8/25/2017

[biz] 富士通が携帯事業から撤退

とうとう?ようやく?それとも今更?富士通が携帯事業を売却して撤退する方針を決定したんだそうです。

やはり今更、というのが適切なのでしょうか。もとより海外では試みはしたものの殆ど販路を開拓出来ず、スケール面では年300万台がせいぜい、競合するApple、Samsungら大手の10分の1にも遥かに及ばない同事業に競争力などあろうはずもなく、少なくともここ数年、ただドコモを中心とした国内キャリアの保護の下、延命されていたに過ぎない事は誰が見ても明らかだったのですから。

らくらくホンを世に送り出した点は評価されてしかるべきでしょうが、それは過去の遺産と呼ぶべきもの、スマートホンへとカテゴリ自体が移行するに伴い、また新たにその市場に適した製品を生み出す必要があったわけです。

しかし同社は、そのキャリアの特別な保護に胡座をかき、生き残るために必須であるところの製品の品質向上や新機軸を開拓する、どころか逆に障害を連発、発売日の全回収等といった信じ難い失態までも演じて、多くの人に甚大な被害をもたらしもしました。火傷しかねない程発熱してフリーズを頻発する機種もあり、それによる動作不良を仕様と言い張り、携帯カイロ等と揶揄された事も、忘れられないという人は多いでしょう。

度重なる失態によって、コンシューマ向け製品としては通常なら致命的だろう程に高まった不評にも関わらず、キャリアが買い上げる事業構造と、その筆頭たるドコモが保護を続けた事により、同事業は利益は落としつつも存続が許されました。が、それもiPhoneの優先販売契約をドコモがAppleと結び、それに伴って富士通を含む既存他社の機種を販売奨励対象から外し、その保護自体が大きく崩れ、その下がりきった素の製品の競争力が表に出るようになるに及んで、早晩の撤退は避けられないだろう、と誰もが予想するところとなっていたわけです。結局のところ、市場や消費者を軽んじ、適応を怠り続けたツケが回ってきたと言うべき、当然の結果と言えるでしょう。

加えて、同社が事業をリストラする場合、大抵事前に本体からの切り離しが行われるのが通例ですから、分社化された時点で、売却が近々行われる事は客観的にも明らかになっていました。ただ、同時に分社化されたところのPC事業が、Lenovoへの売却が報じられて以来停滞していて、携帯の方が先に片付きそうな雰囲気なのは少し意外な気もしますが。PCの方が事業期間も長いし、社内的には政治力が高かったりするとかそういう事なんでしょうか?傍から見れば大差ないように見えもしますが、それも遅かれ早かれ、行き着く先は同じでしょうし、あまり気にしても意味はないのかもしれません。

しかし、何処が買うんでしょうね?というか、買い手は付くんでしょうか。大手からすれば、独自性もない周回遅れの技術に、あまりに小さい生産能力、加えて国内特化で使い勝手のよくない技術者、と殆どメリットは無いような気もしますし。ファンドが転売目的で手を出す可能性がある、との見方もありますが、しかし転売なんて出来るのか?と。国内向けローカライズ要員としてならあり、でしょうか?だとしてもその分の価値なんて知れたものだろうし、相当に買い叩かれそうですね。FreetelのようなMVNO系の日本向けSIMフリー端末の供給、とかでなら需要もあるんでしょうか。でもそれにしてはコストがねえ。。。うーん。

ユーザの立場から見ると、Arrowsはどうでもいいとして、らくらくホンはどうなるのか、シニア中心に気になる人は結構いそうです。もっとも、(SIMフリー端末を除いて)ユーザの相手はあくまでキャリアであって、端末メーカーがどうなろうと、既存のユーザはキャリアに保証されますし、将来の選択肢が減るだけなのだから、実質的にはさほど問題が顕在化する可能性は高くないのかもしれませんけど。何にせよ、お疲れ様です。

富士通、携帯事業売却へ=来月にも入札

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8/09/2017

[note] USB-LANアダプタ購入

ちょっとファイアウォール等のサーバをセットアップする事になりまして。テスト用等に余っているノートPCを使おうと思い、LANポートの追加のためにUSB接続のイーサネットアダプタを購入してみました。

ほぼテスト用なので、一番安く単純なものでいいかな、と輸入したアダプタは、何の変哲もない、長細い筐体にポートが一つにちょろっとUSBケーブルが出ているだけの代物です。転送速度は100Mbps。いつもの如くebay経由で送料込み$1.42、約150円という文字通りの超安物。国内で出回っている類似の製品は、メーカーの正規品だと何か1000円以上はするようで、毎度のようなのですが酷いボッタクリぶりに眉を顰めたりもしたわけです。と、それはともかく。

パッケージ等はなし。クッション封筒に下図のような感じでドライバのCD-Rと同梱されています。型番?は、HLF1081A、No:9700となっています。普通に読めば、9700というのはシリアル番号にあたるものと読めるところなのですが、これも型番の一部っぽいのですね。理由は後述。


CD-Rが全く保護されず剥き出しで同梱されているのにはさすがにどうかと眉を顰めつつ、取り出します。


とりあえずPCにつないでみます。Linux(ubuntu17.04)ではあっさり認識。ですが、windowsでは標準ではドライバが入っていないようで、そのままでは使えません。XPとWin10の両方でアウトだったので、多分他のバージョンでも駄目でしょう。ということで、CD-Rの出番です。

なのですが・・・まずCD-Rが結構汚れていて、掃除をしなければ読み取る事が出来ませんでした。さらに、その中には[RTL8152]と[USB.LAN,RD9700Driver]という2つのフォルダがあって、まず[RTL8152]-[xp]の下にあるsetup.exeからドライバを入れたのですが、これはハズレです。[RTL8152]のフォルダは何のために入っているのだろう、まさか罠?と訝しみつつ、[USB.LAN,RD9700Driver]の下にある、[XP-WIN8-32](32bitの場合)か[winXP-WIN8-64]の中のRD9700.infを手動で当ててやる必要があったのでした。手動でドライバを当てる方法は通常通りなので割愛しますが、しかるのちに再起動すれば認識。inf等に記載されているところからすると、RD9700が正式型番という事なんでしょうか。紛らわしいです。

ちなみに、サブフォルダには、WINCE用、MAC用、Linux用と各OS用のフォルダもあり、何とandroid用もあります。ただ、android用はビルド用のソースコードがMakefile付で入っているだけなので、普通のユーザには使いようがないでしょうね。開発者向けである事は明らかですが、その開発者にしてもぶっちゃけこれ使う人いるんだろうか。。。何気にandroid用のドライバのソースコードって珍しいし、むしろその意味で興味を惹かれる人もいるんでしょうけど、大多数のユーザにとっては紛らわしいだけでしょうね。マニュアルもReadme.txtすらないのですし。

ともあれ、挙動、機能面は特に問題なし。 普通に通信出来ます。ただ気になったのは、これ光るんです。いや、LANアダプタにLEDランプがついている事自体は普通なのですが、本機の場合はLEDが機体の内部に埋め込まれ、本体自体を発光させる仕様になっているんです。具体的には下図のような感じです。


光り過ぎです。私はLANアダプタを調達したのであって、間違ってもランプの機能なんて求めていないのです。当然トラフィックに応じて点滅するわけで、なおさら嫌でも目に入ります。が、常時通信状態をこれでチェックしようなんて人は皆無でしょうし、意味がわかりません。むしろ嫌がらせなのかとすら思うわけです。無駄に長い筐体だと思ったら、このためという事なんでしょうか。それとも逆で、無駄に長くなってしまった筐体を有効活用しようとした結果なんでしょうか。いずれにせよ、ここまで派手に光られると、率直に言って目障りです。まあ、派手なだけで、発熱は殆ど感じられませんから、適当に何か被せて隠しておけばそれで済む話なんでしょうけど、何考えてこんな仕様にしたのかちょっと開発者を問い詰めたい気分になってしまったのでした。ともあれ、それほど常用する予定でもないし、動いたのでよしとしましょう。というわけで今回はこれでおしまい。

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8/07/2017

[pol] 何がどうして"日本"ファーストの会なんて名前にしたのだろう

いたるところで噂されていた通り、東京都の地域政党であるところの都民ファーストの会が国政に進出すべく全国版の政党を立ち上げたそうです。その名も「日本ファーストの会」・・・。

はい、完全に維新の二番煎じです。もしかしたら、と誰もが考えた名前ではあるんでしょうけど、まさか何のひねりもなくその選択をするとは驚きました。勿論悪い意味で。

悪い、との印象を受けるのには、大きく分けて2つ原因があるように思います。一つは、既に期待はずれの失敗に終わったところの、維新の会による地域政党からの国政改革を目指す試みの、そのさらに二番煎じにつき、失敗を前提にしているような、非常にネガティブかつ安っぽいイメージを連想させる点です。只でさえ二番煎じは劣化版的な印象を与えるのに、パクリ元からしてお世辞にも良いイメージも実績もない、というのだから、どういう意図でその名前を選んだのか、ちょっと正気を疑わざるを得ません。やる気ないんでしょうか。

もう一つは、その名前の帯びる意味合いです。まず、元々の"都民ファースト"は、若干の安直さや建前感は否定し難いものの、政党や一部の業界の利益ではなく"都民"、すなわち広く住民や市民の権利、利益を最優先にする、というポリシーを簡潔に表現出来ており、民主主義の理念に沿う名前としてポジティブに評価され得るものでした。これに対して"日本"ファーストでは、最優先にされるのは"日本"、すなわち国家であって、都民とはまさに真逆の、右翼団体の如きナショナリズム優先主義的な意味合いに解すべき表現になっているわけです。同じ意味合いの国政版、というなら、その範囲のみを変えて"国民"ファースト、とでもするべきところだったでしょう。まあ、それだと民主党等と殆ど同じになるだけなわけですけれども。また、"日本"を国際社会における文脈で捉えるならば、世界的な調和、国際協調等を軽視し、自国の利益を最優先にするという、エゴイスティックなポリシーをも意味する表現にもなってしまっています。排外的、とも言えるでしょうか。良い印象など感じようもありません。

政党の名前、それも新規に立ち上げようとするものの名前、その印象や読み取りうる意味合いが重要である事は言うまでもありません。まさか意図したわけではないんでしょうけれども、意図があろうとなかろうと、特に穿った見方をせずともそう読めてしまう、というのは致命的です。安直さ、安易さといったネガティブな性質も感じさせますし。無論、どのような名前にしようと、それが違法でない限りは当事者の勝手ではあるわけですし、第三者がとやかく言う話ではないのですが、落胆に終わった第三極ブームの過ぎし後、久々に追加されるだろう国政における選択肢がこれ、というのは、一有権者として落胆を禁じ得ないのです。

そもそも母体となるべき都民ファースト自体、実質小池都知事と若狭議員との2人しか公には対応出来る者がおらず、残りは不安があるからと殆ど雲隠れしているような状態なのだし、加えてよりによって無残な失敗に終わった維新を真似て作られる政党なわけです。どうやってこれに期待しろと言うのでしょうか。都知事個人に一定以上の人気、期待がある事は疑いようのないところですが、都知事の職を放り出さない限り、国政への関与には自ずから限度があります。小池都知事のシンパの一人に過ぎない若狭議員一人にその全てを担えるとは到底考えられません。国政で都議のメンバーの如く箝口令を敷く事など出来よう筈もないし、どうするつもりなんでしょうね?維新や民進からいくらか引き抜いたとして、どうにかなるとも思えませんけれども、さて。

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8/01/2017

[pol] もはや理解不能、混沌極まる米政府人事

いや、何がどうなっているのやら、もうわけわかんないですね。

無論、Donald Trumpの合衆国大統領としてする振る舞いの殆どが支離滅裂かつわけのわからないものであり、国内外の大多数からの非難を免れないものでもあった事は今更言うまでもないところなのです。

しかし、こと人事に関して、とりわけMichael Flynnに始まったところの、選挙時からのRussiaと密接な接触があり、情報操作や選挙システムへの介入が成されたとの疑惑通称Russiagateの捜査に絡んで相次いだこれまでの更迭については、その是非は兎も角として理由が見えただけまだ理解し得るものではありました。対してここ最近のそれは、最早その理由を推し量る事すら困難なわけで。

その原因というか直接の要因には、Trump政権のスポークスマンであったSean Spicerが最近になって兼務していた広報責任者のポジションの後任として、またしてもGoldman Sachs出身のヘッジファンドマネージャーであり、つまるところ政治や広報については素人に過ぎないAnthony Scaramucciが据えられた事にあるのは間違いないでしょう。

しかしこの人事自体が意味不明なのです。Spicerが、Trumpの愚かな振る舞いによって当然に受けるべき非難に晒されながらも、政権のポリシーに忠実に従い、大本営発表をもって対し続けた末に投げ出した事は記憶に新しいところですが、その辞任の理由は、まさにこのScaramucciが広報責任者の職、すなわち形式上の上司として就任した事による、と言われています。兼任していた職務のうち上の方が引き継がれたため、後任であると同時に上司になった、という事です。ややこしい話ですね。

その是非は兎も角として、広報のプロフェッショナルとしてその困難な職責に忠実に対応し続ける事が出来たSpicerと、そもそも政治については金融関連に限定したアドバイザーやリエゾン的な立場での経験しかなく、また頻繁にFox Newsに出演していたとは言っても好き勝手に放言をするだけのコメンテーターとしてであり、広報の職についてまず経験すら乏しい筈のScaramucciと、そのどちらが重要であったかと言えば、Spicerの方であった事は明らかです。何故このような措置をしたのか、まず理解が困難で、大多数の人を困惑させました。

あまつさえ、その後Scaramucciは、同僚であり当然に協力せねばならない筈のReince Priebusはじめ政府の要人複数に対し、職に就くやいなや公然と非難を加え、驚くべき事にこれに応じてわずか数日後にはPriebusは更迭されてしまいます。これも意味不明です。というのも、Priebusの職はChief of staff、すなわち副大統領や国務長官等の主要閣僚級の数人を除く殆どの政権スタッフのトップであり、広報責任者のScaramucciは当然に彼の部下に当たるのにも関わらず、その彼の意向によって上司が更迭された事になるわけです。それに、そもそも同僚・上司の非難をする事は間違っても広報の仕事ではありません。そのような職務ないし権限を与えるというのなら、それこそ最初からPriebusの後任としてScaramucciを当てるべきだったところなのでしょうが、彼の就いた職は間違いなく広報責任者です。全く以って理解し難いところですが、ともかくにもScaramucciには実質的にそれだけの権限が与えられているように見えていたわけです。広報ってなんだろう、と誰しもが思った事でしょう。

しかしさらにわけがわからないのは、その実質的に支配的な権限が与えられていた筈のScaramucci自身が数日後にはあっさり解任されてしまった事です。そしてこの措置は、Priebusの後任としてChiefに就任したJohn F.Kellyの主張が通った結果だとも言われています。前述の通り、Chiefの方が上位に当たるため、本来あり得べき話ではあるのですが、だとしたら、Priebusが更迭されたのはどういう事なのか、逆に理解出来なくなってしまうわけです。そこに常人が理解しうる合理性を見て取る事は出来ません。もっとも、Scaramucciに広報の職責を果たす能力があるとは誰も(おそらくは彼自身も)思わなかったでしょうから、理由はさておき結果としては当然と言うべきなのかもしれませんが。

結局、何故その人事をしたのか、その理由が彼に関する限りわからないのです。そして、その人事権者であり、決定者である筈のTrump自身は、殆ど何も語っていません。彼にしては珍しく、と言うべきか、更迭される者について苛烈な非難を加える事もなく、逆に"彼はいいやつだ"等と意味不明なフォローをしてもいます。この点、最早Trump自身既に実質的に人事を掌握出来ていないのではないか、とする見方もありますが、その真偽は定かではありません。

何もかもが意味不明なまま、通常なら政権の要として実力者が配され、辞任も更迭も滅多な事では起こらない、起こしてはいけない筈のポジションが、まるでアルバイトのシフトの如くすげ替えられていく様は異様という他なく、第三者の立場からでさえそのもたらす機能不全、その影響を想像して冷や汗が出る位ですから、当事者であり、直接の影響を受けるだろう米国民の困惑はさぞかし大きい事でしょう。しかし状況が改善する見込みはありません。少なくともTrumpが大統領であり続ける間は。そもそも、おそらくは本件の原因となっただろうRussiagateの具体的な追求自体、まだ殆ど始まってもいないのです。さて、本件が決着を付けた時、米国は一体何処まで行ってしまっているのでしょうか。

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7/07/2017

[note] マウスのスイッチ交換・修理再び

またしてもマウスのスイッチが故障してしまいました。今回壊れたのは、前回のM235と同じくLogicool製無線マウスの廉価カテゴリ品であるところのM185です。2012年に購入して、約5年程常用して来ましたが、長年酷使された右スイッチが突如として逝ってしまい、何の反応もしなくなってしまったのです。まあ5年も使えたなら御の字でしょうか。当然保証期間は過ぎていますので、自分で修理する他ありません。

このM185、スイッチはM235と全く同じなのですが、前回購入した分はもうないので、再度輸入。同じくOMRON製のものが送られてきました。予定より一週間以上早く届いたのも前回と同じ。


 作業手順もほぼ前回と同じです。電池を入れる部分の裏にあるネジ1本を外して、


上側の前部を後ろに引くようにして上下を分離します。M235と違ってネジがシールで隠れていないのは楽で良いですね。


やはりメインボードはネジ止めされておらず、ツメ2箇所と電池の端子ではめ込まれているだけです。ちゃちゃっと外します。


 で、今回おかしくなった右ボタンの3端子の半田を除去してスイッチを外し、


交換用の部品を半田付けして出来上がり。 ちなみに元のスイッチのメーカーはKalihでした。キーボードのCherry軸互換のスイッチ等を作っている割と有名なメーカーですね。



後はボードを元に戻して組み上げておしまい。電源スイッチのスライダーがズレないようにだけ注意。で使ってみたところ、無事復活していたのでした。めでたしめでたし。

・・・なのですが、実はこの修理の間の繋ぎとして購入したM171の使い心地が意外と良くて、修理したM185はとりあえず予備扱いとなってしまったのでした。今更といえば今更なのですが、M185ってスクロールボタンの反応があまり良くないんですよね。何故か回転中に勝手に戻ったりするんですが、その点、M171の方は素直に反応してくれるのです。ともあれ、今回はこれでおしまい。

[過去記事 [note] 壊れたマウスのスイッチを交換修理]

6/26/2017

[biz] ついに破産したタカタ、その周辺をとりまく奇異

ようやく、というべきでしょうか。自動車部品メーカー大手のタカタが民事再生法の適用申請を行ない、破産しました。お騒がせ、と言うにはあまりにあまりだった同社を巡る一連の事案も、これで一応の一区切りです。というわけで少し思うところなど適当に。

同社製エアバッグの欠陥による死者の発覚から、ここに至るまでの経緯は周知の通り本当に酷いものでした。その規模の大きさ、被害の深刻さから、米国で早々に社会問題化し、官庁や議会が総出でした追求を受けてなお頑なに自身の責任を認めようとせず、その後も被害の生じるに任せて何ら自発的な対策を取ることすらなくとも恥じるところを全く見せなかった、あまりに無責任かつ非合理的で不可解なその態度は正しく見るに耐えないものという他無く、その態度から必然的に生じた米国社会との対立、それが決定的になった時点で、誰が見てももう詰んでいる、と言うところまで至ってから早数年。その間の事態の予想に違わぬ悪化ぶりからすれば、むしろあれだけ先行きの見込みも皆無な中、よくここまで延命させられたものだと、その意味では少しばかり感心せざるを得ないわけです。無論碌でもない話ではあるのですが。

未だその原因たるエアバッグのリコールすら完了の目処も立たない現状、同社が破産して債務の整理・清算がなされたからといって何が終わるわけでもないのですけれども、メーカーはじめ本件を通じて損害を被った向きには同社の資産をもって可能な範囲ながら賠償がなされるだろうし、それには十分ではなくとも一定の意味はあるものと言えるでしょう。逆に言えば、それすらタカタは怠ってきている、というより拒否してきたという話でもあるのですが。。。ともあれ、こうなった以上は、速やかにメーカー各社はタカタから賠償を取り、それを以ってユーザーへの補償等が速やかに拡充されるよう願いたいところです。あと、これで踏ん切りも付くでしょうから、他社品への切替えも進められるでしょうか。

ところで、もう終わった話だし瑣末な事でもあるのですが、、、下落を続けていた同社の株価が突然ストップ高になっていたそうですが、あれは何だったのでしょうね?ちょっと理解が及ばなくて困惑してしまいました。というのも、今回タカタが不可避とされ、この程申請された民事再生法、その適用は、言うまでもない話でしょうが要するに破産であって、同社が大幅な債務超過にある以上、株主資産もまた当然マイナスであり、株主責任の有限性により追加の徴収こそ無いものの債権者への清算後に株主に分配される残余財産は無く、株は文字通り紙屑にしかならない、というか今は振替なのでただの記録にしかならない事は明らかなわけです。それもすぐに。ですので、その取引価格がその直前に急上昇する、などという事は合理的に考えれば本来あり得ない話と言えるでしょう。

きっかけはメーカー各社が資金面の支援を行う、という報道がなされた事によるわけですが、この点から、幾つか仮説は立てられます。 例えば、圧倒的多数を占めていただろうショートポジションの向きが一斉に利確を図って一時的に需給が逼迫しただとか、あるいは、件の支援により再生法の申請を回避する可能性を生じさせたと、要するに単に勘違いした向きが多数出た、という仮説も成り立つでしょう。本当のところはよくわかりませんけれども、何はともあれ、理屈の通じない世界の出来事には違いなく、その意味では恐ろしい話です。やはりこの種の不安定な局面では、下手に市場に関わるべきではないですね。くわばらくわばら。

また、その原因たるメーカー各社の支援というのも、この局面での資金は当然回収される可能性はなく、従って通常回収を図る筈のところに逆にみすみす損失を追加する話ではあって、一義的には奇妙な話ではあります。メーカー各社とも、実際問題として同社の部品を使用している以上、今供給が途絶えられると困る、という面はあるのでしょうけれども、それにしても近年は冷酷とも言える程にドライな関係にある事が多い下請けとの関係にあって、異様とも言える厚遇ぶりには、やはり違和感を感じずにはいられないのです。どういう事なんでしょうね?これから始まる切り売りの中で美味しいところを持って行くための準備とかそういう事でしょうか?まあ、本件の処理に使える資金が増えるのは社会的には歓迎すべき事ではあるのだろうし、そんな思惑は放っておけばいい話なのかもしれませんが、どうにも気持ち悪いですね。

ともあれ、色々と腑に落ちない本件もようやくこれから本番です。何もかもが一筋縄ではいかないだろう事は明らかですが、さてどうなることやら。

[関連記事 [biz law] タカタ製エアバッグ全面リコール、責任逃れの果て]
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6/20/2017

[pol] まさかの悪い所取り、豊洲・築地併存決定でさらに積み上がる損失

東京中央卸売市場の件、小池知事がようやく方針を発表したそうですが。意味が分からなくて困ってしまいました。

結論としては、豊洲への移転は実行し、しかし築地は存続させ、将来的には築地へ戻す、というものです。何を言っているんだ、と。いや、事前に散々報道されてはいたので、実際驚いたわけではないのですが、まさか本当に、と思わずにはいられなかったのです。いやほんと、なんでこうなっちゃったんでしょう。

もとより本件の焦点は、移転した場合に生じる損失と、移転しない場合に生じる損失のいずれを取るか、という点にありました。すなわち、その深刻な土壌汚染及びそれにより不可避的に生じるだろう流通への悪影響と、豊洲の整備等に費やした巨額の投資の減損をはじめとした金銭的損失との、どちらを許容するかが主要な問題だったわけです。少なくとも、大多数はそのように認識していたでしょう。

しかるに、今回の案によれば、一旦豊洲へ移転する以上、前者の移転により生ずる損失は当然発生しますし、後者の金銭的損失についても、明らかに余剰となる築地を併存させるための維持・整備費、及び将来的な再移転時の費用に転じる形で生じる、というか、これから相当期間併存させる分、むしろ単に移転を取りやめた場合よりも損失は増えてしまいます。要するに、両選択肢の悪い所取りをしたような事になっているわけです。多額の損失を生じさせてまで移転を延期した結果がこれ、というのは、いくら何でも酷すぎるものと言わざるを得ません。頭おかしいんじゃないの?

大体、将来再移転した後には豊洲を別用途に転用する、というのであれば、今そうすべきところだろう、と。わざわざ巨額の費用が生じる移転を何度も繰り返したり、その間設備を余剰に保持して損失を積み上げるなど論外です。

本気で意味がわからないし、知事の意図も理解しづらいわけなのですが。。。これはあれですかね、作ったものを使わずに損失処理するのがもったいなくて出来ない、という話なんでしょうか。それとも、移転延期に伴う批判等や、豊洲への移転を中止した場合に東京都に生じるだろう損害賠償等の責任を回避したい、という話なんでしょうか。いずれにせよ、目先の損害に目が眩み、知事や東京都の保身のためだけに全体的な損失を積み上げる最悪の判断と断ぜざるを得ません。いやあ、酷いですね。

そもそも、高度に汚染されている事が分かっている場所を市場にする、という時点で現実と風評とを問わず、流通等に相当な被害が生じるだろう事も確実なのですし。。。あらゆる意味で誰も救われないものと言うべきその判断に、まさかここまで愚かとは、と呆れざるを得ないのです。

検査の改竄疑惑についても未だ説明すらされないままですし、なすべき事をせず、取り繕いややり過ごしを重ねた結果、既に事は破綻していて、それが都議選を前に無理にでもまとめざるを得なくなった事で表面化したのが本件、と解する事も可能でしょうか。何にせよ、無残なものです。

どう見ても都民ファーストとは言えないだろう愚行ぶりでもあるわけですが、さて都議選はどうなるのでしょうね?只でさえ実績もなく、有象無象の寄せ集め集団に過ぎない同集団が、それでも単に代表たる都知事のイメージだけを頼りに何となく支持を得る事になるのか、流石に幻滅されてあえなく散るのか。維新の顛末も記憶に新しいところ、未だ具体性すら覚束なかった同会がようやく実体を備えたと思ったらこれ、という話でもあるので、常識的に考えれば駄目だこれは、と見切られても不思議ではないように思われるところですが、さて。

小池都知事、豊洲移転を表明 築地も再開発

[過去記事 [law] 過去の検査結果改竄疑惑の高まる豊洲汚染]
[関連記事 [law] 東京中央卸売市場の豊洲移転頓挫に]

6/09/2017

[pol] May首相自滅、立ち往生してしまった英国

周知の通り、英国の総選挙(下院)が実施されました。結果は、与党Conservative(保守党)の明らかな敗北。第1党は維持し、かつLabour(労働党)をはじめとする野党勢力にしても一枚岩ではなく全野党の連立は困難と思われ、従って政権交代が起こる程ではないだろうことから、必ずしも壊滅的な大敗とまでは評価されないものの、単独過半数を失い、今後は連立なり個別案件での妥協なり、政権運営につき強い制約を受けるだろうところとなりました。

よりによってBrexitの手続の最中、国家の先行きを左右する重大な意思決定を山ほど行わなければならないこのタイミングにあってのこの議会・政府の機能不全をもたらすだろう変化は、誰にとっても好ましい事ではないでしょうけれど、致し方のないところなのでしょう。今回の選挙は、現首相のTheresa Mayが前首相のDavid Cameronの辞任後に議会によって選任されたものであり、しかも元々は本命ではなく他の有力候補が自滅したために消去法的に選出された首相であったところ、国民の信任を得てその政治基盤を確立すべく打って出たのが裏目に出た格好なわけですが、その元々の経緯やいわゆるHard Brexitを指向する若干荒っぽい政治方針からすれば、ある程度の反発が生じていたとしてもそれは自然な結果とも言えるところなのでしょうし。というか、元々からしてギリギリ過半数だったのだから、このような結果になりうる事は十分に予想出来た筈なのですが、May首相は一体どういうつもりだったのでしょうね?Brexitの国民投票実施を決断し、それが裏目に出たために失脚を余儀なくされたCameronの二の舞とも言えるような話でもありますし、それが頭をよぎらなかったわけは無い筈なのですが。謎です。ともあれ、既に終わった事です。さて、これが英国、EU、ひいては世界に対し、どのような帰結をもたらすのでしょうか?単にどうにもならなくなるだけかもしれませんし、特段の変化もないのかもしれませんけど。

ところで、2大政党の陰に隠れて、SNP(スコットランド国民党)が半減近い大敗を喫しています。 SNPはBrexit反対の急先鋒であるところ、その敗北によってEU残留派の伸張が相当に相殺・抑制された側面もあるわけなのです。この点、英国民としてはBrexitへの信任はいまだ不十分なものの、それ以上にScotlandの独立には否定的であると解釈すべきでしょうか?なかなかに複雑というか、面倒な事になってるというか、ますます混沌を深めるUKは一体何処へ行くのでしょうか。

UK election 2017: Conservatives lose majority

5/15/2017

[biz] WDの売却差止請求への東芝の言い分がデタラメ過ぎて

もう駄目なんでしょうか。そう思わざるを得ないのです。

2016年度3Qに続き、期末の決算も監査なしの大本営発表をして破滅へと突き進む東芝、その相変わらずというか、いちいち突っ込むのも面倒になる惨状っぷりにはもはや何をかいわんやですが、その説明会見でまた無理のあるトンデモな主張をしたようで。何かというと、メモリ事業の協業先であるところの米WesternDigital社による東芝メモリ売却に対するクレームへの対応の件です。

本件は、WD社(に吸収合併された旧SanDisk社)が、東芝のメモリ事業の主要拠点である四日市工場の共同運営につき締結した契約中、事業譲渡に際しては同社の同意が必要な旨を定めた条項に基づき、同事業の売却等に同意しないとして、事業の分割及びその譲渡につき共に差し止めを求めているものです。

これに対し、周知の通り遅くとも1年以内にはメモリ事業売却を完了させなければ破綻必至の東芝は、同契約は旧SanDisk社とのもので、WD社は行使出来ないだとか、行使出来るとしても、会社全部が吸収される場合は同意が不要な事から、子会社全部の譲渡には同条項が適用されない、等として拒絶の旨主張しているそうですが。。。そんな馬鹿な、と唖然とさせられたわけです。

法的に見れば東芝の主張に無理があるのは殆ど自明のように思うのですが、一応具体的に解釈してみましょうか。まずWD側の主張の是非について。WD社は旧SanDisk社を吸収合併したのだから、その権利義務共に全てを包括的に承継している事になります。よって、旧SanDisk社との合弁契約が有効である以上、WD社は当該契約に基いて権利を行使する事ができ、東芝はそれに拘束されるところとなります。すなわち、WD社は同条項に基づき譲渡への不同意を有効に主張できる、という事になるわけです。旧SanDisk社のものだからWD社は不可、とする東芝の主張には根拠がありません。というか意味不明です。

次に、分割後の子会社全部の買収の場合は適用対象外とする主張の是非について。今回東芝はメモリ事業を分社化し、その株式(の大部分ないし全部)を譲渡しようとしています。これは、実質的に事業の分割譲渡もしくは吸収分割と同等と言えるだろうものです。そして、それらはいずれも、法的には吸収合併のような会社全部の権利義務の包括的な承継とは解されず、一部の事業の譲渡(売買)にあたるものとされています。すなわち、原則として同条項で同意が必要とされる事業の譲渡につき、その実行にはWD社の同意を要するもの、と言えるでしょう。従って、包括的な譲渡だから同条項で同意が必要とされる譲渡には該当しない、とする東芝の主張はこれも失当となります。

そもそも、前者の主張では吸収合併について包括的な権利義務の承継を否定する一方で、後者の主張においては、明らかにそれより部分的であり限定的な筈の分割譲渡(の全体)について包括的な承継を肯定していたりして、論理の一貫性すらありません。控えめに言っても無茶苦茶です。一体誰がそんなデタラメな主張を作り出したんでしょうか。弁護士等の法的な知識のある者が近くにいるならあり得ない話だと思うんですが、東芝にはそういった専門知識のあるアドバイザーは一人もいない、とかいうことなんでしょうか。まさか、とは思うものの、監査法人との対立の様子からするとあり得ない話ではなく思えるのがまた。何にしろ、戦慄すべき事です。

ともあれ、おそらくはその話の通じなさに呆れ果て、またその経緯の説明すら殆どされない不誠実さに不信を極めただろうWD社は、早々に当事者間の対話による解決を諦め、司法に解決を求めるべく仲裁を申立ててしまいました。仲裁判断の申立てには当事者双方の合意が必要ですから、あらかじめ契約条項に紛争時には仲裁を申し立てる旨が規定されていたという事なんでしょうけれども、この種の条項が実際に行使されるというのは本当に珍しい話です。その珍しさが、今回の東芝のデタラメさ加減をよく表している、とは言えるかもしれません、とそれはともかく。

本件申し立てに伴い、おそらく権利保全のため、売却手続の一時差止等が請求される可能性は低くないでしょう。仮にそれが認められれば、少なくとも判断が下されるまでは売却は出来ず、当然ながら債務超過の解消も出来ない事になります。国際仲裁裁判所の仲裁は一審制で上訴不可につき、それなりに早期に決着するものと予想されますが、それでもこれだけこじれて当事者間の対立も激しく、また規模も大きく複雑な案件が、東芝にとっての文字通りのデッドラインである所の数ヶ月とかで決着するものなのでしょうか。そうでなかった場合、その結果の如何によらず、その前に東芝は即死してしまうわけなのですが。。。まあその辺は今更ですかね。元々あらゆる面で山のように無理がある事は明らかなのだし、そもそも間に合ったところで東芝が勝てる可能性の方が明らかに低いのですし。さてどうなることやら。

(注・追記)

ちなみに、同裁判所における仲裁の過去の例では、スズキがVWを相手取って起こした株式の売却請求の仲裁に関して、申し立てから決着までおよそ4年もの時間がかかっています。もっともこれはVW側が遅滞戦術をとったためとも言われていますから、一般にそれほどの時間がかかるとは言えないのでしょうけれども、それでも数ヶ月で決着すると考えるのは無理がありそうです。

米WD、東芝の半導体売却差し止め請求 再建計画遅れも
米WDが差し止める根拠ない、メモリー売却で東芝社長

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5/12/2017

[law] 共謀罪がビッグブラザーを連れてくる

今まさに国会において組織犯罪処罰法の改正が決議されようとしているわけですが。本改正案はいわゆる共謀罪の、殆ど新設と言うべき大幅な拡大がその中核を為しており、従来の刑法の体系を崩すものである事、またその濫用の恐れが極めて高い事等から、国会内は無論、広く社会上で批判、反対の声が上がって来ていたものです。

しかし、このまま行けばそれらの批判、反対の声を無視する形で強行採決によって成立となるだろう事はほぼ確実なように思われるわけです。それ自体は、如何にその法案に問題があろうと、選挙によって与党にそれだけの議決権が与えられているのだから、致し方ない事なのでしょう。そして、現実に成立する運びにある以上は、その内容を正確に把握しておく必要があるわけです。将来的には濫用の被害が及ぶ事が確実視されるのであれば尚更。

まず、本罪の要件について。これは、実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画、と題して新設される第六条の二に規定されています。客体は、組織的犯罪集団の活動として、もしくは組織的犯罪集団を利する行為を二人以上で計画した者が対象とされています。組織的犯罪集団の構成員ではない、協力者や賛同者等の外部の者も含む事から、実質的に一般人も対象となるものと解されています。また、人数の要件も二人以上と単独以外の全てを含みます。既遂要件は、その計画に基づく資金・物品の手配、場所の下見等の実行のための準備行為の実行となっています。未遂は罰せられませんが、これはそもそも共謀行為自体が基本的に着手即既遂になり、未遂を観念する事が困難であるためでしょう。この点、行為者をして共謀の時点で既遂になってしまうため、共謀行為自体には一定の予防効果が期待される反面、計画をしてしまった場合については、その時点でもう犯罪者になってしまったのだから後には退けない、と実行を決意させやすい効果を生む懸念もあるのですが、それはともかくとして。

この要件に照らして典型的な例を考えると、例えばネット上で情報を確認する等の下調べ等をしつつ複数人で計画を練った時点で既遂となって本罪の対象となる、という事になります。爆薬や薬物の製造法を確認する、等も該当するでしょう。単に話をするだけの場合は対象外ですが、通常は書籍なりネットなり、何らかの情報の収集と平行して計画が行われるものでしょうから、むしろ話だけの場合の方が例外的であり、その範囲は極めて広いものと解すべきでしょう。組織的犯罪集団の活動or利する行為という点も、実行者側からの一方的な、共感する程度のケースも含まれるだろうところ、殆ど制限にはなっていないように思われます。

かようにその適用範囲は非常に広く、他者との交渉を絶っているような人物以外は全て潜在的な対象と捉えうる要件になっているわけです。つまり一般市民は殆どが容疑者足り得るものと想定されており、摘発ないし防止の対象となる、という事です。ここで問題になるのは、司法によるその摘発又は防止のための活動がどのようなものになるか、です。上記のような共謀活動を察知し、その証拠を捉えようとするならば、自然と市民の日常生活全般に対する監視が必要になります。そうである以上、必然の結果として、公と私を問わず、各種の通信、会話、日々のあらゆる言動、活動に対して公権力による監視が行われるものと予想されます。

そして、そこで捉えられた言動、活動をして、上記の共謀罪の要件に適合すれば、およそ既遂となっているだろう以上、その真意を問わず逮捕等の摘発は避けられず、あるいは刑罰の適用も避けられない事になるでしょう。一度容疑がかかった後で、それを覆す事は一般市民にとっては極めて困難であり、それが多くの冤罪をも生むだろう事も想像に難くありません。そのような事例が1件でも生じれば、多くの人をして無用に強く脅えさせる事になるでしょう。

換言すれば、今回の共謀罪の拡大は、まさに官憲がビッグブラザーと化し、市民生活におけるプライバシーの消滅をもたらす可能性が極めて強いものと言えるだろうわけです。おそらく一般市民の中にそれを歓迎する者は、一部の破滅主義者を除けば殆どいないでしょう。しかし、本件法案の成立は既に殆ど確実となってしまいました。この上は、冤罪を防ぐべく、自衛を図るより他にどうしようもありません。

具体的にすべき事は、と言っても範囲が広すぎて一々挙げるのも大変なのですが、、、一般的な点に限って言えば、テロや戦争絡みの話題、また会社等の組織に関する発言は極力避け、また通信は監視の目にかからないよう、WhatsApp等のP2Pでかつ秘匿されるものを使用し、オープンな場での発言や活動は可能な限り控えるべき、という事になります。面倒な事ですが仕方ありません。

そういった言動に直接関係する事項の他にも、個別の法令に関して注意すべき、あるいは控えるべき事項は多数に上ります。著作権法違反も対象であり、既存類似の表現の使用を計画しただけで逮捕される可能性があります。気をつけましょう。もとより組織であるところの会社関連の犯罪はその多くが対象とされています。経営陣は株主等に配慮をしようとしたり、決算に化粧をしようとしただけで摘発されかねません。大変ですね?脱税は無論対象ですから、誤解されないよう会計処理は慎重にしましょう。なにせ、"チャレンジ"を計画ないし指示しただけで、その結果を問わず逮捕されかねないのですから。不正競争関連も対象になりますので、引き抜きや受け入れを画策した時点で逮捕されかねません。極力同業からの転職者の受け入れは避けた方がいいでしょう。特定目的外派遣ももちろん対象です。派遣先で迂闊にそのような業務が振られる可能性は全て廃除しておかなければなりません。児童ポルノ?当然対象です。そのような性癖を持っている人は、実際にそのような行為や画像の取得等をせずとも摘発対象となり得ます。児童ポルノの関係者なんてみな組織的犯罪集団なのですから言い逃れは出来ません。摘発されたくなければ、誰にも悟られないよう、自身の心の中に留めておかなければならないのです。

そんなわけで。あまりに対象が広すぎて、もう面倒だから人と話したりメッセージをやりとりする事自体を控えるべきかとすら考えてしまうようなものなわけです。うんざりしますね本当に。

5/09/2017

[law] 権力側がその権力をもって憲法改正を主導するという不条理

ここ最近、俄に憲法改正をすべきとする主張が活発になっているようで。その発端は周知の通り首相の談話であり、その拡大要因もまた今以って連発されている国会等における首相の発言によるわけです。

これは本来あってはならない話な筈なのです。憲法の最も重要な役割には国家権力の規律・抑制があるわけですが、首相は行政権の長であり、すなわち国家権力の担い手そのものであって、当然に憲法によって規制を受ける側なわけです。それが、自己の都合の良いように憲法を変更するというのでは憲法自体が形骸化し、無意味と化してしまうでしょう。行き着く先は、国家権力が全てに優先する全体主義的な独裁国家です。

憲法が守るべきは、人権はじめ普遍とされる各種の権利ないし価値です。国家権力は法により抑制されなければそれらの権利や価値を容易に侵害・破壊してしまうものであるところ、それを抑止するための法が憲法であり、本来、権力を行使する側は特別な利害を有することから、その改廃に関わる事すら禁じられるべきものであるわけです。実際、憲法改正の手続に、首相はじめ内閣や官庁ら権力側が関与するところは一切ありません。あくまで国会と国民の意思に委ねられている事項なのです。

なのに、今現在報じられているところでは、"首相が"憲法改正を公約に掲げ、その必要性を主張し、各所にその実行を呼びかけている、という。無茶苦茶です。全く以って、憲法の意味を理解していないとしか考えられません。野党の各議員からは弱いながらも反発が起きているようですが、これは当然と言うべきでしょう。

これに関連して、経団連が憲法改正について意見する、という話も報じられています。 これは一応民間からのものにつき、首相のそれよりはまだましではあるものの、不条理を孕んでいるように思われます。経団連を構成するのは、大企業の経営者です。日本におけるそれらの大企業は、政府と一体となって権力を行使する事もままあるし、それ以前に一般に組織を第一とし、個々の人権等をむしろその障害と捉える、全体主義的な構造を有している事は周知の通りです。その頂点にある経営陣はどちらかと言えば憲法によって規制されるべき側であると言えるでしょう。そうである以上、個人としての立場から発言するなら格別、それを超え、経団連としてその社会に対する影響力を以って憲法改正について主張し、あるいは誘導する事は、許されないものと言うべきでしょう。

それでも、内容が権力の規制強化というのならまだしも、自民党の草案では、見事に権力の強化に特化されており、それと相反する人権等の各種の権利や価値については、およそもれなくその保護を弱め、すべからく公権力に劣後させるものとなっています。それを権力を行使する側が欲するというのは当然といえば当然ではあるのですが、それを臆面もなく、さも自然の事のように主張するという狂った有様には、流石に戦慄を覚えざるを得ないのです。仮にも首相がこれというのはいくら何でもヤバすぎるでしょう。米国でトランプが無茶言ってるから、少々無茶言っても大丈夫だろうとか考えてるんでしょうか。恐ろしい事です。

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経団連会長 経済界も憲法改正で年内に提言へ

[biz] はこBOON終了に見る戦慄すべきヤマトの常識外れな安易さ

はこBOONが休止だそうで。本サービスは伊藤忠が傘下のファミリーマートを窓口にして提供して来たものですが、キャリアがヤマトという事から、現在進められているところの料金値上げ及び法人契約見直しの影響である事は明らかです。

基本的にサイズフリーで重量に応じた料金制である事から、衣料品や楽器等、大型かつ比較的軽量な物品の送付に際してはコストパフォーマンスが良く、オークション等で広く利用されていました。私も使った事があります。同等のサービスは他には存在しない事から、代替への変更に伴いコスト上昇を余儀なくされる向きは相当に出るでしょう。仕方がないと言えばそうですが、またドラスティックにいったものです。

一応、廃止ではなく休止という事ですから、将来の再開の可能性もあるにはあるのでしょう。ですが、その場合も運賃の大幅な上昇ないし其の他制約が強められ、その特徴がほとんど失われる形になる事は避けられないでしょうし、一度打ち切ったものを復活させるのは言うまでもなく相当な困難を伴いますから、これはもう事実上の廃止と捉えてもいいかもしれません。

しかし、今回の件、ヤマトが契約見直しに際し、中小の法人契約で一方的に打ち切りを通告するケースが多発している事は既に報じられていましたが、このクラスの契約でも躊躇なく切り捨てている事が明らかになりました。これはなかなかに衝撃的な話です。今回の運賃等の見直しにあたり、ヤマトが個人・法人を問わず全面的に値上げ・打ち切りを行うものとしている以上、現段階で個別に妥協するのが難しく、またその目的が輸送量の削減にある事もあって、相手が何処であろうと、どのような案件だろうとを問わず、条件(値上げ)が受け入れられなければ即打ち切り、となりやすい事情はあるのでしょう。けれども、大口顧客との関係というのは、本来そんな簡単に打ち切っていいようなものなのかというと無論疑問なしとは言えないわけです。そのサービスの立ち上げや普及等にかけられたコストだけを見ても、容易に切り捨てられるような小さいものではない事は明らかなのだし、常識的には、個別の事情に照らして妥協点を探るべく、少なくとも相応の時間をかけて交渉するものでしょう。

それでもあっさり切り捨ててしまったのが本件というわけです。あまりに安直というか安易というか、この有様を見るに、ヤマトの事業にとって最重要と言えるだろうamazonはじめその他の大口顧客とのサービスも同様に打ち切りとなる可能性が相当に高いものと考えるべきなのでしょう。無論、それで利益を出そうが損失を被ろうが、その辺はヤマトの自由なんですが。。。思ったよりも大変な事になりそうというか、一民間事業者に過ぎないヤマトの経営判断によって、法人、個人問わず、ユーザたる社会一般について大幅にその活動が制約されるだろう意味で、多くの人にとって残念な帰結になりそうです。いやはや。

5月9日 はこBOON サービス休止のお知らせ

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4/23/2017

[note] samba4.5.0以降でwinxpから接続出来ない問題の対処について

先日リリースされたubuntuの最新版17.04へのアップグレードをしたところ、sambaにwinxpのPCから接続出来ない(パスワード認証に失敗する)事象が起こるようになってしまいまして。

具体的には、ネットワークドライブへの接続等によってエクスプローラからsamba経由でサーバのフォルダを開く際、ユーザ名とパスワードを入力しても弾かれるようになってしまったのです。windows7以降のPCで確認してみたところそちらでは問題なく、従ってwinxp以前のPC特有の障害という事になるのですね。いくらXPのサポートは既に終わっていると言っても、実際問題使えないのは困ります、のでその対処法を調査しました。

結論から言えば、本件事象の原因はsambaの認証方法周りの仕様変更(セキュリティ強化)によるものです。ubuntu17.04におけるsambaのバージョンは4.5.4になるのですが、4.5.0以降はXPでデフォルトの認証方式になっているNTLMv1がデフォルトで無効となるよう変更がなされていて、このためXPでは認証出来なくなってしまった、というわけです。

対処方法は2通りあります。一つは、sambaの設定を変更してNTLMv1の認証を有効にする方法で、もう一つはXP側の認証方法の設定を変更して、NTLMv1は使わずその後継のNTLMv2を使用するようにする方法です。

前者はつまるところ元に戻す事に他ならず、これだとクライアントは何ら変更を要せず、サーバの設定だけを変えればいいので簡単なのですが、NTLMv1はあまりに脆弱な事が既に明らかになっているので、一般にはあまりお勧めは出来ません。まあ、デフォルトで無効にされる位には危険なものだという事なのです。少なくとも、オープンなネットワークに接続するサーバで本認証方式を一般に有効にするのはやめた方がいいでしょう。そもそもXPのPCからの接続が必要になる頻度も減っているわけだし、新しい方に合わせた方がいいだろう、という事で、後者のXP側の設定を変更してNTLMv2に切り替える方法を取りました。その手順は下記の通りとなります。

<NTLMv2設定方法>

[コントロールパネル]-[管理ツール]-[ローカル セキュリティ ポリシー]の設定画面中、[セキュリティの設定]-[ローカル ポリシー]-[セキュリティ オプション]の中にある[ネットワーク セキュリティ: LAN Manager 認証レベル]を開きます。


表示されるダイアログの[ローカル セキュリティの設定]タブ中に認証レベルの設定項目があります。デフォルトでは、[LM と NTLM 応答を送信する]になっている筈。


これを、[NTLMv2 応答のみ送信\LM と NTLM を拒否する]に変更。これで、認証方法がNTLMv1からNTLMv2へと切り替わります。


変更後、再起動して完了。以降はsambaの認証が従来通り可能になっている筈です。

ちなみに、危険を承知でsamba側の設定を変更してNTLMv1を有効にする方法は、smb.conf中の適当な所にntlm auth = yesを挿入するだけです。

というわけで、元通りネットワークドライブ等にも接続出来るようになったのでした。しかし、毎度の事ながらsambaには難儀させられますね。本件の仕様変更も、セキュリティホールを塞ぐという正当な理由がある事は理解出来るのですが、何の説明もなくいきなり接続出来なくなり、原因の調査からしなければならず、そのかかる手間や迷惑具合は、ユーザからしてみればおよそ不具合と何ら変わりないわけで。とても困りますし、どうにかならないものでしょうか。ならないんでしょうね。ともあれ、今回はこれでおしまい。

※ なお、今回の事象の調査過程でログ等を見ていて気がついたんですが、mangle関連でエラーが出るようになっています。obsoleteになってしまったんでしょうか。そうだとするとちょっと困るわけですが、さてどうしましょう。。。

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4/18/2017

[note] ubuntu17.04導入

春ですね。ubuntuユーザには恒例のアップグレードの季節です。今回のバージョンは17.04で、コードネームはZestyZapus、ピリッとしたトビハツカネズミさん(北米在住)です。ここ数バージョンは段々とファンタジー色というか不思議生物感が薄れて来ていたところでしたが、ついに完全にリアルな動物になってしまいました。つい先日モバイル版及びUnityの終息が発表されたところでもありますし、夢を見る時間は終わったという事でしょうか。

その辺の枯れた感じはReleaseNoteを見ても明らかです。Server版はopenstack等を中心にそこそこの数のアップグレードがありますが、Desktop版については実質的にカーネルの更新(4.10)のみで、新バージョンにする意味は殆どありません。プリンタ周りの一部ドライバーレスプロトコル対応で恩恵を受けるユーザは極めて限定的です。カーネルの変更に伴い、swapのファイル化(パーティションが不要)に対応した点は注目すべきでしょうけれど、後方互換性を考えると実際に使う気にはなりません(というか、本機能の使用は新規インストール時限定です)し、そもそも大半のユーザにとってはどうでもいい話でしょう。

これならば様子見する必要もないだろう、ということで速やかに適用してしまうことにしました。今回の対象はノート3台にデスクトップ(サーバ含)2台。全てアップグレードです。いつものようにupdate-managerから適用し、数件の設定ファイルの更新について応答しつつ待つこと数十分、いずれも特に問題もなく完了しました。動作確認した限りでは、特に問題はありません。前回酷い目に遭ったtcshのバグの再発もなし。前々回のIMのような不具合もなし。これは今回の変更内容からすれば当たり前の結果というべきであって、前回や前々回の不具合の方が本来ありえない話だったというべきなのでしょう。

不具合がないのはいいのですが、それはやはり変化自体がないからであって、いよいよもって新リリースをする意味自体がない感じに。。。Server版を更新する意味と必要はあり、その際にServer版とDesktop版とを乖離させるわけにもいかないという事情から、アップグレード自体を取りやめるのは困難という事情はあるのでしょうけれど、Desktop版ユーザにとってアップグレードは最早手間がかかるだけの無意味なものになってしまっています。かといって上げないでいると、いざアップグレードすべき時になってスキップ出来ずに何回も繰り返す羽目になったり、あまり長く間を空けすぎると、ギャップが大きすぎてトラブルが起きたりするしでままなりません。何とかならないものなのでしょうか。ともあれ、今回はこれでおしまい。

(追記)

アップグレードをしたサーバ(samba)に、winxpのPCから接続出来なくなる問題が発生しました。これはsambaのバージョンアップ(4.5.2)に伴い古い認証方法が無効にされていたためで、対処は簡単ですが冷や汗ものです。困りますねこういうのは。

[note] samba4.5.0以降でwinxpから接続出来ない問題の対処について

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4/15/2017

[biz law] 自動ブレーキ試乗デモ失敗で衝突事故

欠陥機能を見切り発車的に載せる自動車メーカーが悪いのか、それともそれに騙される方が悪いのか。いずれにしろ、またやらかしたそうです。今回は千葉にある日産ディーラーの試乗車(セレナ)で、公道を試乗中、前方で停車している車がいる場面で、あろうことか自動ブレーキを故意に働かせようとして敢えてブレーキを踏まないよう運転している顧客に指示したところ、動作せずそのまま前の車に衝突、衝突された車に乗っていた人が軽傷を負ったんだそうで。

無論故意ではないものの、補助機能に過ぎない自動ブレーキ機能の動作の特性を誤解し、事故の危険が伴う違法な指示を出したディーラーの担当者は無論第一に有責であり、おそらく自動ブレーキ機能について知識も乏しかっただろう運転者にも、漫然と指示に従うのみで、自動ブレーキが効かなかった場合に備えて通常のブレーキを動作させられるよう備えておかなかった過失が認められるわけで、いずれも犯罪となります。過失傷害と注意義務違反でしょうか。公道上で事故を起こした責任は、決して軽いものではありません。

本件は、以前マツダのディーラーが同じく自動ブレーキのデモに失敗してフェンスに突っ込んだ件とほぼ同じ事情によるものですが、あれはディーラーの私有地内での単独の物損事故であり、結果的にはまだディーラーの自己責任と言えるものでした。それと比べても、他の車を損壊させ、また人身に被害も生じさせた本件は過失の程度が高く、責任も遥かに重いものと評価すべきところです。

自動ブレーキが作動しなかった理由は天候不良等によるものとされているようですが、そんな事は何の言い訳にもなりません。その程度で動作不良を起こすような、全く信頼に値しない欠陥機能を登載して売りにしているところからして、安全性が何よりも重要な筈の自動車のそれとして不適切だと言わざるを得ないところですし、それ以上にそのような稚拙な機能を完全なものと思い込み、顧客をして事故を起こさせ、何の関係も落ち度もない他人をして被害を被らせるなど言語道断です。

しかしさらに恐ろしいのは、現行セレナが売りにしているのは自動ブレーキ機能のみではなく、より総合的な自動運転機能の登載を謳っている点にあります。一般に自動運転機能、という表現が意味するところは、自動ブレーキ機能以外にもオートクルーズや自動駐車等様々ですが、それらに共通する必要条件として、当然ながら車の周囲の状況、先行車、対向車、歩行者も含む障害物等、およそ全ての状況を把握出来る事が必須になります。そこに誤り、特に見落としや誤認は絶対にあってはなりません。絶対にです。特に走行中であれば、最低限前方の状況の誤認識は許されません。でなければ即事故を起こしてしまうからです。

しかし、今回の事故ではよりによって前方車を見落としてしまいました。見落としをした時点で、衝突事故の発生は必然の結果であったという他ないわけですが、最も基本である筈の、至近距離にある前方車の認識にすら失敗するようでは、より複雑で、速度等シビアな環境で正確な認識を要求するだろう他のアクティブ系の機能が動作すべき時には、なおさら失敗の可能性は高いものと考えざるを得ません。機能が自動ブレーキだけで、かつドライバーが運転を誤った場合等の補助的なパッシブ機能としてのみ動作するのなら、まだ積極的に有害とまでは言えないかもしれませんが、そうではないのです。その他の、能動的な動作を主とする機能に誤動作の可能性が高い、というのは致命的で、到底許容出来る筈もありません。結局のところ、セレナの自動運転機能はきわめて危険なものと評価せざるを得ないでしょう。

当然ながら、いくら便利で先進的な機能でも、その動作に事故の危険を伴うのであれば無意味です。それどころか有害と言えるでしょう。まして、今回のように雨天という当たり前に生じる状況になった位でその誤動作が生じ得る、というのでは話になりません。のみならず、その危険性を十分に認識し、さらに顧客へ周知させる義務を負っている筈のディーラーの担当者ですら全く理解すらしていない、というのでは。。。高速走行中等でなくてまだ良かった、というべきなのでしょう。実際、米ではTesla Model Sで既に死亡事故が起きてしまっています。そのような、取り返しのつかない重大事故が起きてしまう前に、登載自体取りやめるべきだと思うのです。

しかし、日産は無謀にも2020年までの一般道での完全自律自動運転車の実現を掲げているわけで。その目標の経営方針における位置づけの重要さ加減からすれば、おそらくは強制されない限りそれを取り下げる事はせず、従って今回の、比較的軽いと言えるだろう被害の発生程度では防止には動かないのでしょう。そうであれば、その無謀が犠牲者を生むだろう事は殆ど避けられない必然であって、そうと知りつつも避ける事すら困難な現状には、暗鬱たる思いを抱かざるを得ないのです。

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