9/28/2015

[PC law] 全Thinkpadにユーザ情報収集プロセス発覚

元々、殆ど創業時から常にユーザのプライバシーを侵害していると誰しもから疑われ続け、つい最近もSuperfishで多くのユーザを混乱の只中に突き落としたLenovoに再びユーザ情報収集機能の仕込みが発覚してしまいました。平たく言えばスパイウェアが出荷時から堂々と仕込まれていたというのです。

しかも今回の対象はThinkシリーズ全機種だそうで。Thinkpadは無論、デスクトップのThinkCentreも含まれます。これまでのSuperfish等では対象外だったので安心していたユーザも多かろうと思われるところ、その一方で実は堂々と情報を抜き放題されていたというわけですね。最悪です。中身は既にIBM時代とは別物、単なる廉価PCと変わらないとはいえ、Thinkpadのブランドはまだそれなりに愛着のあるユーザもいる筈ですから、取り分けビジネス関連のユーザにとっては洒落にならない話でしょう。

つくづく懲りないというか、死ねよLenovoと。いや、本件では他人事ではないのです。私の以前購入していたThinkpad(E440)も確かめてみたらバッチリ入っていまして。問題のプロセスはC:\Lenovoフォルダ以下の[Customer Feedback Program]と[Customer Feedback Program 35]の2つのフォルダに入っている[Lenovo.TVT.CustomerFeedback.Agend.exe]及び[Lenovo.TVT.CustomerFeedback.Agend35.exe]です。それにdllが少々。これらが、堂々とタスクスケジューラに登録され、毎日一回ずつ起動して情報を収集し送信しているのです。

私自身、まさかこんな堂々と仕込んでくるとは思っておらず、スケジューラの詳細な確認を怠っており、きっちり抜かれてしまっていました。不覚です。即無効化したのに加え、元々予備扱いでそれ程抜かれて困るような情報は多くなく、かつデュアルブート利用のLinux(Ubuntu)側を主に使用していたため抜かれて本当に困るデータはwindows側には入っていなかったのが救いです。とはいえ、非常に不愉快ですね。

このThinkpadは3万を切る位で安売りしていたところを予備の予備程度のつもりで購入したものですが、それでもそう思う位なのだから、他の高額モデルを購入した、特に企業ユーザの失望は半端ではないでしょう。法人周りは言うまでもなく最重要の筈、その顧客層を丸ごと裏切るとか、正直Lenovoはイカれていると思わずにはいられません。もうPC事業自体どうでもいいと言うことなのかもしれませんけれども、それでもこれはないだろうと思うのです。今後のユーザからの突き上げは半端無いでしょう。携帯事業も順調とは言い難いのにいいんでしょうか。無論、どうなろうとLenovoの勝手ではあるのですけれども。

もっとも、ComputerWorldの元記事でも指摘されている通り、ユーザ情報の収集自体もはやありとあらゆるデバイス・アプリ・サイトが競って実施している事なわけで、AndroidやiOSは無論、ThinkシリーズにしてもWindows10では山のような収集機能群がデフォルトで堂々と有効化されているのだし、それらに比べれば大したことではない、とする事も論理的には有り得ないでは無いと言えなくもないのですけれども。実際、個人レベルでは気にしない向きもそれなりにいるでしょう。Lenovoも、Microsoft自体が公式に情報収集を公表しているのだから堂々とやれば問題ないと考えたのかも知れません。しかし、少なくともLenovoは前科が酷すぎるし、元々事実上中国政府の管理下にあって、その軍事目的も含む情報収集と同一視される立場にあるのだから信用は皆無なわけであり、元よりそういう是非を論ずる俎上に乗り得ないのです。少なくとも、企業はじめ少しでも情報を保護する必要や義務がある向きには到底受け入れられないだろう事は間違いないでしょう。事前の了解があれば問題はないのですが、そんなものがある筈もないでしょうし。相応の報いがあるだろう事は必至です。さてどうなる、というかどれ位酷い事になるものやら。

ちなみに、私はThinkpadをもう一台、少し前のモデルである所のL512を所有しているのですが、こちらには入っていませんでした。実は割と最近という事ですかね。という事は色々とやらかしてからあえて本プログラムを仕込み始めたという事になるわけで、尚更理解できないのです。

<無効化方法例>

なお本プログラムを止めるには、上記2つのフォルダを移動もしくは削除するか、タスクスケジューラをいじって起動しないようにすれば良いのです。後者については、ComputerWorldの記事が推奨するTaskschedulerviewを使った場合の画面では下図のようになっているので、


[Lenovo Customer Feedback Program ...]の3項目をReadyからDisabledにします。


これでOK。これを見ると、きっちり昨日も動いてますね。やれやれです。まさかこんな堂々と。。。

Lenovo collects usage data on ThinkPad, ThinkCentre and ThinkStation PCs

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9/19/2015

[biz law] VWディーゼル車に排気ガス適合試験での不正プログラム使用発覚

ここ数年、毎年のようにGMはじめ大手自動車メーカー不正等が明るみになって訴訟その他の大問題になっている米国で、今度はVolkswagenが摘発されたそうです。

容疑はディーゼル車の排気ガス環境規制適合試験における不正。具体的には、ECUに試験時にのみ動作する制御プログラムを仕込み、排気ガス中の有害物質含有量を本来のすなわち通常運転時の制御プログラムによる走行時と比較して遥かに小さく見せかけていた、というものです。通常時だと規制基準の数十倍超過だとかいうのだから酷い話です。試験用プログラムに一本化すれば今回の問題は生じなかったんでしょうけれども、そうしなかったという事は、多分に試験用プログラムでは燃費の悪化や急激な変化に対応出来ない等、実際の運転時には許容し得ない問題があるのでしょう。

ともあれこれに伴い、当然ながらリコール命令も出されています。如何に問題があろうとも試験時の設定すなわち排気ガス制御モードで走行するよう改修が強制される、というわけで。対象は2009年から現在までに製造され、米国で販売されたVWとAudiの自動車約50万台。米国では非主流のディーゼル車のみとはいえ、販売台数世界一を争うメーカーの主力カテゴリーを直撃したにしては意外と少ない気がしなくもありませんが、それでも大した数ですね。元々VWは米国でのシェア獲得には長年苦労していて、直近でもトヨタの数分の一に過ぎない事が台数の少なさに繋がったのでしょうけれども、逆にそのシェア拡大への焦りが本件のような不正に走った原因と推測されますし、結局の所とても残念な話、と言うべきなのでしょう。

しかしこれ、米国で規制基準違反だった、というだけでは済まない筈なわけで。というのも、問題のディーゼル車自体、欧州等では言わずと知れた主力製品なのであって、しかも長年この環境性能を売りにして普及させて来たところ、それが虚偽であったものと疑われる、その影響が小さい等という事は有り得ないのです。これから欧州でも調査・追試が行われるでしょうし、その結果次第ということになりますが、その如何によっては欧州の環境規制自体が事実上虚偽だったという事になり、そのものが崩壊しかねず、控えめに言っても大混乱です。無論、VWに対する信用や製品の競争力等、あらゆる企業体力面での悪影響も半端ではないでしょうから、経済的にも大打撃必至でしょうし。

さらに、本件の発覚した経緯を鑑みれば、本件類似の調査が展開されるのはこれから。すなわち他社へも波及するでしょうし、これからこの種の試験用モードの仕込みに対する摘発も排気ガス規制以外の燃費や衝突防止機能等、広く試験一般に対して実施される事になるでしょうから、その種の不正に依存していたメーカーや部門は文字通り崩壊・壊滅の危機に叩き込まれる可能性があるわけです。

電子制御が一般に普及し、ECUのリコールも頻発する昨今、このような不正が現れる事も当然に予想されたところではありますが、実際に目の当たりにして、しかもそれがこれほど悪質とあってはやはり失望せざるを得ません。ユーザに対しては完全に詐欺なわけですから、その倍賞請求もされて然るべきところですしその額は半端では済まない筈なわけですが、メーカーにしてみればその愚行の報いを受けるだけの事です。ただ、社会・経済に対する影響もまた小さくないわけで、これにどう始末を付けるのでしょうか。もっとも、不正をしていなかったメーカーにはシェア獲得の絶好機到来とも言えるだろうし、全体的に見れば不正一掃のいい機会と見るべきなのかもとも思うわけですが。。。やれやれです。

VW Is Said to Cheat on Diesel Emissions; U.S. Orders Big Recall

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9/03/2015

[note] Win10のモニタOFFタイムアウト設定を無視する現象の修正方法

Windows10へのアップグレード適用以来、モニタOFFタイムアウトの設定時間を無視して画面がOFFになる症状にずっと悩まされて来ていまして。よくある初期OSリリースの不具合かもしれない、と様子を見ていたものの、一月が経過して尚改善されないのに業を煮やし、本腰を入れて対処方法を探してみたところ、何とか修正に成功したのでメモ。

もっとも本件、調査途中で覗いたフォーラムの内容を見るに、症状自体はWindows8時代にも割と広く発生して多くのユーザを悩ませていたものなんだそうで。解決方法も既に確立されており、それを適用すれば良いだけだったのでした。私の処のPCは元々Win8.1で、そのアップグレード前には幸いにも発生していなかったので知らなかったのですけれども、結局のところイライラしながらもMicrosoft公式の修正を期待した私が間抜けだったという事で、誠に遺憾な限りです。

ともあれ。発生条件は、

・USB等外付けのキーボード・マウスの操作によるスリープからの復帰

です。内臓のキーボードやタッチパッド操作から復帰した場合は関係なく、普通にモニタのタイムアウト設定が適用されます。外付けデバイス操作による復帰の場合、コントロールパネル等から設定出来るディスプレイのタイムアウトとは別にタイムアウト時間の設定項目が内部的にあるんだそうで、そのデフォルトが2分なのですね。私は当該ノートPCにキーボード・マウス・モニタを外付けしてデスクトップと同様の使い方をしていたので、自然と該当していた、というわけです。

そしてこのタイムアウト時間は、デフォルトでは電源設定等の項目中に表示されず、従って変更する事が出来ないというか設定可能な事すらユーザには分からないのですね。それでいて、前出Forumのメンバーの一人が問い合わせたところ、Microsoftの公式見解では本挙動は不具合ではなく仕様とのことなのです。思わず脱力してしまいました。ふざけんじゃねえよ、という怒りとともに。

怒りはともかく。というわけで、修正するには、まずレジストリを弄って設定項目を表示させてやる必要があるのです。といって、レジストリ中の以下の場所に以下の値を書き込むだけです。

<レジストリ追加先>

HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Power\PowerSettings\238C9FA8-0AAD-41ED-83F4-97BE242C8F20\7bc4a2f9-d8fc-4469-b07b-33eb785aaca0

<レジストリ設定項目・設定値>

"Attributes"=dword:00000002

無論regeditから手動で追加してもいいのですが、有志による追加設定用のレジストリファイルが下記に公開されていますのでこれを使えば良いでしょう(2.のAdd_System_unattended_sleep_timeout.regをダウンロードして実行)。なお下記ではvista,7,8用とされていますが、win10でもこのあたりの仕様は同じにつき、問題なく使えました。

http://www.sevenforums.com/tutorials/246364-power-options-add-system-unattended-sleep-timeout.html

すると、下図の通り、電源の詳細設定ダイアログ中、[スリープ]以下に[システム無人スリープ タイムアウト]という項目が追加表示されて変更が可能になります。


デフォルトではバッテリ駆動、電源接続時共に2分。


 これを、例えば下記のように好みの時間に変更します。


これでOK。ようやく解決なのです。分かってしまえば設定自体は簡単なのですが、そもそも設定項目自体が隠されていようとは。。。不親切なんて生易しいものではなく、完全に罠だと思うのです。それも悪質な。これが仕様だと言い張るMicrosoftは率直に言って正気ではないと思いますし、数年前から問題になっていることがわかっていながら、デフォルトで設定変更不可にしているのはどういうつもりなのか、全く以って理解出来ません。まさかwin10リリースについては項目自体社内でも把握していないとか?それにしたってねえ。何にせよこれでおしまい。やれやれです。

[関連記事 [note] Windows10の表示周りに不具合頻発]

9/02/2015

[law] 東京五輪、無能と無責任の果てに近づく破綻

五輪ロゴ盗用の件、ようやく一段落というか、白紙に戻ったようですけれども。

自称デザイナーの佐野氏本人は直接間接取り混ぜてのあれほど明白な証拠を突き付けられながら未だに盗用を認めず、またその後の無茶苦茶な正当化の当事者たる各委員はじめ関係者も誰一人として非を認めず、揃って責任逃れに汲々とする現状にあっては、一区切りとすらとても言えないし、代わりの選定にも相当な困難があるだろう事は間違いないわけで、どう始末を付けるつもりなのか逆に興味が湧きます。

既にロゴの使用権に投資あるいは行使済みのサプライヤーには当然その分の損害が発生しているし、広告費用等を中心にその額は少なくとも数百億にはなるでしょう。それは仮に当人が認めたとしても佐野氏一人に到底負える筈もなし、関係者全員が首を差し出す位しないと収まらない向きも多いのではないでしょうか。事の性質上、逃げようもないと思うのですけれども、どうするんでしょうね。

しかし競技場の件といい、揃いも揃って後先を考えず個々の利益追求と保身ばかり目論んで無茶な談合に走り当然のように破綻して、また見切り発車からクソのような損害の山を出し、さらに仕切りなおしすら殆ど不可能に思える程に状況を複雑にしてなお居座る阿呆さ加減には、もうね、呆れすら感じないのです。元々五輪の開催自体に否定的な私としてはそのまま失敗してしまえと思うわけですが、実際そのリスクは急速に高まっているように思われてなりません。関係者が揃って自分に都合の良い現実離れした妄想のもと、てんでバラバラに無法を繰り広げているのだから当然とも言えるだろうわけですけれども。もっともあえて突き放さずとも、これまで数年でこの体たらく、さらに事態は複雑で身動きが取れなくなっていっているのに、これから数年でリカバー出来るとはとても思えないのですが、さて。

頭が痛い今後のあれこれはともかく。さしあたり佐野氏のこれからについては、本件の膨大な損害賠償請求に加え、純粋な著作権上の紛争も山のように振りかかるでしょうし、余罪も同様に追求され続けるでしょう。当人もそれが分かっているから悪意について頑なに否認を続けているんでしょうけれども、訴訟になれば容易に有罪が立証されてしまう程度には一般人の立場から見ても容疑は明白に見えるだけの証拠があるように思われますし、すなわちもう終わっていると言うべきでしょう。無論完全に自業自得だし、これだけ社会に広範かつ膨大な損害を与えておきながら逃げおおせるなど許される筈もないのですが、この上はせめて今からでも潔く罪を認め、自ら進んで責任を取って頂きたく思う次第なのですが。。。無理ですかね。

8/02/2015

[note] Windows10の表示周りに不具合頻発

地雷と知りつつ特攻したはいいものの、何とも微妙なWindows10ですが。。。とりあえずディスプレイ等の表示周りの挙動がおかしいのです。

具体的には、

・抑えめに設定した画面の明るさが突然MAXになって目が灼かれる(ノートPC)
・設定時間経過前のごく短時間でディスプレイ電源オフでロックがかかる
 (HDMI接続の外付けモニタ使用時。1時間設定の筈が数分で)

とか。前者はグラフィックドライバ周りのバグで、後者はスクリーンセーバーの設定が効かないって事なんでしょうか。何で今さらこんな、と訝しく思うわけですが、他にも、

・自動隠し設定をした筈のタスクバーが表示されっぱなしになる

とかいう不愉快な症状も頻発します。なお、アップグレード前のWin8.1及びWin7Proではいずれも一度足りともそのような症状が発生した事はありませんでした。使用不可になるわけではないため、使用していると繰り返し遭遇する羽目になるので、精神的に非常に苛立たしいし、実際の使用・運用にも無視できない程度の差し障りが生じるので早急に除去したいのですけれども、今のところ対策のしようがありません。

いや、地雷と知って特攻したのである程度覚悟はしていましたけれどもね。これはないでしょうと。。。だってこんな瑣末な不具合、普通に設計してあれば入り込みようもないだろうし、そうでなくともリリース前に多少なりとまっとうに実地検証していれば起こりえない筈なわけで。もうわざとやってるとしか思えません。単なる見切り発車なのか、それとも嫌がらせなのか。どっちにしろ遺憾な限りです。

しかしこれ、私のメインPCはLinuxで、Win10機はいずれもサブ機だからまだいいものの、メインPC利用の方は悲惨でしょうね。南無。

(その後追記)
Windows10リリース後、初の累積アップデートKB3081424が来ました。という事で、表示周りの不具合が修正されている事を期待して早速これを入れてみたのです。結果、少なくとも画面ロックのタイムアウト設定無視については解決された様子で一安心。もっともその他の不具合については発生のタイミングが不明につき直ぐに分かる性質のものではないのでしばらく様子見が必要ですが、同様に治っているものと期待したいところです。さてどうかな。

(さらに後日追記)
・・・と思っていたら、画面ロックの設定時間無視が再発しました。数分入力していないとロックされてその都度パスワードを打つ羽目に。。。Nadella sucks.

[前記事 [note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました]
[元記事 [note] Windows10アップグレードはやはり地雷]

(そして解決)

結局、自力で修正する羽目に。デフォルトでは表示されない設定項目を弄る必要があったのでした。やれやれ。

[続き記事 [note] Win10のモニタOFFタイムアウト設定を無視する現象の修正方法]

8/01/2015

[note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました

さて。準備をして望んだリリース日とその翌日に渡ってほとんど放置された挙句音沙汰もなくなり、インストールの実行に辿り着く事すら出来ずに終わったWindows10のアップグレードですけれども。このまま諦めるのも一案ではあるものの、わざわざHDDのバックアップまで取ったのだから一度はやっておこうと思い直しまして。一日空け、概ね出揃った感じのworkaroundを確認の上、再トライしてみたのです。

結果から言えば、成功しました。Win8.1からとWin7Proからの2台とも。手順は概ね以下の通り、インストールメディアを作成して行うのではなく、トリガー部だけを手動で起動する方法を選択。これなら、アップグレード自体は標準のパスで行われるため自己責任にはならず、また失敗も起こりにくい筈な点を考慮したのです。それでも、失敗した時のためにメディアはPro用とHome用、それぞれ32bit64bit兼用のものを作成して準備だけはしておきましたけれども。

<手順>
1. \Windows\SoftwareDistribution\Download以下のファイル・フォルダを手動で削除。
2. コマンドプロンプトをadmin権限で開き、wuauclt /updatenowを実行。
3. WindowsUpdateからWindows 10のダウンロードが開始されるまで1-2を繰り返す
4. 順次表示されるインストーラ画面の指示に従う

まず、1が必要な理由は、WindowsUpdateがインストールの開始に失敗すると、自力で修正出来ないらしいためです。[更新プログラムのインストール日時:]の日時の横に、(失敗)とあればその可能性が高いでしょう。更新履歴の表示を見てみると、下図のように[Windows 10 Home(Pro)にアップグレード]の更新適用に失敗した旨ログが残っている筈。エラーコードは大半が80240020のようですが、Win7Proの方ではC1900208も混ざっていました。
そこでリセットしてやる必要があるわけです。なお、必ずしも一度で成功するわけでもありません。私の場合、Win7Proの方は一回で済んだんですけれども、Win8.1は7回目位でようやく成功でした。ともあれ、1-3の措置が奏功すれば、下図のような画面が出てダウンロードが開始されるのです。
なお、Win8.1では、ダウンロード終了後に現れる再起動ボタンがアップグレード開始のトリガーになっていました。一方、Win7Proの方では、途中で中断し、下図のようなチェックを促すメッセージが表示されたり、
また、下図のような開始用のダイアログが表示されたりと、少しばかり面倒な感じになっていました。何故にこのような違いが出たのかは不明ですが、挙動の不可解さについては今更でしょうし気にしても無意味かなとスルー。
Win7Proの場合に出たこの画面は、おそらく準備完了通知からアップグレードする場合と同じ、すなわち標準のパスに沿ったものだろうと思われますし、むしろWin8.1の場合にスキップされた事の方が異常だったのかもしれません。なお、上図のライセンス条項への同意等については、Win8.1の時は再起動後のインストール実行の直前に同様の内容の確認画面が出て来ました。多分、メディア経由の場合のパスだと思うのですが、まあどちらでも同じ事だろうしやはり気にする必要はなかったのでしょう。
ともあれ、こうしてアップグレードの実行にまで辿りついたわけですが、此処から先はほぼ一本道で、特に問題もありませんでした。強いて言えば、何かとレポートだとか連絡先へのアクセスだとか、プライバシーの侵害を許諾させようとして来るので、それを一々確認して解除するのが面倒だった位でしょうか。小さく表示された(詳細設定)を選択してそこから解除する仕様になってたりしましたから。

起動後も、第一にやったのはその辺のプライバシー侵害設定の解除です。スタートメニューの[設定]-[プライバシー]から数十個はあるオプションの解除と、[システム]-[通知と操作]の項目類、[更新とセキュリティ]-[Windows Defender]の[クラウドベースの保護]とか[サンプルの送信]等。いや面倒です。しかもこれ、上記で同意したライセンス条項の中に情報の送信に同意してるためか、[プライバシー]-[フィードバックと診断]の、[デバイスのデータをMicrosoftに送信する]が完全に解除出来ないんですよね。デフォルトが[拡張]で、推奨が[完全]、縮小するにも[基本]にしか出来ないみたいなのです。とても気持ち悪いわけですが、ライセンスの管理上必要なのは其の通りだろうし、これくらいはと諦めるより仕方ないところでしょうか。

とりあえず動作は概ね問題ありません。ただ、標準のフォントがどう見ても歪で、控えめに言っても美しくない点は正直残念だし、ウィンドウ枠がほぼ無くなったデザインも微妙な感じがします。他にもWin8.1はLenovoのノートPCなのですが、[Lenovo Companion]とかいう謎のアプリが勝手にインストールされてたり。その他の不要なアプリ類と共に即アンインストールしましたが、この強制アップデートはやはり気持ち悪いですね。リスクもやはり高そうですし。一部で言われてるような軽さも感じません。他にも、タスクバーが自動的に隠れなくなる不具合にも遭遇しました。Win8.1の時の一々全画面に移行する事が無くなった点は喜ばしいのですけれども、むしろそれは改悪がようやく撤回されたに過ぎないわけだし、率直に言えば、設定等の使い勝手、プライバシー周りの妥当性、あと見た目とか、概してWin7の方が上だなと思う次第です。

ともあれ。とりあえず移行は完了した事だし、まずは様子を見てみるとしますか。やれやれです。

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そして襲いかかる苛立たしい不具合。地雷だと分かってはいましたけれども、Microsoftの開発体制に疑問を感じるのです。この程度で済んで御の字と思うか、ユーザに害を成して恥じないその姿勢に遺憾を覚えるかはそれぞれでしょうが、個人的にはこれは無いと思う次第です。

[続き記事 [note] Windows10の表示周りに不具合頻発]

[前記事 [note] Windows10アップグレードはやはり地雷]

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リリースからしばらく経って、予約もしてないユーザのPCにアップグレード推奨が表示されるようになったそうで。知人のPCで対処をする羽目になったんですが、その鬱陶しいあれこれが中々消えてくれず、無効にするのに骨が折れました。その時のメモが以下。

[関連記事 [note] 迷惑なWindows10のアップグレード推奨を無効化する方法]

7/30/2015

[note] 傘の折れた骨を補修

先日、日差しの厳しい最中、日傘を差して歩いていたんですが、とある橋の上でぴゅうっと吹いた風にあおられて、ポキンと骨が折れてしまったんです。その傘はまだ数える位しか使っていなかったものにつき流石に買い換えが躊躇われまして、ここはひとつ修理してみるかと。

折れた場所とその折れ方は下図の通り。これは折りたたみ傘なんですけれども、そのリンク部分の骨が折れて外れてしまっています。只でさえ弱いアルミの骨が、さらにリンク穴の分弱くなっているところ、そこに応力がかかってあえなく折れた、というわけです。あまりに残念な貧弱さに愕然とせざるを得ません。
これを、添え木的な金具にはめ込んでつなげます。この金具、先端部分とか色々な部品が入ったキット的な形での販売が主流らしいのですが、当然ながら余計な部品は不要だし、いささか割高でもあるようにも見えたので、今回は某ホームセンターで販売されていた個別売りの部品を調達しました。和気産業製のUS-017という、大きめ(太め)の骨用の金具です。四個セット税込みで200円弱、一個あたり40円ちょい。それ位が適正でしょう。鉄製で、当然ながらアルミの骨とは段違いの剛性があります。
さてその取り付け、まずは太い方から。隙間なく嵌まるよう、ペンチで少し広げたりしておいてから骨に合わせ、爪を骨ごとペンチでカシメます。後でぐらついたり抜けたりしないよう、2つの爪を骨に食い込ませる形でそれぞれギュッと。
次いで、リンク部分と、それを挟むようにもう片方の骨を合わせ、同様にカシメます。これ、骨組みの内側だし狭いしで、ペンチで締めるのが大変。慎重かつ迅速に、少しずつ調整しながら固定していきます。
あっちから締め付けてはこっちから締め付け、を繰り返す事数分、なんとか上手く取り付け完了。リンク部分が外れたりしないか少し不安ですが、とりあえずは繋がっているようです。
開いてみても、とりあえず元と同等以上の強度はある感じ。といってこれはむしろ元の骨が貧弱過ぎると言うべきなのかもしれませんが・・・。そもそも折れたのも強風とかいうわけでもなく、少し風に煽られた程度だったのです。軽いのはいい事だけど、流石にこれはね。今回とは別の骨もまた直ぐ折れそうで不安が掻き立てられます。うーん。
ともあれ、とりあえず使えるようにはなりました。やはり不安のあるリンク部分をもう少し補強するかもしれませんが、まずはこれで一度使ってみようかと思うのです。ちょっとでも風があったら使用中止する心づもりで。あまりビクビクしながら使うのも不本意ではありますが仕方ない。というわけで今回はこれでおしまい。

[note] Windows10アップグレードはやはり地雷

さて、この程リリースされたWindows10ですけれども。予想通りというか、結構な割合でインストール失敗とか、成功しても不具合だらけだとか、酷い事になっているようで残念です。

といって、私の所ではそれ以前の段階なのですけれども。Windows8.1とWindows7Proの2台をアップグレードすべく、HDDのバックアップを取った上で予約し、当日は早朝から起動して観察していたのですが、まる一日以上経ってもインストール手続きに進むことすら出来ませんでした。その間の経緯を簡単にまとめると以下の通りとなります。

 <当日〜翌日の経緯概要>

・当日・朝方
 Win8.1の方で"Windows Modules Installer Worker"プロセスが断続的に稼働。\Windows\SoftwareDistribution\Download以下に幾つかファイルが生成されているのを確認。一方、Win7Proの方は音沙汰なし。

・当日・午前中
 Win8.1、Win7Proとも、何も動かなくなる。バックグラウンドでGWXプロセスは存在しているが、稼働率0%のまま。イメージのダウンロード等がされる兆候もない。Windows10入手アイコンからアプリを起動しても、まもなく入手可能になる旨のメッセージが表示されるだけ。「入手可能になったら通知する」ボタンを落としても何の変化もなし。

・当日・午後
 そのまま何も変わらず。

・翌日・朝方
 前日から変わらず。仕方がないので、一度再起動する。すると、 Win8.1の方ではWindows10入手アイコンが消え、バックグラウンドのGWXプロセスすらも消える。再起動を繰り返しても変わらず。\Windows\SoftwareDistribution\Download以下に前日ダウンロードされていたファイル・フォルダ類も消滅。Win7Proの方はアイコン・プロセス共存在するが、稼働しない点は変わらず。なお双方とも、WindowsUpdateに「予約が完了しました」の表示はされている、ただし詳細を表示するリンクはクリックしても反応しなくなった

・翌日・午後 (追記)
 Win8.1に続いてWin7Proの方もGWXプロセス及びアイコンが消滅。

というわけで処置なしです。この間、テンポラリのイメージ保存フォルダとされるc:\$Windows.~BTフォルダは一度たりとも生成されていませんでした。どうなってるんでしょう。覚悟はしていましたけれども、経緯の説明も何もないというのは酷すぎると思うのですよ。

推測するに、今日になってアイコンすら表示されなくなったのは、不具合頻発につき配信を一時停止したからじゃないかと思われるところです。が、それならその旨アナウンスの1つもあって然るべきだと思うのです。数カ月も前からアナウンスして予約を促し、実際に「まもなく」とまで表示しておきながら、何らの説明もなく停止して放置とか、正気とは思えません。ユーザにもそれなりの準備と対応の手間が掛かっているのですから。数十分間隔でチェックを繰り返した手間と時間を返せと。その杜撰かつ不誠実さには、今更ながらに怒りを覚えます。このままローンチに失敗して、会社ごと潰れればいいと思いますよ。ええ。そうすれば心置きなくWindowsを捨てられますから。

インストールに成功した、もしくは手動インストールした方々からの阿鼻叫喚の報告の山を見る限り、インストールに進めなかった事自体はむしろ良かったと思うべきなのでしょうけれども。何にせよ、現時点でWindows10のアップグレードは地雷と言っていいでしょう。これもタダほど高いものはない、の一種というべきか、少なくとも、様子見をした方々は、少なくとも数週間はそのまま保留にするべきものと思われます。お気をつけ下さい。

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その後、情報収集して準備の上、地雷を踏み抜きにかかりました。一応成功はしたんですが、色々と微妙な気分です。
[続き記事 [note] Win10アップグレードという名の地雷を踏み抜いてみました]

7/10/2015

[note] Ubuntuのlogin時、$TERM変数未定義エラーが表示される現象への対処について

ちょっとした備忘メモ。Ubuntuのログイン時、デフォルトターミナルの変数$TERMがundefinedな旨のエラーを示すダイアログが表示される場合があったのですが、その簡単な調査と対処法を確認したので。

具体的には、ログインプロンプトからユーザ名とパスワードを入力した後、下記のメッセージが表示される現象についてです。

"setterm: $TERM is not defined in /HOME/[ユーザ名]/.profile"

と言っても、これは単なる警告に過ぎず、[OK]ボタンを押すとそのまま普通にログイン出来ます。鬱陶しいだけなので放置していたんですけど、気分はよろしくありません。

しかも$TERM変数が定義されない、という割に、ログイン後に確認してみれば$TERM=xterm等と定義はされているのです。要するに、ログイン処理中の変数定義・チェックの順序不整合が原因と考えられるわけで、確かにそれなら大した問題にはならないだろうと。

で、.profile読み込み段階で不整合が誤検出されているというのなら、そこに修正を加えてやればいいだろう、と思われたわけなんですが、TERMの定義を追記しても変わらずエラーダイアログが表示されます。どういう事なのかと、デフォルトの/etc/skel/.profileと比較してみたところ、自分で追加した変数の定義に加え、下記のターミナルオプション設定が差分にひっかかりました。

setterm -blank 0

これが最後尾に。これはターミナルの節電用画面ブラックアウト時間のオプションで、デフォルト端末の定義云々とは本来関係ない筈なんですが、これが裏でTERM変数とかそれに関係する諸々をチェックしてるのかなと。おそらく自前で追加した変数の設定等と区別出来なかったために仕様変更時に削除されず、そのために齟齬を来していたんだろう、とも。というわけで、 これを無効にしたらエラーダイアログは出なくなりました。

解決した事自体は喜ばしい事です。なんですがこれ、.profileに自前のユーザ変数定義を書き込んでいたのが問題だった、という結論になるわけです。しかし、それは自業自得かと言うと疑問無きにしもあらずです。というのも、.profileは.bashrcを読み込む仕様になっていて、ユーザが通常通りbashを使用し、.bashrcをいじるのならおそらく今回のような問題は発生しないように思われるところ、しかし少し前に起こったbashの致命的脆弱性の件以来、私はbashの使用は躊躇われるのでcsh系のtcshを使っているのです。なもんだから、変数を設定するには.bashrcは使えず、.profileが適切なんですよね。しかしそうするとアップデートから漏れると。Canonicalからすれば、デフォルト外のシェルまでサポート出来ないと言う事だろうし、対応しようとすればコストもかかる話だから、ある程度は切り捨てるのも仕方ない事なんでしょうけど、本来シェルはディストリビューションによらず、unix系システムを使うにあたって一番ユーザがこだわるところで、自由に選択し得えて当然の箇所な筈なわけで。どうにも不満の残る次第なのでした。 ともあれ、これでおしまい。やれやれです。

[過去記事 [IT] bashに最悪の脆弱性発覚]

7/09/2015

[biz] Microsoft旧Nokia携帯部門リストラ7800人、76億$減損

MicrosoftがNokiaのスマホ事業買収時ののれん減損で76億$の損失、併せて当該部門の7800人程度のリストラを発表しました。

どうせこうなるだろうと誰もが思った結果になった、ただそれだけの事なんですが、それを認めるのに随分と時間がかかったものです。モバイル専用OSの系列自体、Windows10でデスクトップに吸収される形で消滅する運びにつき、もうこれ以上先延ばし、言い逃れは不可能になったとかいう話なんでしょうが、そこまで追い込まれないと動けないというのも、現在のMicrosoftの硬直化ぶりをよく表していると思います。難儀な事ですね。せめてもうちょっと段階的にとか出来なかったものなのでしょうか。

ですが、予想もされていた話ではありますし、資金にはまだまだ余裕のある会社は無論、リストラされる社員も贅沢を言わなければ再就職先に困る事もないでしょうから、 外野がそんなに気にするべきものでもないのかもしれません。目の前の問題は中国関連企業の方か、と言ってもそっちは全部が全部偉い事になってますし何処から見ればいいのやら。Alibabaは今のところ全体に比べると落ち方は比較的緩やかなようですが、結局のところ不可避でしょうしいつまで持つのかな、とか。さてさて。

Microsoft plans 7,800 layoffs, $7.6 billion Nokia write-down

7/06/2015

[pol] ギリシャの社会保障削減拒否、瓦解する欧州の夢

ギリシャで財政縮減策受け入れを問う国民投票が大差で否決され、改めて当国民の意思に変わりがない事が示されたそうですね。

結果としては概ね理解し得るところです。現政権の成立の経緯からしても、受け入れた場合のデメリットにしろ、国民が今更転換を受け入れられないと思うのは当然でしょうから。もっとも、これで従来通りの他国の支援は実施しづらくなりましたから、国内に無い袖は振れず、結局は実質的に年金削減等の縮減策を実施せざるを得ない点は変わりがないんでしょうけれども。

それでも、自主的な国家運営の結果か、外国の要求に屈してするかでは、やはり小さからぬ違いはあると言えるだろうのも事実なのであって。極言すれば、仮に結果としては変わらずとも、国家運営の主権を金策のために放棄する事を拒否したと見れば、それはそれで十分に正当性があると言えるのでしょう。そもそも借金を借金で返しても先送りにしかならないわけですし、現実として返済が不可能である以上、それなら踏み倒すなり破産するなり、清算に踏み込む事を含め、それにどう対応するのかは、当事者の問題、あり得べき選択というものではないかと思うのです。

そもそも、赤字だから社会保障費を削れ、というのは、借金を背負った家庭に口減らしをしろと言っているようなものであり、一般に不法なのであって、私企業のコストカット等と同じように扱う事自体不適切な筈なのです。EUの他の国も同様に困窮しているというのならともかく、そうではないのだし、この種の生活保障は国家運営上不可欠なものなのだから、EU国家間で共通して補完するべきものだと個人的には思うのですが。

財政赤字が問題なら、生産性を改善するべきなのであって。私企業経営者がするように単に切り捨てればいいというのは無責任というものです。少なくとも、国民の代表者たる政権が取っていい方針では有り得ません。産業振興策を取るなり、全体的に労働時間が短すぎるというのなら長時間労働を容認するなりすればいいのです。その前に、生活基盤たる社会保障費から削りに行くというのは、流石に有り得ないだろうと。それを拒否した今回の結果は、主権国家の国民のそれとしてはむしろ当然と理解し得るものだと思うのですよ。

もっともギリシャに取っての今後は、仮に可決されていた場合と比べても大変になるでしょうけれども。しかし単に老人を切り捨てて終わり、というのが安直で簡単に過ぎるだけなのであって、何らかの能動的な解決を図るのなら、どうしたってそれよりは大変になるのは分かり切った話、それも致し方ないところというもの。EUは社会保障費位は直接負担をするべきでしょうが、もしそれを拒否すると言うのなら、それはもはや共同体とその一員との関係ではないと言うべきところ、袂を分かつのが筋だと思われるわけですけれども、さてそこまで割り切れるのかどうか。

そもそも経済的な面だけを共通化した国家連合というのに無理があったんだろうと思ったりもするんですけれども。ロシア絡みの事といい、英国の脱退が公然と主張される事といい、都合のいいところ以外を捨象して作り上げられた欧州の夢は、やはり夢、 儚くも散る定めにあるのでしょうか。それとも踏みとどまり、今後は負の側面も正面から協力し、連帯を強めるのでしょうか。後者の方が望ましいのは無論ですが、現状では想像しづらいのがなんとも残念です。

6/20/2015

[law] 殺人犯手記出版、公然たる不法行為の異常

神戸児童連続殺人事件の犯人による自伝出版の件、てっきり速攻回収されるものだと思っていたんですが、物議は醸しつつも何となくそのまま販売継続中なようで。どういう事なんだろう、と少し首をひねっている次第なのです。

というのも、殺人等被害者遺族の精神面については過去の判例等からして法的な救済・保護が与えられるべきものと認められているのでありまして。しかるに、この種の書籍の出版は往々にして遺族に多大な精神的苦痛を与えるものであるし、実際に本件被害者遺族は出版前後を通じて明確に被害を訴え、併せて回収も求めているのですから、既に不法行為である事は疑いようのないところなわけです。出版社は公益性を主張して正当化を図っているようですが、遺族に苦痛を受忍させるに足るものとは到底認められないでしょう。実際に遺族側が裁判に訴えれば、出版の差し止めと賠償は無論として、回収等の遡及的な被害回復措置の強制までも認められる可能性は非常に高い、というか殆ど確実なように思われるところです。

なんですが、出版元の太田出版は遺族の意向を完全に無視して出版を強行し、非難を受けても逆に逆撫でするかのような反論コメントを出して当然のように継続、あまつさえ重版しようとしているんだとか。 話題性が高いのは事実だし、炎上商法として見れば今のところは成功している、と言えばそうなんでしょうけれども、それにしてもここままで明確に違法性を帯びているものを公然と強行するのはどうなんだろうと。その異常性には正直引きますし、恐怖を感じさえします。

法的には無論、社会的にも大多数からは到底容認され得ないだろうし、このまま行けば普通に起こされるだろう訴訟の結果、莫大な賠償や回収を強いられて、差し引きすればむしろマイナスになる可能性とか考えないんでしょうか。それも込みで博打を打ったか、もしくは目先の売上が目的か、はたまた単なる愉快犯か。いずれにしても論外と言わざるを得ません。それ以前に法規範を軽視する、というよりはむしろ積極的に犯し、今なお苦しむ遺族を害して恥じない殺人犯及びその共謀たる出版社の振る舞いと、それを容認する声も聞こえてくる社会の現状には、深い失望を覚えずにはいられないのです。このような不法状態が一刻も早く是正され、被害者遺族に早急かつ十分な保護・救済がなされるよう願う次第です。

本件は成年の犯行であれば当然に死刑に処せられていただろう犯人が、少年法の規定によって免ぜられた帰結でもあるところ、被害者遺族に対して被害を一方的に受忍させた挙句のこの始末。その到底正当化し得ない不均衡・不正義を前にして、近年特に高まる一方の少年法への非難がより一層勢いを増す事も殆ど必然の結果と言えるでしょう。いっそ、死刑相当の凶悪犯については保護規定を撤廃する等の改正が提起されればとも思うわけなのですが、さて。

神戸連続児童殺傷事件、元少年の手記に広がる波紋

6/19/2015

[biz law] トヨタ初の女性常務役員Julie Hamp、就任2ヶ月で麻薬密輸入し逮捕

トヨタの広報トップ、いや正確にはNo.2か。彼女が薬物密輸で逮捕された件、またとんでもない話で驚きました。

容疑者はJulie Hamp、トヨタ公式によれば、元々はGMのVice Presidentを長らく務めた後、同じくVPとしてPepsicoへ移籍して数年後に米トヨタのVP及びCCOを経由し、この春にトヨタ本体の常務役員として渉外・広報本部の副本部長に就任していた、とのこと。常務役員というのは法的な意味での役員というわけではなく、あくまでトヨタ社内での役職に過ぎないながら、実質的に執行役と同レベルすなわち各部門のトップに位置づけられる上級職に当たります。以前から政府が批判まみれでゴリ押ししようとしているところの女性の役員登用の推進、その政策を象徴する人事としてニュースにもなっていました。個人の名前まで覚えていた人は殆どいないでしょうけれども。

容疑は麻薬取締法違反、具体的には違法薬物の密輸入。成田の税関で引っかかりました。問題の薬物は、鎮痛薬等として規制されているOxycodoneの錠剤。原料はケシ類で、当然ながら幻覚作用や依存性といった麻薬一般の副作用も引き起こす危険な薬剤です。モルヒネと似たようなものと言えばいいでしょうか。従って、その所持・利用には相当の理由と、それに基づく公的な許認可が必要になる代物です。逆に言えば、予め許可を得れば処方もされ得るし、輸入も可能なのですけれども、そういった手続きを取らずに密かに輸入しようとしたところ、税関検査で露見して御用、というわけです。そうそう検査なんてされない、と高を括ってでもいたんでしょうか。

ともあれ、許可無く輸入した時点で、紛うこと無き違法行為につき逮捕は当然の成り行きと言えるでしょう。ただ、その先は少し考慮が必要です。この種の麻薬系の薬物の規制の程度は国ごとに結構違いもあって、本件輸入元であるところの米国は特にここ最近薬物の合法化が進められている事もありますから、その有責性の軽重は個別具体的に事情を考慮する必要があるわけで、氏の受けるべき非難等の程度は一概には判じ難い面もあるわけです。例えば、米国在住時には普通に処方を受けていて、日本でも別途処方を受けていたけれども、米国に保管していたストックを使い切るために取り寄せたところ、その際に事前の許可が必要な事を知らなかったか失念していた、といった事情なら、それ程悪質性は高くないものと評価され得るでしょう。

なので、逮捕の報に驚きつつも、詳細が続報されるのを待っていたのですが・・・果たしてその実は、本人にそのような強度の鎮痛剤を服用すべき健康上の事情はなく、かつ輸入に際しても品名に薬剤とは記載せず、全く関係ないネックレス等として、中身もそれらで薬を隠すようにしていたというのです。それが事実であれば、その目的、手段共に、典型的かつ最も悪質な類の、確信的な不正利用目的での麻薬密輸入としか理解し得ないものであり、従って当然にその他の麻薬犯罪と同じ程度の非難と刑罰が課せられるべき酷い犯罪と評価するしかないのです。もう色々と考えていたのが馬鹿馬鹿しくなる位の話で、全く以って時間の無駄でした。勝手に考えておいて言うのも何ですが、遺憾な限りです。

しかし、なんなんでしょうこの人。仮にも大企業グループの役員を歴任して来ておいて、何故にこんな稚拙かつ悪質な犯罪を犯しうるのか、いささか理解し難く思われてなりません。しかも広報担当でしょう?各国の法や習慣、社会の性向等に明るく、親和性も高い人物が就いて当然な筈なのですが、何がどうしてこんな(日本社会に対して)反社会的な人が据えられてしまったのでしょう。本当に件の女性登用のノルマ達成だけを目的とした人事だったという事なのでしょうか。確かに、経歴とか見た目とか女性であるとか、外見さえ良ければそれでいいと割り切った結果だとすれば、成る程そうかと理解出来なくもないところです。そう思って見てみれば、本部長ではなく副本部長というのにもお飾りっぽさが漂っていて見えて、整合する気もします。だとしたら、形式的に過ぎた、実質面で不適切な人事の自業自得として、案外この結果も必然と言えなくもないのかもしれませんね。

いや、女性閣僚の不祥事の件の際には、まさか民間ではそんな自殺に等しい愚かな真似はしないだろうと思っていたのですが。真っ先にかような人事を平然とやらかすとは。。。あのトヨタが、と意外に思うべきか、それともやはり日本を代表する企業、悪い面でも象徴的だ、と呆れるべきなのか。少なくとも愕然とせざるを得ないのです。この様子だと、他所も推して知るべしでしょうし、下の方は何をかいわんや、もっと酷い事になってそうです。いやはや。ご愁傷さまといううか、阿呆ですねえ。全く以って笑えませんが。

あと、まさかの上にもまさかとは思いますが、その薬、交際等の業務に利用していたなんて事は・・・流石にないですよね?本件の異常ぶり、というか、本件を平然とやってしまう位の人物なのだから、と有り得ないと言い切れないあたりが恐ろしい。ここから芋蔓式に、とかなったりしたらとか考えるともう。。。くわばらくわばら。まあでもいい機会なのかもしれませんし、司法関係者にはこの際徹底的にやって頂きたく思う次第です。

ビニールで箱梱包、麻薬小分け=内容物は「ネックレス」申告-トヨタ常務密輸事件

それで、本件を受けたトヨタのコメントの白々しい事。法を犯す意思がなかったと信じているだとか、この状況で何を世迷言を、と呆れる他ないわけです。むしろ何故そう思えるのか、相応の具体的な根拠とか理由があるなら是非聞かせて頂きたいものです。まさか他の役員や社員も同じ穴の狢だから、とかいうんじゃないでしょうね。

トヨタ社長「仲間を信じ、捜査に協力」 役員逮捕

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6/07/2015

[note] Ubuntuサーバに外付けHDD追加後、再起動時にエラーで止まる不具合への対処

最近、サーバにデータストレージ用に外付けHDDを増設したところ、その初期設定中にちょっとしたトラブルに遭ったのでメモ。なおサーバのOSはUbuntu(15.04,64bit)です。

と言っても、おそらくは遭遇する可能性自体そんなに高くないだろう事象なんですけれども。何かというと、初期化やマウントの設定等の後、再起動時に当該ドライブが見つからず、エラーを吐いて止まってしまうようになったのです。

その内容を説明する前に。エラーに至るまでの初期化等の手順は、大まかに以下の通りです。

1.稼働中のubuntuサーバにHDDをUSBで接続し、自動マウントされたものを即アンマウント
2.ドライブ内の初期パーティションを全て削除し、[Linux Filesystem]形式のパーティションを作成
3.作成したパーティションをext4でフォーマット($sudo mkfs.ext4 /dev/sd*1)
4.マウントポイントを作成し、手動でマウント
5./etc/fstab にUUID指定でオートマウント設定記述追加

以上の作業の後、再起動したわけですが、"Error: no medium found at /dev/sd*1"とか言う感じのメッセージと共に緊急モードへのログインプロンプトが出て止まるのです。Ctrl-Dで再実行、等ともあったのですが、試しに再実行してみても、同様のエラーメッセージが出て元に戻るばかり。再起動してみても変化もなく、仕方ない、と諦めてそこからログインして確認したところ、当然ながら追加したドライブはマウントされていないものの、ハードの認識はされています。従って、ドライブに問題があるのではなく、ファイルシステム側でマウントに際してドライブを見失っているだけ、という事になるのですが。。。これは妙な事になった、と首をひねった次第なのです。

というのは、上記5.にある通り、起動時マウントの設定はマウント先ドライブのUUIDを指定して行っているのだから、ドライブが認識されている以上、本来なら見失うなどという事は起こりえない筈なのです。どういうことなのかと。フォーラムのログを漁ってみても、今ひとつコレという情報も見当たりません。と右往左往することしばし、埒も明かず。

何らかの不具合な事は明らかながら、既知の事例が見当たらず、原因もわからない以上は自分で試行錯誤するしかないわけで。面倒な事になった、とため息を吐きつつ、workaroundの検討をする羽目になったのでした。経過の詳細は省きますが、fstabの設定を元に戻したり、その他のストレージ類を付け外して干渉の有無をチェックしたりと、色々と確認してみたのです。

その結果ですけれども。問題は解決し、正常に起動し、当初の意図通りマウントもされるようにはなりました。やれやれです。原因は、多分に推測が入るのですけれども、おそらくは上記手順の内、1.がまずかったのだろうという結論というか推論に至ったのです。具体的には以下の通り。

まず、上記1.のように既にリムーバブルドライブが接続されているところにリムーバブルドライブを追加する場合、既存ドライブより後ろのアルファベットがドライブレターとして割り当てられます(/dev/sd*の*の所)。

その状態で上記2.から5.までの作業を行うと、システム側に、そのドライブがそのドライブレターでマウントされた旨記録され、その後の再起動時にその記録を参照・照合して再マウントしようとしているようなのですね。(チェックをしているだけなのかもしれませんが、外からは同じように見えるでしょうしその辺は判然としません)

で、再起動の際、ドライブレターに変更が無ければ特にそれが問題になる事は無い筈なのですが、外付けドライブの場合、ドライブの検出順に割り振られる結果、再起動前と異なるドライブレターが割り振られてしまう事があります。※実際、私の場合は再起動前後で変わっていました。

すると、ファイルシステム中の記録と齟齬を起こし、ドライブ自体は検出されているにも関わらず、マウント対象とは認識出来ずにエラーとなってしまう、という事になっているようなのですね。

あくまで推測ですが、再起動前のドライブレターがエラーメッセージに出る以上、そう解釈する他無いように思われます。そうだとすれば、なんという間抜けな、というか。そもそもそういうエラーを避けるためにドライブをUUIDで指定してる筈なのに、それじゃ意味が無いと思うのですよ。この結論に至り、解決法を見出すまでに何回も再起動をさせられ、時間を浪費する羽目になった身としては、文句の一つ位は言う権利もあるだろうとも。なお、本件事象は、ext4だからなのかとか、具体的に何処のプロセスでの事なのかといった詳細は未検証につき不明です。

ともあれ。本件不具合の原因は、再起動の前後でのドライブレターの齟齬にある、とすれば、それを回避するには、その齟齬を無くせばいいわけです。その方法は色々あると思いますが、例えば以下の手順を踏めばいいでしょう。

f1./etc/fstabの記述を追加前の状態に戻し、再起動(各種ドライブは接続)
f2./etc/fstabに記述追加
f3.fstabに基づいて再マウント($sudo mount -a)

こうすれば、起動時のドライブレターでマウントされた状態が記録される事になります。これで解決。もっとも逆に言えば、最初に接続したあと、各種設定を行う(上記1.の)前に再起動をしておけばf1と同じ状態になるのですから、そうする方がスマートと言えるだろう話なのですけれども。後から言っても仕方のない事ではありますし、今回はあくまでトラブルとその解決方法の報告、という事でこれでおしまい。やれやれです。

6/05/2015

[biz] 新製品が相次ぐ音声操作端末に見る機能と技術の齟齬、コンセプトの破綻

何と言うこともない話なんですが。最近、音声に特化した据え置き型端末の新製品が立て続けに目に止まりまして。あれです。ホームコントローラとかパーソナルアシスタント等と称される、部屋に設置しておいて、音声で会話したり天気予報を検索したり、オーディオや各種家電を操作したりする類の端末です。どれも中身が技術的に殆ど同じような感じで、今は音声関連技術のトレンド的に一種の製品化ラッシュが起きやすいタイミングにあるのかなと、ちょっと気になった次第なのです。

特に目を引いたのが、米AKAStudy社のMusio。人型のロボット然とした外観の製品で、中身はAndroidOSを採用したスマホ類とほぼ同じ。人型と言っても機械的な動作は一切せず、ただ顔にあたる部分にモニタが入っていて、表情等を変化させる機能がついています。有り体に言えば、タブレットを人形の顔部分に突っ込んだものとほぼ等価ですね。価格はCPU等のグレードや機能の有無により、$159(basic)から$599(genius)まで。これに開発キットやアドオンボード等のオプションが色々設定されているようです。

機能は概ねその中身から当然に予想される通りで、概ね文単位の簡単な音声入力を認識し、Siriライクな応答を返す会話ロボットとしての機能を持ち、その延長として各種家電の制御や外食等のレコメンデーション機能等が実装されています。

これらの機能は、デモ映像を見る限り、それなりに動作はしているようです。一昔前までの音声認識ロボットと言えば、機能面の謳い文句は似たようなものながら、その実は特定の予め登録された個々人の音声による、少数のコマンドにしか応答しない、しかもその精度も著しく低いという、はっきり言ってお粗末で話にならない詐欺そのものの代物だったわけですが、それを思えば隔世の感がありますね。

ですが一方で、まだとても実用に耐えるとは言えないとも思うのです。理由は色々と思い浮かびますが、何よりも致命的だろうのはそのレスポンスの悪さ。音声を発し終えてから、各種応答をするまでに数秒以上のラグが生じるのです。その上、認識に失敗して誤った応答をする事も少なくないようです。これはちょっと。。。音声入力の終わりを検出して、それを認識し、その内容に応じた処理を行って、応答音声を作成する、とここまでやって初めて応答が開始出来るわけで、そのラグにもある程度致し方ない面がある事は理解出来なくもありません。ですが、それはあくまで作る側の事情に過ぎず、ユーザが使えるか否かとは関係ない話なわけで。それでも我慢強く使うという人もいないわけではないかもしれませんが、大多数がそうだとはとても考えられません。残念ながらこれでは一般向けの会話ロボットとしては成立しないでしょう。

会話ロボとしては使えないだろう以上、それでも売るというのなら、その他の機能すなわち家電コントローラやネット用の端末として利用するしかないでしょう。しかし、こちらにも看過し難い問題があります。精度の低さです。このため、努めてゆっくり話しかけ、応答まで何秒も待つ必要があるのですが、その挙句にやり直しを強いられる事もしばしば。これでは思うように操作出来ず、多くの人に取って我慢ならない欠陥品との烙印を押されるだろう事は確実です。また、デモでは殆ど確認出来なかったものの、その構造から推測される不安点もあります。雑音等、周囲に他の音がある場合にエラーが増える可能性が極めて高く、通常の利用シーンでこれが問題になる可能性が非常に高いものと思われるのです。

如何にも置物らしい外観を持ち、音声により接触せずに操作出来る事を売りにするこの種の端末を、タブレットのように一々持ち歩いたりする人はおそらくいないでしょう。通常、室内の何処か、棚の中等に設置され、その室内中の任意の場所から操作されるべきものと捉えられる筈です。しかし、室内で人が発する声は、必ずしも端末へのコマンドばかりではありません。むしろコマンドの方が少ないだろう事は明らかです。然るに、ある程度離れた場所から、また様々な方向から届く声の中から、どうやってその端末へのコマンドを選別するのか。まさか端末を置いた部屋では電話も独り言もするな、とでも言うつもりでしょうか。そして、ここでさらに問題になるのは、そもそも当然ながら室内は無音ではないという事です。客人等、複数人が居れば会話もなされますし、テレビや各種オーディオから音声が飛び交って当然の環境なわけです。この中から、端末へのコマンドをどう判別するのでしょうか。

これは従来から音声入力を操作に用いるデバイスでは問題になって来た点で、例えばGoogle Glassでは、操作者からの距離で環境音との区別を図り、かつ入力前に"Ok,Google"とトリガーを発声する仕様にして本人の発する声の中からコマンドを判別する仕様となっていましたが、それでも誤認識は解消出来なかったそうです。今のところ、音声のみによる操作を採用したデバイスで、この問題を十分に解決する方法を発見し得たという話は聞きません。必ず、音声以外の情報による補助、離れた位置からの音声は除外し、マイクアレイ等によって方向を限定し、さらに画面等のタッチによるトリガーを加える等、何重もの限定処理を加えてなお誤りを排除し得ない、というのが現状と言います。要するに、任意の位置から任意のタイミングで発せられる音声には対応出来ないというわけです。ここ最近のデバイスも、おそらく例外ではないのでしょう。

これはすなわち、そういうコントローラやネット端末としても、そのコンセプトに沿った使用には到底耐えないだろうという事になるわけです。そりゃそうです。何らかのコマンドを入力しようとする度にその場の全員が声を潜め、テレビやBGMを全てミュートにしなければならないコントローラなど、誰が使うというのでしょう。しかもそれがラグまみれのうすのろで、声を発する度に無音の状態を何秒も待たされるというのですから論外です。従来通り、ボタン等の確実に動作するリモコンやスマホを取り上げて操作する方がよほどスムーズかつ確実で、合理的なわけですから。

もし、周りでどのような声や音が飛び交おうとも、その全てを適切に認識し、自身へのコマンドや呼びかけを適切に拾い、応答を返す事が出来るというのならば、遅延は酷くとも全く使えないという事もないのでしょう。しかし、実際の所それは技術的にあまりに困難である事は明らか、watsonレベルのデータベースとプロセッサが当たるならまだしも、一般向け程度の端末にそのような処理能力があろう筈もないわけで。

おそらくはむしろ逆、すなわちそういう処理能力の低さ、精度の悪さが拭い難いものであるが故に、頻繁に誤りがあっても許されうる用途として"会話"を主機能に出しているのではないかとも思うのです。そう考えると、何とも残念というか姑息というか。本来、会話というのは十分な知性、言い換えれば認識の精度や速度といった能力が基礎としてあって初めて成立するものであって、簡単な文を機械的に認識し、応答を返すだけで成立するとはとても考えられないのですが。。。要するに、製品のコンセプトが矛盾を来し、もはや破綻していると思うのです。

なお、中のハードはじめ技術的には殆ど同じと言えるだろうAmazonのEchoは会話を排し、というか外観からしてロボットというより音声認識機能を付けたスピーカーというべき代物で、機能面もネットショッピング等コントローラ端末に特化しているため大分毛色が違いますが、それはそれでやはり音声認識等の速度・精度面で難がある事には変わりなし。特に誤認識率の高さについては、そんな不安定なものを買い物に使うのは怖いと思う人は多かろうし、こちらもコンセプト自体に齟齬があるんじゃないかなとも思うのですが、Amazonはどう考えているのでしょうね。

あと、何かタカラトミーが20000位で似たような機能の会話ロボを子供向けに投入するって話も聞こえてきましたが、価格からして、おそらくMusio以上のものでは有り得ないでしょう。 子供向けにしては高い価格と、その酷く舐めた感のある嘘満載の機能・性能が広く受け入れられるとはとても想像出来ないのですが、果たしてどうなるやら。

そんな感じで、一見洗練されているように見えなくもないものの、どれもやはり技術的にまだ実用になっているとはとても言えず、コンセプトが破綻しているだろうものばかりでがっかり、なのです。Siriに始まったボイスアプリがスマホ上でそれなりに定着した事を受け、これを使って次のビジネスを生み出したい、という意図はよく分かるのですけれども、作ればいいってものではないでしょうと。こういうシーズ先行でニーズ無視、かつ過大広告で失敗した例は数しれず、とりわけロボットで言えばペットロボは、失望の果てに跡形もなく消えました。汎用技術を基盤に採用している分安価になったものの、基本的な性質は同じもののように見える本件、結果も同じになるのか否か。さて。

Adorable AI-powered robot Musio just wants to be your friend
タカラトミー、会話ロボを家庭へ ドコモと連携