softbankによる衝撃の英ARM買収発表からしばらく経ちましたが、未だにその余波は続いている、というか多くの人が今ひとつ理解出来ずにどう捉えていいものか、今以って戸惑っていると言うべきでしょうか。何にせよ影響は治まっておらず、何ともお騒がせな事です。
話の大前提として、ARMは純然たるデバイスアーキテクチャの設計のみを行う開発会社であり、softbankの事業には直接の関係は一切ないわけです。組み込みはじめ、ゲーム機やスマホ等の携帯機器も含め、所謂IoT関連のデバイスのほぼ全てに独占的なシェアを持つ同社のアーキテクチャの持つ価値、またそれを背景にした同社の極めて高い純利益率からすれば、その3兆円を超えるとされる買収額も高すぎるとは言えない事は間違いありませんが、下手をしなくても会社が傾きかねない額である事もまた事実です。事業規模が売上高にして年1000億のオーダーでしかない以上、いくら利益率が高くともそこから得られる現実の収益は年数百億の規模が限界であり、また今は低金利による資金調達が可能だと言っても、特に付加価値の発生がなく、現状維持のままという事であれば差し引きして債務超過に陥るリスクも決して小さくはないところでしょう。
となれば、本来ならば当然に今後のARMの設計事業の成長を見込まなければ成立し得ない買収の筈なのですけれども、周知の通りARMはその事業分野において既に独占的なシェアを有しており、スマホやタブレットの需要も頭打ちになりつつある現状、新規かつ大口の出口が生まれない限り、飛躍的な成長は見込みづらい状況にあるわけです。
その成長のアテとしてsoftbankはIoT分野の成長を挙げたのですけれども、そのIoT自体、現時点というかここ数年、数百兆円の市場に成長するとは各所で散々主張され、その先行きが話題になってはいるものの、一向に具体的な形にならず、buzzwordに留まり続けているものなわけで。正直眉唾と言わざるを得ないのですね。どうにも、IoTが成長するという主張自体、その筋の受け売りのように感じられてなりません。
実際のところ、その成長を見込むにあたって、おそらくは自動運転車やドローン等のロボット類の普及、それによるインフラ回りのIT化等を念頭に置いているのだろうとは思うのですが、それらにしたところで、個別に見ればそれぞれに一般に普及するには致命的とも言うべき障害が多々あり、ドローンに至っては一般向けに規模を拡大する前に早くもブームが去りつつあるのが現状なのであって。
現状、ARM関連でそれなり以上の規模での持続性が期待し得る分野は、以前とさほど変わらず、やはりスマホ等の携帯デバイスが中心になるものと考えざるを得ないのです。であれば、ライセンス収入は安定的かつ継続的に得られる反面、飛躍的な成長は望むべくもない事になります。
その点、あまりにも事業上の接点の薄いというかほぼ皆無なsoftbankでは、それを補うような提案、協業関係の構築を期待する事は出来ません。結局の所、資本関係はあるけれども、事業上の関係は極めて薄いまま、両者の事業はほぼ完全に独立した関係とならざるを得ない筈なのです。従って、通常事業買収に期待されるような事業の成長は期待出来ないところとなるでしょう。
勿論、それなりの時間が経過した後、例えば10年もすれば、その間に現時点で形になっていない新事業が発生し、それによってIoT分野が飛躍を遂げる可能性はあり、その場合にARMがその高いシェアから価値を増大させるだろう事には、疑いを差し入れる余地は乏しいところです。しかし、softbankの事業形態、特に巨額の負債を負って投資をし、キャピタルゲインの形で回収を繰り返す手法上、そこまで長期間、兆単位の資金を単にベットし続けるだけ、というのはいささか不自然と言わざるを得ませんし、まず市場もそこまで待ってはくれず、長くとも二年単位位で期待に見合うだけの目に見える成果が要求される事になるでしょう。が、それだけの成果を得られるだろう具体的な見込みについては、抽象的で曖昧な発言を繰り返すばかりで、未だに何らの説明もなされていません。
この点、色々言い訳染みた主張を繰り返してはいるけれども、結局のところ、softbankとしては現実の事業上のメリットはあまり考慮しておらず、単に目先の投資先として有望であり、英pound及びEuroが暴落してドル・円建てで見れば数割程度割安になったこの時期に、ほぼ純粋に資金の投資先として手頃に思われたから買った、というだけなのかな、と考えざるを得ないのです。特定の通貨が暴落した時に、目先の割安感から外国人がその発行国の不動産を買い漁るのと同じような事なのだろうと。
買収発表から数週間が経過した今でもsoftbankがARMの事業を巡って具体的な施策等は一切公表せず、疑問の声に対しては、やはり何らの説明もせずに"分かる人には分かる"的な無意味かつ逆ギレ的返答を繰り返し続ける、というのを見るにつけ、やはりそうなのかと、残念に思いつつ確信せざるを得ないわけです。
しかしsoftbankも大変ですね。その自転車操業的な運営手法は、それこそリスクの塊のような危険なものばかりであって、ここまで成功を収めた事にむしろ驚嘆せざるを得ない程のものなわけですが、ここ数年はAlibaba関連を除いて殆ど成功しておらず、米Sprintの明らかな失敗と国内市場の縮小に直面して、実際はあまり余裕はないんだろうと思われるところです。その"次の行き先"をなんとか作り出さなければ即死してしまう恐怖、またそれに常に追い立てられる状況により当事者にかかるストレスは尋常ではないでしょう。本件の賭けはその規模から絶対に失敗は許されない部類のものになってしまったわけですが、成功して生き延びるのか、それともあえなく裏目に出て終了してしまうのか。他人事として、余波も及ばない位に離れたところから観察させてもらおうと思うわけです。
7/29/2016
[pc] win10無償アップグレード期間がようやく終わる
という事で、改めて恨みつらみなどを軽く吐き出しておこうかと思うわけです。
この1年、色々と面倒を掛けさせられました。姑息としか言いようがない事実上の強制アップグレードを強いるパッチの数々には嫌な思い出しかありません。windowsupdateでパッチが配信される度に、一つ一つパッチの内容を確認し、win10関連等の有無によって選別する手間は文字通りうんざりする他ないものでした。複数PCで同じ作業を繰り返す虚しさはもうね。。。何故現状維持するだけの事にこんな手間を掛けなければならないのかと、積もり積もったmicrosoftへの不満はもう憎悪とも言うべき程に膨らみ、確固たるものになってしまいました。倒産してしまえ、とmicrosoftの関係者に面と向かって言い切る事が出来る位です。私にとって、この1年は"強制アップグレード警戒期間"とでもいうべき忌まわしいものでした。
加えて、microsoftの今後の方針が今一よくわからない事が面倒さ加減にさらに拍車をかけてくれるわけで、とても苛立たされます。win10の普及台数が大幅な目標未達に終わった事は周知の通りですが、無料期間は延長しない旨散々公言してきた経緯上、一旦ここで普及は打ち止めにせざるを得ない一方、対android及びiOSの戦略上、今更win10を中途半端で放り出すわけにもいかず、事業戦略的に立ち往生する状況に陥る事は避けられないわけですが、未だに期間終了後の方針について明確なポリシーは公表されていません。最後の追い込み期間につきユーザの不安を煽ってアップグレード適用台数の積み増しに集中するというのはわからなくもありませんが、やはり稚拙な印象は否めません。主要OSの供給者としての責任がある以上、そんな自己中心的で勝手なやりようが許される立場ではない筈なのですが・・・。困ったものです。
予想される今後の展開としては、しばらく時間を開けた後で適当な理由を付けて再び無料アップグレードを登録制で再開するだとか、でなければオフィス等の機能制限版のwin10限定での無料配布だとかの追加のインセンティブを導入して有償での移行を推進するだとか、色々と考えられるわけですけれども、それでもこの1年に取ってきた施策の無茶苦茶さ加減を思えば、その程度では劇的な改善は期待出来ないでしょう。そもそもwin7やwin8.1の環境からwin10に変える必要性に乏しく、逆にリスクも相応にあるのだから当然ではあるのですけれども。結局のところ、特に問題なければ現状維持を望むユーザが多数だったというだけの、当然の帰結に落ち着いた、という事です。
従来ならPCのアーキテクチャの進歩のスピードが速く、その分本体の買い替えサイクルも短く、それに伴ってOSの移行も頻繁かつ当然に行われていたものが、アーキテクチャの進歩が頭打ちになり、買い替え需要は消失し、加えてパーソナルデバイス需要のスマホ等他の新興デバイスへの移行が進んだ結果、microsoftのPC用OSを更新する必要性も契機も無くなってしまった、そういったOS事業の環境の変化が決定的なものである、その事が、microsoftの一連の醜態を通じて改めて晒されたものが本件だった、とも言えそうです。IT界を長年支配した巨人と言えども、時代の変化には抗いようもなく、あれだけなりふり構わず強引な手段に訴えてなお悪あがきに留まったというのには、如何にも象徴的なものを感じずにはいられないのです。
何にせよお疲れでした。microsoftはさっさとOSのソースコードを公開して滅びてしまえばいいと思います。
なお本件における私の対応としては、アップグレード実行の直前と直後のシステムHDDをまるごとバックアップを作成し、必要に応じて書き戻しや更新等を行いました。周辺の管理を担当するPC全てについて。非常に面倒でしたが、任意にwin7もしくはwin8.1とwin10の入れ替えが出来、ついでにそこそこの頻度で完全なバックアップも作成出来るので、手間をかけただけの意味はあったと思っています。 でもそもそも本件がなければそんな事をする必要もなかったわけで、やっぱりmicrosoft死ねと思う気持ちに変わりはないわけなのですけれどもね。
microsoftには、中途半端に終わったwin10の普及、それと引き換えに負った全世界のユーザの恨みと損害、それに伴う賠償請求訴訟の山にせいぜい苦しめられればいいと心から思う次第なのです。
[過去記事 [PC] win10強制アップグレードによる被害に初の損害賠償認容判決]
[過去記事 [note] Windows10の表示周りに不具合頻発]
[過去記事 [note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードはやはり地雷]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードの無効化]
この1年、色々と面倒を掛けさせられました。姑息としか言いようがない事実上の強制アップグレードを強いるパッチの数々には嫌な思い出しかありません。windowsupdateでパッチが配信される度に、一つ一つパッチの内容を確認し、win10関連等の有無によって選別する手間は文字通りうんざりする他ないものでした。複数PCで同じ作業を繰り返す虚しさはもうね。。。何故現状維持するだけの事にこんな手間を掛けなければならないのかと、積もり積もったmicrosoftへの不満はもう憎悪とも言うべき程に膨らみ、確固たるものになってしまいました。倒産してしまえ、とmicrosoftの関係者に面と向かって言い切る事が出来る位です。私にとって、この1年は"強制アップグレード警戒期間"とでもいうべき忌まわしいものでした。
加えて、microsoftの今後の方針が今一よくわからない事が面倒さ加減にさらに拍車をかけてくれるわけで、とても苛立たされます。win10の普及台数が大幅な目標未達に終わった事は周知の通りですが、無料期間は延長しない旨散々公言してきた経緯上、一旦ここで普及は打ち止めにせざるを得ない一方、対android及びiOSの戦略上、今更win10を中途半端で放り出すわけにもいかず、事業戦略的に立ち往生する状況に陥る事は避けられないわけですが、未だに期間終了後の方針について明確なポリシーは公表されていません。最後の追い込み期間につきユーザの不安を煽ってアップグレード適用台数の積み増しに集中するというのはわからなくもありませんが、やはり稚拙な印象は否めません。主要OSの供給者としての責任がある以上、そんな自己中心的で勝手なやりようが許される立場ではない筈なのですが・・・。困ったものです。
予想される今後の展開としては、しばらく時間を開けた後で適当な理由を付けて再び無料アップグレードを登録制で再開するだとか、でなければオフィス等の機能制限版のwin10限定での無料配布だとかの追加のインセンティブを導入して有償での移行を推進するだとか、色々と考えられるわけですけれども、それでもこの1年に取ってきた施策の無茶苦茶さ加減を思えば、その程度では劇的な改善は期待出来ないでしょう。そもそもwin7やwin8.1の環境からwin10に変える必要性に乏しく、逆にリスクも相応にあるのだから当然ではあるのですけれども。結局のところ、特に問題なければ現状維持を望むユーザが多数だったというだけの、当然の帰結に落ち着いた、という事です。
従来ならPCのアーキテクチャの進歩のスピードが速く、その分本体の買い替えサイクルも短く、それに伴ってOSの移行も頻繁かつ当然に行われていたものが、アーキテクチャの進歩が頭打ちになり、買い替え需要は消失し、加えてパーソナルデバイス需要のスマホ等他の新興デバイスへの移行が進んだ結果、microsoftのPC用OSを更新する必要性も契機も無くなってしまった、そういったOS事業の環境の変化が決定的なものである、その事が、microsoftの一連の醜態を通じて改めて晒されたものが本件だった、とも言えそうです。IT界を長年支配した巨人と言えども、時代の変化には抗いようもなく、あれだけなりふり構わず強引な手段に訴えてなお悪あがきに留まったというのには、如何にも象徴的なものを感じずにはいられないのです。
何にせよお疲れでした。microsoftはさっさとOSのソースコードを公開して滅びてしまえばいいと思います。
なお本件における私の対応としては、アップグレード実行の直前と直後のシステムHDDをまるごとバックアップを作成し、必要に応じて書き戻しや更新等を行いました。周辺の管理を担当するPC全てについて。非常に面倒でしたが、任意にwin7もしくはwin8.1とwin10の入れ替えが出来、ついでにそこそこの頻度で完全なバックアップも作成出来るので、手間をかけただけの意味はあったと思っています。 でもそもそも本件がなければそんな事をする必要もなかったわけで、やっぱりmicrosoft死ねと思う気持ちに変わりはないわけなのですけれどもね。
microsoftには、中途半端に終わったwin10の普及、それと引き換えに負った全世界のユーザの恨みと損害、それに伴う賠償請求訴訟の山にせいぜい苦しめられればいいと心から思う次第なのです。
[過去記事 [PC] win10強制アップグレードによる被害に初の損害賠償認容判決]
[過去記事 [note] Windows10の表示周りに不具合頻発]
[過去記事 [note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードはやはり地雷]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードの無効化]
[biz] ポケモンGo、狂騒の陰で積み重なる弊害と軋轢、規制は不可避か
突如としてブームになった任天堂のARゲーム、Pokemon Goもリリースからしばらく経ち、そろそろ落ち着いて来た感がするこの頃。それでも、街のそこかしこでスマホをいじっている人は若年層を中心に今以って結構な割合を維持しているようで、特に未成年から中年位までの男性のプレイ率は凄いですね。誰も彼もといった感じです。
なのですが、落ち着いて見ると、やはり色々と問題も多いわけで、果たしてこれが一過性のブーム以上の、継続発展する新しい経済の循環として定着するか否かは、正直なところ現時点ではよく分からないように思います。
現時点で認識されている本アプリの特質としては、ポジティブな面から言えば、
・世界的に認知された初のARサービス
・ゲーム産業界の最重要プレイヤー任天堂のスマホアプリでの初の世界的ヒット作
であり、それを支えるところの、
・キャラクター等コンテンツの知名度等の高さによる極めて高い集客力
・屋外(GPSの届く範囲)全域を網羅するフィールドの広さ、体験の多様性
あたりがポイントになっている、と言えるでしょうか。無論プラットフォームとしてのスマホの普及率の高さによる新規・ライトユーザの獲得の容易性も主要因ではあるのでしょうけれども、本アプリに特徴的なものとは言えないでしょう。
対して、ネガティブな面から言えば、
・"ながら"プレイが前提につき、不可避的に不注意を誘発するため、事故等の危険が生じる
・ゲーム内チェックポイントに現実の名所等を先方の同意を取らず、かつ施設等の状況等に一切配慮せず設定するため、結果として業務妨害等の不法行為にあたるケースが頻発する
あたりが主要なポイントというか、問題点になっているように見えます。
ポジ・ネガ双方とも中々に興味深い論点であって、是非を一概に判ずる事は難しい事は明らかなわけです。ポジティブ要素のうち、フィールドの広さは確かに大きな魅力と言えるだろう一方、一々移動しなければプレイ出来ないというのは制約でもあるわけですし。また、少なくとも、ネガティブな面は現実の危険や不法行為の要因になる以上、被害を受ける側や公の立場からすれば看過し難いものには違いないでしょう。すなわち、このままだと、遠からず何らかの規制・制限は免れないものと予想されるわけです。仮に深刻な事故や損害が生じ、それが明るみになれば、具体的な立法もしくは自主規制が行われる事になるだろう点に異論は挟み難いものと言わざるを得ないでしょう。
ただ、オプトアウトについては結局のところ除外申請の窓口を設ければ済む話ですが、不注意による事故の誘発については、スマホベースのARの仕組み自体に内在する危険につき、事故が起こりそうな状況でのプレイを禁止する以外におそらく防止する方法はないだろう点は如何ともし難いように思われるところです。
例えば、プレイ可能なエリアをオプトイン形式で許可を得た施設等の周辺かつ公道上を除外した範囲に限定等すれば、両方の問題点を一気に解決し得る、と少し考えればすぐに思い浮かぶだろう話ではあるのです。けれども、その種の措置をとったが最後、主要な特性であるところのフィールドの広さ、すなわち屋外であれば何処でもプレイ出来るという、特にライト寄りのユーザの獲得・維持に欠くべからざる性質を失う事になってしまうわけです。そうなれば、フィールドは歯抜けの状態となって、ユーザにしてみれば何処がポイントかもよくわからなくなり、プレイの連続性、継続性が著しく損なわれ、当然にユーザのモチベーションも著しく減退し、その結果この種のサービスの肝であるところのコミュニティの形成・維持も困難になってしまうだろう事も容易に予想されます。その場合、フィールドが広大であるという要素が、エリアあたりのユーザ数、すなわち密度が疎になる、という形で弊害に転じもするでしょう。結果、本サービスの肝とも言える要素が決定的に失われてしまうわけです。
なお、無論その設定・管理、またそれに伴う各施設等との同意交渉にかかるコストも到底無視し得ないものになるでしょうけれども、本アプリの特徴が消えてなくなる弊害に比べればさほど決定的な問題とは言えないのではないかと。
結局のところ、これらの問題の解決はなかなかに難しい、というかスマホベースARの仕組みに内在する問題であって、その形態をとっている以上、価値が損なわれない形での解決は原理的に不可能なようにも見えるわけです。
思うに、たかがゲーム、と言うと語弊があるかもしれませんが、事故の危険や業務妨害の被害は防止されなければならないし、個々人のゲームをプレイする楽しみや任天堂等企業の利益と引換えに容認出来るものではない事は間違いないところであって、少なくとも、今のように何処でも大抵の名所や施設が登録されていて、近くに行けばゲーム上のポイントとしてアクセス出来るような状況は、そう長くは続けられないだろう、とそう言わざるを得ないのではないでしょうか。いくらそれによって失われるだろうARの飛躍等の可能性を惜しんだところで、実際に社会問題化しつつある以上、それはもう仕方ない話だと思うのです。
そもそも問題はそれだけではありません。他にも、季節柄、炎天下の下、屋外で長時間ゲームをプレイする事自体にも熱中症等の危険はあるわけです。通常でも多少の油断で起こりうる事故が、ゲームに夢中なプレイヤーに起こらない筈はなく、むしろ当然の帰結であり発生は時間の問題であろうところ、実際に重症者あるいは死者などが発生すれば、危険行為と認定されて一斉バッシング、という事態も起こりうるでしょう。
一市民としては、そのような事態に至る前に、致命的な事故等を回避する対策があらかじめ採られるよう願いたいところですが、ブームに目が眩んでいるだろう任天堂やら関連業界には正直期待し難い事なのでしょう。長年この種のサービスに慎重だった任天堂の事ですから、警戒はしているのかもしれませんが、それだけに経験も対処のノウハウもないわけで、仮に警戒していてもあまり意味はないでしょう。もっとも、物珍しさで始めた大多数のライト寄りのプレイヤーは、各自の生活圏内のポイントを一通り回り終えたあたりで落ち着くだろうし、あるいは飽きて離脱する向きも多いでしょうから、もうしばらく事故が起こらなければ、それほどピリピリせずともよくなるのかもしれませんけれども。いずれにせよ、任天堂にはユーザの安全を第一として極力慎重かつ迅速な事前の手当がなされるよう願いたいところです。
しかし今年はVRあるいはARの年だ、等と年初に色々なところで予想されていましたが、ある意味半分位はその通りになった、と言っていいんでしょうか。その種の予想は往々にして外れるものなところ、珍しい事もあるものです。もちろん、その予想で想定されていたのはOculusやSonyのHMDによる没入型のデバイスの普及であって、本件のような形態のものでは決してなかったわけで、その意味では実質的には予想とは別の話ではあり、予想が的中した、とはまだ言えないわけですけれども。いやはや。
[過去記事 [biz] 審判の日が迫るHMD型VRデバイス達]
なのですが、落ち着いて見ると、やはり色々と問題も多いわけで、果たしてこれが一過性のブーム以上の、継続発展する新しい経済の循環として定着するか否かは、正直なところ現時点ではよく分からないように思います。
現時点で認識されている本アプリの特質としては、ポジティブな面から言えば、
・世界的に認知された初のARサービス
・ゲーム産業界の最重要プレイヤー任天堂のスマホアプリでの初の世界的ヒット作
であり、それを支えるところの、
・キャラクター等コンテンツの知名度等の高さによる極めて高い集客力
・屋外(GPSの届く範囲)全域を網羅するフィールドの広さ、体験の多様性
あたりがポイントになっている、と言えるでしょうか。無論プラットフォームとしてのスマホの普及率の高さによる新規・ライトユーザの獲得の容易性も主要因ではあるのでしょうけれども、本アプリに特徴的なものとは言えないでしょう。
対して、ネガティブな面から言えば、
・"ながら"プレイが前提につき、不可避的に不注意を誘発するため、事故等の危険が生じる
・ゲーム内チェックポイントに現実の名所等を先方の同意を取らず、かつ施設等の状況等に一切配慮せず設定するため、結果として業務妨害等の不法行為にあたるケースが頻発する
あたりが主要なポイントというか、問題点になっているように見えます。
ポジ・ネガ双方とも中々に興味深い論点であって、是非を一概に判ずる事は難しい事は明らかなわけです。ポジティブ要素のうち、フィールドの広さは確かに大きな魅力と言えるだろう一方、一々移動しなければプレイ出来ないというのは制約でもあるわけですし。また、少なくとも、ネガティブな面は現実の危険や不法行為の要因になる以上、被害を受ける側や公の立場からすれば看過し難いものには違いないでしょう。すなわち、このままだと、遠からず何らかの規制・制限は免れないものと予想されるわけです。仮に深刻な事故や損害が生じ、それが明るみになれば、具体的な立法もしくは自主規制が行われる事になるだろう点に異論は挟み難いものと言わざるを得ないでしょう。
ただ、オプトアウトについては結局のところ除外申請の窓口を設ければ済む話ですが、不注意による事故の誘発については、スマホベースのARの仕組み自体に内在する危険につき、事故が起こりそうな状況でのプレイを禁止する以外におそらく防止する方法はないだろう点は如何ともし難いように思われるところです。
例えば、プレイ可能なエリアをオプトイン形式で許可を得た施設等の周辺かつ公道上を除外した範囲に限定等すれば、両方の問題点を一気に解決し得る、と少し考えればすぐに思い浮かぶだろう話ではあるのです。けれども、その種の措置をとったが最後、主要な特性であるところのフィールドの広さ、すなわち屋外であれば何処でもプレイ出来るという、特にライト寄りのユーザの獲得・維持に欠くべからざる性質を失う事になってしまうわけです。そうなれば、フィールドは歯抜けの状態となって、ユーザにしてみれば何処がポイントかもよくわからなくなり、プレイの連続性、継続性が著しく損なわれ、当然にユーザのモチベーションも著しく減退し、その結果この種のサービスの肝であるところのコミュニティの形成・維持も困難になってしまうだろう事も容易に予想されます。その場合、フィールドが広大であるという要素が、エリアあたりのユーザ数、すなわち密度が疎になる、という形で弊害に転じもするでしょう。結果、本サービスの肝とも言える要素が決定的に失われてしまうわけです。
なお、無論その設定・管理、またそれに伴う各施設等との同意交渉にかかるコストも到底無視し得ないものになるでしょうけれども、本アプリの特徴が消えてなくなる弊害に比べればさほど決定的な問題とは言えないのではないかと。
結局のところ、これらの問題の解決はなかなかに難しい、というかスマホベースARの仕組みに内在する問題であって、その形態をとっている以上、価値が損なわれない形での解決は原理的に不可能なようにも見えるわけです。
思うに、たかがゲーム、と言うと語弊があるかもしれませんが、事故の危険や業務妨害の被害は防止されなければならないし、個々人のゲームをプレイする楽しみや任天堂等企業の利益と引換えに容認出来るものではない事は間違いないところであって、少なくとも、今のように何処でも大抵の名所や施設が登録されていて、近くに行けばゲーム上のポイントとしてアクセス出来るような状況は、そう長くは続けられないだろう、とそう言わざるを得ないのではないでしょうか。いくらそれによって失われるだろうARの飛躍等の可能性を惜しんだところで、実際に社会問題化しつつある以上、それはもう仕方ない話だと思うのです。
そもそも問題はそれだけではありません。他にも、季節柄、炎天下の下、屋外で長時間ゲームをプレイする事自体にも熱中症等の危険はあるわけです。通常でも多少の油断で起こりうる事故が、ゲームに夢中なプレイヤーに起こらない筈はなく、むしろ当然の帰結であり発生は時間の問題であろうところ、実際に重症者あるいは死者などが発生すれば、危険行為と認定されて一斉バッシング、という事態も起こりうるでしょう。
一市民としては、そのような事態に至る前に、致命的な事故等を回避する対策があらかじめ採られるよう願いたいところですが、ブームに目が眩んでいるだろう任天堂やら関連業界には正直期待し難い事なのでしょう。長年この種のサービスに慎重だった任天堂の事ですから、警戒はしているのかもしれませんが、それだけに経験も対処のノウハウもないわけで、仮に警戒していてもあまり意味はないでしょう。もっとも、物珍しさで始めた大多数のライト寄りのプレイヤーは、各自の生活圏内のポイントを一通り回り終えたあたりで落ち着くだろうし、あるいは飽きて離脱する向きも多いでしょうから、もうしばらく事故が起こらなければ、それほどピリピリせずともよくなるのかもしれませんけれども。いずれにせよ、任天堂にはユーザの安全を第一として極力慎重かつ迅速な事前の手当がなされるよう願いたいところです。
しかし今年はVRあるいはARの年だ、等と年初に色々なところで予想されていましたが、ある意味半分位はその通りになった、と言っていいんでしょうか。その種の予想は往々にして外れるものなところ、珍しい事もあるものです。もちろん、その予想で想定されていたのはOculusやSonyのHMDによる没入型のデバイスの普及であって、本件のような形態のものでは決してなかったわけで、その意味では実質的には予想とは別の話ではあり、予想が的中した、とはまだ言えないわけですけれども。いやはや。
[過去記事 [biz] 審判の日が迫るHMD型VRデバイス達]
7/12/2016
[pol] 鳥越俊太郎の都知事選出馬に漂う不安
ついにこの時が来た、というべきか、来てしまった、というべきか。都知事選、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏が立候補する運びになった、とのことだそうで。
かつて選挙の度にその出馬が取り沙汰された筑紫鉄也亡き後、彼のポジションを乗っ取ったかのようにリベラル寄りジャーナリズムの象徴的立場に収まり、知名度の面ではおそらく今以って最高の位置にある彼は、それだけで十分に有力候補足りえる事は疑いようもないところです。一度限りの選挙なら、これほど有力な候補もそうそうないでしょう。
しかしその一方で、おそらく彼ほど不安を感じさせる候補者も少ないだろうのも間違いないでしょう。彼は紛れもない理想論者であり、かつ当然に現実の問題への対処を求められる公的立場に就くにあたって、欠くべからざる諸々の架橋的な理論面・経験面の準備は全くと言っていいほど無いに等しいように見えるわけです。とりわけ、これまで立候補及び政界に身を投じた経験がない、という点は、致命的な失敗の実績がない、という意味で選挙にはポジティブな意味合いも帯びる面はあるかもしれないものの、現実との乖離が著しい程の理想論者、という彼の性質と合わせれば、当然ながら不安要素の最たるものの一つと認識されるでしょう。年齢とそれに伴う健康面の不安も無視出来ませんけれども。
彼がメディアの取材で語ったとされる立候補の動機が、先日の参院選の結果、改憲の可能性が高まったため、というのにも、動機に対する手段の選択において当然あるべき論理的思考を欠いている事は明らかですし、仮に就任したとして、彼の政治的な判断と現実の対応に生じるだろう齟齬を想像させられて、非常に不安を覚えざるを得ないわけです。何故改憲への信任の意味合いも明らかにあった参院選には出ず、それが決してから、本来的に国政には関係ない地方自治体の首長選に出馬するにあたって改憲云々を理由の第一に持ち出すのか、全く以って意味不明で、理解のしようもありません。自治体の運営への意欲が十分にあること、それが何よりもまず必要な、前提としての資質であり、少なくとも改憲云々より先に来るべき動機でなければならない筈なのです。
その辺の齟齬を鳥越氏が自身で認識しているのか否かはさておき、内心には氏なりの考えもあるのだろうし、判断するのは有権者なのだから、動機が何であれ選挙で選出されればそれで正当化されるとも言えるし、決定的な問題とまでは言えないのかもしれません。しかし、氏を担ぎあげる側の態度についてはいささか看過し難いところです。与党側が分裂とはいえ強力な候補を擁立しようとしている現状、対抗するには純粋に知名度で負けないだけの候補が必要で、元々選択肢は殆どなかったところに鳥越氏の立候補の受諾を取り付けられたのだから、上記のような不安は二の次という事なのでしょう。しかし、仮にも自治体の長を務めるからには、本来欠くべからざる為政者の資質をなおざりにして、肝心の自治体の運営自体には経験もなければ意欲も十分とは言えない人物を担ぎ上げて後は知らない、というのはやはり無責任というものだと思うのです。まさに資質の面で前任者達が続けて辞職に追い込まれた後の本件なのですし。
などと言っても、あれよという間に氏の立候補は既定路線になってしまったようです。もう引っ込みがつかない、というのなら、せめてこれから、出来る限りの実務にあたるための準備が出来るよう、その体制を整え、維持出来るよう、担ぎ上げた側は責任を持って面倒を見てもらいたいと思う次第なのです。しかしやっぱりこれだけ不安が先に立つ有力候補というのも珍しいですね。難儀なことです。
[関連記事 [pol] 舛添知事の汚職追求を不毛にする法と社会の齟齬について]
かつて選挙の度にその出馬が取り沙汰された筑紫鉄也亡き後、彼のポジションを乗っ取ったかのようにリベラル寄りジャーナリズムの象徴的立場に収まり、知名度の面ではおそらく今以って最高の位置にある彼は、それだけで十分に有力候補足りえる事は疑いようもないところです。一度限りの選挙なら、これほど有力な候補もそうそうないでしょう。
しかしその一方で、おそらく彼ほど不安を感じさせる候補者も少ないだろうのも間違いないでしょう。彼は紛れもない理想論者であり、かつ当然に現実の問題への対処を求められる公的立場に就くにあたって、欠くべからざる諸々の架橋的な理論面・経験面の準備は全くと言っていいほど無いに等しいように見えるわけです。とりわけ、これまで立候補及び政界に身を投じた経験がない、という点は、致命的な失敗の実績がない、という意味で選挙にはポジティブな意味合いも帯びる面はあるかもしれないものの、現実との乖離が著しい程の理想論者、という彼の性質と合わせれば、当然ながら不安要素の最たるものの一つと認識されるでしょう。年齢とそれに伴う健康面の不安も無視出来ませんけれども。
彼がメディアの取材で語ったとされる立候補の動機が、先日の参院選の結果、改憲の可能性が高まったため、というのにも、動機に対する手段の選択において当然あるべき論理的思考を欠いている事は明らかですし、仮に就任したとして、彼の政治的な判断と現実の対応に生じるだろう齟齬を想像させられて、非常に不安を覚えざるを得ないわけです。何故改憲への信任の意味合いも明らかにあった参院選には出ず、それが決してから、本来的に国政には関係ない地方自治体の首長選に出馬するにあたって改憲云々を理由の第一に持ち出すのか、全く以って意味不明で、理解のしようもありません。自治体の運営への意欲が十分にあること、それが何よりもまず必要な、前提としての資質であり、少なくとも改憲云々より先に来るべき動機でなければならない筈なのです。
その辺の齟齬を鳥越氏が自身で認識しているのか否かはさておき、内心には氏なりの考えもあるのだろうし、判断するのは有権者なのだから、動機が何であれ選挙で選出されればそれで正当化されるとも言えるし、決定的な問題とまでは言えないのかもしれません。しかし、氏を担ぎあげる側の態度についてはいささか看過し難いところです。与党側が分裂とはいえ強力な候補を擁立しようとしている現状、対抗するには純粋に知名度で負けないだけの候補が必要で、元々選択肢は殆どなかったところに鳥越氏の立候補の受諾を取り付けられたのだから、上記のような不安は二の次という事なのでしょう。しかし、仮にも自治体の長を務めるからには、本来欠くべからざる為政者の資質をなおざりにして、肝心の自治体の運営自体には経験もなければ意欲も十分とは言えない人物を担ぎ上げて後は知らない、というのはやはり無責任というものだと思うのです。まさに資質の面で前任者達が続けて辞職に追い込まれた後の本件なのですし。
などと言っても、あれよという間に氏の立候補は既定路線になってしまったようです。もう引っ込みがつかない、というのなら、せめてこれから、出来る限りの実務にあたるための準備が出来るよう、その体制を整え、維持出来るよう、担ぎ上げた側は責任を持って面倒を見てもらいたいと思う次第なのです。しかしやっぱりこれだけ不安が先に立つ有力候補というのも珍しいですね。難儀なことです。
[関連記事 [pol] 舛添知事の汚職追求を不毛にする法と社会の齟齬について]
7/07/2016
[biz] 自動運転を責任を持って利用しろとか無茶言うな
先日発生した米Teslaの自動運転機能の誤作動による死亡事故の発生以降、自動運転を巡って世間に広がる恐怖と懐疑、それに対抗しようとする業界側のステマ的な擁護論が喧しいところですが、流石に放置しておけなくなったらしい国土交通省が、"自動運転は完全な自動運転ではなく、運転者は責任を持って利用しなければならない"的な、全く以って今更かつ意味不明なコメントを出しています。監督官庁として何も言わないわけにはいかないからって、それはないでしょうと。
現在実用化されている「自動運転」機能は、完全な自動運転ではありません!!
言うまでもなく、自動運転というのは、運転を自動で行う、すなわち運転作業自体を自動車に丸投げ出来る機能の事を指します。それに責任を持つというのはどういう事か。大雑把に言えば、誤動作をしないよう、常に注意・監視をし、兆候があればコンマ秒以下の瞬時に察知してマニュアルに切り替え、事故を回避する、という事になるでしょうか。そうだとすると、運転手は常に自分が運転しているものとして周囲の状況を把握し続け、瞬間的に操作を奪えるよう、手足をペダルやハンドルに掛けて状況毎に各々の動作の準備をしておかなければなりません。であれば、自動運転と通常のマニュアル運転の違いは、個々のハンドルやペダルの操作の際、ドライバーが身体を動かすか否か位の違いでしかなくなってしまいます。そこまでするなら、却って面倒になるだけだから、最初からマニュアルで運転しておくべきだと思うし、それを自動運転と呼ぶのは実質的に矛盾しているとも思うのです。
そもそもの話、一般論として利用者が機器とその機能の利用にあたって責任を持つには、対象の機能、殊にその状況毎の挙動の特性と限界について十分に正しくかつ具体的な理解をしている事が前提になるわけです。いつどんな状況で正常に動作して、どういう時にどう誤動作するのか、それを把握していなければ注意のしようもありません。しかし、ただでさえ画像処理や電波技術の集積であり、世間ではAIの一言でまとめてそれ以上理解しようとする事すら稀な技術について、そのような十分な理解をし得る運転手がどれだけいるというのでしょうか。あり得ません。それ以上に、日々改変も加えられている真っ最中でもあるのだし、おそらく開発者自身ですら、正確に挙動を予測できない状況の方が多い位でしょう。
理解が及ばないものに責任の持ちようなんてないし、状況によって使い分ける事はもとより、オンオフの切り替えすら判断出来ない、というわけです。そのようなものは、盲目的に信頼して使うか、リスクを嫌って使わないか、その2択しかあり得ません。そこに、上記のように不完全なものだから頼らず責任を持って利用しろ、と言ったところで何の意味もないし、事実上、無条件の自己責任の強制と、利用禁止勧告の意味を持つものと解釈せざるを得ないのです。要は監督官庁としての責任逃れのための予防線的宣言でしかない、というわけですね。
もっとも、勧告を出した当の官庁側の担当者からしておそらくは一般人と同程度、すなわち自動運転について具体的に理解出来ていないのでしょうから仕方ないのかもしれませんが、それすなわち理解のないままさも理解出来ているかのような立場を装って勧告を出したという事で、それはそれで無責任極まりない話だと思うのです。あのような言い方では、まるで責任を持って利用する事が可能なように伝わって、それを受けた人は、正しく使えばいいんだ、と根拠もなく認識し、その正しい使い方とは何か、実際には何も理解しないまま漫然と利用を続け、当然のように事故を起こすだろうし、不安を感じる人は使わなくもなるだろうしと、結果として混乱するだけでしょう。責任を持てないなら使うな、位の言い回しでないといけないと思うのです。今自動運転が下火になると困る自動車業界に配慮したんでしょうが、公共の安全の確保に責任を持つべき立場からの勧告としては、極めて不適切と言わざるを得ません。
しかしTeslaはどうするのか。今のところは責任はドライバーにある、の一点張りですけれども、あの機能の万能性や完全性を主張するばかりな売り方をしておいて今更そんな建前が通用するわけはないのです。誤動作の可能性とその条件等についてドライバーへの具体的で十分な注意があったとは到底言えず、またそもそもドライバーが十全に管理し、誤動作時の事故を防止し得るシステムになっていない事は明らかなのですから。システムが事象を認識出来ない以上警告もないのに、しかも高速運転中につき何が起こるにしても一瞬の間に、自動運転に制御を預けて大なり小なり注意レベルを下げているドライバーに何が出来るというのでしょう。システムの基本設計思想からして欠陥があるのです。
技術の進歩には犠牲がつきもの、というような事を言う向きもあるようですが、論外と言わざるを得ません。その技術を一刻も早く普及させなければ膨大な人命が失われる、といったような、犠牲に釣り合うだけの理由があり、かつその開発・普及にはそのような方法しか取り得ないというのであれば格別、現状は、製品が高く売れるからと、単に検証も保証もないまま未熟な技術をぶっつけ本番で投入し、その当然に発生する短慮の報いをユーザーが被ってしまっている、というだけに過ぎないのですから。ユーザーの安全確保を何よりも優先すべき自動車メーカーとして当然の慎重さがあれば起こり得なかった死であり、到底容認する事など出来よう筈もありません。しかしその種の詭弁は少なくはないというし、どれほど破綻した思想と短慮があれば、そんな事が言えるのかと、愕然とするとともに、極めて残念に思う次第なのです。今からこの調子では、自動運転自体の先行きも怪しいものと言わざるを得ません。本件は、自動運転技術、ひいては自動車産業にとって、長く消えない呪いになるのではないでしょうか。
[前記事 [biz] 米TeslaのModelSが自動運転による死亡事故]
現在実用化されている「自動運転」機能は、完全な自動運転ではありません!!
言うまでもなく、自動運転というのは、運転を自動で行う、すなわち運転作業自体を自動車に丸投げ出来る機能の事を指します。それに責任を持つというのはどういう事か。大雑把に言えば、誤動作をしないよう、常に注意・監視をし、兆候があればコンマ秒以下の瞬時に察知してマニュアルに切り替え、事故を回避する、という事になるでしょうか。そうだとすると、運転手は常に自分が運転しているものとして周囲の状況を把握し続け、瞬間的に操作を奪えるよう、手足をペダルやハンドルに掛けて状況毎に各々の動作の準備をしておかなければなりません。であれば、自動運転と通常のマニュアル運転の違いは、個々のハンドルやペダルの操作の際、ドライバーが身体を動かすか否か位の違いでしかなくなってしまいます。そこまでするなら、却って面倒になるだけだから、最初からマニュアルで運転しておくべきだと思うし、それを自動運転と呼ぶのは実質的に矛盾しているとも思うのです。
そもそもの話、一般論として利用者が機器とその機能の利用にあたって責任を持つには、対象の機能、殊にその状況毎の挙動の特性と限界について十分に正しくかつ具体的な理解をしている事が前提になるわけです。いつどんな状況で正常に動作して、どういう時にどう誤動作するのか、それを把握していなければ注意のしようもありません。しかし、ただでさえ画像処理や電波技術の集積であり、世間ではAIの一言でまとめてそれ以上理解しようとする事すら稀な技術について、そのような十分な理解をし得る運転手がどれだけいるというのでしょうか。あり得ません。それ以上に、日々改変も加えられている真っ最中でもあるのだし、おそらく開発者自身ですら、正確に挙動を予測できない状況の方が多い位でしょう。
理解が及ばないものに責任の持ちようなんてないし、状況によって使い分ける事はもとより、オンオフの切り替えすら判断出来ない、というわけです。そのようなものは、盲目的に信頼して使うか、リスクを嫌って使わないか、その2択しかあり得ません。そこに、上記のように不完全なものだから頼らず責任を持って利用しろ、と言ったところで何の意味もないし、事実上、無条件の自己責任の強制と、利用禁止勧告の意味を持つものと解釈せざるを得ないのです。要は監督官庁としての責任逃れのための予防線的宣言でしかない、というわけですね。
もっとも、勧告を出した当の官庁側の担当者からしておそらくは一般人と同程度、すなわち自動運転について具体的に理解出来ていないのでしょうから仕方ないのかもしれませんが、それすなわち理解のないままさも理解出来ているかのような立場を装って勧告を出したという事で、それはそれで無責任極まりない話だと思うのです。あのような言い方では、まるで責任を持って利用する事が可能なように伝わって、それを受けた人は、正しく使えばいいんだ、と根拠もなく認識し、その正しい使い方とは何か、実際には何も理解しないまま漫然と利用を続け、当然のように事故を起こすだろうし、不安を感じる人は使わなくもなるだろうしと、結果として混乱するだけでしょう。責任を持てないなら使うな、位の言い回しでないといけないと思うのです。今自動運転が下火になると困る自動車業界に配慮したんでしょうが、公共の安全の確保に責任を持つべき立場からの勧告としては、極めて不適切と言わざるを得ません。
しかしTeslaはどうするのか。今のところは責任はドライバーにある、の一点張りですけれども、あの機能の万能性や完全性を主張するばかりな売り方をしておいて今更そんな建前が通用するわけはないのです。誤動作の可能性とその条件等についてドライバーへの具体的で十分な注意があったとは到底言えず、またそもそもドライバーが十全に管理し、誤動作時の事故を防止し得るシステムになっていない事は明らかなのですから。システムが事象を認識出来ない以上警告もないのに、しかも高速運転中につき何が起こるにしても一瞬の間に、自動運転に制御を預けて大なり小なり注意レベルを下げているドライバーに何が出来るというのでしょう。システムの基本設計思想からして欠陥があるのです。
技術の進歩には犠牲がつきもの、というような事を言う向きもあるようですが、論外と言わざるを得ません。その技術を一刻も早く普及させなければ膨大な人命が失われる、といったような、犠牲に釣り合うだけの理由があり、かつその開発・普及にはそのような方法しか取り得ないというのであれば格別、現状は、製品が高く売れるからと、単に検証も保証もないまま未熟な技術をぶっつけ本番で投入し、その当然に発生する短慮の報いをユーザーが被ってしまっている、というだけに過ぎないのですから。ユーザーの安全確保を何よりも優先すべき自動車メーカーとして当然の慎重さがあれば起こり得なかった死であり、到底容認する事など出来よう筈もありません。しかしその種の詭弁は少なくはないというし、どれほど破綻した思想と短慮があれば、そんな事が言えるのかと、愕然とするとともに、極めて残念に思う次第なのです。今からこの調子では、自動運転自体の先行きも怪しいものと言わざるを得ません。本件は、自動運転技術、ひいては自動車産業にとって、長く消えない呪いになるのではないでしょうか。
[前記事 [biz] 米TeslaのModelSが自動運転による死亡事故]
7/01/2016
[biz] 米TeslaのModelSが自動運転による死亡事故
遅かれ早かれだとはわかっていましたが、起こってしまいました。
Floridaのハイウェイ上を自動モードで走行中、側道から入ってきたトレーラーを識別出来ず、そのまま減速せずに突っ込んで大破し、運転手は即死したそうです。
具体的な理由は色々あるんでしょうけど、限定的・理想的な環境条件の元でしか挙動を保証出来ず、開発時に十分に想定していない事象に対して誤認識もしくは認識不能を起こし、それによって人間ではあり得ないような挙動をしてしまう自動認識技術の脆弱性、それがオープンな環境において当然に露呈したものには違いないでしょう。必然の結果と評価する他ありません。
一応、建前として自動運転は補助機能につきその機能を使用した運転手の責任、という事にはなっているのですけれども、自動運転中、それも高速走行中に常に注意を払うというのは現実的に期待し得ないものであるわけで、実質的に見れば当然その責任はメーカーにある事に疑問の余地はないように思われるところです。
おそらく世界中で最も自動運転車の実適用に積極的な同社には、技術面で未熟にもかかわらずあまりに投入を焦りすぎていると危惧の声が上がっていたところですし、いい繕いようもないでしょう。ちょっと前には、自動駐車の逆的なガレージから自動で出てきてくれる"summon"機能が誤動作して、これまたトレーラーに勝手に突っ込んだという事故がありましたけれども、幸い無人だったので物損で済み、それほど深刻には騒がれませんでしたが、今回は死亡事故です。白っぽいから反応出来なかった、とかそんな言い訳が通る筈もありません。そんな製品を作ったエンジニアも、搭載を決定した経営陣も、自分たちが殺人に等しい罪を犯したのだと知るべきです。少なくとも、遺族はそう言って非難するでしょう。
おそらくは社会や当局からは自動運転機能は欠陥機能につき廃止せよとの声も上がるでしょう。そうでなくともユーザーは怖すぎて使えなくなってしまいますから、機能も価値も激減します。損害賠償の訴えにも発展するのではないでしょうか。何かにつけ自社の非は頑として認めない事で有名な同社が、この逃れようのない失態に対しどう対応するのか、流石に観念するのか、要注目なのです。
しかし他のメーカーも冷や汗ものでしょうね。自社じゃなかった事で安堵はしつつ、自社製品でも普通に起こりうるだろう事も分かるでしょうから。 これで自動運転自体が縮退する格好になるのか、もしそうなら、ここ数年で本機能の開発につぎ込まれた莫大な人的・物的投資が一転して大変な負債になってしまうわけですが、さて。
米テスラ、自動走行で初の死亡事故 相手車の色が原因か
[関連記事 [biz] Tesla Model Sが駐車後に炎上、ガレージ延焼]
[関連記事 [biz] Tesla Model Sがまたまた炎上、6週間で3度目]
[関連記事 [biz] 米TeslaのEV、Model Sがまた炎上爆発]
[関連記事 [biz] Tesla Model Sが衝突事故でバッテリー発火、大炎上]
Floridaのハイウェイ上を自動モードで走行中、側道から入ってきたトレーラーを識別出来ず、そのまま減速せずに突っ込んで大破し、運転手は即死したそうです。
具体的な理由は色々あるんでしょうけど、限定的・理想的な環境条件の元でしか挙動を保証出来ず、開発時に十分に想定していない事象に対して誤認識もしくは認識不能を起こし、それによって人間ではあり得ないような挙動をしてしまう自動認識技術の脆弱性、それがオープンな環境において当然に露呈したものには違いないでしょう。必然の結果と評価する他ありません。
一応、建前として自動運転は補助機能につきその機能を使用した運転手の責任、という事にはなっているのですけれども、自動運転中、それも高速走行中に常に注意を払うというのは現実的に期待し得ないものであるわけで、実質的に見れば当然その責任はメーカーにある事に疑問の余地はないように思われるところです。
おそらく世界中で最も自動運転車の実適用に積極的な同社には、技術面で未熟にもかかわらずあまりに投入を焦りすぎていると危惧の声が上がっていたところですし、いい繕いようもないでしょう。ちょっと前には、自動駐車の逆的なガレージから自動で出てきてくれる"summon"機能が誤動作して、これまたトレーラーに勝手に突っ込んだという事故がありましたけれども、幸い無人だったので物損で済み、それほど深刻には騒がれませんでしたが、今回は死亡事故です。白っぽいから反応出来なかった、とかそんな言い訳が通る筈もありません。そんな製品を作ったエンジニアも、搭載を決定した経営陣も、自分たちが殺人に等しい罪を犯したのだと知るべきです。少なくとも、遺族はそう言って非難するでしょう。
おそらくは社会や当局からは自動運転機能は欠陥機能につき廃止せよとの声も上がるでしょう。そうでなくともユーザーは怖すぎて使えなくなってしまいますから、機能も価値も激減します。損害賠償の訴えにも発展するのではないでしょうか。何かにつけ自社の非は頑として認めない事で有名な同社が、この逃れようのない失態に対しどう対応するのか、流石に観念するのか、要注目なのです。
しかし他のメーカーも冷や汗ものでしょうね。自社じゃなかった事で安堵はしつつ、自社製品でも普通に起こりうるだろう事も分かるでしょうから。 これで自動運転自体が縮退する格好になるのか、もしそうなら、ここ数年で本機能の開発につぎ込まれた莫大な人的・物的投資が一転して大変な負債になってしまうわけですが、さて。
米テスラ、自動走行で初の死亡事故 相手車の色が原因か
[関連記事 [biz] Tesla Model Sが駐車後に炎上、ガレージ延焼]
[関連記事 [biz] Tesla Model Sがまたまた炎上、6週間で3度目]
[関連記事 [biz] 米TeslaのEV、Model Sがまた炎上爆発]
[関連記事 [biz] Tesla Model Sが衝突事故でバッテリー発火、大炎上]
6/29/2016
[PC] win10強制アップグレードによる被害に初の損害賠償認容判決
とうとうと言うべきか、やっとというべきか。意図しないWindows10のアップグレードにより業務が停止された事により発生した損害を賠償すべき旨Microsoftに命じる判決が、米Seattleで出ました。Microsoftは控訴せず確定したそうです。
原告は現地で旅行業に携わるTeresa Lynn Goldstein氏。2015年8月に、自身が知らない内に業務用PCがWindows10にアップグレードされ、そのためにPCが機能しなくなり業務が停止させられた上、当該PCの買い替えも余儀なくされたとの事。主張によれば、それ以前にWindows10について全く知らず、アップグレードの適用の可否について問われた事も無かった、といいます。認容された賠償額は$10000、100万程度。日本ではまずないだろう額ではあり、殆ど争われなかったにしては高いようにも思われるものの、米国の大企業が初手から勝てないと白旗を挙げる程責任が明白な割には低い気もします。が、それはともかく。
周知の通り、勝手にアップグレードされて業務に支障を来したユーザは数知れず。世界中でありふれた話なのであります。私用でも利用出来なくなって諸々の損害を被った、という人もまたあまりに多すぎて一々取り上げる気にもなりません。よって潜在的に損害賠償を請求可能なユーザもそれだけ多数いるだろうと思われていたところに出た本件、その意味が小さいわけもありません。まあ当然の結果なので、驚くわけではないのですけれども。むしろ米にしては時間がかかったなと思う位でしょうか。
しかも今は、MSが設定した無償アップグレードの期限まで残りわずかとなり、追い込みとばかりにユーザの拒否を事実上不可能にするとも言われるアップグレード適用の同意画面の構成をより悪意を強める形に(元々明確な拒否の選択肢が無かった意思確認ウィンドウに加え、汎用の[閉じる]ボタン押下によりウィンドウを閉じた場合も承諾とみなす)変更した直後という事で、被害者の急増が懸念され、非難・不満の声が高まっていたところでした。
本件の被害発生がアップグレード開始直後と古いものである点からしても、それ以降の強制性の飛躍的な強化ぶりを鑑みれば、以降に同様の被害を被ったユーザが同様の訴訟を起こせば、同程度の責任は認定されるものと予想されるし、悪質性の高さから賠償額も高まる可能性が高いと言えるでしょう。となれば、企業単位の訴訟は当然あるだろうし、個人ユーザの集団訴訟も予想されます。米国内だけでも大変な規模になり得るわけです。MSにとっては普通に危機的状況ですね。
しかし、完全にMSの自業自得です。あれだけ山程の被害が報告され、広く厳しい非難もされていたというのに、それを改めるどころかより強化し続けて来たのは他ならぬMSなのですから、責任は完全にMSにあります。各所で指摘される通り、本件で賠償額や責任の有無を争わず素直に認めたのはその種の賠償請求の拡大を防ぐ意図があったのでしょう。またおそらくは本件を受け、ようやく意志確認ウィンドウに拒否の選択肢を追加する旨が発表されました。しかしいずれも今更な話と言わざるを得ません。悪意の下発生拡大された被害はもはや消えない、というか延々と繰り返された後だし、もとより撤回で済む時期は完全に過ぎてしまったのです。撤回が可能だったとすれば、まだ本件のような最初の被害の発生時期である2015年8月頃しかなかったでしょう。あの時に非難を無視して延々続けて来た結果なのですからもうどうにもなりません。
調査から周辺含む多数の個別の対応まで、散々手間を掛けさせられたユーザの一人としては、存分に報いを受けて頂きたいと心から願う次第なのです。私だってその分の労力の賠償を請求したい位なのですよ。だって私、Windows7やWindows8.1のPC複数について、アップデートの度に手動で一つずつ内容をチェックしてWindows10絡みのものを除外・非表示にしているのですが、当然ながら非常に面倒でありまして。これが必要な事ならまだしも、本来なら必要性のかけらもない手間とあっては、いやもう全く以って死ねMicrosoftと言う他ありません。
Microsoft pays woman $10,000 over forced Windows 10 upgrade
[過去記事 [note] Windows10の表示周りに不具合頻発]
[過去記事 [note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードはやはり地雷]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードの無効化]
原告は現地で旅行業に携わるTeresa Lynn Goldstein氏。2015年8月に、自身が知らない内に業務用PCがWindows10にアップグレードされ、そのためにPCが機能しなくなり業務が停止させられた上、当該PCの買い替えも余儀なくされたとの事。主張によれば、それ以前にWindows10について全く知らず、アップグレードの適用の可否について問われた事も無かった、といいます。認容された賠償額は$10000、100万程度。日本ではまずないだろう額ではあり、殆ど争われなかったにしては高いようにも思われるものの、米国の大企業が初手から勝てないと白旗を挙げる程責任が明白な割には低い気もします。が、それはともかく。
周知の通り、勝手にアップグレードされて業務に支障を来したユーザは数知れず。世界中でありふれた話なのであります。私用でも利用出来なくなって諸々の損害を被った、という人もまたあまりに多すぎて一々取り上げる気にもなりません。よって潜在的に損害賠償を請求可能なユーザもそれだけ多数いるだろうと思われていたところに出た本件、その意味が小さいわけもありません。まあ当然の結果なので、驚くわけではないのですけれども。むしろ米にしては時間がかかったなと思う位でしょうか。
しかも今は、MSが設定した無償アップグレードの期限まで残りわずかとなり、追い込みとばかりにユーザの拒否を事実上不可能にするとも言われるアップグレード適用の同意画面の構成をより悪意を強める形に(元々明確な拒否の選択肢が無かった意思確認ウィンドウに加え、汎用の[閉じる]ボタン押下によりウィンドウを閉じた場合も承諾とみなす)変更した直後という事で、被害者の急増が懸念され、非難・不満の声が高まっていたところでした。
本件の被害発生がアップグレード開始直後と古いものである点からしても、それ以降の強制性の飛躍的な強化ぶりを鑑みれば、以降に同様の被害を被ったユーザが同様の訴訟を起こせば、同程度の責任は認定されるものと予想されるし、悪質性の高さから賠償額も高まる可能性が高いと言えるでしょう。となれば、企業単位の訴訟は当然あるだろうし、個人ユーザの集団訴訟も予想されます。米国内だけでも大変な規模になり得るわけです。MSにとっては普通に危機的状況ですね。
しかし、完全にMSの自業自得です。あれだけ山程の被害が報告され、広く厳しい非難もされていたというのに、それを改めるどころかより強化し続けて来たのは他ならぬMSなのですから、責任は完全にMSにあります。各所で指摘される通り、本件で賠償額や責任の有無を争わず素直に認めたのはその種の賠償請求の拡大を防ぐ意図があったのでしょう。またおそらくは本件を受け、ようやく意志確認ウィンドウに拒否の選択肢を追加する旨が発表されました。しかしいずれも今更な話と言わざるを得ません。悪意の下発生拡大された被害はもはや消えない、というか延々と繰り返された後だし、もとより撤回で済む時期は完全に過ぎてしまったのです。撤回が可能だったとすれば、まだ本件のような最初の被害の発生時期である2015年8月頃しかなかったでしょう。あの時に非難を無視して延々続けて来た結果なのですからもうどうにもなりません。
調査から周辺含む多数の個別の対応まで、散々手間を掛けさせられたユーザの一人としては、存分に報いを受けて頂きたいと心から願う次第なのです。私だってその分の労力の賠償を請求したい位なのですよ。だって私、Windows7やWindows8.1のPC複数について、アップデートの度に手動で一つずつ内容をチェックしてWindows10絡みのものを除外・非表示にしているのですが、当然ながら非常に面倒でありまして。これが必要な事ならまだしも、本来なら必要性のかけらもない手間とあっては、いやもう全く以って死ねMicrosoftと言う他ありません。
Microsoft pays woman $10,000 over forced Windows 10 upgrade
[過去記事 [note] Windows10の表示周りに不具合頻発]
[過去記事 [note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードはやはり地雷]
[過去記事 [note] Windows10アップグレードの無効化]
6/25/2016
[pol] 無責任なEU首脳、醜態を晒す市民
そしてCameronは匙を投げました。あれだけ離脱によるデメリットばかり主張していたのだから当然と言うべきでしょうけれど、今後の話を一切せずに辞任だけ表明するとは、無責任な話です。今回の投票は経緯はどうあれ、自分が公約に基づいて実行したものである以上、引き継ぎなり離脱手続開始の宣言なりする義務は当然あるし、それ以外にも今回の決定で分裂した国内の対立の緩和やら、最低限の後始末をする義務もある筈なのですけれども。
その他EU首脳も、離脱ならEUは終わりだ、とか散々言っていた手前、EUが分裂するだろう見通しを事前に自ら認めてしまった形になるわけで、今後の対応、特にEUの維持を図るにあたり色々と苦しそうです。というか普通に致命的ですかね。結果がどうなろうとEUは問題ない、とか言って保険を掛けておけばよかったものを、後の祭りとはこの事です。そんな迂闊な対応をしてしまうような首脳陣を抱いた各国民はさぞ嘆いているか、それとももう諦めているか。いやはや。何が起ころうと問題ないようにあらかじめ対処しておくのが指導者の責任というものでしょうに、どいつもこいつも無責任甚だしいと言わざるを得ません。と言って、最終的にはそういう指導者を選んだ各国民に帰責される話ではあるのですけれども。
ところでUK内では、離脱派の政治家を取り囲んでリンチ紛いに非難を浴びせる残留派が多数いたそうで。その政治家が独裁的に決めた事でもなし、まして国民投票の結果に対し、自分の意見が通らなかったからと、そのような無法に及ぶとは。。。それだけ今回の決定がドラスティックなものだという事であって、破滅的な暴動に至らなかっただけまだマシとも言えるのかもしれませんが、それでも法治国家の市民としてあるまじき醜態には、目を覆わざるを得ないのです。
もっとも近い将来、日本でも改憲の是非が現実に問われる可能性は高いわけで、その際の状況によっては似たような事が国内でも起こりうるのかもしれません。そんな光景は見たくない、と思わずにはいられないのです。
ああでも、公に見えている所はまだマシなのかもしれませんね。本件に絡んで大変な利害が動きましたし、予想と真逆の結果になりましたから、その辺から色々と個人では背負いきれない責任も生じただろうわけで、文字通り首が飛んだ人がいても全く驚きもしません。金融関係なんて、死ぬほど罵声や脅迫が飛び交ったところも多々、というよりそうでなかった所の方が少なかっただろうし、その中には暴力に発展した事も少なくないでしょう。とはいえその辺の大体は自業自得と言うべきでしょうから、あまり同情する気にもならないのですけれども。
(追記)
ロンドンでは市の独立とEU加入を叫ぶ人がいるんだそうで呆れました。そもそも出来るわけがない、というのに加え、それを主張するという事は、当然スコットランドや北アイルランドの独立は認めるという事になるし、さらには英国全体、EU全体について都市単位での分裂権を要求しているのに等しいわけです。仮に実現したとしても、内陸につき外国となるその他英国を通らなければEUと行き来出来ない地域でEUに加盟して何の意味があるのでしょう。結局のところ人も物も航空を除いて外国を経由する事になるのだから、彼らが重視するところの人や物の流通はじめ経済面で見れば逆効果でしかないだろう事は明白なわけで、本末転倒も甚だしく、全く以ってアホかと言わざるを得ないわけです。そんな事言うならもうEUに移住した方がいいんじゃないでしょうか。おそらくは本人達も自分が何を言っているのかわかっていないのでしょうけれども、これが世界でも有数の知識階級であり上流階級とも言われるロンドンのリベラリストの姿かと思うと泣けます。そんな戯言がリアリズムと反骨心の塊のような労働者階級に受け入れられる筈もなし。そりゃ負ける筈だ、と逆に納得出来るところでもありますけれども。本当に酷いですね。
ただ、あのロンドン等で暴れている人達のどれだけが英国籍なのかはいささか疑問に思うところではありますけれども。数百万に上るという国民投票のやり直しを求める署名にしても、署名はオンラインにつき外国からでも出来てしまうし、詐称まみれになるに決まっています。要件は自己申告の氏名等だそうですが、在住者なら外国籍でも可というあたりからしてもうね。元より離脱で決定的に困るのは外国籍の人なのですから、彼らが殆どいないと考えるのには無理があろうというもの。むしろ大半がそうなんでしょう。外国人が国民のふりをして権利を主張するというのは国内でもよくある話なわけですが、その辺の事情はどこも同じという事でしょうか。だとしたら極めて無法かつ姑息な話であって、遺憾な限りです。そういう自己中心的な振る舞いこそが今回の離脱賛成多数の原因だろうと思うのですけれどもね。
英国の就労ビザは要件が厳しい事で有名です。個別の審査に合格出来るだけの要件を満たさない移民の方々にはご愁傷さまではありますが、外国籍である以上、大人しく諦めたほうがいいでしょう。法的にも外国人に主権はないのだし、何より移民の制限ないし排斥こそが今回の決定で示された国民の意志そのものなのですから。
[前記事 [pol] EUの終わり(多分)に]
[前々記事 [pol] 英国は独立を取り戻すか > 取戻します。さらばEU]
その他EU首脳も、離脱ならEUは終わりだ、とか散々言っていた手前、EUが分裂するだろう見通しを事前に自ら認めてしまった形になるわけで、今後の対応、特にEUの維持を図るにあたり色々と苦しそうです。というか普通に致命的ですかね。結果がどうなろうとEUは問題ない、とか言って保険を掛けておけばよかったものを、後の祭りとはこの事です。そんな迂闊な対応をしてしまうような首脳陣を抱いた各国民はさぞ嘆いているか、それとももう諦めているか。いやはや。何が起ころうと問題ないようにあらかじめ対処しておくのが指導者の責任というものでしょうに、どいつもこいつも無責任甚だしいと言わざるを得ません。と言って、最終的にはそういう指導者を選んだ各国民に帰責される話ではあるのですけれども。
ところでUK内では、離脱派の政治家を取り囲んでリンチ紛いに非難を浴びせる残留派が多数いたそうで。その政治家が独裁的に決めた事でもなし、まして国民投票の結果に対し、自分の意見が通らなかったからと、そのような無法に及ぶとは。。。それだけ今回の決定がドラスティックなものだという事であって、破滅的な暴動に至らなかっただけまだマシとも言えるのかもしれませんが、それでも法治国家の市民としてあるまじき醜態には、目を覆わざるを得ないのです。
もっとも近い将来、日本でも改憲の是非が現実に問われる可能性は高いわけで、その際の状況によっては似たような事が国内でも起こりうるのかもしれません。そんな光景は見たくない、と思わずにはいられないのです。
ああでも、公に見えている所はまだマシなのかもしれませんね。本件に絡んで大変な利害が動きましたし、予想と真逆の結果になりましたから、その辺から色々と個人では背負いきれない責任も生じただろうわけで、文字通り首が飛んだ人がいても全く驚きもしません。金融関係なんて、死ぬほど罵声や脅迫が飛び交ったところも多々、というよりそうでなかった所の方が少なかっただろうし、その中には暴力に発展した事も少なくないでしょう。とはいえその辺の大体は自業自得と言うべきでしょうから、あまり同情する気にもならないのですけれども。
(追記)
ロンドンでは市の独立とEU加入を叫ぶ人がいるんだそうで呆れました。そもそも出来るわけがない、というのに加え、それを主張するという事は、当然スコットランドや北アイルランドの独立は認めるという事になるし、さらには英国全体、EU全体について都市単位での分裂権を要求しているのに等しいわけです。仮に実現したとしても、内陸につき外国となるその他英国を通らなければEUと行き来出来ない地域でEUに加盟して何の意味があるのでしょう。結局のところ人も物も航空を除いて外国を経由する事になるのだから、彼らが重視するところの人や物の流通はじめ経済面で見れば逆効果でしかないだろう事は明白なわけで、本末転倒も甚だしく、全く以ってアホかと言わざるを得ないわけです。そんな事言うならもうEUに移住した方がいいんじゃないでしょうか。おそらくは本人達も自分が何を言っているのかわかっていないのでしょうけれども、これが世界でも有数の知識階級であり上流階級とも言われるロンドンのリベラリストの姿かと思うと泣けます。そんな戯言がリアリズムと反骨心の塊のような労働者階級に受け入れられる筈もなし。そりゃ負ける筈だ、と逆に納得出来るところでもありますけれども。本当に酷いですね。
ただ、あのロンドン等で暴れている人達のどれだけが英国籍なのかはいささか疑問に思うところではありますけれども。数百万に上るという国民投票のやり直しを求める署名にしても、署名はオンラインにつき外国からでも出来てしまうし、詐称まみれになるに決まっています。要件は自己申告の氏名等だそうですが、在住者なら外国籍でも可というあたりからしてもうね。元より離脱で決定的に困るのは外国籍の人なのですから、彼らが殆どいないと考えるのには無理があろうというもの。むしろ大半がそうなんでしょう。外国人が国民のふりをして権利を主張するというのは国内でもよくある話なわけですが、その辺の事情はどこも同じという事でしょうか。だとしたら極めて無法かつ姑息な話であって、遺憾な限りです。そういう自己中心的な振る舞いこそが今回の離脱賛成多数の原因だろうと思うのですけれどもね。
英国の就労ビザは要件が厳しい事で有名です。個別の審査に合格出来るだけの要件を満たさない移民の方々にはご愁傷さまではありますが、外国籍である以上、大人しく諦めたほうがいいでしょう。法的にも外国人に主権はないのだし、何より移民の制限ないし排斥こそが今回の決定で示された国民の意志そのものなのですから。
[前記事 [pol] EUの終わり(多分)に]
[前々記事 [pol] 英国は独立を取り戻すか > 取戻します。さらばEU]
6/24/2016
[pol] EUの終わり(多分)に
9割方開票が終わって2%程の差がある、という事で、英国のEU離脱が確実となりました。直前の予想とは真逆の結果になりましたから、素直に予想を信用していた向きは地獄の底に叩き落とされてしまったわけで、各市場とも大混乱です。今頃になって日本含め各国政府も右往左往。不謹慎ですが、第三者の立場からすればとても愉快な事になっていますね。まあそういう博打打ち界隈の話はそれぞれが勝手にすればいいと思います。
本件投票が予想と異なった結果になった事については、平日の投票につき残留賛成派の都市部のホワイトカラーの投票に障害があった事、大雨で投票を取りやめた人がおそらく多数出た事やら、色々と要因は考えられます。少なからぬ有権者の意思表示が妨げられた点はよくない事なのでしょうけれども、一方で逆に言えば、その程度で投票を取りやめるような、いわば不安定な意志は弱まり、逆にその程度の障害は意に介さない確固たる意志が相対的に強まった結果、より積極的な意志表示としてのEU離脱が選択されたとも言えるし、その意味では理解しやすくなった面はあるように思われるところです。もっとも、全数調査ではない以上、単に数%のズレは当然起こりうる調査方法だったというだけの事なのかもしれませんが。暗殺事件前への揺り戻しが直前で閾値を超えた可能性も考えられます。いずれにせよ、少なくとも、不当な結果とは言えないでしょう。
個別の地域で見ると、最も離脱反対の比率が高かった地域が、先だって独立を阻止され、UKに留まる事を余儀なくされたスコットランドだったいう事実は、中々に皮肉を感じずにはいられません。もっとも、UKとEUの分離を拒んだというよりは、単にスコットランドとしてEUに残りたいだけで、UKからは離れたい事には変わりないというのが本音なのでしょうけれども。北アイルランドも同じく離脱反対が多数ですが、おそらくはこれも同じでしょうね。従って両地域ともに独立した国家としてのEU再加入を目指す運動の再燃が当然に予想されるところです。
ともあれ、離脱は決定事項であり、既に問題はこれからの動向に移っています。EU離脱にあたり、英国はEUと具体的にどういう関係であろうとするのか。FTAのような協定を結ぶのか否か。そもそも一貫して明確な反対論者であり続けたCameronにそれを担う事が可能なのか。最悪、EU加盟前に戻せばいい話だし、どうとでもなると言えばそうなのでしょうけれども、前記の通り北アイルランドやスコットランドの問題もあるところ、あまり短慮に走らず、現実的な選択が着実に為される事を望みたいと思います。とは言っても所詮人の国の話、英国人の自由なのであって、部外者がとやかく言う話ではないのですけれども。
そして、EUは初の離脱、それも主要国の一角である英国がという事で、その存在意義や性質について否応なく決定的な変化を迫られる事になりました。従来からの加盟国の経済的な破綻続出、移民とテロによる社会の不安定化とそれに伴う分離主義の台頭に加え、要であるドイツの経済事情が思わしくない点もあって、その存続にも疑義を付けざるを得ない状況にあったEUですが、ここに英国の離脱による金融はじめ経済面の弱体化、軍事力の殆ど半減までもが重なれば、もはやその存続の基盤自体が危ういものと言わざるを得ないところです。
少なくとも、英国はこれから移民の制限を強める、というかおそらく完全に拒否するようになるだろうし、対してフランスは兎も角、ドイツが今更排斥に転じるわけにも行かず、各国で対応方針が異なる以上、人的な流れに歪な制約が強まるだろう事は間違いないでしょう。そして、英国がそれを為し得る以上、北欧はじめドイツ以外の各国も排斥を求めてドイツと対立を強めるだろう事も必至なわけです。一気に崩壊に進む可能性も否定出来ないでしょう。
果たしてこの流れを押しとどめる事は可能なのか。各国とも、国家の中の自治体ではなく、文字通りの固有の主権国家であって、独立して個々の利益を追求する事もむしろ当然の権利である以上、本来的に困難な事なのでしょう。そう思いつつ、しかしそうなった場合に、ギリシャはじめ破綻済の各国はどうなるのだろうか、と想像すると、幻想は所詮幻想、都合の悪い現実の前には無力なのだなと、諦観を抱かざるを得ないわけです。どうせやるなら国家自体を統合する方法を取るべきだったのでしょう。それをせず、上辺の形だけ整える手段に出た時点で、こうなる事は必然だったのかもしれません。残念な事です。
(追記)
Cameronはあっさり投げ出しました。いやあ無責任ですね。自分でやった話なのに、引き継ぎとか今後の手当とか一切なしとは。
[続き [pol] 無責任なEU首脳、醜態を晒す市民]
[関連記事 [pol] 英国は独立を取り戻すか]
本件投票が予想と異なった結果になった事については、平日の投票につき残留賛成派の都市部のホワイトカラーの投票に障害があった事、大雨で投票を取りやめた人がおそらく多数出た事やら、色々と要因は考えられます。少なからぬ有権者の意思表示が妨げられた点はよくない事なのでしょうけれども、一方で逆に言えば、その程度で投票を取りやめるような、いわば不安定な意志は弱まり、逆にその程度の障害は意に介さない確固たる意志が相対的に強まった結果、より積極的な意志表示としてのEU離脱が選択されたとも言えるし、その意味では理解しやすくなった面はあるように思われるところです。もっとも、全数調査ではない以上、単に数%のズレは当然起こりうる調査方法だったというだけの事なのかもしれませんが。暗殺事件前への揺り戻しが直前で閾値を超えた可能性も考えられます。いずれにせよ、少なくとも、不当な結果とは言えないでしょう。
個別の地域で見ると、最も離脱反対の比率が高かった地域が、先だって独立を阻止され、UKに留まる事を余儀なくされたスコットランドだったいう事実は、中々に皮肉を感じずにはいられません。もっとも、UKとEUの分離を拒んだというよりは、単にスコットランドとしてEUに残りたいだけで、UKからは離れたい事には変わりないというのが本音なのでしょうけれども。北アイルランドも同じく離脱反対が多数ですが、おそらくはこれも同じでしょうね。従って両地域ともに独立した国家としてのEU再加入を目指す運動の再燃が当然に予想されるところです。
ともあれ、離脱は決定事項であり、既に問題はこれからの動向に移っています。EU離脱にあたり、英国はEUと具体的にどういう関係であろうとするのか。FTAのような協定を結ぶのか否か。そもそも一貫して明確な反対論者であり続けたCameronにそれを担う事が可能なのか。最悪、EU加盟前に戻せばいい話だし、どうとでもなると言えばそうなのでしょうけれども、前記の通り北アイルランドやスコットランドの問題もあるところ、あまり短慮に走らず、現実的な選択が着実に為される事を望みたいと思います。とは言っても所詮人の国の話、英国人の自由なのであって、部外者がとやかく言う話ではないのですけれども。
そして、EUは初の離脱、それも主要国の一角である英国がという事で、その存在意義や性質について否応なく決定的な変化を迫られる事になりました。従来からの加盟国の経済的な破綻続出、移民とテロによる社会の不安定化とそれに伴う分離主義の台頭に加え、要であるドイツの経済事情が思わしくない点もあって、その存続にも疑義を付けざるを得ない状況にあったEUですが、ここに英国の離脱による金融はじめ経済面の弱体化、軍事力の殆ど半減までもが重なれば、もはやその存続の基盤自体が危ういものと言わざるを得ないところです。
少なくとも、英国はこれから移民の制限を強める、というかおそらく完全に拒否するようになるだろうし、対してフランスは兎も角、ドイツが今更排斥に転じるわけにも行かず、各国で対応方針が異なる以上、人的な流れに歪な制約が強まるだろう事は間違いないでしょう。そして、英国がそれを為し得る以上、北欧はじめドイツ以外の各国も排斥を求めてドイツと対立を強めるだろう事も必至なわけです。一気に崩壊に進む可能性も否定出来ないでしょう。
果たしてこの流れを押しとどめる事は可能なのか。各国とも、国家の中の自治体ではなく、文字通りの固有の主権国家であって、独立して個々の利益を追求する事もむしろ当然の権利である以上、本来的に困難な事なのでしょう。そう思いつつ、しかしそうなった場合に、ギリシャはじめ破綻済の各国はどうなるのだろうか、と想像すると、幻想は所詮幻想、都合の悪い現実の前には無力なのだなと、諦観を抱かざるを得ないわけです。どうせやるなら国家自体を統合する方法を取るべきだったのでしょう。それをせず、上辺の形だけ整える手段に出た時点で、こうなる事は必然だったのかもしれません。残念な事です。
(追記)
Cameronはあっさり投げ出しました。いやあ無責任ですね。自分でやった話なのに、引き継ぎとか今後の手当とか一切なしとは。
[続き [pol] 無責任なEU首脳、醜態を晒す市民]
[関連記事 [pol] 英国は独立を取り戻すか]
6/23/2016
[pol] 英国は独立を取り戻すか > 取戻します。さらばEU
英国のEU離脱の是非を決する国民投票、その期日がやってまいりました。現地の世論調査によれば、概ね賛否拮抗で結果の予測は困難な感じで、特に金融関係者を中心とした世界中の利害関係者が、そのポジションを右往左往させながら固唾を飲んで見守っているわけです。
本件の主要争点は、実質的には概ね移民と経済の2点。いずれも現実問題として極めて深刻なものであり、英国の地理的特性から、EU離脱とそれに伴う人的・経済的な出入りの管理規制の導入がそれらの問題への決定的な効果をもたらす対策となるだろう事が予想されています。往々にして現実的な見通しの薄弱さから単なる右翼的なイデオロギーの発露に留まり、成立しない事の方が圧倒的に多いこの種の分離・独立運動にあって、実体面での整合性も兼ね備えた珍しい例とも言えるでしょう。むしろ立場は逆転して、残留を主張するリベラル派の方が通常の右翼よろしく抽象論に終始しているように見えもするわけです。旗色が悪いのもむべなるかな。
そもそもEU自体がほとんど経済的な利益のみを当て込んで作られた中途半端な組織だけに、その経済面がリスクに転じた以上、解消すべきと判断する者が多数になるのも当然と言うべきところなのでしょう。そもそも経済的な面だけならば、EUの枠組みでなくとも、個別の協定でも同等の関係は構築可能なのですし、それ以外の国家的な権能の面で言えば制約、それも国民の付託を受けておらず、民主主義の観点からは間接的で根拠の弱いものでしかないのですし。
無論、制度の解消・移行には相応のコストが必要になりますから、問題はそれが見合うかどうかというところであって、その評価で揺れている結果が賛否拮抗した原状とも言えるでしょうか。
ただ、直近の反対増加は、件の暗殺事件の反動という面が少なからず見受けられるわけですけれども、国家の根幹を定める意思決定が、そういう本来の問題とは関係ない要素に左右されるというのには、他人事ながらいささか残念に思わずにはいられないのです。結果がどうなるにせよ、個々の有権者が、自分が何を望むのか、そのために国家はどうあるべきなのか、明確に認識した上で、一時の衝動に流されず、個人としての確固たる意思の下に為されるべきものな筈なのですから。
(追記)
結果は離脱。さようならEU、と言うにはまだ早いでしょうか。
[続き記事 [pol] EUの終わり(多分)に]
[過去記事 [pol] Scotland独立運動への部外者の反応が一様に酷すぎる]
[過去記事 [pol] ギリシャの社会保障削減拒否、瓦解する欧州の夢]
[過去記事 [pol] 泥沼と無謀、暗鬱たるテロ社会は一夜にして成らず]
本件の主要争点は、実質的には概ね移民と経済の2点。いずれも現実問題として極めて深刻なものであり、英国の地理的特性から、EU離脱とそれに伴う人的・経済的な出入りの管理規制の導入がそれらの問題への決定的な効果をもたらす対策となるだろう事が予想されています。往々にして現実的な見通しの薄弱さから単なる右翼的なイデオロギーの発露に留まり、成立しない事の方が圧倒的に多いこの種の分離・独立運動にあって、実体面での整合性も兼ね備えた珍しい例とも言えるでしょう。むしろ立場は逆転して、残留を主張するリベラル派の方が通常の右翼よろしく抽象論に終始しているように見えもするわけです。旗色が悪いのもむべなるかな。
そもそもEU自体がほとんど経済的な利益のみを当て込んで作られた中途半端な組織だけに、その経済面がリスクに転じた以上、解消すべきと判断する者が多数になるのも当然と言うべきところなのでしょう。そもそも経済的な面だけならば、EUの枠組みでなくとも、個別の協定でも同等の関係は構築可能なのですし、それ以外の国家的な権能の面で言えば制約、それも国民の付託を受けておらず、民主主義の観点からは間接的で根拠の弱いものでしかないのですし。
無論、制度の解消・移行には相応のコストが必要になりますから、問題はそれが見合うかどうかというところであって、その評価で揺れている結果が賛否拮抗した原状とも言えるでしょうか。
ただ、直近の反対増加は、件の暗殺事件の反動という面が少なからず見受けられるわけですけれども、国家の根幹を定める意思決定が、そういう本来の問題とは関係ない要素に左右されるというのには、他人事ながらいささか残念に思わずにはいられないのです。結果がどうなるにせよ、個々の有権者が、自分が何を望むのか、そのために国家はどうあるべきなのか、明確に認識した上で、一時の衝動に流されず、個人としての確固たる意思の下に為されるべきものな筈なのですから。
(追記)
結果は離脱。さようならEU、と言うにはまだ早いでしょうか。
[続き記事 [pol] EUの終わり(多分)に]
[過去記事 [pol] Scotland独立運動への部外者の反応が一様に酷すぎる]
[過去記事 [pol] ギリシャの社会保障削減拒否、瓦解する欧州の夢]
[過去記事 [pol] 泥沼と無謀、暗鬱たるテロ社会は一夜にして成らず]
6/12/2016
[pol] 舛添知事の汚職追求を不毛にする法と社会の齟齬について
舛添都知事の汚職の件ですけれども。表面的な部分もあるにせよ、ここまで四面楚歌というのも今時珍しい、とある意味感心してしまうのです。
個々の行為は正直言って真面目に議論するのも馬鹿馬鹿しいようなしょうもない話ばかりです。それへの知事のおよそ真実味の欠片も感じさせない釈明もどきを含め、いずれも論外である事は間違いないけれども、議員は無論一般職員も似たような行為は程度の差こそあれ日常茶飯事と言っていいだろうところ、そんな事まで一々議会はじめ社会全体で大々的に取り上げてたらキリがないし、本来的にかかずらわっていられないようなものなわけです。
単発であればそれなりに非難を受けた後で謝罪なり返金なりで始末がつき得る筈の行為が、当人が認めたものだけでも少なくとも数十件以上も積み重なり、それが結合してマクロ的に一つの看過し難い重大な汚職犯として認識されてしまった結果ということなのでしょうか。そうであれば、個別の行為は、法的にはともかく、個々の市民の認識はじめ社会的な意味ではもうどうでもいいのであって、その是非や個別の釈明等は既におよそ意味を成さないものになったのかもしれません。
ならば、本件にありうべき始末も、個々の行為への処理を重ねるのではなく、全体に対する総括的なものになる他はないだろうと思われるわけです。すなわち、個々の行為は致命的ではない以上それが数多くあっても許され得る、として失職を回避するか、個々の行為は致命的ではないものの、その頻度と常習性から到底許されないものとして排除されるか、その2択になるでしょう。
法的には、前者の可能性も当然にある筈です。刑法的には、複数の罪が集合した場合の評価はその中で最も重い罪を基準として、それに何割か加重される程度のものですから、致命的でない罪がいくら多数集まろうともその評価はさほど飛躍的に変わるわけではありません。民事的には賠償額は累積的に増えますが、それでも賠償さえすればそれで始末が付くものには違いないわけです。従って、法的には失職を回避する道もあり得ると解釈すべきところなのでしょう。けれども、現実的にはその立場からの擁護はほぼなく、後者すなわち排除を求める意見ばかりになっています。本件はそこに齟齬があると言えるでしょう。そしてその齟齬が、本件を殊更面倒なものにしているように思われるのです。
社会的な評価は致命的、しかし法的には致命的とは言い切れず、非難がどれほど加えられようとも、具体的な個々の行為に基づいて法的に辞任・退任を強制する事は困難、というわけです。この状態がそのまま現在の議会等での非難や追求、それに対する知事の対応について感じられる不毛さの原因なのではないでしょうか。
そうであれば、個別の行為に対する非難や追求は、意味がないわけではないものの、一定以上については実質的に意味があるとは言えないのでしょう。従って本件の始末を付けるには、個々の行為の追求以外の手段による他はないだろう以上、知事の立場そのもの、すなわち委任者たる市民の不信任による他はないのではないでしょうか。
無論リコールには相応のコストが必要になるところ、議会が不信任決議で引導を渡せば省略出来る話だし、可能ならそれが望ましいんでしょうけれども、今の所議会はそういう話には消極的な感じのようです。参院選直前で色々と面倒という事情があっても、法的に実行可能になり次第、とか時期を定めて予告する位は普通に出来る筈なんですけどね。何故それをしないのか、と考えると、やはり自民・公明ら与党系はこの期に及んで知事への支持を捨てられない、という事なんでしょうか。元々担いだ側ですから仕方ないんでしょうけれども、担いだ責任と手のひらを返す責任と、どちらも負いたくないという思惑の結果が今回の対応だとすれば、いささか姑息に過ぎると言わざるを得ないわけです。せめて自分たちで進んで始末を付けるのが最低限の責任と言うものでしょうに。
というわけで、さっさとリコールの準備なり、議会の不信任なりするべきだと思うのです。あの知事の、それが理解されると本気で思っているのかと耳を疑わざるを得ない、人を小馬鹿にしたような妄言とか、もういい加減みんな聞き飽きたでしょうしね。
個々の行為は正直言って真面目に議論するのも馬鹿馬鹿しいようなしょうもない話ばかりです。それへの知事のおよそ真実味の欠片も感じさせない釈明もどきを含め、いずれも論外である事は間違いないけれども、議員は無論一般職員も似たような行為は程度の差こそあれ日常茶飯事と言っていいだろうところ、そんな事まで一々議会はじめ社会全体で大々的に取り上げてたらキリがないし、本来的にかかずらわっていられないようなものなわけです。
単発であればそれなりに非難を受けた後で謝罪なり返金なりで始末がつき得る筈の行為が、当人が認めたものだけでも少なくとも数十件以上も積み重なり、それが結合してマクロ的に一つの看過し難い重大な汚職犯として認識されてしまった結果ということなのでしょうか。そうであれば、個別の行為は、法的にはともかく、個々の市民の認識はじめ社会的な意味ではもうどうでもいいのであって、その是非や個別の釈明等は既におよそ意味を成さないものになったのかもしれません。
ならば、本件にありうべき始末も、個々の行為への処理を重ねるのではなく、全体に対する総括的なものになる他はないだろうと思われるわけです。すなわち、個々の行為は致命的ではない以上それが数多くあっても許され得る、として失職を回避するか、個々の行為は致命的ではないものの、その頻度と常習性から到底許されないものとして排除されるか、その2択になるでしょう。
法的には、前者の可能性も当然にある筈です。刑法的には、複数の罪が集合した場合の評価はその中で最も重い罪を基準として、それに何割か加重される程度のものですから、致命的でない罪がいくら多数集まろうともその評価はさほど飛躍的に変わるわけではありません。民事的には賠償額は累積的に増えますが、それでも賠償さえすればそれで始末が付くものには違いないわけです。従って、法的には失職を回避する道もあり得ると解釈すべきところなのでしょう。けれども、現実的にはその立場からの擁護はほぼなく、後者すなわち排除を求める意見ばかりになっています。本件はそこに齟齬があると言えるでしょう。そしてその齟齬が、本件を殊更面倒なものにしているように思われるのです。
社会的な評価は致命的、しかし法的には致命的とは言い切れず、非難がどれほど加えられようとも、具体的な個々の行為に基づいて法的に辞任・退任を強制する事は困難、というわけです。この状態がそのまま現在の議会等での非難や追求、それに対する知事の対応について感じられる不毛さの原因なのではないでしょうか。
そうであれば、個別の行為に対する非難や追求は、意味がないわけではないものの、一定以上については実質的に意味があるとは言えないのでしょう。従って本件の始末を付けるには、個々の行為の追求以外の手段による他はないだろう以上、知事の立場そのもの、すなわち委任者たる市民の不信任による他はないのではないでしょうか。
無論リコールには相応のコストが必要になるところ、議会が不信任決議で引導を渡せば省略出来る話だし、可能ならそれが望ましいんでしょうけれども、今の所議会はそういう話には消極的な感じのようです。参院選直前で色々と面倒という事情があっても、法的に実行可能になり次第、とか時期を定めて予告する位は普通に出来る筈なんですけどね。何故それをしないのか、と考えると、やはり自民・公明ら与党系はこの期に及んで知事への支持を捨てられない、という事なんでしょうか。元々担いだ側ですから仕方ないんでしょうけれども、担いだ責任と手のひらを返す責任と、どちらも負いたくないという思惑の結果が今回の対応だとすれば、いささか姑息に過ぎると言わざるを得ないわけです。せめて自分たちで進んで始末を付けるのが最低限の責任と言うものでしょうに。
というわけで、さっさとリコールの準備なり、議会の不信任なりするべきだと思うのです。あの知事の、それが理解されると本気で思っているのかと耳を疑わざるを得ない、人を小馬鹿にしたような妄言とか、もういい加減みんな聞き飽きたでしょうしね。
5/18/2016
[biz law] 計測の体を成していない方法を適切と強弁するスズキに戦慄
スズキの燃費偽装の件ですが。先頃行われた鈴木会長等の釈明会見で判明した驚愕の事実の数々には唖然とさせられてしまいました。
一番驚いたのは、問題の抵抗値の計測について、そもそも計測になっていない、でっち上げと言ってもいいような測り方をして、しかもその方法を恥ずかしげもなく、さも適切であるかのように強弁していた点です。テストコースが風が強くて計測が難しかっただとか、5%の誤差だから問題ないだとか、ホントにプロのメーカーなの?と疑わざるを得ないあまりの非常識ぶりに戦慄しました。
本来言うまでもない話の筈ですが、環境条件の厳密な管理設定は計測の大前提であり、基本中の基本です。逆に言えば、そこに僅かにでも綻びがあれば、それは計測とは言えず、せいぜい目安値程度のものに過ぎない無意味な作業でしかありません。外部的な変動要因を十分無視し得る程度まで排除し、変動を排除不能な内部要因のみに限定した上で、その内部的変動誤差を統計的に十分な精度が得られるまでサンプルを集めて除去し、それでようやく初めて計測値と呼べるのです。しかるに、無風状態を前提にしているのに海岸沿いで風があって計測が困難だったとか、何を言っているのかと。サンプルの計測すら出来ていないという事なわけです。話になりません。
そんな杜撰と言うのも馬鹿馬鹿しいような方法で取ってきた数値を恥ずかしげもなく持ちだした挙句、誤差5%以内だから問題ないだとか、寝言は死んでから言えというのです。自分が何を言っているのか理解していないとしか思えません。
それに、5%の誤差が適切という物言い自体があり得ません。本来計測というのは、まず許容可能な誤差範囲を設定し、その設定した条件を満たすよう計測方法及びサンプル数を設計して行うものです。しかるに鈴木会長の言に従えば、スズキは高々5%の精度しか期待できないような方法かつサンプル数しか用いておらず、かつそれで十分と考えている、という事になるわけです。自動車販売事業における5%のズレ、それがマイナスに振れた場合に引き起こす損失の大きさを誰よりもよく知っている筈の当人の口から、そんな言葉を聞く事になろうとは。。。開発部門が%単位で目標未達、しかもちゃんと計測すればもう少し高いかも知れないが誤差5%だから分からない、なんて報告を上げてきたとして、じゃあそれで、と了承して、あまつさえそのまま市場に投入してしまうメーカーが何処にあるというのでしょう。5%どころか、1%だって許容出来ないでしょうに。
手間を惜しんだ、というのは間違いないでしょう。環境条件の設定と、サンプル数の確保は共にとてもリソースのかかる大変な作業であって、出来れば省略したくなるだろう事は理解出来ます。しかしそもそも簡略化にすらなっていないでっち上げ同然の数値で適切と言い張る姿には、手間を惜しんだという理由では到底説明が付けられない決定的な齟齬があるように見えます。率直に言って、そんな理由ではなく、計測値のでっち上げを取り繕うために無理やりそういうストーリーを作り上げたんだろうな、と考える方が余程自然に思えるわけです。何となくそれらしい説明だけど実はほとんど作り話、というのは大企業の外向けの説明でよくある話ですね。特に理由が後付という辺りが。客観的には虚偽に他ならないわけですが、一般に追求を受ける事もなく横行する業界・社内にあって、当人達にとって既に罪の意識すらなく、むしろ当然のものとなってしまっているのでしょう。
ともあれ。見るからに破綻した説明で、呆れ返った人が沢山出ただろう会見だったわけですけれども。それだけスズキが自動車販売業と日本の法を舐めているという事なのか、それとも本当に理解しておらず、それで問題ないと思っているのか。おそらくは前者なんでしょうけど、いずれにせよ論外と言う他ありません。そんな話を聞かされて、誰が納得など出来るでしょう。
素直に非を認めれば、そのまま生産・販売共にほとんど不可能になって、従って国内事業が三菱自同様終わってしまうのですから、どれほど見苦しかろうとも保身に走ろうとするのも分からないではないですが、それにしても今回の破綻した物言いと、そこで曝け出されたスズキのメーカーとしての最低限のモラルも感じさせない終わりっぷりには、心の底から失望しました。 残念です。他も似たりよったりなんでしょうか。
[前記事 [biz law] スズキも不正発覚で疑惑が全国内自動車メーカーに波及]
一番驚いたのは、問題の抵抗値の計測について、そもそも計測になっていない、でっち上げと言ってもいいような測り方をして、しかもその方法を恥ずかしげもなく、さも適切であるかのように強弁していた点です。テストコースが風が強くて計測が難しかっただとか、5%の誤差だから問題ないだとか、ホントにプロのメーカーなの?と疑わざるを得ないあまりの非常識ぶりに戦慄しました。
本来言うまでもない話の筈ですが、環境条件の厳密な管理設定は計測の大前提であり、基本中の基本です。逆に言えば、そこに僅かにでも綻びがあれば、それは計測とは言えず、せいぜい目安値程度のものに過ぎない無意味な作業でしかありません。外部的な変動要因を十分無視し得る程度まで排除し、変動を排除不能な内部要因のみに限定した上で、その内部的変動誤差を統計的に十分な精度が得られるまでサンプルを集めて除去し、それでようやく初めて計測値と呼べるのです。しかるに、無風状態を前提にしているのに海岸沿いで風があって計測が困難だったとか、何を言っているのかと。サンプルの計測すら出来ていないという事なわけです。話になりません。
そんな杜撰と言うのも馬鹿馬鹿しいような方法で取ってきた数値を恥ずかしげもなく持ちだした挙句、誤差5%以内だから問題ないだとか、寝言は死んでから言えというのです。自分が何を言っているのか理解していないとしか思えません。
それに、5%の誤差が適切という物言い自体があり得ません。本来計測というのは、まず許容可能な誤差範囲を設定し、その設定した条件を満たすよう計測方法及びサンプル数を設計して行うものです。しかるに鈴木会長の言に従えば、スズキは高々5%の精度しか期待できないような方法かつサンプル数しか用いておらず、かつそれで十分と考えている、という事になるわけです。自動車販売事業における5%のズレ、それがマイナスに振れた場合に引き起こす損失の大きさを誰よりもよく知っている筈の当人の口から、そんな言葉を聞く事になろうとは。。。開発部門が%単位で目標未達、しかもちゃんと計測すればもう少し高いかも知れないが誤差5%だから分からない、なんて報告を上げてきたとして、じゃあそれで、と了承して、あまつさえそのまま市場に投入してしまうメーカーが何処にあるというのでしょう。5%どころか、1%だって許容出来ないでしょうに。
手間を惜しんだ、というのは間違いないでしょう。環境条件の設定と、サンプル数の確保は共にとてもリソースのかかる大変な作業であって、出来れば省略したくなるだろう事は理解出来ます。しかしそもそも簡略化にすらなっていないでっち上げ同然の数値で適切と言い張る姿には、手間を惜しんだという理由では到底説明が付けられない決定的な齟齬があるように見えます。率直に言って、そんな理由ではなく、計測値のでっち上げを取り繕うために無理やりそういうストーリーを作り上げたんだろうな、と考える方が余程自然に思えるわけです。何となくそれらしい説明だけど実はほとんど作り話、というのは大企業の外向けの説明でよくある話ですね。特に理由が後付という辺りが。客観的には虚偽に他ならないわけですが、一般に追求を受ける事もなく横行する業界・社内にあって、当人達にとって既に罪の意識すらなく、むしろ当然のものとなってしまっているのでしょう。
ともあれ。見るからに破綻した説明で、呆れ返った人が沢山出ただろう会見だったわけですけれども。それだけスズキが自動車販売業と日本の法を舐めているという事なのか、それとも本当に理解しておらず、それで問題ないと思っているのか。おそらくは前者なんでしょうけど、いずれにせよ論外と言う他ありません。そんな話を聞かされて、誰が納得など出来るでしょう。
素直に非を認めれば、そのまま生産・販売共にほとんど不可能になって、従って国内事業が三菱自同様終わってしまうのですから、どれほど見苦しかろうとも保身に走ろうとするのも分からないではないですが、それにしても今回の破綻した物言いと、そこで曝け出されたスズキのメーカーとしての最低限のモラルも感じさせない終わりっぷりには、心の底から失望しました。 残念です。他も似たりよったりなんでしょうか。
[前記事 [biz law] スズキも不正発覚で疑惑が全国内自動車メーカーに波及]
[biz law] スズキも不正発覚で疑惑が全国内自動車メーカーに波及
スズキよ、お前もか。
燃費偽装の件、詳細は不明ながら、軽自動車2強の一角であり、カタログ上の燃費性能ではここ数年業界をリードし続けて来た筈のスズキも手を染めていた事が発覚したそうで。いやまあぶっちゃけ疑わなかった向きの方が少なかろうとは思うものの、それでもバレた時のヤバさ加減からして流石に言い逃れ出来る程度には自制しているものと思われていただろうところにこれ。また大変な事になったものです。
正確には計測方法の不正で、おそらくは三菱と同様、数字上良好な抵抗値が出やすく簡便な方法によっていたものと推測されているところ、実質的な不正の程度は明らかではありません。が、その程度の多少は問題ではないわけです。元より他社にも同様の嫌疑はかかっていたところ、本件発覚によりその疑惑は確固たるものとなり、既に疑惑は業界全体に及ぶものになってしまった、その事自体が決定的であり、あるいは致命的と言うべきでしょう。
当局から各社に対し、当然これから積極的かつ強制的に監査等がなされる事は必至です。現在メーカーに任せられている各種のパラメータの測定も第三者機関の検証を受ける事になるでしょう。あるいは検証に留まらず、検査の全てが行政法人の管轄に改められるかもしれません。無論不正がなければ何の問題もないわけですけれども、国内の開発現場において、諸々の対外的な数字への化粧等と称する誤魔化しが横行している事は周知の通り、何も出てこない筈もないのです。従ってその不正の内容と悪質性が問題になるところ、仮に本件のような致命的なレベルの不正が蔓延していたというのなら、連鎖的に主要メーカーが販売停止・多額の損害賠償を強いられる事も必至。結果、国内の自動車産業が壊滅する事態すらあり得るように思われるところです。
国外でも、米国は無論、韓国では日産に排ガス規制絡みで具体的な嫌疑がかかってるそうですし、むしろ国内で済めばまだマシな位と言えるでしょうか。無論最大手のトヨタ(ダイハツ含)の実態もこれから明かされる事になるんでしょうけれども、さてどんなものなんでしょうか。
といって、紛うこと無き詐欺、それも国を相手取ってのものでもある前代未聞の規模なのだし、長年のツケを払う羽目になっただけの話、例え存亡の危機に晒されようと、それも仕方ないというよりむしろ当然の話なのだろうと言わざるを得ません。最低限不正で得た利益は返還されなくてはならないし、損害は償われなければならないし、今後の再発は絶対に許されず、まして不正車の販売継続は論外、それだけの事です。結果的に言えば、本件発覚の引き金は直近の軽自動車需要増に対する競争だった、と言えるでしょうけれども、つまり目先の需要に目が眩んで客を騙した結果身を滅ぼした構図になるわけで。いやほんと馬鹿ですね。救えません。
逆に無事なところがあれば、一気に天下を取る事も可能と言えるでしょうけれども、さてそんな所はあるのでしょうか。日産なんて、余裕こいて救済してる場合じゃなくなったかもしれないんですしね。
スズキ 燃費データ測定 国の方法と異なる形で
そして鈴木会長の会見で明かされた驚愕の実態。そんな出鱈目だったのかと。
[続き [biz law] 計測の体を成していない方法を適切と強弁するスズキに戦慄]
[関連記事 [biz] 日産はどうして三菱自の救済に動いたのだろうか]
[関連記事 [biz law] 25年不正を隠蔽し果せた戦慄すべき三菱自の組織力と、混沌とする先行きについて]
[関連記事 [biz law] 三菱自、主力車種ほぼ全滅]
[関連記事 [biz law] 懲りない三菱自動車、主力軽自動車の燃費改竄詐欺]
燃費偽装の件、詳細は不明ながら、軽自動車2強の一角であり、カタログ上の燃費性能ではここ数年業界をリードし続けて来た筈のスズキも手を染めていた事が発覚したそうで。いやまあぶっちゃけ疑わなかった向きの方が少なかろうとは思うものの、それでもバレた時のヤバさ加減からして流石に言い逃れ出来る程度には自制しているものと思われていただろうところにこれ。また大変な事になったものです。
正確には計測方法の不正で、おそらくは三菱と同様、数字上良好な抵抗値が出やすく簡便な方法によっていたものと推測されているところ、実質的な不正の程度は明らかではありません。が、その程度の多少は問題ではないわけです。元より他社にも同様の嫌疑はかかっていたところ、本件発覚によりその疑惑は確固たるものとなり、既に疑惑は業界全体に及ぶものになってしまった、その事自体が決定的であり、あるいは致命的と言うべきでしょう。
当局から各社に対し、当然これから積極的かつ強制的に監査等がなされる事は必至です。現在メーカーに任せられている各種のパラメータの測定も第三者機関の検証を受ける事になるでしょう。あるいは検証に留まらず、検査の全てが行政法人の管轄に改められるかもしれません。無論不正がなければ何の問題もないわけですけれども、国内の開発現場において、諸々の対外的な数字への化粧等と称する誤魔化しが横行している事は周知の通り、何も出てこない筈もないのです。従ってその不正の内容と悪質性が問題になるところ、仮に本件のような致命的なレベルの不正が蔓延していたというのなら、連鎖的に主要メーカーが販売停止・多額の損害賠償を強いられる事も必至。結果、国内の自動車産業が壊滅する事態すらあり得るように思われるところです。
国外でも、米国は無論、韓国では日産に排ガス規制絡みで具体的な嫌疑がかかってるそうですし、むしろ国内で済めばまだマシな位と言えるでしょうか。無論最大手のトヨタ(ダイハツ含)の実態もこれから明かされる事になるんでしょうけれども、さてどんなものなんでしょうか。
といって、紛うこと無き詐欺、それも国を相手取ってのものでもある前代未聞の規模なのだし、長年のツケを払う羽目になっただけの話、例え存亡の危機に晒されようと、それも仕方ないというよりむしろ当然の話なのだろうと言わざるを得ません。最低限不正で得た利益は返還されなくてはならないし、損害は償われなければならないし、今後の再発は絶対に許されず、まして不正車の販売継続は論外、それだけの事です。結果的に言えば、本件発覚の引き金は直近の軽自動車需要増に対する競争だった、と言えるでしょうけれども、つまり目先の需要に目が眩んで客を騙した結果身を滅ぼした構図になるわけで。いやほんと馬鹿ですね。救えません。
逆に無事なところがあれば、一気に天下を取る事も可能と言えるでしょうけれども、さてそんな所はあるのでしょうか。日産なんて、余裕こいて救済してる場合じゃなくなったかもしれないんですしね。
スズキ 燃費データ測定 国の方法と異なる形で
そして鈴木会長の会見で明かされた驚愕の実態。そんな出鱈目だったのかと。
[続き [biz law] 計測の体を成していない方法を適切と強弁するスズキに戦慄]
[関連記事 [biz] 日産はどうして三菱自の救済に動いたのだろうか]
[関連記事 [biz law] 25年不正を隠蔽し果せた戦慄すべき三菱自の組織力と、混沌とする先行きについて]
[関連記事 [biz law] 三菱自、主力車種ほぼ全滅]
[関連記事 [biz law] 懲りない三菱自動車、主力軽自動車の燃費改竄詐欺]
5/12/2016
[biz] 日産はどうして三菱自の救済に動いたのだろうか
日産が瀕死というか既に死に体の三菱自に出資するんだそうで。
正直行ってどう捉えていいのやら、困惑しております。いや、当面の資金調達が出来なければ即死する三菱自側にとっては願ってもない話なんでしょうけれども、日産が何を考えてしたのか、合理的な説明を付けるのが難しいように思うのです。
というのも、周知の通り三菱自の製品は性能の虚偽発覚によりほぼ全滅しています。特に素の製品の競争力が決定的に競合他社に劣っているのが問題で、仮に法的な問題を解決したとしてもそもそも売り物にならない事も目に見えています。製品として成立させるためには技術面で少なくとも競合他社と競り合う位までキャッチアップしなければ話にならず、その極めて高い技術開発の難度と、その種の技術開発に必要となる標準的な時間の長さを考慮すれば、まずもって5年程度は販売再開は見込めないだろう状況にあるわけです。無論、多額の投資も必要になるでしょう。その間、利益を得ないまま、ずっと資金供給を続けるつもりなのか、そんな判断があり得るのか、と強く疑問を抱かざるを得ません。
加えて、日産と三菱自は、SUV等の軽自動車以外のカテゴリでは従来から強く競合する関係にありました。 日産が属するルノーグループ内では既にプラットフォームも統合済みであり、今更三菱自の独自規格の割って入る余地など無い筈です。従って、軽自動車事業以外は当然リストラする必要があるだろうわけですけれども、それを視野に入れているにしては、3割強という出資割合は明らかに少なすぎます。法的には重要事項への拒否権を持つに過ぎず、その種のドラスティックな措置を強制出来るわけではないのですから。
本当に当面の救済が主目的であって、駄目で元々位で自前の軽自動車部門へと成長する可能性にベットしただけであり、当面は膨らむ事が避けられない損失の本体の財務への悪影響を抑えるために過半数は取らなかった、という事なんでしょうか。だとしたら、その成算云々以前に、今回の件による直接の損失の見積もりすら覚束ないこの段階で、2000億もの資金を捨て金同然に供給する事を即決出来る、というのは極めて大胆な話だと思います。そんな怖い事よくやるな、と戦慄を覚えずにはいられません。少なくとも、国内事業を見れば日産にそんな余裕は無い筈ですから、自然中国はじめ他所で稼いだ分を突っ込んだ形になるわけですけれども、そんな決定が通る社内事情というのも、そんなんで大丈夫なのかと、他人事ながら不安を覚える次第です。
もっとも逆に言えば、日産も国内事業が思わしくないが故に、今軽自動車事業を失うわけにはいかず、こんなリスクしかない案件に突っ込まざるを得ない程に切羽詰っているという事なのかもしれませんが。だとしても、技術面の周回遅れというのは多少資金を突っ込んだところでどうにかなる類の話ではないのだし、まして信用が完全に失われた所から回復を目指すというのでは、既に現実性が無いと言っても過言ではない状況であって、逆に損失を広げるだけに終わる可能性の方が遙かに高いのではないかと思うわけです。しかし、そんな事位日産の経営陣に分からない筈もまたなかろうに何故、とそこで再び首を捻らざるを得ないのです。
色々考えてはみるものの、やはり理解に苦しみます。しかし何にせよ、ユーザーにとっては補償・賠償の担保が得られたという事で、社会的には歓迎すべき事ではあるのでしょう。三菱自は表向き歓迎しつつ、心情的には三菱グループから見捨てられた悲しみに昏れているかもしれませんが、まあそれは自業自得だし、むしろまだ存続の目が残されただけ幸運と思って然るべきところでしょうか。しかしどうなるんでしょうねこれから。
[関連記事 [biz law] 25年不正を隠蔽し果せた戦慄すべき三菱自の組織力と、混沌とする先行きについて]
[関連記事 [biz law] 三菱自、主力車種ほぼ全滅]
[関連記事 [biz law] 懲りない三菱自動車、主力軽自動車の燃費改竄詐欺]
正直行ってどう捉えていいのやら、困惑しております。いや、当面の資金調達が出来なければ即死する三菱自側にとっては願ってもない話なんでしょうけれども、日産が何を考えてしたのか、合理的な説明を付けるのが難しいように思うのです。
というのも、周知の通り三菱自の製品は性能の虚偽発覚によりほぼ全滅しています。特に素の製品の競争力が決定的に競合他社に劣っているのが問題で、仮に法的な問題を解決したとしてもそもそも売り物にならない事も目に見えています。製品として成立させるためには技術面で少なくとも競合他社と競り合う位までキャッチアップしなければ話にならず、その極めて高い技術開発の難度と、その種の技術開発に必要となる標準的な時間の長さを考慮すれば、まずもって5年程度は販売再開は見込めないだろう状況にあるわけです。無論、多額の投資も必要になるでしょう。その間、利益を得ないまま、ずっと資金供給を続けるつもりなのか、そんな判断があり得るのか、と強く疑問を抱かざるを得ません。
加えて、日産と三菱自は、SUV等の軽自動車以外のカテゴリでは従来から強く競合する関係にありました。 日産が属するルノーグループ内では既にプラットフォームも統合済みであり、今更三菱自の独自規格の割って入る余地など無い筈です。従って、軽自動車事業以外は当然リストラする必要があるだろうわけですけれども、それを視野に入れているにしては、3割強という出資割合は明らかに少なすぎます。法的には重要事項への拒否権を持つに過ぎず、その種のドラスティックな措置を強制出来るわけではないのですから。
本当に当面の救済が主目的であって、駄目で元々位で自前の軽自動車部門へと成長する可能性にベットしただけであり、当面は膨らむ事が避けられない損失の本体の財務への悪影響を抑えるために過半数は取らなかった、という事なんでしょうか。だとしたら、その成算云々以前に、今回の件による直接の損失の見積もりすら覚束ないこの段階で、2000億もの資金を捨て金同然に供給する事を即決出来る、というのは極めて大胆な話だと思います。そんな怖い事よくやるな、と戦慄を覚えずにはいられません。少なくとも、国内事業を見れば日産にそんな余裕は無い筈ですから、自然中国はじめ他所で稼いだ分を突っ込んだ形になるわけですけれども、そんな決定が通る社内事情というのも、そんなんで大丈夫なのかと、他人事ながら不安を覚える次第です。
もっとも逆に言えば、日産も国内事業が思わしくないが故に、今軽自動車事業を失うわけにはいかず、こんなリスクしかない案件に突っ込まざるを得ない程に切羽詰っているという事なのかもしれませんが。だとしても、技術面の周回遅れというのは多少資金を突っ込んだところでどうにかなる類の話ではないのだし、まして信用が完全に失われた所から回復を目指すというのでは、既に現実性が無いと言っても過言ではない状況であって、逆に損失を広げるだけに終わる可能性の方が遙かに高いのではないかと思うわけです。しかし、そんな事位日産の経営陣に分からない筈もまたなかろうに何故、とそこで再び首を捻らざるを得ないのです。
色々考えてはみるものの、やはり理解に苦しみます。しかし何にせよ、ユーザーにとっては補償・賠償の担保が得られたという事で、社会的には歓迎すべき事ではあるのでしょう。三菱自は表向き歓迎しつつ、心情的には三菱グループから見捨てられた悲しみに昏れているかもしれませんが、まあそれは自業自得だし、むしろまだ存続の目が残されただけ幸運と思って然るべきところでしょうか。しかしどうなるんでしょうねこれから。
[関連記事 [biz law] 25年不正を隠蔽し果せた戦慄すべき三菱自の組織力と、混沌とする先行きについて]
[関連記事 [biz law] 三菱自、主力車種ほぼ全滅]
[関連記事 [biz law] 懲りない三菱自動車、主力軽自動車の燃費改竄詐欺]
5/11/2016
[law] Panama papersが晒す形式的合法性の詭弁とその破綻
このところ世界中を悪い意味で賑わせている、Tax Havenの大手法律事務所Mossack Fonsecaから流出した利用企業・個人等のリスト、通称パナマ文書ですけれども、ICIJにより公開されたデータベースファイル一式をダウンロードして眺めてみました。
ダウンロードした圧縮ファイル(offshoreleaks_data-csv.zip or data-csv.zip)を解凍すると、下記の通り4つのデータファイルと、その要素間の関係情報のファイルの合計5つのcsvファイルが入っています。
・Addresses.csv : 住所一覧
・Entities.csv : 法人一覧
・Intermediaries.csv : 仲介者一覧
・Officers.csv : 役員一覧
・all_edges.csv : 上記各情報間の関係情報
どれもテキストファイルなので、取扱はとても簡単です。個々のデータも余計な情報は皆無の極めてシンプルなものです。ただ、レコード数が半端ないので一々眺めるのも大変。それでも、ICIJのHPで提供されている検索用インタフェースから一つずつ検索するよりは、テキストファイル中を行きつ戻りつ追跡する方がまだやりやすいとは言えるでしょうか。
国内でほとんど一人だけ個人名が取り沙汰されている楽天の三木谷浩史氏を例に取ると、まずOfficers.csvに下記のような形式でレコードが入っています。
Hiroshi Mikitani,FF94FFD781684756215F927DDB8610C3,The Panama Papers data is current through 2015,SGP,Singapore,12128826,Panama Papers
なお各要素は名前,ICIJの管理番号,有効期限,国ID,国名,ノードID,ソース名となっています。
ここからは住所がシンガポールという事位しかわかりませんが、その他の情報はノードIDから追跡可能になっています。all_edges.csvで12128826を検索すると、
12128826,officer_of,10068469
12128826,registered_address,14053224
という2件のレコードが見つかります。 これから、役員を務めている会社と住所のIDがそれぞれ10068469と14053224であるとわかります。で、それぞれEntities.csvとAddresses.csvとから検索すれば、法人と住所の情報が分かるわけです。住所の詳細は流石に個人情報でもあるのでここには載せませんが、法人は下記の通り、香港に本店を持つTradenet investments ltd.という金融系の企業である事がわかります。なお管轄は英領バージン諸島ですね。
TRADENET INVESTMENTS LTD.,TRADENET INVESTMENTS LTD.,,BVI,British Virgin Islands,,FINANCIAL & CORPORATE SERVICES LTD. SUITES 1904-6; 19/F.; DOMINION CENTRE; 4\
3-59 QUEEN'S ROAD EAST; WANCHAI; HONG KONG WANCHAI HONG KONG,515718,10-NOV-1995,12-JUN-2013,30-APR-2014,,Changed agent,Mossack Fonseca,165794,HKG,Hong Kong,,\
The Panama Papers data is current through 2015,10068469,Panama Papers
国籍は日本なのに住所がシンガポールで会社は香港、という辺り、如何にもと思わざるを得ませんが、その辺の疑惑の真偽、程度は兎も角、どれもこれもそんな感じで中々に香ばしい雰囲気が漂っている事だけは間違いありません。
実際、周知の通り、殆どの法人が現地に営業の実体のない、いわゆるペーパーカンパニーである事はほぼ疑いようのないところでしょう。であれば広く世間から疑いの目を向けられるのも当然の結果と言えるし、或いは各国当局の捜査対象になり、実際に資産・利益隠しや資金洗浄等の違法行為が確認されれば犯罪として摘発されてしまうだろうケースは少なくないものと考えられます。当事者たる役員や法人が揃って戦々恐々とするのもむべなるかな。
名前の載っていた国内大手各社は、判を押したように適法に処理している、とのコメントを出しています。無論形式上は適法な形にはしているのでしょうけれども、しかし今後の捜査で問われるのは形式面ではなく実態面であり、建前上は適法に見えても各法人の営業・活動の実体が伴っていなければアウトになるのです。実体を認められるためには、最低限HQの機能を有する事務所を継続的に保有し、代表権ある役員の常駐も必要だろうところ、まあそんなわけないよね、と誰もが思う時点でもはや建前は通用しないのであって、そこに具体的な実態の説明を伴わず、適法と主張をしてもそれは無意味なわけです。
各国間の法制の齟齬による損失の回避、すなわち二重課税の防止だったり、単なる脱税や資金洗浄とは異なるフェアな事由による場合も多々あるんでしょうけれども、それは企業や個人の側の都合でしかなく、現地での実体を伴わない以上、各国の法に照らせばまず正当な事由とは言えないだろうわけで。一部で、資本誘致の為にはある程度許容すべきものとして正当化ないし擁護を図る論説もあるようですが、それは詭弁と言う他ないように思います。
勿論、当局としてもそこまで捜査するには相当な労力が必要ですから普通ならわざわざ突っ込んだりはしません。というかやりたくても出来ません。が、本件では具体的な、既に整理もされた証拠が提供された事によってそのコストは大幅に縮小しました。むしろ、社会的に広く疑惑が共有されもした以上、もはや何らの捜査もしないというわけにはいかないでしょう。摘発すれば膨大な税収を回収し得る可能性がある事、また今後の税収増も見込めるという事情もありますから、労力を使いながらも当局が突っ込んで行く可能性は低くないと見て良いのではないでしょうか。といって、政府側に後ろ暗い人達が沢山いたりすると、逆に隠蔽に走る可能性は高くなってしまうのですけれども、さて。逆に、中国よろしくもみ消しに走るか否かによって、各国がどの程度汚染されているのかを測る事も可能でしょうから、それはそれで興味深いだろう実態を明るみに出して把握すると共に、可能ならば是正を図る良い機会とも言えるかもしれません。
ともあれ、実際に捜査がなされるとすれば、果たして、そこで明らかになる租税回避の実態はどのようなものなのか。想像の通り、大国の国家予算に迫るようなセンセーショナルなものなのか、実はそこまででもなかったりするのか。いずれにせよ、今後の捜査の行方には、非常に大きな興味をもって注目せざるを得ないのです。どう転んでも、租税回避地の法人絡みの会計処理に規制が強まる事は確実でしょうけれども。
How to download this database
ダウンロードした圧縮ファイル(offshoreleaks_data-csv.zip or data-csv.zip)を解凍すると、下記の通り4つのデータファイルと、その要素間の関係情報のファイルの合計5つのcsvファイルが入っています。
・Addresses.csv : 住所一覧
・Entities.csv : 法人一覧
・Intermediaries.csv : 仲介者一覧
・Officers.csv : 役員一覧
・all_edges.csv : 上記各情報間の関係情報
どれもテキストファイルなので、取扱はとても簡単です。個々のデータも余計な情報は皆無の極めてシンプルなものです。ただ、レコード数が半端ないので一々眺めるのも大変。それでも、ICIJのHPで提供されている検索用インタフェースから一つずつ検索するよりは、テキストファイル中を行きつ戻りつ追跡する方がまだやりやすいとは言えるでしょうか。
国内でほとんど一人だけ個人名が取り沙汰されている楽天の三木谷浩史氏を例に取ると、まずOfficers.csvに下記のような形式でレコードが入っています。
Hiroshi Mikitani,FF94FFD781684756215F927DDB8610C3,The Panama Papers data is current through 2015,SGP,Singapore,12128826,Panama Papers
なお各要素は名前,ICIJの管理番号,有効期限,国ID,国名,ノードID,ソース名となっています。
ここからは住所がシンガポールという事位しかわかりませんが、その他の情報はノードIDから追跡可能になっています。all_edges.csvで12128826を検索すると、
12128826,officer_of,10068469
12128826,registered_address,14053224
という2件のレコードが見つかります。 これから、役員を務めている会社と住所のIDがそれぞれ10068469と14053224であるとわかります。で、それぞれEntities.csvとAddresses.csvとから検索すれば、法人と住所の情報が分かるわけです。住所の詳細は流石に個人情報でもあるのでここには載せませんが、法人は下記の通り、香港に本店を持つTradenet investments ltd.という金融系の企業である事がわかります。なお管轄は英領バージン諸島ですね。
TRADENET INVESTMENTS LTD.,TRADENET INVESTMENTS LTD.,,BVI,British Virgin Islands,,FINANCIAL & CORPORATE SERVICES LTD. SUITES 1904-6; 19/F.; DOMINION CENTRE; 4\
3-59 QUEEN'S ROAD EAST; WANCHAI; HONG KONG WANCHAI HONG KONG,515718,10-NOV-1995,12-JUN-2013,30-APR-2014,,Changed agent,Mossack Fonseca,165794,HKG,Hong Kong,,\
The Panama Papers data is current through 2015,10068469,Panama Papers
国籍は日本なのに住所がシンガポールで会社は香港、という辺り、如何にもと思わざるを得ませんが、その辺の疑惑の真偽、程度は兎も角、どれもこれもそんな感じで中々に香ばしい雰囲気が漂っている事だけは間違いありません。
実際、周知の通り、殆どの法人が現地に営業の実体のない、いわゆるペーパーカンパニーである事はほぼ疑いようのないところでしょう。であれば広く世間から疑いの目を向けられるのも当然の結果と言えるし、或いは各国当局の捜査対象になり、実際に資産・利益隠しや資金洗浄等の違法行為が確認されれば犯罪として摘発されてしまうだろうケースは少なくないものと考えられます。当事者たる役員や法人が揃って戦々恐々とするのもむべなるかな。
名前の載っていた国内大手各社は、判を押したように適法に処理している、とのコメントを出しています。無論形式上は適法な形にはしているのでしょうけれども、しかし今後の捜査で問われるのは形式面ではなく実態面であり、建前上は適法に見えても各法人の営業・活動の実体が伴っていなければアウトになるのです。実体を認められるためには、最低限HQの機能を有する事務所を継続的に保有し、代表権ある役員の常駐も必要だろうところ、まあそんなわけないよね、と誰もが思う時点でもはや建前は通用しないのであって、そこに具体的な実態の説明を伴わず、適法と主張をしてもそれは無意味なわけです。
各国間の法制の齟齬による損失の回避、すなわち二重課税の防止だったり、単なる脱税や資金洗浄とは異なるフェアな事由による場合も多々あるんでしょうけれども、それは企業や個人の側の都合でしかなく、現地での実体を伴わない以上、各国の法に照らせばまず正当な事由とは言えないだろうわけで。一部で、資本誘致の為にはある程度許容すべきものとして正当化ないし擁護を図る論説もあるようですが、それは詭弁と言う他ないように思います。
勿論、当局としてもそこまで捜査するには相当な労力が必要ですから普通ならわざわざ突っ込んだりはしません。というかやりたくても出来ません。が、本件では具体的な、既に整理もされた証拠が提供された事によってそのコストは大幅に縮小しました。むしろ、社会的に広く疑惑が共有されもした以上、もはや何らの捜査もしないというわけにはいかないでしょう。摘発すれば膨大な税収を回収し得る可能性がある事、また今後の税収増も見込めるという事情もありますから、労力を使いながらも当局が突っ込んで行く可能性は低くないと見て良いのではないでしょうか。といって、政府側に後ろ暗い人達が沢山いたりすると、逆に隠蔽に走る可能性は高くなってしまうのですけれども、さて。逆に、中国よろしくもみ消しに走るか否かによって、各国がどの程度汚染されているのかを測る事も可能でしょうから、それはそれで興味深いだろう実態を明るみに出して把握すると共に、可能ならば是正を図る良い機会とも言えるかもしれません。
ともあれ、実際に捜査がなされるとすれば、果たして、そこで明らかになる租税回避の実態はどのようなものなのか。想像の通り、大国の国家予算に迫るようなセンセーショナルなものなのか、実はそこまででもなかったりするのか。いずれにせよ、今後の捜査の行方には、非常に大きな興味をもって注目せざるを得ないのです。どう転んでも、租税回避地の法人絡みの会計処理に規制が強まる事は確実でしょうけれども。
How to download this database
Subscribe to:
Posts (Atom)