4/27/2016

[biz law] 25年不正を隠蔽し果せた戦慄すべき三菱自の組織力と、混沌とする先行きについて

三菱自動車の燃費等不正の件、流石に戦慄が走りました。

次々と明るみに出る不正行為の数々、その規模も凄いしそれぞれの態様も驚くべきものですが、特に恐ろしいのはその不正を行っていたとされる期間の長さです。その開始は1991年、およそ25年も前から、というのを見た時には目を疑いました。え、本当に?と。

このあまりに長い期間の中には、件のリコール隠しの時期も当然に含んでいるわけですから、あの犯行が露見した後、二度と欺かないと誓いつつ謝罪し、再生を謳って販売回復に奔走する裏で実際にはユーザは無論、当局をも含めおよそ自社以外の全てを欺く詐欺が続けられていた事になるわけです。あれだけの全方位的な非難に晒され、調査や取材等が殺到し、組織の内実を明らかにすべく多くの外部の目が注がれ続け、当局の捜索も受けておきながら、本件のような大規模な不正の情報を漏らさず、最終的に日産から追求を受けるまで隠しおおせたという事実、そこに透けて見える組織の自己防衛の不自然なまでの完璧さには、空恐ろしいものを感じずにはいられません。

本件は開発目標の達成に直結する部分での不正なのだから、開発の最初から最後まで、進捗のあらゆる段階で確認が行われるべきものである以上、少なくとも開発部門と検証部門が関わらなかったわけはないし、少なくない人数が直接間接に関与しただろう点に疑いを入れる余地はないように思われるところです。そして、それらの部門で、20年以上もの間、人の入れ替わりがなかった、などという事もまたあり得ません。普通に出入りはあったでしょうし、組織の再編も頻繁に行われた筈だし、無論退社・転社した者も相当にいる筈ですから、通常ならその過程で情報が漏れそうなものです。しかし、そのおよそ全てが本件を秘匿し続けた事になるわけで。そんな事が現実に可能であるとは、それが事実として突き付けられた今でさえ信じがたく思われてなりません。そこは日本を代表する企業の筆頭たる三菱、その並外れた組織力と忠誠心のなせる業という事なのでしょうか。だとしても、こんな形でそれを実感する事になろうとは露ほども思いませんでした。最悪です。

しかしこれで三菱自動車がこれからどうなるのか、さらに見通せなくなりました。本件不正が20年以上前から続いていたという事は、事実上現存するほぼ全ての三菱自動車製の車両について賠償等の責任が発生するという事でもあるわけです。法的には半分以上が時効になっている、とは言っても、過失ではなく完全な悪意による犯行である点からすれば、法律を盾にしたところで顧客に対しては無意味、最低限補償なくして被害者たるユーザが戻る筈もなく、さもなくば今後の事業継続がより困難になるだろうわけで。結局のところ補償しなければ立ち行かない話のように思われるわけです。

本件への補償を特に困難なものにしているのは、不正が燃費に関する詐欺であり、すなわち取得時点のみならず、日々の運行につき継続的に損害が発生する性質のものであるために、当然に膨大になるその被害の範囲です。一例を挙げると、一時的に借りて使用したに過ぎない利用者も燃料費について損害を被っている以上、補償すべき対象に含まれるわけです。額の多寡は兎も角として。

取得時の不当に高価な評価額による損失についても、現在のオーナーがその補償すべき対象に含まれる事は当然として、価格の評価に燃費がどの程度影響したかは個別の事例毎に異なるでしょうから、その評価にも困難が生じます。さらに、当然譲渡がくり返されたケースは多々あるでしょうし、所有者の追跡すら困難な事も少なくないでしょう。

要するに、誰にどういう形で賠償するのか、すればいいのか、補償の相手を判別する事すら極めて困難になっているわけです。理論的には、全ての所有者と利用者について、個別にその取得・利用の態様と保有・利用の期間や頻度等に応じて個別に算定された相当の補償がなされるべきところですが、言うまでもなく現実的には困難もしくは不可能な場合も少なくないでしょう。それでも個別の訴えがあれば裁判所はそのように対処するでしょうけれども、何しろ数が多すぎるわけで、その全てを訴訟により処理する事は司法システムの容量的に不可能ですから、大半は当事者間の和解により解決を期す事になるでしょうが、それも何処まで可能かは見通せません。

しかも、仮にその膨大な補償の実行が可能だとしても、今後の三菱自の事業継続の可否はまた別の話なのであって。とりわけリコール隠し以降の主たる販売経路だった日産が、今後もOEM取引を継続する可能性は無きに等しい以上、売上の大部分が消える事に変わりはないし、同時にユーザの大半が決定的に離反してしまう事実は致命的としか言いようがありません。法的にも致命的な障害を抱え、そもそも製品の生産・販売を行う事自体が困難です。率直に言って事業が成立しません。状況を客観的に見れば、継続は困難というより不能と言い切って良いところでしょう。

おそらく今後三菱自がとり得る選択肢は2通り。一つは三菱グループの支援を受けて抜本的な再生を目指す道。三菱グループにはそれだけの力はある筈です。ただ、直近でグループの主要3社、特に商事が資源安から巨額損失を出し、重工も船舶・航空で不手際から少なくない損失を出している状態ですから、あまり楽観は出来ないだろうところです。銀行は余力十分ですが、問題の性質からして銀行主導で立て直しが可能なものか疑義がつくところでしょう。

この点、再建の前提として、三菱自が競合他社と同等の製品開発を可能な所まで開発レベルを引き上げななければ話にならないわけですが、そもそもそれが可能なら元々こんな状況にはなっていなかった筈で、その達成に必要な資本や時間を云々する以前に、その可能性というか、実現方法の見通しすら立っていないのです。三菱自の事業状況は、本件発覚によるマイナスがなくとも、製品開発の段階で競合に決定的に敗北しており、元々の生産規模の小ささも相俟って、本来的に退場を余儀なくされるだろうケースにあたります。その立て直しには、多額の人的物的なリソース・資本の追加投入が当然に必要なわけです。当面の資金さえあればどうにかなる性質のものではあり得ませんし、まして組織の隠蔽体質の改善云々は製品競争力の回復には関係ありません。そこに本件。信用がマイナスに振り切れているというのも、本来ならそれだけで致命的な話な筈ですし、常識的にはもう資産を切り売りして清算する以外の選択肢は無いように見えるところですが、それでも三菱は見捨てず、その資本力で立て直そうとするのでしょうか。一部にはそういったグループ幹部の意向も伝えられていますが、いささか正気を疑わざるを得ないところです。さて。

もう一つの選択肢は、既に触れたように、大人しく独立での事業継続を諦め、身売りもしくは資産切り売りのち会社自身は清算し、自主営業を廃する方向へ進む道です。こちらは残る大きな問題は補償だけで、再建とは比べるべくもなく現実性は遥かに上です。ただ、関連会社を含め、多数の失業者が出るのが社会的には問題になるでしょう。とはいえ、人不足の折ですから、より好みをしなければ大半はどうにでもなるでしょうか。まあ、そこで三菱のプライドが邪魔するかもしれませんが。。。三菱重工あたりに転籍するケースもありそうですが、全員が出来る筈もなし、却って不公平感が強まりそうです。あと、工場を処分するにあたっては、軽自動車が日本国内特化規格である事から、プラットフォームの共通化が普及している他社には獲得しづらい案件であろう点は問題になるでしょうか。日産等が開発部隊の一部と一緒に取得して軽専用の開発ラインを立ち上げるという案もないではないでしょうけれども、やはり軽が国内限定である事と、それによる売上規模の小ささがネックになって揉めるでしょう。だからこそこれまでOEMで調達してきたのですしね。

いやもう、無茶苦茶過ぎて整理しようにもキリも付かず、逆にどうなるのか興味も尽きない本件ですが、とりあえずはそんな感じで、引き続きウォッチさせて頂こうと思うのです。ここまで来ると、追加で何が出てきてもおかしくないですしね。ともあれ、因果応報になるのならそれでよし、というか相応に報いがないと流石に社会的にまずいんでしょうけど。

----その後追記

さほど日を置かず行き先が決まったようです。三菱グループからは見捨てられ、あえなく日産傘下に。このような腐りきった会社を取り込もうとする日産の思惑には色々と疑問を覚えずにはいられませんが、このまま三菱自は消える運びになったという事でしょうか。

[続き記事 [biz] 日産はどうして三菱自の救済に動いたのだろうか]

[前記事 [biz law] 三菱自、主力車種ほぼ全滅]
[前々記事 [biz law] 懲りない三菱自動車、主力軽自動車の燃費改竄詐欺]

4/25/2016

[pol] 批判票を集めても届かない、野党の虚しい現実

前職死去に伴う衆議院北海道5区の補選が終わりました。本選挙はこのところの政治を巡る諸々の変化を反映するものとして注目されていましたが、期待通りというか、やはりその結果は中々に興味深いものであったようです。

前提として、前職が大物議員だった事もあり、当然ながら地域の地盤面ではその後継者として擁立された与党候補が圧倒的に有利でした。ただ新人ではあるので、コア層以外の支持は得られておらず、とりわけ無党派層の動向に現状のマクロな情勢を反映する余地があり、その結果は現状の、特に夏の参院選についての指標になるものと言われていたわけです。

その変動に影響する要因としては、政策面では

 ・安保法施行、及び政権の改憲(9条廃止)推進姿勢の鮮明化
 ・TPP(特に北海道につき)の推進と大臣更迭に伴う頓挫
 ・経済指標の悪化及びマイナス金利等金融政策、
   またそれに伴う運用難からの年金等社会保障の破綻懸念
 ・消費税増税

等、主に経済面の政策とその結果への賛否等の評価が挙げられ、政府・政党自体については、

 ・甘利前大臣を筆頭とした政府・与党側の不祥事とその自己弁護
 ・山尾衆院議員ら野党側の不祥事とその自己弁護
 ・民主党と維新の合併・共産党の選挙協力による批判受け皿の一本化

等、主たるものだけでも色々とあって、与党候補・野党候補への支持・不支持が差し引きどのようになるかは極めて読みづらい状態だったわけです。強いて言えば、金融政策への批判の程度が一番の争点であっただろうとは言えるでしょうか。

結果から言えば、僅差での与党側候補の勝利に終わりました。報道によれば、各党の支持層はほぼ崩れる事はなく、注目の無党派層は野党候補への支持が大勢を占めたようです。投票率は低くはなく、60%弱。この結果をどう解釈すべきか。

無党派層での与党への支持が明らかに少数だった点からすれば、政策等への批判は相当にあるものと言えるでしょうし、野党の選挙協力による受け皿一本化の効果も有意にあったものと見て良さそうです。ただ、そもそもここ数年で拡大していた与党と野党の支持基盤の規模の差を埋める程ではなかった、とそのように解釈し得るでしょう。

そのような傾向が他の地域にも通じると仮定すれば、都市圏等の流動性の高い地域では、野党候補が逆転する可能性は以前より高まっていると推測出来るだろうし、逆に流動性の低い地域では批判票は増えても及ばず、結局のところ与党側が勝利する傾向が強くなるものと予想されます。今回の北海道が農業セクターが強く、従ってTPP絡みで批判が強い地域であったにも関わらず与党側が勝利した点を重視すれば、流動的な部分での逆転の可能性は高まったとは言っても、平均的にはまださらに弱いと考えるべきかもしれません。総合すれば、以前ほど圧倒的ではないものの、全体的には与党側が優勢と考えるのが妥当なところでしょうか。

一言で言えば、批判は相当に強いけれども、野党は基本的な支持地盤自体が貧弱で過半の支持には大半の地域で届かない、と言えそうです。その要因は、無論民主党の政権時代の致命的な失敗が大元の原因だろう事は明らかです。また直近では、完全に黒と見做されている中、誰もが反感を覚えるだろう詭弁と強弁を弄し続ける山尾衆院議員を処分せず、それどころか今回の選挙戦も含め看板として晒し続けた事も相当に影響したでしょう。あれでは支持の獲得など期待しようもないところです。

言うまでもなく本番は次の参院選ですが、既に固定されたと言っていいだろう野党への不信・嫌悪はもはや回復不能と言うべき程であって、おそらく参院選までに野党側に打てる、この状況を改善し得る手立ては殆どないでしょう。ただ、批判票を集められるよう、障害を除いておく位がせいぜいです。といっても元々それが基本な筈なのですが、それが出来ていないからこその現状なわけです。少なくとも、山尾氏のような例を抱えている内は変わりようがないでしょう。せめてその辺位は処理して臨むのか、それともこのまま、そこそこ批判の受け皿になるに留まり玉砕するのか。どう転ぶにしても経済等の改善が期待出来るわけではないのですけれども、悪化を緩和する可能性はあるわけだし、せめて見える部分だけでも見苦しくないよう取り繕う位はして頂きたく願う次第なのです。

一方その陰で旧維新の大阪部門はひっそりと爆死しました。目的も組織も名前からしても大阪の地域内に特化した政党が、大阪の外で、しかも唯一の売りだった看板もなく、政党としての存在意義も既に乏しく、聞くに耐えない暴言を吐く所属議員だけが顔になっている現状を以って臨んだというのだから、むしろ当然の結果なんでしょうけど。というかそもそも何の勝算があって他所の選挙に出てきたのか謎です。協力関係を強める他の野党連とも競合し、足を引っ張る位しか出来ない事は明らかなのだから、潔く諦めた方が良さそうなものですけど、そんな空気を読む能力すらもうないのかもしれません。残念な話です。

4/22/2016

[note] Ubuntu16.04LTS導入

またこの季節がやって来ました。半年に一度のUbuntuバージョンアップ、今回は2年ぶりのLTS版となる16.04LTSです。コードネームはXenial Xerus、饗応のリスさんです。意味不明なのは相変わらずではあるものの、ここ最近の明らかにファンタジーに遊んでいた例と比べると格段にわかりやすい方でしょうか。LTS版だから?前は信頼のおけるヤギさんでしたしね。

なお、LTS版という事で、14.04LTSから久しぶりにアップグレードを検討する向きも多いかと思われますが、14.04LTSから16.04LTSへの直接のアップグレードは可能になる旨予定されてはいるものの、現時点ではまだ実行不可な事に注意が必要です。リリースノートによると当該LTS間のアップグレードパスは3ヶ月後、7月にリリース予定の16.04.1で可能になる予定なんだそうで。

サポートを謳う以上、アップグレードに伴う諸々のバグや問題を十分に潰してからにしたいという事なんでしょう。特にLTS間に限れば2年も開いていますし、差分を引き継げるようにするのも大変なんでしょう。一応、14.10,15.04,15.10と逐次アップグレードをすれば当然今からでも上げられるのですが、手間もかかるしリスクも大きいしで、余程の理由がない限り避けたほうが無難でしょうね。

これに伴い、私の所にも一台14.04LTSがあるのですが、当然それのアップグレードはしばらくお預けとなりました。もっともLTS版は安定が命だし、14.04LTSのサポートもまだ十分残っているので、特に問題もないのですけれども。update managerを立ち上げて、14.04LTSだけ何時まで待っても始まらないのには少し気持ち悪さと不安を感じた次第です。Release Noteはよく読むべきでした、と反省しきり。

一方、15.10からのアップグレードはいつもの通りです。update managerの設定で、"Ubuntuの新バージョンの通知"を"すべての新バージョン"に設定して、アップグレード可能な旨ポップアップ表示されたら適用するだけ。サーバ・クライアント含め4台程アップグレードしましたが、それぞれ一時間前後で完了し、特に大きな問題はなし。不要になったパッケージにpython関連がごっそり載っているのに少し驚いた(pythonのバージョンが2から3に変わったため)のと、何故か存在しない設定ファイルを置換する旨警告が出て差分も空白というのがあって理解に苦しんだものの置き換えを選択しても特に問題は無い様子だったのに戸惑ったり、Braseroとか幾つか標準アプリにリストラがあって驚きはしましたけれども、その程度です。

gtk等GUI周りも特に大きな問題はなく、概ね良好。ただ、一部挙動が変わっているところも。特にIME周り。私はfcitx-mozcを使っていて、全角/半角キーでOn/Offを切替える設定にしているのですけれども、GUI版のemacsで以前は特に設定せずとも他のアプリと同様に切替出来ていたのが、デフォルトでは出来なくなっていました。切り替わりません。仕方なく暫定的にemacs-mozcを入れた上で.emacsを編集してfcitxを経由せずにmozcを使う設定にする事で日本語入力可能にしていますが、一々ウィンドウ内部に候補表示を割り込ませたりするせいかレスポンスが今ひとつで、誤入力が頻発するのが気に入りません。なので以前と同じようにする方法を探しているのですが、それは今の所まだ不明。うーん困った。使えなくはないんですけどね。emacs以外はアップグレード前と変わりないのだから、emacs側の問題だとは思うんですが。(追記:これは勘違いで、IM側の問題だったようです)

ともあれ。見た目とか微妙に変化はありますが、挙動自体はLTS版らしく安定しているようで一安心です。引き続きこの調子で、14.04LTSからの直接アップグレードも同様にすんなり行けるよう、周到な準備がなされる事を願いたいところです。というわけで、今回はひとまずこれでおしまい。

<追記:emacsでfcitxが使えない現象の修正方法>

emacsでfcitxが使えない点は頑張ってworkaroundに勤しみました。色々と調べた結果、アップグレード後にも環境変数が一部不適切で、
 XMODIFIERS=@im=ibus
になってしまっているのが原因(の一部)のようです。16.04LTSではfcitxが標準なのでバグですね。これを、fcitxに戻してやればいいわけです。

具体的には、環境変数を
 export XMODIFIERS=@im=fcitx
等としてやれば元通り。ちなみにtcsh等Cシェル系の場合は下記。
 setenv XMODIFIERS @im=fcitx

暫定で適用したemacs-mozcはインライン入力出来るのはいいんですが、私のようなかな入力派には駄目なのです。というのも、ローマ字入力を標準として想定しているらしく、かな文字入力の時には一旦ローマ字に変換してからmozcに渡される仕様みたいで、そのためにかな入力で速く打つと誤って途中の英文字が入力されたりして誤入力・誤変換が頻発するんです。濁点が`になったり。一文打つのにどれだけ打ち直しさせるのって位で、そうでなくとも候補のインライン表示等でラグが激しいところにこれでは、とても話になりません。しかしこれで元に戻りました。やれやれです。おそらく直ぐに公式でも修正されるんでしょうけれども、そんなの待ってられなかったのです。一安心。

しかし、起動時に自動適用する設定はまだ適切な方法が見つかっていません。というのも、上記環境変数設定を.bashrcとか.xinputとかに入れて起動すると、fcitx自体が起動しないようなのです。emacsはおろか、他のアプリも含めIMが全く使えなくなります。なので、暫定的に起動後に上記変数設定を別途行うようにして回避していて、とりあえずはそれでいいのですが、とても適切な方法とは思えません。困ったものです。LTS版なのに。。。

その後、どうにも気持ち悪いので何とかならないかと、さらに色々とfcitx-diagnoseの出力結果を見ながら試してみたところ、ibusをアンインストールして、かつ.xprofileに上記XMODIFIERSと併せてQT_IM_MODULE=fcitx,GTK_IM_MODULE=fcitxを設定した上でfcitxを手動起動すると上手く行きました。具体的には下記。(Cシェル系はsetenv)
 export QT_IM_MODULE=fcitx
 export GTK_IM_MODULE=fcitx
なお、ibusをアンインストールしておかないと、起動はせずとも邪魔をするのかこれらの変数を設定しても上手く行きません。という事でibus sucksというわけなのですが、でもibusって削除の時にシステムの設定周りをごっそり引き連れて消えていくんですよね。開発用のライブラリも含めて。使えなくはないんですけど、gnomeのシステム設定周りのインタフェースとかも消えるので、これはあまりよろしくありません。ibus自体クソな事は周知の通りなので、もう公式に外してくれればいいと思うんですが、難しいですかね。下手に組み込んじゃうからこんな事に。。。うーん。

さらにその後、ibusをアンインストールせずとも、下記でibusを無効化してから手動でfcitx起動、でも行けるらしい事が判明しましたのでメモ。なおこの場合、上記3件の環境変数設定は不要のようです。

>gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.keyboard active false

fcitxは自動起動アプリに登録しておけばいいでしょう。まだすっきりしたわけではありませんが、とりあえずこれで一段落でしょうか。やれやれです。

<解決?>

さらに後日、別のPCで色々試してみたところ、何故か言語サポートの"キーボード入力に使うIMシステム"をibusにしておき、上記3変数を.xprofileに登録の上、fcitxを自動起動アプリに登録(~/.config/autostartに.desktopファイルを作成)してみたところ、emacsも含め正常にfcitx-mozcが使えるようになりました。他の一台では、同様に.xprofileの変数と自動起動を設定だけで、IMシステムはfcitxのままでOKでした。PCによって挙動も違います。わけがわかりません。どういうことなの。

<その他不具合>

後気になった点としては、今回アップグレードした内の一台(ノートPC)で、端末ウィンドウの操作中等に画面が頻繁にチラつく現象が起こっていて、とても気になります。あまり使わないPCなので運用上問題はないのですが、とても落ち着きません。早めに対処して貰えるとありがたいんですけれども。 
→その後配信されたアップデートを適用したところ、この問題は解決したようです。しかしアップデートされたパッケージを見ても描画に関係しそうなものなんてないんですけど、どういうことなんでしょう。libllvmとか関係ないだろうし、distro-info-data?うーん。まあ治ればなんでもいいんですけどね。

---後日追記

軽量化環境Lubuntuの16.04LTS版がリリースされて、ふと気が向いたので試しに使ってみました。数年ぶり。色々面倒なのは変わっていませんが、パフォーマンスはとても良いです。
[関連記事 [note] Lubuntuはやはり軽くて良いけれど]

[関連記事 [note] Ubuntu15.10導入]
[関連記事 [note] ubuntu 14.04LTS導入]

[biz law] 三菱自、主力車種ほぼ全滅

やはり余罪が、というか、むしろ氷山の一角だったという事でしょうか。三菱自動車の燃費改竄詐欺の件、当局の立ち入り検査の結果、当初発覚した軽自動車4種以外の車種でも同様の不正がされていた事が明らかになったそうです。

とりあえず確定したのはi-MiEV。疑われているのはアウトランダー、RVR、パジェロ等、全車種の半数以上に上るとのこと。揃いも揃って主力車種ばかりです。もっとも競合とのカタログ性能差埋めと減税区分の達成という目的を考えれば主力にこそ必要な措置だっただろう事は間違いないところで、それ自体はむしろ自然な帰結なのかもしれません。

が、もしこれが事実なら、いや報道のされ方とか見る限りもうほぼ確定なんでしょうけれど、であれば看板でもあるEVとRV系がアウトになった事で、軽と併せて主力車種が揃って生産販売停止、どころか報道によれば十年以上に渡って行って来た不正につき既に販売した分の賠償責任まで降りかかって来ますから、いくら国内向けの比率が高くはないとは言っても、普通に廃業に追い込まれるだろう事態に思われるところです。シャープの次は三菱自、と何となく各業界で競合に負けた弱いところが順調に淘汰されているように見えなくもない気もします。淘汰のされ方が如何にも急激に過ぎますし、経緯は最悪の一言ではありますけれども。

当然の報いではありますから同情はしませんが、本当に知らなかった社員はご愁傷さまです。とはいえ人不足の折ですし、選り好みしなければ再就職先が見つからないという事もあまりないかもしれません。ご健闘をお祈り申し上げます。知ってた社員?経営陣もろとも責任取って死ねばいいと思いますよ。償いようのない事態なわけですし。というかもう既に死人も出てるんじゃないでしょうか。

一度他のメーカーでもチェックはしておいた方がいいかもしれませんね。今回発覚の契機になった日産あたりへの疑いは薄いとしても、動機は十分だし実行は容易、本件のような前例もあるとなれば、必要な措置と言えるでしょう。併せて国交省への報告時に第三者のチェックを義務付けるとか、真正を担保出来るよう制度の改善も必要に思われるところです。もっともわざわざ外野が言わずとも、やましいところがなければそのように業界が自主的に動くでしょう。逆に消極的な姿勢を見せるようなら不正が推定されてしまうだろうわけですが、さて。

[前記事 [biz law] 懲りない三菱自動車、主力軽自動車の燃費改竄詐欺]

4/20/2016

[biz law] 懲りない三菱自動車、主力軽自動車の燃費改竄詐欺

三菱自動車がまたやらかしてくれたようです。国交省に報告する燃費試験の結果を改ざんしていたんだそうで。

対象は、主力の軽自動車2車種。ekワゴン・ekスペース。日産にもデイズ・デイズルークスとしてOEM供給されているものです。当然その他車種での余罪も疑われるわけですが、それはさておき。

その手法は、試験時の車輪に加えられる負荷を軽く設定する事で、5〜10%程度燃費を良く見せかけていた、との事。ekワゴンで言えば、カタログ燃費は25〜30.4km/lですけれども、実際には22〜27km/l程度だったという事ですね。 確かに全然受ける印象が違ってきます。競合するスズキのワゴンRが33km/lを謳っているところからすれば、素の数値では太刀打ち出来ない感が漂います。減税の区分も当然変更になるでしょう。

本件の後始末については、よりによっての主力車種ですし、当該車種の総販売台数にして60万台を超える規模のカテゴリー自体が丸ごと事業から消える事による年間数千億規模の売上減少、ユーザーと日産への損害賠償、減税分の不当利得返還、あといよいよ壊滅的に失われた信用の将来への影響も考えれば、少なく見積もっても会社の存続に強い疑義が付くだろう、極めて深刻な事態と評価すべきものでしょう。

しかしもうなんでそんな事したの、としか。無論燃費が最重要項目な車種である事は間違いなく、上述の通り到底敵わない競合がある以上、改竄の動機は十分ではあるだろうところですが、そもそも第3者が試験したら即バレな数値、しかもOEM車種。車の性能値の中ではおそらく最も誰もが気にするところでもあるし、隠しおおせる可能性など最初からなく、やったが最後、遅かれ早かれその先には破滅しかないだろう事は分かり切っていた筈なのですけれども。全く以ってわけがわかりません。

そういえば、三菱自では以前に開発の遅れの責任を取らされて部長が2人クビになってましたけど、実はこの辺の絡みだったという事なんでしょうか。しかしあの時の部門は確かRVRだった筈で、今回は軽自動車なので直接の関係は無い筈、であれば間接的に、すなわちそういう恐怖政治的というか、無茶な目標を現場に押し付け、目標未達ならクビ、という理不尽な社内体質が、その場しのぎの破滅的な改竄に走らせたものと考えるべき所でしょうか。

もしそうなら、なんと言うか。あまりにも愚かで、かつ哀れな話です。開発部門はじめ、三菱自の社員は何のために生きてるんでしょうね。そこまで追い詰められたなら、RVRの部長達と同じように、さっさと辞めればよかったのに、と残念に思わずにはいられません。彼らが諭旨退職であり、すなわち自発的なものではおそらくなかった点からすれば、見せしめ効果で恐怖が先に立ったか、それともやはり元々の社員の体質的にも難しかったのか。外野からではわかりませんが、もはや云々しても仕方ないところなのでしょう。返す返すも残念です。

無論、そうさせた会社側は存分に報いを受ければいいと思うわけですけれども。リコールの件の時も酷いと思いましたが、組織というのは一度腐るとこうまで救えなくなってしまうものなのかと、驚きと共に落胆を禁じえません。どうせそうさせた体質は棚に上げて、部門に責任を押し付けて済まそうとするんでしょうし、もう会社ごと潰れてしまえばいいと思わずにはいられないわけです。いやはや。

三菱自、燃費試験での不正を発表 日産自の指摘で発覚

---
そして当然のようにその他車種でも余罪が発覚。主力車種が全滅の模様で、流石にもう無理ですかね。

[続き記事 [biz law] 三菱自、主力車種ほぼ全滅]

[IT] QuickTIme for Windowsの脆弱性へのAppleの対応拒絶の仕方が酷すぎる

Apple製メディアプレイヤーQuickTimeのWindows版に脆弱性が発見され、しかしAppleがパッチ提供を拒否した件、ちょっと酷いと思うのです。特にAppleの対応の仕方が。

当該プレイヤーは、Appleが今年初め頃にリリースした7.7.9を最後にWindows版のサポートは打ち切られているので、パッチ提供も出来ない、とした事については、非難は免れずとも仕方ないと言えなくもないかもしれません。元々Vistaと7しかサポートしていなかった点等から、打ち切りが完全に唐突だったわけでもないように見えなくもありませんから。

しかし、サポートの打ち切りにあたり、ユーザに告知がなされず、その後のアナウンスも皆無であり、そのために多くのユーザが本件脆弱性の発覚、またそれに伴うTrendMicroや米国当局の警告とその報道がなされるに至って初めてサポートが無い事を知らされ、当然殺到した筈の問い合わせすらもサポート切れを理由に門前払いになっているという、不誠実という言葉でも足りないだろう対応ぶりには、流石に酷すぎて擁護の余地はないと思うのです。

せめてユーザに事前事後ともアナウンス位はしておくべきだし、このような状況に至ったからには、サポートは当然すべきものな筈なのですが、いまだにHP上には全くその辺の警告のかけらもないあたり、Appleにはそういう考え自体が存在しないようです。恐ろしい。

被害が個人に留まらず、Adobeのサービスが影響を受けているのも、Appleの対応自体が不適切だった証左と言えるでしょう。事前のしかるべきアナウンスがあれば、そのような大手のサービスならば当然に対応はされていたでしょうから。不具合自体はAdobeの不手際でもあるわけですが、Appleのサポート、クロージングの仕方が不適切な事が第一の要因である事も疑いようのないところであって、Adobeにしてみればとんだとばっちりです。

これがQuickTime自体の廃止というならまだわかる話だったんですが、OSX等のApple製品版は継続というのもまた苛立たしい話です。共通のプラットフォームとして運用していた所では余計に混乱するに決まってるでしょうに。

付け加えれば、本件の脆弱性は、QuickTime for Windowsというプレイヤーアプリケーションのものであって、QuickTimeのビデオコーデック自体に問題は無く、従って他のプレイヤーやエディタ等でQuickTimeコーデックを導入して再生・編集等している場合には関係しません。なのでQuickTimeビデオを扱うユーザでも、その大半には関係ない話なのですが、Appleがサポートを完全に拒否しているために、それらのユーザも脆弱性の影響を受ける可能性を懸念して、その確認等に手間をかける羽目になっているのです。というか私自身、懸念もしたし確認もせざるを得ませんでした。QuickTimeファイルを扱う事自体殆ど無きに等しい状態ではありましたけれども、それでもゼロデイ脆弱性があると言われれば、確認するしかないに決まっているのです。それは完全にAppleの無責任な無対応ぶりによる被害であるわけで、非常に遺憾な事と言わざるを得ません。腹立たしい限りです。

サポートはされているけれども、脆弱性が多すぎて常時危険に晒されているも同然のFlashも酷いですけれど、悪意が感じられる分、本件Appleの方が腹立たしさでは上ですね。とはいえ五十歩百歩的な話で、Flash同様アンインストールしてしまうのが良いのでしょう。やれやれです。

Apple Ends Support for QuickTime for Windows; New Vulnerabilities Announced

[biz] IntelがPC部門に見切りを付け、大規模リストラ

予想通りと言うべきでしょうか。intelが大規模なリストラを計画中だそうです。

規模はおよそ全体の一割12000人程度、主な削減対象はPC関連部門で、新規ビジネスに注力する方針との事なんだそうです。PC市場の急激な縮小と、それを代替する筈のモバイル系でARM系に概ね敗北した事で不良債権化したリソースに見切りをつけた、という事で。PC周りは技術の進歩の余地もほぼ枯渇して、実質的に新製品の投入が困難になっている事も併せて見れば当然の結果と言えるでしょう。外部環境面では割と八方塞がりな感じですから。

もっとも、外部的な要因を別にしても、以前ALTERAを買収した事でintel内部のリソースには明らかに余剰があって、かつソリューション面とプロダクト面とで組織体制に齟齬が生じていただろうところ、それを整理統合する必要は当然あっただろうから、そちらが主な目的で、リストラは副次的な位置づけのものなのかもしれませんけれども。

ともあれ、今後の方針としては、基本的にはデータセンター向け中心にFPGAとサーバ用プロセッサのラインを統合して、それによって成立するソリューションをこれからの主力に位置づけるって感じでしょうか。その割を食うのが決算でほとんど一人負け状態なクライアントコンピューティング部門と。具体的な製品で言えばAtom系とか厳しそうですね。本来なら主力になっていた筈なんでしょうが、ARM系ともろ競合で惨敗した結果ということで、当該部門の人達はさぞ無念でしょう。解雇されるのでなければ、新しい分野に挑戦出来る機会と捉えてむしろ喜んでいるかもしれませんが。

一応、PCが衰退しているって言っても、Windowsは無論、OSXもLinuxも基本的にCPUはintelの独占は変わりないわけだし、intelのクライアント向け製品自体が近い内に消えてしまうわけではないんでしょう。それでもこうして、先日のムーアの法則終了宣言と併せ、intel自身がゆっくりとしかし確実に白旗を挙げていくのを見て、少なくともこれからはもう殆ど進歩もしないんだろうと思うと、やはり残念に思う部分はあるわけです。一つの時代の終わり、になるんでしょうか。

[関連記事 [biz] IntelがFPGA大手ALTERAを買収]

4/15/2016

[biz] 富士通・東芝・VAIOのPC事業統合破談

国内大手PCメーカー3社事業統合の件、破談したそうで。

統合後の事業方針やらで合意出来なかったからとかいう事ですが、あれですかね。統合の主たる目的である所の集約によるコスト削減及び生産性の向上において、当然必要になるところのOEM先とか、国内・国外工場とかの統廃合については、まず間違いなくそれぞれ一つを残して残りはリストラ、って話になっていた筈なわけで。それはすなわち実質的に3社の内2社が撤退するのと同等と言えるだろうところ、先は無い事は明白ではあるけれども、各々が即倒産するわけではない現時点の状況下では受け入れ難かった、という事なのでしょうか。

保身と言えば保身ではあるのでしょうけれども、事実上の生き死にが掛かっている以上は致し方ないと言うか、これはもう各々が本当に単独では立ち行かない、文字通りの破綻直前ぐらいにならないと纏まらない話なのかもしれないと、改めて思うわけです。

おそらく大きな問題は2点。一点は、統合後のカラーというか、主にVAIOの主力たる尖った製品ラインの継続の是非、また搾り込みをどうするかという事。ある程度は残すにしても、その特殊性の強さから開発・生産体制の統合には相当な困難が見込まれるし、販売の戦略面でも色々とややこしい面が生まれるのは間違いないところです。VAIOのようなブランドイメージ重視の路線は、少なくとも事業体の前面に出さないと意味のないものですが、そうするとブランド的にはVAIOが他2社を吸収した形になるわけで、事業体の規模比的にそれは難しいでしょうし。そりゃ揉めて当然でしょう。

もう一点は、上記で触れたように、純粋に生産・開発・販売リソースの統廃合の方法でしょうか。東芝と富士通は法人向け中心に類似性は高いものの、それだけにどちらか片方は余剰につき必然的かつ単純に削減対象とせざるを得ないだろうところです。しかるに工場も開発部隊も販売部隊も。それらはそれぞれ垂直的に繋がりがあるわけですから、各々が丸ごと残すべきだと主張すれば、自然と一社分だけを残してそこに合流出来る一部以外の残り2社分は廃棄、というような思惑になりがちなパターンに見えます。富士通は特に国内工場の処遇も頭の痛いところでしょう。これまた揉めて当然、というか普通ならやはり、統合出来なければ破綻、位になってないと受け入れられない類の話と言えるでしょう。

一応、当初の思惑的には、各社の全リソースを一旦まとめてシャッフルして、そこから最適化を図る、とかそういう理想論的な考えはあったんでしょうけれども、具体的なプランに出来なかったか、出来ても実現が極めて困難だったか、はたまた3社共が欲をかく、もしくは保身に走ったか。いずれにしろ結果として形にはなりませんでした。やはり3社の統合、それも概ね対等に近い立場の事業体同士のそれとなると、余程の明確かつ差し迫った、強制力の強い事由がないと、任意ではまとまりませんよね、という話で。問答無用で買収するとかするのが普通、と言ってもそんな余力は何処にもなかったのも要因と言えるかもしれません。こう見てみると、圧倒的な資本力の差からあっさりLenovoに買われたNECのPC事業は高く買われ、かつそれなりにリソースの保全も出来て幸運だったとも言えるんでしょうか。

第三者的には、DynabookとかVAIOとか、それらの個々のPC製品自体が枯れてしまって、従来のブランド戦略とか個々の製品品質やらものづくり技術云々ではどうにもならないからこそここまで追い込まれてるわけだし、もう一旦そういうのは全て捨てて、ビジネスモデルから何から名称も含めて全て事業丸ごと新規に立ち上げた方がいいんじゃないの、と無責任にも思うわけですけれども、そんな怖い事したくないというか出来ない、って話なんでしょう。難儀な事です。まあ競合が多すぎるし勝算の立てようもない以上、どうにもならないのかもしれませんけれども。でもね、そもそもの話、統合した所で規模的にはLenovoやら海外大手とは勝負にならないのだから、この辺は結局は避けて通れない筈なんですけれどもね。最終的に買収される事を想定しているのなら別ですが。

ともあれ。さしあたりご破算になったのは事実ですから、しばらくはこのまま、少なくとも本年度は各社とも赤字を垂れ流す運びになってしまいました。

およそチキンレースの様相を強めている本件、その中でいよいよ持たなくなった所から、相対的にまだマシな所へと、力関係がはっきりした時点で順次吸収されていく、とかいう流れになるのかもしれませんね。というよりそれ以外ないと言うべきなんでしょうか。しかし今でさえ瀕死の弱者連合と揶揄される位なのに、さらに弱ってからだと、その時に統合する余力があるのか疑問、というか吸収するorされる意味があるのかすら怪しいし、そのまま共倒れになる可能性の方が高いだろうと思うわけなのですが。とはいえこれも当人達の選択、ありもしない可能性に妄想じみた期待を抱いて機会を逸してしまったとしても、致し方ないところなのでしょう。やれやれです。

しかし困っただろうのは東芝ですかね。どうするのでしょう。まさか単体で放り出す?次いで富士通。既に分社化した同社のPC事業ですが、目的であるところの切り離しができなくなってしまいました。このままだと超赤字で即死コースです。両社とも一刻も早く連結から外したかった筈の両事業、その目論見が崩れてしまったわけですが、さてどうする。

[関連記事 [biz] 個人向けから撤退する東芝、その行く先もまた暗く]
[関連記事 [biz] NECがPC事業をlenovoに譲渡]

4/09/2016

[PC] Bash on Windowsが本当に出て困惑

Bash on Ubuntu on WindowsがPreview Releaseされたそうですね。正直なところ何故?と困惑を否めませんでしたし、意義とか諸々の側面を鑑みるに本当に出るのかと疑わざるを得なかったわけですが、本当に出て驚きました。今でもあまり実感が湧きませんが、出たからには当然ながらそれなりに興味の対象にはなるわけです。皆も、と言ってもその方面限定ですが、色々と盛り上がっているようですね。

もっとも現時点では名前の通りシェルのみ、すなわちコマンドライン上のアプリが動くだけで、XはじめGUI周り一般は当然対象外だし、Previewテスターの報告を見る限り安定性は無論皆無、パフォーマンスも、桁違いのオーバーヘッドのかかるCygwinと比べても若干マシ程度とあって、現時点では大半の用途で丸ごと仮想化した方が良いだろう実質的には無意味なものらしいんですけれども。わざわざカーネルに専用のサブセットを用意までした割には如何にも中途半端に見えます。

それでも、完全に行き詰まって久しいCygwinや混沌としたmsys2(MinGW)の代替足りうる新たな希望として、一応は歓迎したいと思います。個人的にはメンテ終了してしまったgtk for windowsの代替が欲しかったんですけれども、この路線が継続されれば、将来的には当然その辺も復活する目もあるでしょうし。無論パフォーマンスもまだまだ改善の余地はあるでしょう。でも現時点では近い内に使い物になりそうな感じがしないんですよね。意義の薄さからすると、あっさり消える可能性の方が遙かに高そうですけれども、続いてくれるかなあ。。。と疑問が先に立つのも致し方無いところでしょうか。

将来的にはLinuxベースのプログラムがWindowsで動く、って言っても、そもそもLinuxのアプリを必要とするWindowsユーザなんて全体からしたらほぼ皆無に等しい位でしょうし。その割には大げさというか、開発やらにリソースが掛かり過ぎているような。。。Microsoftは人余りなんでしょうか?とか。主に開発環境周りでのOSX対抗って意図はわかるんですけれども、周知の通り元々Unix(BSD)ベースのOSXに、その方面でしかも後付で対抗しようとしても無理があるんじゃないかとも。開発向けというならなおさらパフォーマンスが十分に上がらないと使いようがないわけですしね。法人のLinuxサーバー需要取り込みとか連携とかの思惑もあるとしても、性能の期待値やら安定性面やら、諸々で話にならないでしょうし。うーん。まあ、とりあえず安定するまでは静観するとしますか。Ubuntu(Linux)ユーザとしては歓迎すべき話なのは確かなわけで。糠喜びしないよう、眉唾しつつ。

しかし、Bash上で動くsedとかpythonとかのLinuxネイティブアプリ類をUbuntuアプリと呼ぶのは違和感が半端ないですね。Linuxコマンドラインアプリだろうと。

Bash on Ubuntu on Windows

<追記:各所で行われたベンチマークについて>

リリースされてからしばらく経って、不安定性に悩まされつつもテスターの方々が頑張って詳細なベンチマークを行ってくれたようです。

The Performance Of Ubuntu Software Running On Windows 10 With The New Linux Subsystem

その結果を見る限り、CPU内部で完結する計算処理等については高々数十パーセント程度のオーバーヘッドで済んでいて、中々に優秀なようですね。と言ってもこの辺はOSよりもx86CPUの命令セットに依存する話なので、元々バイナリの形式はあまり関係しない部分ですから当然と言えば当然の結果とも言えるでしょう。

問題はファイルシステムのI/O周り。ここは文字通り桁違いに遅いとの結果が出ています。一番OSに依存する部分ですから仕方ないと言えば仕方ないのでしょうけれど、大半のアプリでのボトルネックもここにありますから、そこでのこれはやはり厳しいと言わざるを得ません。GUI等を除外してシェルに限定した理由もおそらくはこの辺のI/O周りの困難さにあるのではないでしょうか。無論実装を頑張れば解決出来なくもないんでしょうけれど、それはもう殆ど仮想化と変わらないような。うーん。

3/19/2016

[biz] 信用を捨て、信用出来ない相手に縋ったシャープの末路

誰もがうんざりしてると思うんです。つくづく阿呆だなあと。倒産寸前のシャープの身売りの件なんですけれども。ここまで酷いと、教訓にすらなるのかどうか。

本件における鴻海の鬼畜さ加減は今更云々するまでもないとして、元より鴻海が信用出来ない事も分かり切ってたわけです。以前出資を検討していた際、株価が下がったからと言って契約を反故にする形で買い叩こうとして破談した件、あの常軌を逸した所業を忘れたって人の方が少ないでしょう。あれだけからしても、誠実さとか善意とか、およそ提携や合併をするにあたって欠くべからざる要素を欠いており、協業の相手として不適格な類の業者である事は明らかでした。それ以前に呈示する条件等も空手形ばかりになって実質無意味だろうし、まともに交渉する事すら期待出来ないだろうと。

誰もがそうと知っていた筈の相手に対し、直近のシャープ経営陣が決定したところの被買収の選択、しかも契約を交わす前に機構を切って一本化する、という判断は、率直に言って正気を疑わざるを得ないものでした。正式な契約すら後から反故にするような連中にそんな立場を与えたら、そりゃもう好き勝手されるに決まってんじゃないですか。対等でないどころか、相対的な優位ですらない。シャープ側に断るという選択肢が普通に存在した例の出資破談の時ですらああだったのに、今回はそれを遥かに超えて、鴻海の出資が無ければ即倒産な状況ですから、決定権を完全に鴻海側に渡してしまったものに他ならないわけです。目一杯足元見て値切るに決まってますし、さらに雇用の保障等、諸々の条件も事実上白紙に戻ったと言うべきでしょう。頭おかしいんじゃないの?と誰もが思う意味不明な判断だったわけです。

しかしもはや後の祭りです。シャープが切り捨てた段階で産業再生機構は完全に撤退してしまいましたから、 今更泣き付いてもどうにもなりません。機構や行政の側からすれば、シャープこそが信用ならない相手と見做されてしまっているのですから、不可能とまでは言わずとも、それを覆す事は非常に困難な状態なってしまっているわけです。

今後の取りうる選択肢は2つ+α。一つはこのまま鴻海の一方的な提案を飲んで大人しく食い物にされる道。もう一つは、債権者たる銀行を説得し、つなぎ融資を引き出して時間を稼ぎ、その間に機構や行政に泣き付いて救済を得る道。αは、流石にまず無いでしょうけれども、どちらも選ばず、大人しく破綻して民事再生に進む道。どっちを向いても地獄しか無いこの絶望的な感じは他人事ながら引きます。

完全にシャープの自業自得とは言え、転職せずに未だ必死にしがみついている社員の方々には多少なりと哀れに思う気持ちを禁じ得ません。どうするんでしょうね。ここ数年、経営陣の振る舞いは不誠実そのものだったのであって、あっちもこっちも舐めてるとしか思えないふざけた態度で振り回し続け、その無能の極みと言う他無い愚かな判断の数々も相俟って、甚大な被害、損失を撒き散らした挙句に行き着いた先がこれですか。それで損害を被り、あるいは人生を狂わされた被害者には刺されても文句言えないんじゃないでしょうか。ほんとに。

もっとも、最後の最後まで、その態度と判断の誤りっぷりは一貫していた、という事で、むしろ当然の帰結と納得すべきなのかもしれませんけれども。信用を捨て、信用出来ない相手に縋った結果なわけで、あれだけ滅茶苦茶やっといて、しかし最後は救済されて幸せになりました、というのもそれはそれで理不尽な気もしますしね。碌なもんじゃなかったのですから、その最後もそれらしく、その報いを存分に受けて、そのままさっさと退場してこの世から消える、というのなら、それはそれで妥当なのかなと。やれやれです。何にせよさっさと綺麗に片を付けて頂きたいものですね。

[関連記事 [biz] 迷走の果てに消滅必至のシャープ、残滓の行方]
[過去記事 [biz] 赤字2223億で資本消滅、錯乱するシャープ]
[過去記事 [biz] 追い詰められたシャープ、狂気の99%超減資]
[過去記事 [biz] SamsungがSharpに出資]
[過去記事 [biz] hong-hiがシャープ出資契約無効を主張]
[過去記事 [biz] シャープがhong-hi傘下へ]

3/17/2016

[biz] 審判の日が迫るHMD型VRデバイス達

今年はVRあるいはARの年なんだそうです。年初あたりにそこかしこの技術系ニュースサイトで掲載された「今年ブレークする製品・技術」的な特集記事では、殆どそれ絡み、といってもどれもヘッドマウント型の端末ばかりだったのですけれども、ともかくそれがヒットするだろうと書かれていて、正直個人的にはその手のデバイスにはあまり興味が無い事もあって、眉唾に思いつつもふーん、程度に聞き流していたわけです。Oculus関連は価格含め期待外れな話ばかりでしたしね。

なのですが、まあそういう諸々の見込みの根拠であったところの、本命の一角たるソニーからのPSVRの価格等が周知の通りこの程発表され、それが思ったよりは戦略的である事が判明し、各所で議論を呼んでいるようです。だから何だというわけではありませんけれども、何はともあれ今年は予定通り、話題先行が続いた各種デバイスが一般向けに広く販売され、実際に市場並びに消費者の審判を受ける年になる事が確定したようで、その直前である今というのは、そろそろまともに先行きを考えてみてもいいタイミングなのかな、と思い、改めて各デバイスの仕様や発展具合等を確認してみたのです。といって、特に期待していたわけではないのですけれども。

その結果はやっぱりというか、絶対とは言わないけれども多分にこれは普及はしないだろうな、と言わざるを得ない、非常に微妙なものだったわけです。いろんな要素があからさまに過去の失敗の焼き直しな感じで、どうしてこう懲りないのかな、とも。このまま行けば、一般向けとしては揃って玉砕しちゃうんじゃないでしょうか。

まず製品の形態としては、各社グレードの違いはあるものの、基本的には3D表示対応のHMDに位置・加速度等のセンサを加えた、頭部装着型のモニタデバイスです。諸々の計算等の内部処理をデバイス内のプロセッサで行う場合と、そこは外部端末に任せてインタフェースに徹する形態等の違いもありますが、見た目は殆ど同じですね。中々に仰々しい外見には賛否があるでしょう。

頭部だけだと、入力に使える情報が頭の位置や顔向きしかなく、何をするにも足りませんから、別途インタフェースも組み合わせる形での運用が想定されています。それには手で操作するコントローラを使ったり、外部のカメラやルームランナー的な装置でモーションキャプチャをしたりする仕組みが採用されていますね。まともに組み合わせて使うと、特にPSVRとかラグが酷いことになりそうですが、それはともかく。

で、その機能というか、出来る事は、当然ながら3D空間への没入。 デモ等を見る限りARはあまり想定されていないようで、完全に別の空間を投影するものが大半のようです。主たる機能を一言で言えば、要するにFirst Person型すなわち一人称視点型のゲーム等の3D表示という事ですね。

機体の価格はまちまちですが、そもそもPSVRではその処理のためにPS4本体が必要になる等、基本的に単体では意味を成さないものですから、システム全体で見るのが適切でしょう。そうすると、およそ10万前後から、という事になります。子供やファミリー層は最初から対象外です。なお、HMD型につき、複数人が利用する場合には一人につき一台が必要になる個人用デバイスであるという点も留意が必要でしょうか。

以上の特色を持つVRデバイス達なんですけれども。その製品・事業的成否を予想するにあたっては、自然と競合するだろう各種製品や、過去の類似した位置づけの製品群と比較してしまうわけです。機能と価格の両面から。

まず機能の面では、既存のゲーム機類。特に3D表示が可能な個人向けデバイスという事で、任天堂の3DSが第一のベンチマーク対象になるでしょう。3D機能を除けば、従来通りのFPS系ゲームを通常の2Dモニターで表示する場合も含めるべきでしょうか。あと、単純な表示デバイスとしての面からは、3Dテレビですね。

その辺と比較すると、まず第1に表示方法すなわち主観的な画面・空間の範囲の違いがあり、第2に操作方法すなわち指操作と身体動作の違いがあり、第3に画素数の違いや内部処理能力等による投影空間の情報量差がその違いとして存在するように見えます。これらのもたらす効果をざっくり一言でまとめれば、VRデバイスの特徴はその没入感の高さにある、と言って良いのではないでしょうか。逆に言えば、それ以外にはあまり違いはないように見える、とも言えますね。

価格については言うまでもありません。ベンチマーク対象の既存製品群より明らかに割高です。個人デバイスとして比較すべきだろう3DSとであればおよそ6倍程度にも及びますし、従来通りのゲーム環境等と比較しても、同程度の処理能力で見れば少なくとも2倍程度の差はあります。

である以上、その特色でありウリであるところの没入感の高さというのは、そのだけの価格差があってなお、各製品が一般に広く売れ、普及し、定着するに足りるだけの特徴と評価し得るのか否か。それが問題だろうと思うのです。

で、これが訴求の評価とかいう以前に、その特徴自体が今ひとつはっきりしません。

確かに新しいカテゴリのデバイスですから、物珍しさはあります。熱心なファンは喜んで買うでしょう。その意味で、一時のニッチとしての成功は約束されています。しかし、これらの製品は単発のコンテンツではなくプラットフォームです。そうである以上、成功と言うには、新発売時限定のブームでは足りず、少なくとも5年以上程度の長期に渡って継続的な需要を惹き付け続ける必要がある筈です。そうでなければコンテンツ等が伴いませんから。しかも、そのコンテンツの開発には既存より高いコストが必要になります。コンテンツの単価も自然と上がるでしょう。只でさえ斜陽のゲーム産業周りにあっては、それは到底無視し得ない事業上の負担となります。

3Dである事にそれだけの価値があるかと言えば、おそらくNoです。3Dテレビの完全な失敗と、3DSにおいて3D機能が無意味と評価され、市場からコスト転嫁が拒絶された結果大幅な値下げを強いられた例を経験した今、その点に議論の余地はありません。少なくとも価格増には値しないものと見做されている、と言い切ってよいでしょう。

主観的な大画面化と、その他の外部情報の遮断については、従来のHMD同様、それなりの価値があると言えそうです。しかし、そもそもHMD自体がニッチである現状を鑑みれば、広く一般に訴求するための理由としては如何にも不足のように見えます。ただ、PSVRのようにHMDの従来製品よりは安価になる機種については、潜在的なHMD需要を取り込む効果は期待出来るかもしれませんが、それでもモニター自体を既に保有している層が対象になる以上、その需要が補助的な範囲を超えるものとは考えづらいところです。

操作方法の違いはどうでしょうか。これは人によるでしょうけれども、指先の動作と比較すると、身振り手振りによる操作というのは確かに一線を画した臨場感を与えるものである事は間違いないだろうところです。しかし、部屋の中でそれを行うには逆に不都合の生じる場合も多々あるでしょうし、何よりもそのためのデバイス類のコストで只でさえ高いシステムの価格がさらに大きく上がる事になります。また、周りが見えない中で身振り手振りをするとなれば、ブース型のように範囲を限定しない場合、事故の危険も懸念されます。売りというよりは、むしろ利用場面に対するリスクや制約として働く面も強いのではないでしょうか。コンテンツの設計にも苦労しそうです。ある程度訴求力はあっても、本体のコストまでもを補えるものとは言えないでしょう。

しかも、デメリットは他にも色々見受けられます。眼鏡着用者の場合には従来から眼鏡の干渉や位置ズレ、視野の齟齬等の問題が以前から付き纏っています。デバイス・個人毎にカスタマイズしたレンズを装着出来るようになればある程度解決する話ではあるものの、これまた大きなコスト増や煩雑さを伴い、それでなお違和感が残る事も避けられないでしょう。関連して、長時間の使用に伴う健康面への悪影響の強さを懸念する声もそこかしこから上がっています。単純に重さも負担になりますし。

果たしてこれだけのデメリットや不安定な要素を抱えた、非常に高価格なインターフェースデバイスが、そんなに広く一般に訴求し得るものなのでしょうか。現実的には、その可能性は殆どないと言えるでしょう。

それどころか、ゲーム機等のプラットフォームとして売りだされる点を考えれば、マニアですら十分にコンテンツが出揃うまでは買わないと判断する人が多数を占める可能性は低くないように思われます。では、そのコンテンツは十分に供給され得るのか。PSVRについては、現時点で有力各社がローンチタイトルを投入予定との事ですが、その中でデバイスの販売を牽引するような、すなわちVR専用のタイトルは、おそらくほんの一部に過ぎないでしょう。只でさえ開発費用が余計にかかるVR向け専用では単純に採算が合わないのですから。プラットフォームとして十分普及するまでは、否、普及した後でも、大半のタイトルは従来通りの2Dとのマルチリリースになるものと予想されます。VRデバイスが無くとも、個々のコンテンツを楽しむ事が出来ないという事はおそらく殆どないでしょうし、なおさらデバイスの購入動機は小さくなるとも言えるでしょう。

結局のところ、今売りだされている、売りだされようとしているVRデバイスは、コンテンツや機能の助けもなく、"没入型VRである"その一点のみを売りにして、数倍の価格差を埋め、遥かに普及し、エコシステムを確立している従来のゲーム機市場からシェアを獲得しなければならないわけです。

こう考えると、如何にも無謀な試みに見えてしまうのです。価格が$200位だったら話は全然違ったんでしょうけれども。

そんな無謀が、予想を覆して通るのか。非常な現実の前にあえなく散るのか。成否はともかく、久しぶりの新製品群のチャレンジという事で、外野として適当に楽しませてもらおうかな、と思う次第なのでした。私?買うわけないじゃないですか。

[関連記事 [biz] 任天堂、3Dの泥沼]
[関連記事 [biz] 3DS、らしくない任天堂]
[関連記事 [biz] 3D、 AR、タブレットとか、新ネタ総失敗な空気]

3/10/2016

[biz law] 行政・司法の技術への無知による結果的詭弁及び強権行使が洒落になってない

主にAppleに対する米当局からのiPhoneセキュリティ解除要求とその拒否に関する一連の件についてなんですけれども。膠着状態に入ったようで、話題としては少し時期外れな気がしなくもありませんが、逆に整理するにはいいのかな、と個人的な考えをメモがてらまとめてみました。・・・とつらつらと書いてたら長くなってしまいました。

本件経緯の詳細はここで述べるまでもないでしょうから省略。その概要は、FBIが事件の捜査過程で押収した容疑者のiPhoneからデータを取得しようとして、適当なバスワード入力を繰り返した結果、試行回数上限に達した時点でロックされてパスワード入力自体が出来なくなり、Appleにロックの解除を求めるも拒絶、それでも諦めず裁判所経由で命令を出すも再び拒絶され、しかしまだ諦めず、世論に訴えてAppleを非難しつつ要求を繰り返している、というものです。

平たく言えば、FBI(DOJ)からの理不尽な命令と逆ギレ的な非難に晒されるApple、という構図ですね。そもそもの前提として、本件はあくまでFBIの自己都合による捜査への協力要請であり、それに従うか否かに関係なく、Appleは何も悪くないわけです。法的な責任、問題が成立し得るのは、裁判所の命令を拒絶したという点にのみであり、それも正当事由があれば完全に合法であって、従うとしても善意に基づく任意的な協力者に位置づけられるわけです。にも関わらず加えられる強権的な圧力、次いで一般のユーザの権利の保護という正当な理由によって拒否したにも関わらず浴びせられる苛烈な非難の嵐。Appleとしては理不尽極まりないと言う他無いでしょう。

という感じの、振り返るだけでげんなりする本件ですが、その全体を見て理解した気がする問題点は、

・米国の行政・司法当局はIT関連技術について致命的に無知である
・IT関連事業者についても無知である、あるいは配慮が皆無

という点に尽きるように思うのです。ついでに、

・無関係な市民のプライバシーを含め、他者の権利はまとめてゴミ扱い

というのも挙げておくべきでしょうか。 一々指摘するまでもない気もしますが、結局のところ諸々の理不尽の原因はここに帰着するようにも思いますし。

で、客観的に見れば信じられない事ですが、兎にも角にも自分達は正義であり、その執行を妨げる者は悪である、と言うも同然の振る舞いで、FBIはCalifornia州の裁判所からロック解除命令を勝ち取ってしまったわけです。

これに対し、当然Apple側は反発しているわけですが、周知の通りFBIはそれに対し、まるで共犯者のように世間をミスリードしつつ煽り立て、非難を加えているわけです。まさしく詭弁に他ならない酷い主張なのですけれども、それでも話の中身を知らない一般人の中には、FBIの言うことだから、とそれを真に受ける向きも少なくないようで、その思惑通りにAppleを避難する声もそこかしこから聞こえてきました。見るにも聞くにも堪えません。非常に残念な事です。

Appleとしても、半社会的企業のレッテルを貼られるのは遺憾極まりない話であり、事業面での悪影響もありますから、如何に理不尽であろうとも、少々の事であれば妥協して話を終わらせたい筈ですが、実際にはそのリスクを犯しつつ強固に反発しています。無論それにはそれなりの、すなわち単なる理不尽な命令への反発というに留まらない、事業運営上の絶対に譲れない理由があるわけです。それはどういうものでしょうか。

状況を整理しましょう。法や事業面の話はさておき、まず技術的には、

・端末からのユーザデータ抽出は暗号解読と同義であり、Appleにも技術的に対応不可
・パスワード入力試行回数の制限解除は技術的には対応可能

であり、技術的には後者の試行回数制限解除のみが実行可能という事になります。しかし、試行回数の制限はOSの基盤部分であり、おそらくは暗号化方式にも組み込まれているだろうために、この部分の解除はすなわち暗号化方式そのものの変更を伴うOSの改変を必要とします。従って、その変更にはiOSの専用バージョンを開発する必要があるわけです。なお、マスターキーの導入も同様。

OSのコア部分からの改変である以上、その開発には莫大なリソース・費用が必要になる事は言うまでもありません。しかも、仮にその開発を実行したとして、それが前例となり、今後も同種の制限解除命令が発せられ、かつ義務同然に従うよう圧力が生じるだろう事も明らかです。そうすると、事実上全てのバージョンのiOSについて、制限解除版を開発し、リリースする義務が生じる事になるわけですが、これはiOSそのものにバックドアを設ける事と同義と言えます。Appleの主張する「バックドアを作る」というのはそういう事なのでしょうけれども、概ね論理的に正しい話のように思われます。

そして、常にバックドア導入バージョンが存在するようになる結果、まず間違いなく、そのバックドア導入版との差分は解析され、さほど時間を置かず一般ユーザの端末への攻撃に流用されるようになるでしょう。公的機関に秘匿出来る筈もありません。盗難にせよ意図的にせよ、テスト開発用の端末が流出するだけでも、そこから解析する事は容易なのですから。結果、全てのユーザがおよそあらゆる脅威に常に晒される状況に至るだろう事は必至なわけです。

要するに、公的機関の主張するような、「特定の、限定された者のみが、正当な目的に基づき必要な場合に限ってアクセス出来る」ような仕組みは存在し得ないのです。第三者が事後的かつ強制的にアクセス出来る仕組みが導入されれば、その仕組みは原理的に誰もが任意に利用可能になるのであって、当然に攻撃者もアクセス可能になるのです。それを任意に制限する術は現実に存在しません。しかし行政・ 司法はそれを理解せず、可能であると思い込んで、もしくは不可能と知りつつあえてなのか、ひたすらそのような仕組みの導入を求めているのです。

オバマ大統領からして率先してそう主張しているのですから、始末に負えません。そう主張するにあたって、自分はソフトウェアエンジニアではない、と言い訳をしているのがまた性質が悪い。無責任にも程があるだろうと。技術的、現実的に可能か否かも理解出来ていない事を自覚しているのですから。専門家であろうとなかろうと、責任が伴う立場から具体的な措置を伴う主張・要求をするのなら、最低限その主張の現実性の有無位は発言する前に理解しておくべきであって、それが出来ないのなら黙っているべきです。

技術的には概ね以上でしょうか。これを踏まえて、事業面への影響を推測すると、

・公機関絡みの類似案件対応が常態化し、対応部門等のリソースが必要となる
・開発費、顧客への損害賠償等対策費による損失が膨大になる
・iPhone、並びにAppleという企業自体に、公的スパイ企業としての評価が付く

ざっとそんな感じでしょうか。特に最後の、ブランド等への悪評については、顧客離れに直結しますからおそらく最も影響が大きく、かつ致命的と言えるのではないでしょうか。とりわけ、Appleのようなグローバル企業が米国のスパイと認定されれば、諸外国での販売激減も避けられないだろう結果、ともすれば企業自体の基盤を揺るがしかねないのですから。

この辺りのデメリットは、Appleに限った話ではありません。たまたま今回は端末がiPhoneだったためにAppleが矢面に立っているだけで、他の端末メーカーは無論、SNS等の情報通信を扱う業者はそのおよそ全てが同様のリスクを負っているのです。明日は我が身。だからこそ、GoogleやFacebook等も本件に関してAppleに同調しているのでしょう。

以上のように、双方の状況をちょっと整理するだけでも、現状の酷さ、危うさがよく分かるというものです。そりゃ拒否もするでしょう。逆にFBIがそれで通ると思っているのが理解し難く思えてなりません。少しは相手の都合も考えろよと思うわけですが、 権力者側が自己中心的かつ傲慢になるのは避け難い世の必然という事なのでしょうか。

ともあれ、当事者はそんな感じだろうとして。残る関係者、すなわちユーザをはじめ、一般市民の本件の捉え方や、その影響はどうなっているのか、どうなるだろうのかも軽く整理しておきましょう。

iPhoneユーザについては殆ど議論の余地もありません。Appleが命令に従えば、端末内とサーバ上問わず、およそ全てのユーザの情報は永続的に公的機関の自由な監視下に置かるためにプライバシーは失われ、かつバックドアの導入により、広く攻撃者の脅威に晒される事になります。NSAの監視が公然と、あらゆる攻撃者によって行われるようになるような感じでしょうか。悪意の犯罪者は秘匿性を強めて適応し、結果一般のユーザへの監視が強まるだけで終わるでしょう。ユーザにとって良い事など何一つありません。かろうじて米国民に限っては、公権力へ協力し貢献した気になる、という満足が得られる程度でしょう。

iPhoneユーザ以外の一般市民はどうでしょうか。これも本件から直接影響されるわけではないものの、同様の措置が他の企業へも広がるだろう結果、結局はiPhoneユーザと同様、諸々の自由は失われ、公権力に協力する事に喜びを見出す一部の人のみがささやかな満足感を感じるだけでしょう。FBIに倣って、または対抗して、他国の当局も同様の措置を実施するようになるかもしれません。ディストピアが生まれる日も遠くないかもしれませんね?

ディストピア云々は冗談としても、世の大半のネットワーク上から、通信・情報の秘密自体が事実上失われる可能性は否定し難いように思われます。それを歓迎するも拒絶するも個々人の勝手ではあろうけれども、Appleのような支配的な企業が一度それを受け入れれば、それが多くの一般人を代理した事実上の最終決定に等しい以上、安易に受け入れる事が許されない性質のものである事も議論の余地の無いだろうところです。その意味で、今回のApple、またその他のIT関連企業の判断は歓迎すべきものと言ってよいのでしょう。そういえば、さすがに状況への理解が進んだのか、NYの裁判所ではCaliforniaのそれとは逆の判断がなされました。これも歓迎したいと思います。願わくば、この流れのまま、FBIが引き下がってくれればと思うのですが、無理なんでしょうね。やれやれです。

ところで、FBIは本件命令に際して、自分たちが一方的に監視する側にあって、今後も永遠にあり続けられる、との前提に立って考えているようですが、仮に上記のように本件命令に従う措置が一般化されたならば、自分達の情報もまた、汎用の端末またはオープンな通信網を経由する限り秘匿出来なくなり、諸外国はじめ外部に筒抜けになる事も避けられなくなる、という事は理解しているんでしょうか。例外はおそらく物理的に隔離されたシステムか、軍事用の特注品位でしょうに。協力者は無論、外国や民間周りではまともに活動出来なくなるだろうし、後からWikileaks等で全て公になってもおかしくなくなるだろうわけなのですが、それはいいんですかね?さてさて。おそらくは、この辺も無知と錯誤のなせるところなのでしょう。中国政府によるスパイ活動や、中国製PC等へのバックドア仕込みを非難していたのは誰でしたっけ。バックドア導入後のApple製品はHTC製同様に調達が禁止される事になるんでしょうか?

錯誤と言えば、本件に関してFBIの主張する、「自分たちは正義であり、悪意もなく、悪用はありえない。だから信用して解除しろ」とかいう主張には失笑する他ないわけです。NSAの件からこっち、目を疑うばかりの諸々の行為が明らかになった現状でそれを真に受ける人がいると、どうして思えるのか、全く以って理解出来ません。いや、一定数いるだろうのは分かるんですが、それは単に何も考えていないだけなのだから、そもそも理解も何もなく、無意味だと思うのです。一時的に勘違いに基づいて煽動する事は出来ても、しばらくして理解が進めば、薄れる事はあっても強まる事はないだろうわけで。

何にせよ、時代の変化に付いて行けず、時代錯誤的な横暴に走り、自らの行いを省みて修正する事も出来ない組織、それが公的機関として権力を持っているというのは困ったものです。というか洒落になりません。その辺は、日本も他人事では全くないのですけれども、どうしたもんでしょうね。もっとも、米国での本件からして他人事ではないのだし、とりあえずAppleには是非とも頑張って頂けるよう願う次第なのです。

[関連記事 [IT biz] Sony Picturesハッキング、愚かで哀れなソニーと無責任なオバマ]
[関連記事 [pol] 米NSAがGoogle、Yahoo両社の全クラウドデータを無断取得]
[関連記事 [pol] 米NSAによる独仏含む各国首脳への盗聴露見、信頼の喪失]

2/16/2016

[biz law] 富士通、NEC、大井電気ら、談合の余罪隠蔽に失敗し再摘発

ちょっと、どころではなく、救えない位に酷いと思うのです。いや、またしても発覚した電力関連通信設備の談合の件なんですけれども。

今回容疑の掛かっている入札は、中部電力発注の保安設備の一部で、障害時の送電遮断等制御用の通信機器・設備に関するものとのことです。容疑が掛かっているのは富士通、NEC、大井電気、名伸電機の四社。持ち回りで落札出来るよう調整していたという事で、典型的な独禁法違反事件ですね。公金を詐取した重罪で、まず情状酌量の余地も無いだろうものではあるけれども、談合案件としてそれ相応の処罰の対象になるだけのことです。それ自体に特に注目すべき点はありません。

本件特有の問題だろうのは、その発覚の経緯です。当該四社の内、富士通、NEC、大井電気の三社は、昨年に東電で同様の談合が発覚して摘発を受けた件がまだ記憶に新しいところ。その捜査の過程で本件の容疑が浮上した、という事らしいのですね。で、前件発覚の際には、各社とも「捜査には全面的に協力する」とお決まりのコメントを出していたわけです。それが何故こんなに時間が経ってから、それも再び強制捜査を受ける形で発覚したのかと。

前件も本件も、製品も顧客も同種である以上、各社の担当部門は同じ。従って、摘発と捜査を受け、それに「全面的に協力」した筈の組織、人間も殆ど同じでしょう。何故その際に本件が発覚しなかったのか。余罪について追求を受けなかったわけはありません。事実、こうして容疑が掛けられ、捜査を受けて摘発されてもいるのですから。前件の捜査の際に本当に協力していたのなら、その際に本件も当然に表沙汰になっていた筈なのです。

しかるに結果は全く逆。捜査当局側が再度摘発するに至っています。件の全面的に協力するとの言に反して姑息にも余罪の隠蔽に走り、おそらくは証拠の隠滅もしたのでしょうけれども、しかし隠し通せずに暴かれたもの、と理解する他ないのですね。前言は全くの虚偽でした。あまりに悪質と言わざるを得ません。

ここまでで十分以上に腹立たしい話なわけですが。。。その上、本件を受けて発表されたコメントでは、あろうことか前回と同様「捜査には全面的に協力する」とこの期に及んで再び寝言をほざく始末。誠実さの欠片も無いその態度には、間接的に被害を受けた一般市民として、舐めてんのか全員逮捕されてそのまま会社もろとも死ね、と溢れ出る怒りを抑え難く感じずにはいられないわけです。

知ってますよそれは。談合なんて悪質な犯罪に手を染めた時点で誠実さなどあろう筈もないし、その種のコメントは組織としてのポーズに過ぎないって事くらい。それでも、幾ら何でも事ここに至ってそれはないだろうと。不誠実なんて生易しいものではありません。どれだけの悪意があればそのような、謝罪の一言すら加える事もなく、反省以前に自分達の発言を覚えてすらいないとしか思えない振る舞いを出来るのかと。それも一社だけではなく複数が揃って。

あれですね、これ程迄に腐り切ってしまっている、というのなら、もはや自発的な改善など欠片も期待できよう筈もなし。談合には年間売上の10倍位の懲罰金を課して事実上の取り潰し位にするべきだと思うのです。それ位しないと、現状の罰則では軽すぎて予防にはならないのでしょうから。それで誰もいなくなるのなら、それはそれでしょうがないんじゃないかと思うし、新しい企業が直ぐに出てくるでしょうから、特段の問題もないでしょう。

ともあれ、公取はじめ規制当局にはお疲れ様でした。基本的に何処も彼処も真っ黒なのは殆ど明らかなのだから、出来ればもっとバンバン摘発して行って欲しいものです。でも多すぎて一々捜査とか面倒、というか実際の所不可能な位でしょうから、やはり一発アウトで消滅する位の厳罰にして予防した方が適切だろうとは思いますけど。

[過去記事 [biz law] 富士通、NEC含む5社、東電の通信設備整備工事で談合し公金騙取]

2/14/2016

[pol] 終わりゆく株価吊り上げを前に進退窮まる政府・日銀

万事休す、といった所でしょうか。日銀の矢は既に尽き、専らそれにのみ依存していた政府もろともただ呆然と眺める他無いように見えるここ数週間の株式等金融関係各市場についてです。

現在の状況自体は周知の通りであり、今更ここで繰り返す必要はないでしょう。政府・日銀が現在の政策を実施してからこっち、上がり続けていた株式市場の価格が反転し、一ヶ月余りの間に半分程度、およそ2年近くの上昇分が巻き戻された格好になります。為替も大方の想定から大きく乖離し、輸出企業中心に決算に向けて青ざめている向きは数知れないでしょう。しかしまあ、これまでおそらくは不相応に得ていただろう利益からすればまだ何ということもない程度でしょうし、とりあえずは気にするような事でもないのでしょう。

本件を巡っては当然ながら関係無関係入り乱れて各方面が色々と騒がしいわけですが、何にせよ、今更じゃないかと思うのです。緩和と称して株式市場に公的な買い資金を闇雲に注ぎ込み始めた最初の時から、遅かれ早かれこうなる可能性が高い事も十分に認識されていたし、こうなった後で取りうる有効な手段も残されておらず、ただ巻き戻すに任せる他ないだろう事は尚更明らかだったのですから。

一連の政策の開始当初から今に至るまでに政府が行った事は、その事実上の支配下に置いた日銀はじめ公的金融機関による株・債権の価格釣り上げに他なりませんでした。文字通りに。すなわち、従来から行っていた年金等のリスク資産運用比率の大幅な増加、税率の操作やNISA等の導入による民間の買い奨励に加え、挙句の果てに日銀自ら投信の購入にまで手を出す事によって、殆ど売る事を制限あるいは禁止されたも同然の買い資金を、国を挙げて市場に注ぎ込み続けたのです。

結果、その期間内、株価は殆ど一本調子で上昇を続けていました。本来ならば株価は平均的に実体経済の成長あるいは衰退に同期するものであって、そこから外れる動きは原則としてランダムなものに留まり、中長期的には実経済の推移に連動して均衡する筈だったのにも関わらず、誘導の域を超えて際限なく人為的に操作が続けられたわけです。頻繁に介入を公言する事実上の脅迫によって市場原理の反動を抑えこんでもいました。

それによって齎された値上がりっぷりは、まさしく釣り上げとしか言いようのないものでした。為替比で見ても、2009年頃の暴落以前の高値すら超えた、価格と実体面との均衡を見出す事はおよそ不可能に見える程の不合理的なものだったわけです。もっとも、それこそが政府の目的だったのですから、市場操作自体の倫理的な是非等諸々の側面はさておき、結果だけを見れば確かに政策目標は達成しました。まさにその結果だけを求める経済界、殊に目先の利益を重視する向きからは広く強い支持も得られたし、当然に目先の事だけに左右される一般大衆の大半も同様に支持しました。従って、短期的には政府の政策的勝利であったとは言えるのでしょう。

しかし、その勝利は目先のものに過ぎない事もまた明白でした。そもそも政府はその手段を選択するにあたり、明らかに後先を考えていなかったのですから。買い支えによる価格吊り上げとその維持には、当然ながら多額の追加資金を継続的に必要とします。そしてその額は、政府と日銀と言えどもせいぜい数年の調達が限界で、それ以上の長期間に及ぶ継続は不可能なまでに莫大だったわけです。そしてその時が来たのです。

市場価格の上昇が専らその政策的な買い資金の市場への流入によって釣り上げられたものである以上、その資金流入が途切れる、もしくは減少すれば、当然本来の均衡点に戻るべく逆方向の作用が当然に生じるものです。しかも、市場の動きには政策のような配慮も何もありませんから、往々にして一気に戻ろうとする結果、バブル崩壊の一種とも言える暴落が起きるわけです。それを防ぐには、永遠に釣り上げ続ける事を可能にする方法を見出すか、でなければその終了まですなわち釣り上げの継続に必要な買い資金が尽きるまでに、釣り上げた価格に均衡する所まで実体を引き上げるか、のいずれかを成し遂げておかなければなりませんでした。

しかし、政府はそれに失敗しました。というより、目の前の成功に慢心したか、無策というよりさらに悪く、むしろ逆に、増税とそれに伴うコスト増の奨励等により需要を大幅に縮減させ、引き上げるべき均衡点を引き下げてしまっていたわけです。そんな状況で買い資金が鈍れば維持など論外、あっさり逆回転して元に戻ってしまうのも当然の結果と言うべき話です。何ら驚くに値しません。

いや、むしろ元戻りで済めばマシと言うべきでしょうか。ここ最近は中国人観光客の誘致や高級食品の輸出等を前面に出して成長の演出を図っていたようですが、経済全体比では微々たるものであって、到底全体の縮減を補えるようなものではありませんでした。また、政策を実施する前から既にイノベーションは枯渇しており、新たな経済、その循環の発生も殆ど認められませんでした。結局の所、実体は著しく縮減していたわけです。そこに増税。実際、2015年度第三四半期決算、また今年度の予想は、東芝やシャープの惨状を挙げるまでもなく惨憺たる結果になっており、さらに大幅な下落が不可避になっています。では輸出はというと、海外はむしろさらに数倍は酷い縮小の真っ只中という。。。率直に言って八方塞がりと言う他ありません。

かように全方位的に実体面での凋落が明らかである以上、買い支えが切れてそれが反映されれば、元の木阿弥どころかそれを通り越してより低い価格が付けられる事も、むしろ当然の帰結と解釈出来る状況なわけです。

それを防ぐため、直近に導入されたマイナス金利政策は明らかに悪手でした。これは余剰となっている当座預金を株式市場へ流す事で従来通りの株価吊り上げを継続する目的で行われたものだったわけです。手段は利息のマイナス化。いわば罰金を課せば、銀行は預金を引き上げ、運用利回りを求めてリスク資産へ移転するだろうと見込んだのでしょう。

ですが、そもそも安全資産とリスク資産の違いはそのような誘導に素直に従って移行出来る程相対的なものではなく、リスク資産への移転は起こりませんでした。当座預金は同種の安全資産である債権類に流れ、株等のリスク資産は逆に価値を落とした結果、むしろリスク資産からの逃避が加速する結果に終わったのです。

銀行は保有債権の価格上昇は得られたものの、継続的な安定収益源を失い、またリスク資産も大幅に目減りし、運用における根幹からの困難に直面しています。本件に関して大半の民間金融機関には小さくない有形無形の損害とそれに伴う当局に対する恨みしか残らなかったのではないでしょうか。金融機関まで敵に回して、政府と日銀はこれからどうするつもりなのか。マイナス金利が検討すらしていないと明言していた政策であった事もあり、発言に対する信用も大きく失ったのと併せ、もはや中央銀行の体を成していないようにすら見える惨状なわけです。

なお悪い事に、現時点で買い資金が減ったのは民間周りだけ、と言っても規模的にはそれが主体ではあるのですが、本来の本体であるところの日銀の政策はまだ変更すらされておらず、依然として継続的に買い支えている状態なのがまた。この中止と後始末、それに伴う反動はこれからです。途中で減損処理もあるでしょうけれども、最終的には今回大量に購入した投信等を売却し終えて初めて終わったと言えるのでしょう。その時に一体何処で均衡する事になるのでしょうね?大きく毀損したバランスシートと、それ以上に毀損した実体経済、それを反映した株価が残り、何もしない方がマシだった、に終わる可能性は決して低くはないのです。しかし資金もなく、信用もなく、協力もない、となれば、今更撤退する道も残されてはいないでしょう。進退窮まるとはこの事です。

私自身、数年前に日銀が政策の拡大を決定した際に、そんなに死に急ぐ事はないだろう、と虚しくも諦観を抱いた事が思い出されます。無論、諸々の政策は複数回の選挙によって多数に支持された結果でもあるわけで、政権に支持票を入れた国民にこそ責任がある話であるところ、元より反対であったけれども選挙を通じて封殺された側としては、それらの政府支持派に対して、心からの遺憾を禁じ得ない所なのです。可能ならばお前らだけで責任を採ってもらいたい、と、無駄な事とは知りつつ思うのを止められません。悲しい事です。

[過去記事 [pol] 追加緩和決定、無謀の果てに浮かび上がる破滅]

1/28/2016

[note] Win10のバックグラウンドタスク無効化

Windows10絡みの設定メモ。

色々と微妙なWindows10ですけれども。その微妙さの主たる原因は、ユーザ情報を収集するところだろうと改めて思うのです。周知の通り、Windows10はその使用許諾の中で、予めPC内のユーザ情報をMicrosoftが取得する事に同意を求めています。これはサービスで収益を得るビジネスモデルには欠くべからざる要素であり、先行するAndroidやiOSのそれにも同様の条項が含まれていて、特に奇異なものではないのですが、それでも単なる個人の端末ではないPCの、これまで想定していなかった領域へのプライバシー侵害を導入する変更ですから、著しい忌避感を持つ人が多数生じたのも当然の結果と言う他ないわけです。

当然ながら私もその一人なわけで、当初2台をUpgradeしたものの、特に機能面でのメリットが薄い事を確認した後で、1台は既に元のOS(Win7Pro)に戻してしまいました。残る1台についても、設定項目から可能な限りMicrosoftのサーバとの通信を排除するよう設定していたのですが、設定の自由を事実上禁止しているも同然のインタフェースに業を煮やしまして。この程少し手間をかけ、タスクスケジューラ中で待機しているバックグラウンドプロセスの内、不要なものを片っ端から手動で無効にする事にしたのです。

Reporting関連のタスクの多さに改めて驚きつつ、ちまちまと要不要の判定と無効への切替を繰り返し、ついでにその他の通知関連やSkyDrive関連等の不要なタスクも無効にした結果、実にその対象タスクは30以上にも上ったのでした。幾ら同意を取り付けたからといって好き放題やり過ぎだろうと呆れ果てた次第です。法的には問題ないだろうとは言え、殆どユーザへの背信に等しいように見えて、印象は最悪ですね。これでは忌避されても仕方ないのではと。

ともあれ、これまで不安の付き纏っていたExperience Program関連は無論、WindowsUpdate等の挙動も抑制されてくれました。動作上の不具合が発生する可能性も多少なりと懸念していたのですが、それも特になし。今後のアップデートの際に元に戻される可能性はあるので、時々確認は必要だろうのが面倒ではあるものの、それも何時勝手に行われるか不安を抱えるのではなく、自分で管理し得る点で不安は大きく減じられました。総じて、心の平穏を取り戻した気分。やはりPCは自分で管理してこそだと思うのです。Cortanaもストアアプリも不要。従来通りのプログラムが動けばそれでいいのです。そういうユーザ向けにモードを設けてくれれば面倒もないのに、と残念な気もしますね。

以下は、無効にしたタスクスケジューラ中の項目一覧。あくまでも私の環境で独自の判断に基づき無効にして良いだろうと思ったものなので、過不足の有無は不明、またその他の環境での適合性も不明です。Windows7で共通する項目をoffにしてみたところでは問題はありませんでしたが、その辺も含め、ご参考程度に。

<無効化タスク一覧> ※[]はタスクスケジューラ中のフォルダ名

[Application Experience]
 Microsoft Compatibility Appraiser
 ProgramDataUpdater
 StartupAppTask

[Autochk]
 Proxy

[CloudExperienceHost]
 CreateObjectTask

[Customer Experience Improvement Program]
 Consolidator
 KernelCeipTask
 UsbCeip

[DiskFootprint]
 Diagnostics

[Feedback]-[Siuf]
 DmClient

[Location]
 Notifications
 WindowsActionDialog

[Maintenance]
 WinSAT

[Maps]
 MapsToastTask
 MapsUpdateTask

[NetTrace]
 GatherNetworkInfo

[Shell]
 FamilySafetyMonitor
 FamilySafetyRefresh

[SkyDrive]
 Idle Sync Maintenance Task
 Routine Maintenance Task

[SoftwareProtectionPlatform]
 SvcRestartTask

[UpdateOrchestrator]
 Reboot
 Schedule Scan

[Windows Error Reporting]
 QueueReporting

[Windows Media Sharing]
 UpdateLibrary

[Windows Update]
 Automatic App Update
 Scheduled Start
 Scheduled Start With Network
 sih
 sihboot

[WS]
 Badge Update
 Sync Licenses
 WSRefreshBannedAppsListTask
 WSTask

[関連記事 [note] Win10メジャーアップデートの適用とCortanaの無効化]
[関連記事 [note] Windows10アップグレードの無効化]