプルを確保しており、それを分析したところ、コロナウイルスと共に動物のDNAが検出され、その大部分がタヌキのものだという事が判明したんだそうです。

壁を拭うだけでそんなに出るくらいだから、市場内で蔓延していた事は確実でしょうし、これをもってタヌキが宿主だと断言できるわけではありませんが、タヌキが主たる宿主の一つであった事はほぼ間違いないだろう、というわけですね。そりゃそうでしょう。

しかし、この分析がどれくらい意味があるかというと微妙ですね。というのも、これでコロナウイルスの起源が特定できたわけでもなく、その感染拡大経路が判明したわけでもありません。市場に持ち込まれたタヌキがウイルスを運んで来たのか、市場に出入りする他の生物(人間を含む)が持ち込んだのかもわからないのです。同じ場所にあった、というだけなのですから。

その意味で、ウイルスの起源に関する他の仮説、すなわち武漢の研究所からの漏洩説やコウモリ起源説等が否定されたわけでもありません。実質的にはあまり変わらず、従来説にタヌキ起源説が追加された程度でしょうか。強いて言えば、コウモリ起源説がいくらか弱まる位でしょうね。

証拠は既に中国政府により隠滅され、それを検証する術はほとんどない事にも変わりありません。今更言うまでもない事ですが、それらを知ることができれば、どれほどの知見が得られ、将来の被害への備えが出来たことでしょうか。おそらく、真実が明らかになる事はこれから先もないのでしょう。それら全ての喪失、それこそが中国政府の犯した過ちであり、取り返しのつかない罪であると、改めて最大限の無念と非難を込めて断言せざるを得ません。

今回の話にしても、単にタヌキがコロナウイルスと結び付けられ、ほとんど無意味に忌避されるだけで終わるのではないでしょうか。タヌキが悪いわけではなく、単なる被害者の一つに過ぎないのにも関わらず。虚しい事です。

New Evidence Supports Animal Origin of COVID Virus through Raccoon Dogs 


3/09/2023

[pol] 虎を失った狐

高市早苗氏が公文書記録を捏造と主張している件ですが、見るに耐えませんね。

詳細は今更繰り返すまでもありませんが、大まかにまとめると次の通り。同氏が総務相であった際の、省内で特定のテレビ放送局に関係して放送に対する公権力の中立性に抵触する氏の発言、有り体に言えば暴言と言うべき類のものが記録された文書が公表され、国会の質疑の中で追求を受けた際にその文書自体が捏造だと断言し、後にその文書が総務省により行政文書、すなわち公文書である事が確認された後も、内容が不正確だ、等と言い方を変えつつもなお捏造と主張し続けている、というものです。

内容自体は、周知の通り故安倍氏と同じく右翼の中でも最強硬派の代表として知られる高市氏の過去の発言を踏まえれば、まあそれ位の事は普通に言うだろう、というようなもので、逆に言えば今更それが判明したところで驚くにはあたらない程度のものです。おそらく当初から氏が本文書の記載を事実と認めていたとして、言い過ぎだったと陳謝撤回すればそれで済んだでしょう。実際に圧力がかかっていなければ、ですけれども。

が、公文書と判明する前に、もし文書が本物であれば議員辞職する旨明言してしまい、その辞職を回避する、すなわち保身のために、文書自体が捏造であったとの主張を撤回出来なくなってしまったのですね。

状況は以上の通り。次に、氏の主張の真偽について検討してみましょう。

まず、氏の主張するところの本文書(及びその記載事項)が捏造である旨については、その主張を裏付ける客観的な根拠は何もなく、従って考慮に値しないと言わざるを得ません。氏の主張も、"そんなレクを受けた筈はない"等、根拠は自身の記憶のみ、しかも"筈だ"とか曖昧な部分すら残っています。証拠性というか、第三者に対する説得力は一切ないわけです。明らかに覚えているだろう事柄についてすら都合よく覚えていないと主張する政治家が記憶にないと言ったところで、何の意味もありません。

一方、文書の内容、すなわち氏の発言等については、捏造を疑わせるような点は見当たらないわけですね。仮に捏造であるとしてみましょう。公文書である事ははっきりしているのだから、その作成者は官僚、しかも大臣とのやり取りに同席する程度の高官です。文書の正確性は間違いなく高いでしょうし、その重要性からして省内の多数の部署間で共有もされ、多数の目に晒されていたでしょう。そのような文書の、それも最も重要な部分である大臣の発言、しかも行政としては何ら必要性も必然性もない類のものを、総務省の高官がわざわざ創作捏造してねじ込んだ、という事になります。有り得ません。

氏の修正された主張であるところの、文書の不正確性についても、あったとしてせいぜい軽微な表記ミス程度でしょうし、発言の主旨に影響を与えるほどのものとは到底考えられません。

結局のところ、氏の主張には根拠がなく、一方の文書の真性については根拠は十分でありかつ否定する根拠もない。高市氏は本件の争点に関してはもう詰んでいると言わざるを得ません。にも関わらずなおも自身の主張を通そうとする氏の試みは無謀という他ないでしょう。

意図的なのか、それとも忘れているのかは不明ですが、解せません。積極的に過激な主張を行う事で知られ、従ってこの種の舌禍への対処については慣れている筈の高市氏が、何故こんな無謀な振る舞いに及んでしまったのでしょうか。

多分に、高市氏は強力な後ろ盾だった安倍氏がいた頃のやり方を忘れられないのではないでしょうか。本件文書は、故安倍首相による官僚の統制が強力に作用していた時期のものです。おそらく、安倍首相が存命であれば、その統制によって文書自体が外部に出る事もなかったでしょうし、外部に出たとしても、安倍氏の威光により総務省の側が公文書と認める事もなく、捏造との主張が通っていたのかもしれません。森友学園関係の一連の事件のように。

しかし安倍氏はもういないのです。当然、その威を借りる事は出来ず、しかしその代わりになる後ろ盾を得る事も出来ず。にも関わらず、虎がいた頃の生き方を変えられなかったために、容赦なく外敵に淘汰されようとしている、孤独で愚かな狐。今の氏は、そういうものなのかもしれません。

3/08/2023

[pol] 東谷とその支持者、無知と無責任が招いた惨事

やっと一区切り、なんでしょうか。東谷義和参院議員(通称ガーシー)の国会法違反の件、除名処分が確実な見込みとなりました。

本件は、前回の参議院選挙で比例当選した同議員につき、当選後半年以上に渡り一度も議会に出席せず、国会法第五条の集会義務違反に問われたものです。これに伴い国会法の規定に従い懲罰委員会にて国会法122条第二項の"公会議場における陳謝"を課され、同氏はこれに同意の旨返答したにも関わらず、期日にそもそも帰国せず、履行拒否となりました。

これを受けて、当然に陳謝よりもさらに重い懲罰を課される運びになったのですが、国会法122条に定められた懲罰の方法の内、陳謝よりも重いものは登院停止と除名の2つしかなく、うち登院停止は登院懈怠者であるところの同氏には懲罰としての意味をなさないため、もはや除名する他ない、というわけです。

同氏は懲罰に応じないだろうという見込みは当初からありました。周知の通り、同氏は暴露系と言われるその活動に伴い、名誉毀損や業務妨害、さらには詐欺や脅迫等の刑法犯の容疑者として多数の告発を受けており、帰国すれば逮捕・訴追を受けるだろう事はほぼ確実で、それを回避たるために帰国しないだろうと見られていたためです。

ただ、国会議員には不逮捕特権があり、少なくとも会期中は原則として逮捕されません。すなわち会期中であれば帰国の可能性もないではないとも考えられるため、一足飛びに除名にはせず、念の為に陳謝処分が課されたのですが、これも無視された、というわけです。逮捕の恐れはないにも関わらず何故同氏が帰国しなかったのか、いささか理解し難いようにも思われますね。

これは推測ですが、同氏は本件に関わる国会法及び憲法の規定を理解しておらず、そのために今回のような対応になったのではないでしょうか。まず国会法を軽くでも読んでいれば、国会議員がどのような義務を負い、実際に議院がどのように運営されているかが分かるし、議員が議会に出席する事がおよそ全ての活動の前提になっている事が理解できた筈です。陳謝の懲戒への対応についても、出席の代わりに動画を送りつけたそうですが、国会法の規定上"公会議場における"と明記されている事から、動画を送りつけたところで意味がない事も明らか。法を理解しているとは到底思えない振る舞いです。議院側も話が通じないと困惑したことでしょう。

大抵のことがオンラインで事足りるようになって来た昨今にあって、登院・出席を前提とした国会運営のあり方は時代にそぐわない、という考え方はあり得るでしょうけれども、実際にオンラインの方式を議院運営に組み込むのは容易な事ではなく、少なくとも国会法の全面改正と各種規則の改定、各種設備の導入、何より現在議院を中心に運営されている各省庁はじめ行政との連携のあり方すなわち政府中枢の運営の形態等も根本から変更が必要になります。

そもそも、新しい方式がメリットばかりをもたらすわけはありません。デメリットも小さくはないでしょう。ビデオ会議では必ず生じる遅延からして影響は甚大です。絶対に必要となる議員の本人確認及び議員以外の排除も困難を極めるでしょう。末端の事務程度ならいざ知らず、事は国権の最高機関の運営すなわち国家運営の根幹に関わるものです。その是非も含め、広範囲に渡って慎重かつ詳細な検討と判断が必要になります。民法や憲法の改正ほどではないにせよ、それに準じる程度の困難なプロセスになるでしょう。

それだけの労力を払い、デメリットを受け入れてでもその制度変更が必要だと主張するなら、その主張はまさに国民の代表たる議員が法に則って行うべき事であって、当たり前ですが現在の制度を無視する言い訳にはならないのです。現状がそうなっていない事を批判するなら、その対象はまず第一に議員である筈なのですし、議員でありながら議院運営を妨げている東谷氏は最も責任が重いと言うべきでしょう。それが法の無知によるというなら、そもそも同氏に議員の資格がなかったものと断ぜざるを得ません。立候補などするべきではありませんでしたね。やれやれです。

もっとも、同氏の人となりやその活動を少しでも知っていれば、氏に議員の職責を果たすに足る資質があると考え得る筈もなかったでしょうけれども。投票は権利であり自由でもありますが、他の権利と同様、相応の責任が伴うのです。この事態を招いた、すなわち国会運営の妨害に加担したに等しいところの、氏に投票した20数万の愚かな有権者達には深く反省を求める次第です。一定期間選挙権の剥奪、位してもいいくらいだと思いますよ。不可能ですけれども。

なお、同議員は比例区選出につき、除名後の後任について補欠選挙は実施されず、同名簿中の次順位以降の候補者が繰り上がり当選という事になります。同党の候補者は基本未経験者しかおらず、しかも知名度等の議員としての能力とは全く関係ない事柄のみによって選定されている筈ですから、期待など出来よう筈もありませんが、せめて国会運営の邪魔だけはしないで頂きたいと思う次第です。

3/07/2023

[note] 失敗を失敗と認めなかったJAXAの必然

H3ロケットが打ち上げ失敗だそうで。

延期に延期を重ねた末に先日打ち上げを実行したものの、噴煙を上げながらも不具合が検知され打ち上がらなかった本機ですが、周知の通り運営体であるJAXA(及びその下請けで実質的な開発担当である三菱重工)は失敗ではなく中止であると強弁していた本件。

打ち上げを任意でやめたのではなく、実行しながらも機器の問題で遂行できなかったのですから、それはまごうこと無き失敗であり、当然ながら、本来ならその障害となった技術的問題を解決すべく、その原因究明がなされ、その上で対策が行われるべきものでした。それをせず、そのまま再チャレンジなど無謀という他ないでしょう。

しかしその失敗をそもそも認めず、従って機器に問題はないとして対策もないままに漫然と再実行した結果が今回の失敗というわけです。今度は途中で自動停止もせず打ち上がってしまい、あえなく爆破となりました。中止と強弁する余地はありません。完全に失敗です。

この失敗は、単なる偶然による失敗ではありません。前回の失敗を失敗と認めなかった、そのJAXAの運営、意思決定のプロセスにこそ原因がある、すなわちJAXAのロケット事業自体の構造的な機能不全を示している事は明らかです。平たく言えば、JAXAには少なくとも新型ロケット事業を行う能力がないという事でしょう。

本事業を巡っては、予算の都合等でこれ以上延期は出来ないとかそういう内部の事情があったのでしょうが、その種の社内政治的な事情を優先し、技術面のプロセスを軽んじた時点でこの失敗はほとんど決まっていたのでしょう。

これから後始末という形でJAXAと三菱重工はじめ担当各所が責任のなすり合いやらを始めるんでしょうが、無惨なものです。救いはありません。今回の失敗が今後の糧になる事すらないのですから。本当に最低ですね。

12/20/2022

[gov] 日銀がゼロ金利放棄

 ついにこの日が来ました。

日銀が長期金利の上限を0.25%上げ、事実上の利上げを行ったのです。

形式的というかレトリックとしては目標金利自体は据え置きで、許容する変動幅を従来の0.25%から0.5%に変更した、という言い方ではあります。が、周知の通り長い間苛烈な金利上昇圧力に晒され、0.25%を超えては介入で戻し、を繰り返していた長期金利の現状からすれば、その上昇の許容は実質的に利上げに他ならない、というわけですね。

つい先日、発行済の日本国債の実に50%超を保有し、先日の0.25%を僅かに超えた金利上昇の時点で1兆円近い評価損が生じていた日銀のバランスシートの崩壊は必至です。試算では0.5%で既に引当金の額を超え、債務超過に陥るとされます。満期保有が前提とはいえ、中央銀行が甚だしい債務超過に陥るという事実の与える影響は小さいものである筈がありません。多岐にわたって甚大な影響、それも悪い方向で、が出るでしょう。

どうするんでしょうね。増資とかするつもりでしょうか。するとしたら財源は国債になるんでしょうけど、少し金利が上がったところで他国債と比べれば著しく低金利な日本国債の買い手が日銀以外にほぼいない現状、日銀の自己資本の増資のための債権を日銀自身が買うとかいうわけのわからないことになってしまうわけで、実質的に無意味な話な筈なのですが。いやはや滅茶苦茶ですね。もっとも、これまでゼロ金利を続けていた事自体が滅茶苦茶だったのだから、その末路が滅茶苦茶なものになる事もまた当然ではあるのですが。

年の瀬になって、俄に風雲急を告げる日銀、ひいては日本の金融。下手をすれば無事に年を超えられない人が出かねない激流に晒される方面の方々に置かれましては、可能ならば自衛を、出来なければ諦めて諸々手仕舞い等されますよう。

※9月時点での評価損は引当金の額債務は超えていなかったとの事。修正しました。

11/26/2022

[note] Ubuntu22.10へのアップグレードでオーディオの不具合に遭遇

した件についてメモ。

しばらくぶりのUbuntuのアップグレード。今回は22.04LTSから22.10への移行になります。コードネームはKinetic Kudu。Kuduはレイヨウの一種でヤギとか牛の親戚ですね。ともあれいつもの通り、リリースからしばらく待って、特に大きな不具合は報告されていないらしいと判断してから実行したのです。結果としてこれが間違いだったわけですが。。。

アップグレード自体は特に問題もなく完了しました。が、いつもの通り日本語入力やらブラウザやら一通り動作確認をしていたところ、オーディオ周りに不具合が発生している事が判明してしまったのですね。

具体的には、動画の閲覧や音楽ファイルを再生する際、ブラウザやmplayer等が止まるのです。アプリ自体が完全にフリーズするのではなく、再生前の初期化が終わらないような感じで、そこから先に進まなくなるのです。不可解なのは、pulseaudioのコントロールパネルを開くと再生されたりされなかったり挙動が一貫しない点です。ブラウザ(firefox)で動画サイトを閲覧する場合には、動画を閉じてもサウンドデバイスがリリースされないらしく、pulseaudioのパネルにどんどんfirefoxのエントリが増えていって、処理が(恐らくは)スタックする事象も起こりました。

日常の利用に甚大な支障をきたすであろう致命的な不具合です。これはいかん、とすぐさま対処方法を調査する事に。しかし、同様の不具合の報告はなく、わずかに22.10にアップグレードした場合にbluetoothの再生デバイスが動作しなくなる、という報告が見られた位でした。

一ヶ月経っているのにこれだけ報告がないという事はおま環案件の可能性が高いかも、と愕然としつつ、対処しないわけにもいかない、という事で、22.10でのオーディオ周りの変更点から調査を再開。すると、長らくlinuxの標準オーディオサーバとして採用され続けて来たpulseaudioが廃止され、pipewireに置き換えられるという大変更がなされていた事をここで初めて認識しました。もしかしなくてもこれが原因であることは明白です。事前に知っていればもうちょっと警戒したのですが、と言っても後の祭り。リリースノートとかはちゃんと読みましょう。。。

ただ、pipewireに置き換えられた、と言っても、現状linux上では大半のアプリ等がpulseaudioを前提として構築されていますから、例によってpulseaudioのラッパーを被せる形で導入されているわけで、本来は従来と同様に動作するし、ユーザーが気にする必要はなかった筈です。それが不具合を起こしている、という事は、このラッパー周りかそれと応答するpipewireのインタフェース部分あたりに不具合があるという事か、というところまでは容易に推測出来ました。

しかし、設定ファイル等も確認してみても、特段の問題点も見つかりません。そもそも設定ファイルとかいじれるところが殆ど無いのですね。仕方がない、こういう時は再インストールだ、という事でpipewireを入れ直してみました。具体的には下記の通り。

まず、上記bluetooth関連不具合の報告中にあったライブラリの内、22.10のデフォルトでは入っていなかったpipewire-audio-client-librariesを入れます。

$ sudo apt install pipewire-audio-client-libraries 

次いで、サービス類の設定をやり直し。

$ systemctl --user --now disable pulseaudio.{socket,service}
$ systemctl --user mask pulseaudio
$ systemctl --user --now enable pipewire{,-pulse}.{socket,service}

オーディオサーバーの状態表示コマンド $ pactl info  で以下のようになっていればOK。

サーバー名: PulseAudio (on PipeWire 0.3.58)

もしなっていなければ、pipewireモジュールの入れ直しからやり直しになるでしょう。むしろ中途半端に設定の書き換えからするより、最初からやり直した方がいいのかもしれませんね。

ともかく、私の環境だとこれである程度改善したのです。ただ、残念ながらまだ不具合は残っていました。何かというと、何故かpulseaudioのコントロールパネルを開くまで再生が停止するのです。パネルを開くと再生が即始まる。わけがわかりません。オーディオサーバの方で何か応答が止まる部分があって、それがパネルを開く際に解除されるのでしょうけれども、それが何かも不明。PCを再起動しても駄目。意味不明な現象を前に、ここでああでもないこうでもないと迷走することしばし、最終的に、pipewireを再起動すると治りました。下記コマンド。

$ systemctl --user restart pipewire

これで、再生毎にpulseaudioのパネルを開く必要もなく、pulseaudioのエントリが無限増殖する事もなく、以前と同様にオーディオが動作しました。いつも通りに動くってありがたい事なのですね。。。

しかし久しぶりですこの新機能特有のわけのわからないバグり方とその治り方。こういう、不具合の原因もわからないけれど再起動したら治りました、だと、根本的には全く治っていないものとしか思えないし、これからしばらくオーディオ絡みで同様の不具合に悩まされるのだろうかと思うとげんなりせざるを得ないのですが、もう考えても仕方ないし、諦めましょう。

ともかくも、ひとまずはこれでおしまい。お疲れ様でした。

10/21/2022

[pol] Liz Truss英首相辞任、濁流に呑まれる英国

英国首相のLiz Trussが辞任を表明しましたというか、させられたというか。就任からわずか45日の事です。もちろん前代未聞。正確には保守党の党首を辞任すると言ったのですが、与党党首が首相になる事が事実上決まっているため首相を辞めるのと同義なのですね。なお、既に新国王チャールズ三世にも伝達済みだそうで、既に撤回は不可能です。

まあまあ衝撃的ではあるのですが、と言っても、そういう事もあるだろうなと。というのも、元々、Trussの党首就任は、党首としてやっていくのに最も必要な筈の、保守党内の議員の十分な支持が得られないままに決まったものでした。なのに何故首相になれたのかというと、保守党の党首選挙は、議員による予選を経て、最終候補2名による決選投票で決定する仕組みを取っているのですが、この決選投票は議員以外の全党員も含めて各自1票を持つので、議員の支持で劣っていても、一般党員の支持があれば当選出来るのです。要するに保守党の党首というのは、党内における大統領のようなものなのですね。ちなみに議員の支持は決選投票で敗れたRishi Sunakの方にありました。

なものだから、Trussは最初から与党内をまとめられない、死に体の少数派党首だったわけです。その影響か、Trussに近い者を中心に選任された大臣は、非主流派の経験に乏しい未熟な議員ばかりでした。財務相に任命したKwasi Kwartengも含めて。

その未熟さとそれに伴う実行力の無さはすぐに露呈します。Kwartengは経産相としての経験はありましたが、財務に関しては素人でした。後先を考えず、恐らくはその乏しい政権への支持を増やすために、単なる経済対策として大規模な減税、その財源としての国債の増発等を安易に打ち出し、ポンドの大暴落はじめ多数の住宅ローンの提供停止等の経済的な大混乱を引き起こして、減税等の撤回とあわせて辞任に追い込まれます。その被害は甚大で、Kwartengの後を継いだJeremy Huntにも、もはや出来る事はありませんでした。当たり前の話ですが、撤回後も経済周りの状況は改善していません。

これにより、保守党員のみとはいえ一般市民の支持によって選ばれた筈のTrussはその市民からの支持を急速かつ決定的に失います。元々議員の支持を得ていなかった事と併せ、もはや首相としても党首としても、その基盤たる信認を失ってしまったのです。直近での英国国民からの支持率は10%を大きく割り込んでいたとか。いやはや。現実は非情ですね。まあ、党員以外はそもそもTrussの選任に関与すらしていないのだから、冷淡なのも当然ではあるのですが。

一応、保守党の規約では、党首は就任(もしくは信任投票)から1年は任期が保証されているので、自ら辞任しない限りは原則在任し続ける事も可能ではあるのですが・・・さすがにここまでの不支持となると、次の選挙での保守党の壊滅的敗北は避けられないだろうわけで、それに危機感を覚えたのでしょう、ほぼ周りの全員が辞任を要求する状況になっていましたし、自らの政治家としてのキャリアを党諸共に終わらせかねない状況を前に、抗い続ける事は殆ど不可能だったという事なのでしょう。本来味方である筈の大臣が、その辞任の際にTrussに責任を問う捨て台詞を吐く位でしたからね。。。その振る舞いは流石にどうかと思わなくもないですが。

さて。Trussはもう終わったとして。次は誰?という話になるわけですけれども、これはもう殆ど決まっています。余程の事が無い限り、前回の決選投票で敗れたRishi Sunakになる見込みですね。元々議員の支持はあるのだし。一応、前首相のJohnsonの名前なんかも挙がってはいますが、Sunakが余程の失言をして、就任前から駄目とでもならない限りいきなり再登板というのはない、と言われています。

ただ、Sunakも別にそんな評価が高いわけでもないんですよね。MBA取得から富豪の娘と結婚してGoldman Sachsに勤務してさらに財をなし長者番付にも載り、政治家に転身した若い経済畑の人物、という時点で、通常政治家に期待されるべき安心感や信頼感は皆無。実際普通の政治家としてのキャリアはほぼなし。割と無謀な類の博打な感しかしません。増税派である事は無論、決選投票で敗れたところからしても、一般市民からはむしろ反感を買う可能性が高いでしょう。Johnson政権時に財務相の職を放り出し、政権崩壊の端緒になった事から、信用ならない裏切り者と見る向きが内外にある点も小さくない懸念材料です。

とはいえ、ここまで保守党自体の支持もボロボロになってしまった現状、未熟な人物から普通の政治家レベルの人物に代わったところで立て直せそうな気は全くしないし、だからこそJohnsonに代わる者として尖った人物が推されているという事なのかもしれませんけれども。さてどうなることやら。

10/13/2022

[gov] 誰からも望まれないマイナンバーカード

マイナンバーカード取得・使用の強制化が打ち出されたわけですが。

率直に言って、うまく行くとは思えません。理由は色々と思い浮かびますが、何よりも根本的かつ致命的な点は、利用者たる国民のおよそ全てが望んでおらず、そもそも制度へのニーズが皆無な事です。平たく言えば、これはいいね、使いたいね、と言う人がいないのです。肯定的なのはほぼ評論家の類だけですね。お仕事ご苦労様。

当たり前の話ですが、制度の普及の是非を決めるのは政府ではなく利用者です。どんな優れた(と提供する側が思っている)製品であろうと、サービスであろうと、その受け手が自然と利用するに足るだけのニーズやメリットがなければ利用されません。例外がないわけではありませんが、それはそのサービス等に代替手段がなく、かつ必要不可欠な場合だけなわけで、マイナンバーカードにはそのどちらにも当てはまらないのです。

そんな状態でカードを強制的に取得させて、さあ使え、と言ったところで無意味です。それに、従来の保険証は使えません、これからはマイナンバーカードだけです、と言うのは簡単ですが、実際にそのような運用を実現するための条件は明らかに非現実的なのであって。全員がカードを取得するところからして無理ですからね。紛失時の再発行に数ヶ月かかるというのも論外ですし。その間は車に乗れない、病院にも行けない。身分証明も出来ない。生活が立ち行かなくなる人も出るでしょう。

にも関わらず、カード非所持者の問題はじめ、往診時や僻地での医療時、また必ず想定して然るべきシステムダウンや通信障害の際等、マイナンバーカードの利用が不可能な状況については代替手段すら用意していない、というのでは話になりません。まさか全部保険なしにしろと?車にも乗るなと?今の制度なら対応出来ているのに?出直してこいと言う他ありませんね。

医療機関等の側にとっても、カードの取り扱い自体に高度な注意が必要となる上に、個人情報云々や患者からのクレーム等、諸々のリスクが激増し、かつ対応のためシステムの導入・運用・更新に多額のコストがかかる本制度など百害あって一利なしです。得をするのはITベンダーだけですね。

それでも、マイナンバーカードを使う事に多くの人が利点を見出し、歓迎しているというのならまだ見込みもあろう話ではあるのですが、肝心のそれが無い、というかむしろ個人情報保護の面を中心に否定的というのだから、これで制度として成立すると考える方がどうかしているというものです。ほんと日本政府は馬鹿ですね。

9/26/2022

[pol] 地獄へと加速するロシア

隣国ウクライナへの侵略の失敗が確実になりつつあるロシアですが、現実を受け入れて戦争の終わらせ方を模索する、などという理性的な行動に移る事は当然なく、それどころか無謀な戦力追加を試みているそうで。

直近では30万人とも120万人とも言われる予備役の徴兵を決定し、逃亡や降伏への罰則を大幅に加重して脅しをかけた上で対象者を強制的に連行しようとしているとの事。

大本営発表が通用した時代は遥か遠くに過ぎ去りました。個々人がそれぞれに戦況をつぶさに知りうる現代にあって、当然ながらその悲惨な状況を知っている徴兵対象者は、死地へ送られる事を回避すべく、ある者は逃亡を試み、ある者はわざと負傷する事で対象から外れようとし、逮捕される事がわかっていても抗議のデモを決行する者さえ少なくないとか。徴兵事務所が襲撃される事件すら起こっているそうです。そこまで行くとほとんどパルチザンですね。

無論、それらの行為に対する取り締まりは苛烈に行われているようですが、取り締まり及び逮捕者の管理に多数の官憲を動員しているのを見ると、本末転倒にしか見えません。まずその官憲を戦場に送るべきでは、と。

それはともかく、徴兵です。今の時代に。あの状況で。なんというか・・・わけがわかりません。その是非は論ずるまでもありませんが、それ以前に、戦闘に消極的どころか拒絶の意思が明確な者を戦地に無理やり連れて行ってどうしようというのでしょうか。まさか戦力になると本気で思っているのでしょうか。死にたくない、と怯えて逃げ惑う、無駄飯食らいの足手まといの類になるならまだましな方で、逃げるためにその支給された武器を上官等に向けかねないでしょうに。

ましてウクライナはもうすぐ冬。元より補給線は寸断され、物資も足りない。砲火に晒されずともそこに留まるだけで兵は死ぬ、文字通りの地獄になる事は明らかです。そこに無理やり放り込まれる哀れな素人たち。戦闘など出来る筈もなく、しかし食料や武装等の消費はその分増える。戦況の改善どころか、部隊をまともに維持する事も出来ないでしょう。

このまま行けば、第二次世界大戦でかつてソ連へと侵攻したナチスが見た地獄、かのスターリングラードをロシア自身が今度は逆の立場で繰り返す事になる、そういう未来が見えるのは私だけではないでしょう。ロシア軍の中にもその最悪の、しかし間近に迫った結末を恐れる者がいない筈はありません。生きて帰る事が出来るのかも不明で、運良く生還出来たとしても得られるものは何もない。地獄へ向かっている事は明らかなのに、止まる事が出来ないどころかむしろ加速しようとする。まさしく阿呆の所業です。もうどうにもなりませんね。

9/23/2022

[note] 自転車のブレーキ交換修理

愛車のブレーキの交換等をやりました。その記録です。

対象の自転車はフラットハンドルのクロスバイク型です。が、材質やコンポーネントのランクは最低、すなわち実質はママチャリと同じ、いわゆるルック車というやつですね。前カゴも泥除けもあり、変速機はついていますが、後輪側に6段のものだけ。フレームの剛性等スポーツ車にあってしかるべきあれこれは無きに等しい、紛うことなき安物。でも街乗りする分には問題なく、むしろ安物だけあって盗難に遭う心配等もあまりせずに済むので、かれこれ10年以上に渡って愛用し続けて来ました。

それなりに大事にして来たつもりですが、それでも流石にこれだけ長く乗っていると、故障が生ずるのも避けられないわけで、今回はそれがブレーキだったということですね。実のところ、大分前から後輪側がブレーキを強く効かせた時にキーキーと甲高く不愉快な音で鳴くようになってしまっていて、何とかしたいなあと思っていたところに、加えて前輪側のブレーキワイヤーが切れかけてしまい、この際だから両方交換するかとなったわけです。作業内容は、前輪側がワイヤーとブレーキシューの交換、後輪側がブレーキユニットの交換です。後輪側のワイヤーは特に問題なかったのでそのまま。

ちなみにというかこれは余談ですが、音が鳴る原因について少し触れておきます。後輪のブレーキはバンドブレーキと言って、その名の通りバンド状のゴムで車輪に固定されたドラムを締め付けてそこに生ずる摩擦力により車輪を制動する仕組みになっています。このゴムバンドがゴムなので経年劣化により硬化・摩耗してしまい、摩擦時に滑るようになってしまうのですね。これはゴムバンドを使っている以上避けられない構造的な事象なわけで、これを解消するにあたり、単に新品に交換するだけだと、またしばらくすれば再発する事は必至です。であれば、音が出ない、あるいは出にくい構造のものに交換した方がよい、という事になります。

ただ、交換先のブレーキには、当然ながら物理的に元のバンドブレーキと互換性がなければなりません。スポーツ車で一般に使われるリムにシューを当てるようなタイプは無論駄目ですし、そもそもの目的からして鳴きが出にくいタイプでなければなりません。そうなると、選択肢としては事実上サーボブレーキ一択になります。

サーボブレーキは、バンドブレーキを最初に開発した唐沢製作所がその欠点を改善した互換品として開発したもので、開発元自らが用意した互換品だけあって見た目の構造はバンドブレーキと同じですが、その中の構造がバンドブレーキとは逆、すなわちドラムの内側から円環状のブレーキシューを押し付けるタイプのブレーキです。バイクではおなじみなタイプのブレーキですね。

名称中のサーボ、というのは、ブレーキシューとドラムが接触する際に生じる摩擦力がフィードバックとなって、ブレーキシューがさらにドラムに押し付けられてより制動力が増すという点でサーボ的な動作をする、というところからつけられています。本来のサーボの定義であるところの出力値と目標値との差に応じてフィードバック制御をかける挙動とはいささか異なるように思いますが、それはともかく、制動力と耐久性の双方に優れる方式で、摩擦音も低め。ただ、バイクに乗る人ならば分かるでしょうけれども、ブレーキシューが摩耗すればキーキー音が鳴るようになる事もあります。あくまで摩耗しにくい、摩耗しても高音は鳴りにくい、というだけの話ですね。自転車であれば、必要な摩擦力がバイクよりは格段に小さい分、摩耗もしにくいでしょうから、そこまで心配はしなくてもいいのかもしれませんけれども。

斯様に素性良さげなサーボブレーキですが、実はあまり普及していません。価格ではバンドブレーキの方が安いためコスト優先の低価格帯ではバンドブレーキが採用され、一方で高級車にはサーボブレーキ以上に鳴きが生じにくく、かつ密閉性も高く雨風等環境の影響を受けにくいローラーブレーキが主流だからです。特に電動アシスト自転車はモーターを回生ブレーキとして利用する(事を想定する)構造と相性のいいローラーブレーキ一択ですね。そしてローラーブレーキとバンド/サーボの両者間には構造的な互換性がありません。というわけで、サーボブレーキはほとんどバンドブレーキからの交換にしか使われていないのですね。その割には部品一式で1500円〜2000円程度と安い事もあって、今回のようなバンドブレーキからの変更・交換に際しては事実上唯一の選択肢と言ってよいというわけなのです。

なお、ローラーブレーキへの変更は不可能ではないのですが、あまり現実的ではありません。というのも、ローラーブレーキは車輪のハブ内にブレーキシュー等が埋め込まれる形式なので、ホイールも交換する必要があるのです。ということはギヤやらタイヤチューブやらあれこれ移植もしなければならないということで、費用も手間も跳ね上がりますから、元々安物の自転車のブレーキのためだけにそこまでするというのは流石に割に合わないというか本末転倒というかなので、それなら本体ごと買い替えた方がいいでしょう。

前置きはここまで。作業開始です。後輪に手をつける前に、前輪を片付けます。簡単なので。前輪については、ワイヤー交換とついでにブレーキシューを交換。これは至極簡単なので詳細は省きますが、調整が二度手間にならないよう、先にシューを交換しておいてから元のワイヤーを取り外し、交換用のワイヤーとその保護チューブをそれぞれ元と同じ長さになるように切断して取り付けるだけです。後はワイヤーの固定位置を調整しておしまい。ちなみに、下図のような感じになっていました。図は交換の途中、ワイヤーを取り外すところです。半分ぐらい切れていますね。所要時間は15分程度でしょうか。

しかるのちに本命であるところの後輪ブレーキの交換です。 下図が元の状態。黒いキャップの下にシャフトとボルトがあります。元に戻す際に必要となるシャフトに留められている部品の順番は、外側から順に[キャップ]-[ボルト(15mm)]-[ワッシャ]-[泥除け]-[スタンド]です。

反対側は下図。こちらの順番は、同じく外側から[キャップ]-[ボルト]-[ワッシャ]-[泥除け]-[変速機ガード]です。

それぞれ順番をメモしてから、車体を逆さまにして両側ともキャップを取り、レンチ(15mm)でボルトを外し、泥除けやスタンド、変速機ガード等を順次外します。言うまでも無い事ですが部品はなくさないように管理します。


 
同時に、ブレーキユニットのワイヤーとユニットをフレームに固定しているボルトを外します。この機種ではワイヤー一箇所とフレーム側二箇所ですね。ワイヤー固定部は10mmのレンチ、フレーム側はプラスドライバーで外します。

これで車輪がフリーになったので、引き抜きます。この時、変速機が干渉しにくいよう、シフトは一番外側(ギヤ比が重い方、この場合は6速)にしておきます。チェーンや変速機ユニットを少し引っ張りながらやると抜きやすいでしょう。

引き抜けました。ブレーキユニットはナットで留められているので、ナットをスパナ等で外してから取り外します。
ちなみに取り外したバンドブレーキの内側はこんな感じ。まだそれほど摩耗しているわけではなく、ブレーキとしての機能自体には問題なさそうですが、それでも音がひどい、というのはやはり元々の構造上の問題なのでしょう。ともあれ長い間お疲れ様でした。
ブレーキ本体を外した車輪側には、まだドラムが残っています。このドラムはサーボブレーキのドラムと似ているもののサイズ等が異なるのでこれも交換しなければならないのですが、これを外すのが最難関。長年ブレーキの制動力を受け続けて来ただけあって、締め込まれ方が半端ではなく、例えば手で回そうとしてもびくともしません。
当然というか、このドラムの取り外しには、専用の工具が存在します。HOZANのC-349という、バイク用のY字ホルダーと同様の形状の工具です。通称ドラム抜き。一般のY字ホルダーとの違いはその剛性と柄の長さ。Y字ホルダーの方が一般に安価なので、それで試してみる人も多いようですが、剛性が足りず工具のほうが壊れてしまう事も多いそうです。南無。経験上、この種の専用工具は代用品で済ませようとすると碌な事にならないので、私は最初から大人しくこの工具を使うことにしました。4000円強。もしかしなくてもこの作業での一番の出費です。とほほ。ともかく、それを下図のような感じでドラムの穴にセットします。
で、車輪を立てて、体重をかけてぐいっと。やはり固いですが、流石に専用だけあって工具が負ける事はありません。容赦なくぐいぐいと力を強める事しばし、ようやく回ります。
回りだしたら後は手でも問題ないので、くるくると回します。
取れました。
取り付けに移ります。サーボブレーキ一式が下図。
ドラムを取り付けて、

 本体を取り付けます。ちなみに本体の内側は下図のようになっています。半月状のブレーキシューが外側についた部品が2つ、Cの字というかパックマンのような形になるように配置されていて、その片方が軸に留められています。軸の反対側、パックマンの口にあたる部分に挟まっている台形状の金属部品はワイヤーを引くと回転するようになっていて、これが回る事でパックマンの口が拡がって円の半径が大きくなり、外側のブレーキシューがドラムに押し付けられて摩擦力を生ずる、というわけです。まんまバイクのものと同じですね。自転車の部品としてはかなり重たいのが欠点ですが、その分制動力も耐久性も高い事は間違いありません。
これを車輪に取り付けます。ナットを忘れずに。
本体に戻します。チェーンを外側のギヤにかけてから押し込みます。この時、ブレーキユニットが所定の向きになるように調整しておくとよいでしょう。後から回そうとするとフレームに干渉する場合があり、そうなるとフレームに傷がついたり、やり直す羽目になったりしますので。
外した際と逆の順番で変速機ガードや泥除け、スタンド等をシャフトに差し込み、ボルトで留めます。後の調整時に緩めるのでここでは軽くで。
ブレーキユニットをフレームに留め、ブレーキワイヤーを取り付けます。こちらも後で調整するのでどちらも仮留めで。ワイヤーにはスプリングを通すのを忘れずに。通した後でワイヤーの後端にはピンをカシメておきます。

最後に調整。調整するのは2点、車輪の向きと、ブレーキの効き具合です。まず車輪の向きについて、後側からフレームと車輪が綺麗に並行になるように合わせて車輪のボルトを固定します。車輪を回してみたりして、フレームの向きとズレがないか確認し、ズレていれば合うように調整し、よければボルトを締め込みます。

次いでブレーキの調整。ブレーキの調整は2段階になります。1段目は、車輪を回転させながらブレーキユニットのネジ(緑色のシールがはられている部分から出ているネジ)をドライバーで回して、シューシュー摩擦音が鳴るポイントを探り、そこから少し緩めて音がしなくなるところに設定します。2段目はワイヤーの調整。一旦ワイヤーをフリーにし、ワイヤーがピンと張る位置でワイヤーを固定します。実際にブレーキレバーを引いてみて、緩すぎずきつすぎずの良い感じになっていればOK。でなければワイヤーの固定位置を少しずらしてまた固定、を繰り返して合わせます。一発で綺麗に出来る事は稀でしょうけれども、一番大事なところですので、横着せずに満足行くまで根気よく合わせます。

下図は取り外したバンドブレーキの部品です。サーボブレーキに問題が生じた時は戻せるよう、本体も含めて一応取っておくのがよいでしょう。
調整が終われば出来上がり。作業完了お疲れ。試しに乗ってみると良好な効き具合です。急な坂を降りる際に強くブレーキをかけても甲高い音が鳴ることもありません。やはり音は大事ですよね。

以下は感想です。

作業自体は適切な工具(特にドラム外し)を準備していれば特に困難なところはありません。所要時間はおよそ1時間前後でしょうか。ドラム外し用の工具が高価で、しかも他の作業等に流用する事も難しい、というのがネックになるので、誰にでもおすすめ出来るものではないのですが、自転車やバイクをいじるのが好きな人であればとても楽しい一時になる事は間違いありません。私はとても楽しかったです。愛車が鳴かなくなる実利もあり、準備等がそれなりに必要な分、作業後の達成感等は小さくはないでしょうから、余裕があればチャレンジしてみるのも一興ではないでしょうか。それでは今回はこの辺で。

9/15/2022

[law] 東京五輪の贈収賄事件、その軽々しさに引く

東京五輪でのスポンサー選定に関する贈収賄の件、順調に摘発が進んでいますね。普段は立件が難しいだとか色々意味不明な言い訳をして摘発をしないのが常だった検察にしては珍しい話で驚きました。贈賄は3年、受託収賄は5年の公訴時効が迫る中、急がなければ起訴出来なくなる、という事情はあるにしても、ここまでの積極的な姿勢は長らく見なかったレベルである事は間違いありません。

その姿勢の変化の理由は、やはり検察・警察を含めた司法組織の弱体化を強力に進めた安倍元首相の暗殺、それにより後ろ盾を失った向きからの圧力が緩んだか、あるいは検察の側でもう横槍が入らないだろうという見込みが得られたからなのではないかと推測されるわけですが、果たして。そのあたりの事の真偽はそのうち明らかになるのでしょう。

現時点で、収賄側は五輪組織委元理事かつ元電通の高橋治之容疑者、贈賄側はAOKI会長の青木拡憲容疑者に同副会長青木寶久容疑者、同執行役上田雄久容疑者、KADOKAWA会長の角川歴彦容疑者、同元専務の芳原世幸容疑者、同担当室長の馬庭教二容疑者が逮捕されている他、広告代理店の大広と駐車場大手のパーク24の2社には家宅捜索、さらに参考人として当時の五輪組織委員長だった森喜朗元首相を含めた多数の関係者に聴取を行っているそうです。その他にも、同様の容疑がかかっている60社以上のスポンサー企業についても捜査が進められているとの事。その中心にいる筈の電通本体の名前が聞こえてこないのは腑に落ちない気もしますが、それはともかく。

本件は既に大変な規模になっています。が、五輪の規模、性質から見て、現時点での検挙対象が氷山の一角であり、同様の犯罪に手を染めていた者が他にも多数いるだろう事は疑いようのない所でもあるわけで。まだ始まったばかりと言っても良さそうで、時効が成立するまではまだまだ摘発が続くだろう事も必至。規模・範囲の大きさ広さに加えて厳しい時間制限もあるという事で、摘発する検察も大変でしょうけれども、長らく役立たず同然であった鬱憤を晴らす意味も込めて、是非とも頑張ってもらいたいところですね。

ところで、そもそもの話、贈収賄は著しく公益を損なう重罪なのです。少なくとも、やってはいけない事である事は誰もが知っている事で、通常の倫理があれば忌避して当然の行いです。にも関わらず、これだけの、それなり以上に社会的な地位もある面々が大勢、軽々しく(としか思えない)手を染めている様は一種異様な感がありますね。五輪が商業化しているにしても、だからと言って贈収賄だ、とは普通ならないわけで。

名前の上がっているメンツを見ても、高々数億円の協賛金を値切らなければ払えない、という事もないだろうし、罪を犯す必要性というか必然性もそんなに高くないと思うのですが。無論、数億円は安くはありませんが、犯罪に手を染めてまでして得られる利益としては釣り合わないと思うのですよ。でもこぞって軽々にやっている。そこがどうにも気持ち悪いのです。皆が皆、その辺りの倫理観やらもとっくに失くしてしまっていたというだけの事なんでしょうけれども・・・。正直ドン引きです。これも現在の日本の偽らざる有様という事なんでしょうかね。なんとも無残な話です。

KADOKAWA会長を逮捕 五輪組織委元理事に贈賄容疑 東京地検

9/03/2022

[note] ubuntu 22.04LTS へのアップグレードで snap がネックになった話

久方ぶりのubuntuアップグレードの話です。20.04LTSから22.04LTSへ。server版です。22.04LTSはJammy Jellyfish、運の良いクラゲさんですね。デスクトップ版は既に複数アップグレード済みですが、LTSの最新版が出てから暫く経ち、サーバーの方もそろそろいいだろう、という事で。

何はともあれまずバックアップ。partclone等を使ってドライブをまるごとイメージ化します。しかるのちに、アップグレード。なお、serverはLTS版のみを採用するのが普通だと想いますが、そのニーズに対応して、LTS版からLTS版へは、中間をすっ飛ばしてアップグレードする事が出来ます。/etc/update-manager/release-upgrades中のPromptをltsにしておけばOK。確認後、do-release-upgrade です。

で・・・警告からエラー発生、のち中断してそのまま起動不可に。ぐえー。いくつかのパッケージのインストールに失敗していました。何に失敗したのかというと、悪名高きsnapです。 snapはcanonicalが開発、導入したaptに代わるバッケージ管理システムで、Firefoxやchromium等のブラウザ中心にaptからの移行が進められています。ubuntuでは21.10から既に採用されているのですが、LTS版としては22.04が初という事になるわけですね。

問題は、snap関連は通常のubuntuとは別のサーバで管理がなされていて、snapd自体から各種パッケージまで、そのインストール等をするには、専用のサーバにアクセスする必要があるのです。で、私のサーバーではホワイトリスト的なアクセス制御設定をしていて、アップデートの際にはその都度リポジトリのサーバーにアクセス許可を出すやり方を取っているのですが、新規に追加されたsnap関連サーバは当然含まれておらず、従ってアクセスできない、という事で失敗してしまったのです。

無論、snap関連サーバにアクセス許可を出せばいいだけの話なわけですが。ここで許可を出すべきサーバを調べるのに一苦労です。ほとんど情報がない。まあ、クライアント運用する場合はそもそも細かいアクセス制御なんてしないだろうし、そんな情報を必要とする人自体少ない、という事なんでしょうけれども。サーバーの管理には必要な情報だと思うんですけどね。。。

ともかく、四苦八苦する事数時間。結果から言えば下記ページに記載されているサーバにアクセス許可を出せばよい事がわかりました。

https://snapcraft.io/docs/network-requirements

具体的には、

public.apps.ubuntu.com 

storage.snapcraftcontent.com 

canonical-lgw01.cdn.snapcraftcontent.com 

canonical-lcy01.cdn.snapcraftcontent.com

canonical-lcy02.cdn.snapcraftcontent.com

canonical-bos01.cdn.snapcraftcontent.com

cloudfront.cdn.snapcraftcontent.com

です。なお、必要なポートは全て443。リスト中、deprecatedとしつつも記載されているfastlyから始まるサーバーも一応追加してみましたが、既に存在しないようです。ので除外。

これらにアクセス許可を出します。例えば、私はiptablesを使用しているので、それぞれ

$ sudo iptables  -I INPUT -p tcp -s [各サーバー] -j ACCEPT

等としてやるわけですね。今後も繰り返し必要になる筈なので、スクリプトにして。

で、バックアップから失敗前の状態に戻し、上記アクセス許可を出してから再実行。

すると、今度はsnap関連でエラーを吐くこともなく問題なく進みます。時折各種変更済みの設定ファイルを保持するか聞かれるのに全てN(保持)と応答することしばし。無事完了しました。おつかれー。

<付記>

ちなみに、今回の件でsnap関連の情報を漁っている時に少し気になった事がありまして。何かというと、snapの評判ってすごい悪いんですね。あらゆる意味で。

私のようにサーバー運用をしている身からすると完全に余計な手間が増えただけなのだから当然なのですが、そもそもアップデートすると環境との不整合からクラッシュするようになったり、パッケージ管理システムとして不完全なところが多々あって、ユーザーのみならず、当の開発・管理の側からも非難轟々なんだそうで。

そういえば、デスクトップでsnap版のfirefoxやchromiumを既に使ってはいるのですが、当初は頻繁にアップデートしろしろとメッセージが出て鬱陶しかったのが最近は出なくなったように思います。これはアップデート時のリスクから、そもそもアップデートを提供しにくくなった、という事なのでしょうか。だとしたら本末転倒ですね。

それはともかく、確かに現状snapが導入されてプラスになった点、またこれから期待できる部分があるかというと、少なくともユーザー側から見れば皆無だし、管理システムが併存している以上、ベンダ側からしても管理すべきシステムが複雑化しただけでしかないのでは、と。これでは悪評が出るのもむべなるかな。

もっとも、これまで、Canonicalが独自の機能やらアプリやらの開発に手を出していい結果になったためしがないので、その辺のsnapに関する悪評を聞いても正直またか、と思うだけではあるのですが。改めて余計な事はしないで頂きたいと願いつつも、きっと懲りないんだろうなあと。ほんと残念な企業ですね。 もう諦めてますが。

8/30/2022

[pol] 未治験の新ワクチン接種という狂気

もう何も対策もせず、事実上蔓延するに任せているだけになったコロナウィルスですが。その無策ぶりと矛盾するように、またワクチンを打たせるんだそうで。多い人だと1年強で実に5回目の接種、という事になります。その回数には箍が外れた感はありますが、それは今回の主題ではないのでおいておいて。

理由は今まさに蔓延のまっただ中にあるオミクロン派生株への抑制・予防とのことですが、正直今更なんの意味が、と思わざるを得ません。というのも、一部の高齢者や医療関係者等の高リスクとされる人を除き、3回目以降接種をしていない人も増加しており、その割合はおよそ4割弱にものぼります。4回目については、全体のデータは国から出ていませんが、自治体の公表している接種回数データからすると、概ね接種率は2割程度であろうと推測されます。これは対象者が高齢者にほぼ限定されていた事によるものでしょう。4回目時点で未接種者が8割です。つまり、5回目の接種をする可能性がある者は2割程度しかいないのです。

元々、3回目の時点で副作用と効果を比較して以降の接種を取りやめた人が多数出ていた事、さらに4回目の接種はそもそも蔓延防止を目的とはしておらず、感染後の重症化防止のみを目的としていた事とを併せ、ワクチンによる蔓延防止は既に目的から外されていました。 一方で、ワクチン以外の蔓延防止対策を取っていたかというと真逆で、蔓延を促進する政策のみを取り続けています。要するに、もはや蔓延については予防自体考えてもいないのですね。緊急性も何もあったものではありません。加えて、重症化予防は従来ワクチンでも十分だと公表していました。すなわち、基本的に接種は不要、必要な場合も従来ワクチンで問題ない、と、少なくとも厚労省は判断していたわけです。これを反映して、上記の通り接種は一部の人にしかしていないのですね。

で、件の新しいワクチンですが。従来のワクチンとオミクロン系株用の新成分の混合だそうで、8月末現在開発中だそうです。開発中、ということは、治験の結果を云々する以前に、そもそも治験をしていないという事です。実際、ファイザー社らによると治験はこれからだとか。効果があるのか、副作用がないのか、それすらも確かめてもいないという事ですね。そんなもの、薬でもなんでもありません。その一般人への投与は治験ですらない、ただの人体実験です。

もっとも、例え人体実験だとしても、一刻の猶予もない程の緊急性と必要性があり、かつそれ以外に手段がないというのならばまだ考慮の余地はあるでしょう。初回の接種にはある程度それらの要素がありました。ですが、今回についてはどれもない。

必要性の根拠となるべき目的については、蔓延防止は既にその中になく、高リスク者の重症化予防だけであり、それについては前記の通り従来のワクチンで十分との判断がなされていた筈です。また、未治験である以上、そもそも新ワクチンの(旧ワクチンと比較しての)有効性については、製薬会社がそう主張しているだけで、その正誤すら定かではありません。

あらゆる意味で、合理性がないのです。今回の新ワクチン接種の話には。率直に言って狂気の沙汰だと思います。

なのですが・・・高齢者の方々の相当割合が、それでも接種してしまうのでしょうね。必要だ、接種しないと危ないぞ、という政府の出鱈目な話を鵜呑みにして。その接種自体が危険に満ちている上に、無意味かもしれない、という事実に気づくこともなく。全く以て遺憾な事です。

オミクロン株対応ワクチンの接種開始、9月に前倒しへ 政府が調整

[pol] コロナワクチンを薬扱いする非科学的姿勢を反省  

8/22/2022

[biz] 日野自動車、全車販売不能・・・まさか廃業?

だそうで。

3月ごろに中大型車用エンジンで試験時の不正が発覚し、前代未聞の型式指定取り消しを食らって中大型車の事業が事実上廃業状態にあった日野自動車ですが、案の定というか、小型トラックでも同様の不正が発覚してしまいました。めでたく販売停止です。なお、OEM先のトヨタでも該当する車種は販売停止。えらいこっちゃ、です。

本件はまだ発覚したばかりにつき、国交省が大型車と同様に型式指定の取り消し処分を下すかどうかは不明ですが、当然ながらその可能性は極めて高いものと予想されます。そうなった場合、日野自動車はその生産・販売するほぼ全車種が事実上販売出来なくなる事になるわけで、もしかしなくても廃業するしかなくなるわけですね。

仮に廃業せずに再生を目指すとして、これから型式指定を再取得するにも、そもそもの性能自体が未達である以上、開発からやり直しになるわけで、何年かかるのかすらわからない、と。もう笑うしかありません。まあ、トヨタが見捨てなければ資金的には問題ないんでしょうけれども。

本件、3月の発覚以降様々なところで同社の硬直的で非合理的な、ぶっちゃけ大手メーカーにありがちな「無理な事を無理と言えない、言わせない」企業体質が原因であろうという話が多数流れています。それが事実であれば、この惨状も、ただ目の前の検査を乗り切れさえすればいい、という技術者、生産者としての最低限の倫理さえも捨て去った詐欺師たちには必然の結果だったのでしょう。

それにしても、いくら眼の前の事しか考えられなくなるといっても、この手の不正は一度でも行えば雪だるま式に膨らんでいくものなのであって。開発の当事者であれば、いずれこうなるのも時間の問題だという事くらいは流石にわかりそうなものですが、その程度の事も考えられなかったのでしょうか。救いがたい話です。

日野、主力の小型トラックでもエンジン性能試験の不正…大半の車種が販売不可能に

<追記>

その後、立ち入り検査等を経て、一部機種では生産再開の許可が下りた模様です。全面的な生産停止は避けられた、ということで、一応廃業は回避できそう・・・なのでしょうか。と言うのも、大型等の既に指定が取り消されたエンジンについては何も救済はなされず、少なくとも数年生産出来ない事に変わりはありませんし、今回新たに4機種で性能不適合につき指定取消となり、生産不可能となった範囲は広がってしまいました。さらに今後の検査で不適合となった機種については同様に指定を取り消す旨も明示されましたので、状況としてはあまり変わってはいないのかもしれないのですね。