1/30/2015

[note] IH調理器の壊れたスイッチを修理

してみました。知人から頼まれて。対象たるクッキングヒーターの型番は今は亡きNational製KZ-K221A、大分古い機種です。2口あるコンロのうち右側用のON/OFFスイッチが全く反応しなくなったとの事ですが、いくら古いと言っても通常の利用方法なら押下回数はたかが知れている筈、それで壊れるとは随分と運が悪い話だな、等と思いつつ、とりあえず分解して調査してみる事に。


他のスイッチは問題なく動作するので、おそらくは当該スイッチ部分の部品のみの破損と推定。であれば、修理するにも確認するにも、ともあれ当該部分の基盤にアクセスする必要があります。というわけでまず天板の取り外しから。天板のネジを数個外し、隙間にマイナスドライバをこじ入れてぐいっと持ち上げます。金属製につきそれなりに重いために結構な抵抗があり、それが何らかの固定がなされている場合と区別が付きにくい事もあって、万が一にも壊さないよう、ちょっとずつ慎重に。


抵抗を確かめつつグリグリとねじこみ、バコッバコッと持ち上げていくと、最後に抵抗が一気に弱まり、バコンガシャンという、何かが落ちたような割と心臓に悪い感じの重い音と共に鉄板が外れます。で、確認してみると、左右各コンロのコイルの中心部が緩めに鉄板に接着されていたらしく、それが鉄板の持ち上げと共にくっついて上り、途中で自重に耐えきれず外れて落下していたのでした。その際にコイル部のスプリング付きの支柱部が外れたりはしていますが、特に破損はなし。ほっと胸を撫で下ろします。


上から見るとこんな感じ。真ん中のこれまたスプリング付きの支柱が鉄板と接着されていたのですね。その点を含め、それなりに凝った作りになっていたのは少し意外でした。


しかし今回はコンロ部は修理も調査も対象ではないので、スルーです。鉄板を外すと現れるパネル部のネジを外し、パネルを手前に引き倒します。


すると基盤にアクセス出来るのです。ケーブルコネクタを外して、


さらにネジを幾つか外して基盤を取り出し。


基盤にはめ込まれているスイッチボタン用のブラスチックプレートを外します。基盤に固定されている液晶部を壊さないように注意しつつ。で、ようやく基盤が露出します。


問題のスイッチは、タクトスイッチのうち右端下側のものですね。[加熱 切/入]となっている赤いスイッチです。テスターで導通テストしてみると、スイッチを押しても全く導通しません。他のスイッチは問題ない所を見ても、単にこのスイッチが壊れただけ、と原因が判明しました。というわけで、大人しく交換すれば終わりです。で、寸法等を調べて、適合する部品を取り寄せました。(下図)オリジナルと同じ色(赤)のものもあったんですが、後々交換した事がわかる方がいいかと思い、色違いのものを使う事に。


交換作業自体は至極単純。はんだごて等で元のスイッチを取り去り、交換するだけです。なお、実は部品を取り寄せている間、当該スイッチが使えなくなるのは不便なので、応急処置的に隣のあまり使わない[揚げ物 切/入]スイッチを[加熱 切/入]の所に移植して使っていたのです。なので、届いた部品は下図の通り、その間抜けていた[揚げ物 切/入]の所に付けられています。


取り付け後にテスターで試したところ、問題無し。というわけでさっさと組み上げて、修理完了と相成ったのでした。無論、実際の動作も問題無し。

作業自体はそんな感じで、何という事もなかったのですけれども。意外でした。何がって、この手の極めて高い耐久性が求められる類の機器の、それもスイッチなんて一番壊れにくく作られている筈な箇所でこんな単純な破損が起こるというのが。スペースには余裕が有りすぎるくらいあって無理な設計というのも有り得ないし、部品自体も特に高価なものではなく、一般にコストカットの対象になるような箇所ではないものと思われるのにも関わらず、こんな致命的な故障に遭遇するというのはやはりとても運が悪いと言っていいんじゃないかと。

まさかソニータイマーよろしくわざと壊れやすくして買い替え・修理の頻度UPを狙った、なんて事もない・・・ですよね?そんな調整出来るようなもんじゃないでしょうし。といって、それは自力で修理が可能だったから言えるわけで、普通はこんな些細な故障でも丸ごと買い替えとかせざるを得ないんでしょうし、ひょっとしたら、と疑心も沸いてしまうのであります。それは考えすぎにしても、いささか不可解に思うくらいには意外な故障でありました。Nationalのようなブランドでも、昔のような耐久性はもはや期待出来ない、その事はよく理解していたつもりではありますが、それでもこうして見せつけられると、今更ながらにいささか残念な気持ちも禁じ難く感じられてしまうわけなのです。

ともあれ、無事修理出来た事はめでたし。というわけで今回はこれでおしまい。

1/23/2015

[pol] 安易な中東紛争肩入れ、曝け出された無謀と取り返しの付かない現実

Isramic Stateによる日本人人質殺害脅迫の件ですが。本件の分析や論評の類は既に山ほど出されていますが、今ひとつすっきり同意出来るものが見当たらないので、個人的に思うところをメモとして。

本件、元々中東の紛争には直接関与せず、おそらく当事者からはその他大勢の一つに過ぎず敵でも味方でもない第三者的な位置づけだっただろう日本が直接の脅迫相手にされた、イラク戦争時の捕虜殺害等とは一線を画す事案ですが、無論それには相応の理由もあるわけです。仮に何もなかったとしたら、普通の人質として関係者に身代金が要求され、あるいはそれを支払えば解放されて終わりだったものと想像される事案なのですから。

そうはならず、一線を画してしまった原因は明らか。安倍首相の中東訪問、その際に発表した政策や発言等の振る舞いに帰せられると言えるでしょう。すなわち、イスラエルとの協力関係構築を初め、中東での紛争関係国の一部に対する従来とは明確に異なる積極的な関与への政策転換と、IS敵対国の支援を明確にした多額の資金提供の決定、またその大々的な発表。これを以って、中東諸国を含め、世界から公式に日本はイスラエルの味方であり、ISの敵と認識される事になりました。ISにとっての敵、というだけですらなく。発言の内容、表現から言っても、誤解の類ではなく、むしろ安倍首相はそういう認識を広く周知させる事を意図したものと解釈する他ない振る舞いをしています。

そういう前提を踏まえれば、本件ISの脅迫も、敵対国へ攻撃を加えるにあたり、今ある手札で取りうる最も効果的な手段を選択し実行したに過ぎないものと理解出来るわけです。すなわち、国際社会から日本とISの敵対関係が認定されたが故の必然的な帰結と言えるでしょう。

で、実際にそういう事態に至ったわけですが・・・そこで曝け出されたのは、本件のように敵対側からの攻撃が実際に行われた場合、日本は何ら取りうる対策を有しないという事です。実力的手段は勿論の事、口頭の交渉すら殆ど不可能。訳が分かりません。そんな事は分かりきっていた、とは思うのですが、今回のように積極的な紛争への関与を打ち出すのなら、それなりの備えがあって然るべき筈、それが蓋を開けてみたら何も考えてませんでした、どうしようもないです、というのですから。幾ら何でもあんまりだと、その無謀、無能ぶりに眩暈がするのです。

集団的自衛権絡みで勇ましい事を言っていたのは何だったのでしょう。散々国民の安全を守ると軍事への備えを説いて組織も作り予算を注ぎ込んでおきながら、リアルな殺し合いには何の備えもなかったとか、笑い話にもなりません。もういいからお前ら全員行って何とかしてこいと。何ともならなかったらそのまま死んでこいと。元々信頼も期待もしてませんでしたから今更失望するわけでもありませんけれども、そのあまりの醜態には、いささか自棄な気分にもなろうというもの。

その上最悪な事に、上記紛争への関与表明等はもう取り返しがつかないのであって。最初から、ISとか区別せずに、紛争で被害を受けた人への人道援助として広く支援する、とか従来通りのスタンスにしておけばよかったものをと個人的には思うし、実際政府は脅迫後公式見解をその線に修正している様子ですが後の祭り。今後は国内でテロとかも冗談抜きにあり得るわけですけど、どうするんでしょうこれから。と言ってどうにもならないんでしょうけど。せめて私や私の知人友人の近くでは起こらない事を祈るばかりです。

Japan's Abe pledges support for Mideast countries battling Islamic State

(後日、追記)

そういう決定的な出来事があってから暫く。その間、事態は何も動かず、否、日本政府は何もする事が出来ず、ただ無意味な非難と解放要求の発信を繰り返すばかりでした。結果、人質の一人が予告通り殺害され、その一連の中で破格の広告効果があり、かつ反撃も無くISにとって安全である事が確認されたが故に、残った人質は広告塔として利用されています。おそらく、この先も相当期間に渡ってそのように利用され続ける事になるのでしょう。そして、その度に、日本社会はその解放を求め、それを受けて日本のメディアはISの要求を世界中に広報し、かつ日本政府はISの脅迫相手となる各国に対し働き掛ける事で、結果として日本全体が各国に対しISの要求に従うよう圧力をかける事にもなるのでしょう。あるいは、新たに日本人の人質を増やそうともするでしょう。取り返しが付かない、というのはそういうことなのです。逆に言えば、そうした利用価値があるが故に、日本人の人質は比較的殺されにくくなる面はあるでしょうけれども。。。気休めにもなりません。

(再追記)

と思っていたら、もう一人の人質もあっさり殺されてしまいました。ご丁寧に、今後の日本人を対象にしたテロの予告も添えて。交渉の余地が無い旨を知らしめる実績を積む事を優先したか、単にパイロットの方が交渉材料として直近の利用価値が高いと判断しただけの事か。いずれにせよ、日本はどうする事も出来なかったし、これからも何も出来ないのだろうから、大した違いもないのでしょうけれど。

[関連記事 [law] ISISに拘束された日本人に思う、武力措置の非現実性]

[biz] ヤマトメール便廃止の明らさまな建前

ヤマト運輸がメール便を廃止するそうですね。チェックが無い、もしくは甘いのをいい事にして大量の廃棄だとか未配だとか色々と酷い事件を頻発させ、その度に世間の顰蹙を買って来た同サービスですけれども、その料金の低さからリスク覚悟の小口通販で広く利用されて来ただけに、結構な規模の混乱が起こりそうです。当面の代替はゆうメールという事になるんでしょうけど、競合が撤退したとなってはこちらもいつまで継続されるか怪しいわけで、ユーザはメール便を利用する事業形態自体の見直しを考慮せざるを得ないでしょう。ご愁傷様です。

メール便自体は特に法規制がかかっているわけでもないし、廃止するのも事業者の勝手ですから、それはまあいいのですけれども、その表面上の理由としたところの「顧客が信書利用した場合に顧客が違法に問われるリスクをなくすため」という建前は不自然不合理極まりなく思われるのです。それは個々のユーザが責任を負うべき話であって事業者の責任ではありえません。別に幇助してるわけでもなし、件数もここ5年で一桁台に過ぎない、とあっては事業自体に問題があるとは到底言えないでしょう。まして継続の是非にかかる要素などとどうして評価し得るのか、全く以て理解出来ないところです。ヤマトは自分達が何を言っているのかわかっているのでしょうか。もしこの論理を是とする、すなわち顧客が違法に問われるリスクは絶対に許容出来ないとの立場を取るなら、そもそも日本郵便の信書便以外、民間の運送業自体が成り立たないだろう結論になるのです。それすなわち自己否定というものです。

ですが、流石に自殺する意図があったわけもないでしょう。であれば、今回の説明の方が建前と結論付ける他ないわけです。メール便事業の実態を見れば、その低料金から個別小口の利用について採算が取れていないだろう事は明らかで、これを廃止したいだろう事もまた明らかなのですし。後継サービスが法人の大口顧客に限定したものという点からしても、結局は単に個人客向けメール便サービスを廃止するだけの事です。

ただ、それを面と向かって言うと単なる営利目的で一方的にユーザへのサービス提供を廃止した、すなわちインフラ事業者としての社会的責任を放棄した形になって体裁が悪いし、とりわけユーザの反発も激しくなるだろうから、責任を利用者側に転嫁した表現を使って回避を試みた、というだけの事なのでしょう。よくある話だし別段違法でも無いのですけれども、臆面もなくそういう姑息な振る舞いを見せつけられるのはとても不愉快に感じるわけです。 こういうのは見えないところでやって頂きたいし、本件のように事案の重大さ等からそれが無理なのであれば、建前を取り繕うにしてももう少し考えて欲しいと思うわけです。こんな明らさまでは逆効果というものですよ。

ともあれ。本件の個人向けメール便廃止ですけれども。おそらくは昨今のコスト高に伴って値上げを検討した際、いっその事面倒な個人客は切り捨ててしまうのが最も採算的には良いだろうと判断したんでしょう。そういう傾向は他の業界でも顕著で、自然な流れとも言えるでしょうけれども、どうにも安直に思えてなりません。個々の企業の判断としては合理的でも、業界、また経済の全体からすればどうなんでしょうか。本件について言えば、需要、それもインフラ部分の、相当な規模のそれを切り捨てているのですから、素直に考えれば社会経済自体を相当に縮小させる方向なのではないでしょうか。と言ってもどうしようもないのですけれども。これも時代の流れと言うことなのかもしれませんね。やれやれです。

ヤマト、メール便廃止 利用者の「信書」同封防ぐ

1/07/2015

[biz] 羽田空港のNEC製鳥検出システム、機能せずゴミに

2年ほど前羽田空港に導入された鳥の自動検出システムについて、著しい誤検出・検出漏れのために事実上放置状態にある旨報道がなされていますね。それで空港がどう対処しているかというと、昔ながらの人的対応すなわち目視による確認に戻ってしまっているそうです。

当該システムはレーダーと監視カメラを用いた、ごくスタンダードな画像認識ソリューションです。ベンダはNEC。一応当時世界初という事で、プレスリリースも発行されました。今となっては、世界初というのは単に技術的に可能な機能に需要が無かっただけの事だったのだろう等と思えてしまうのですが、それはともかく。価格は一式およそ10億円。元々の機能・機器構成の割にいささか高価な感があった本システムですけれども、価格に見合うどころか最低限の働きすら出来ずに粗大ゴミと化す惨状を晒したわけです。しかし飛行機を鳥と間違うとか、どういう事なの。。。

この手の自動認識システム、メーカーの建前を真に受けて導入したところ、いざ実運用してみたらエラー頻発で使い物にならない、なんて事はよくある話ではあるのですが、用途が用途だし、そこそこの額の公金を使った案件でもあるために、社会的にそれ相応の落とし前を付ける必要はあるという事でしょう。こうして世間の批判に晒される運びとなってしまいました。直接の担当たる羽田空港の関係者、またおそらくは関与しただろう国交省の面々にはいい恥さらしですね。

といって、彼らもおそらくはNECの誇大広告的セールストークに乗せられてしまったところはあるでしょうから、多少は同情する余地も無いではないのかもしれませんが。しかしそれ以前にも顔認証等で散々に引っ張りまわされ、税金を搾取された挙句に白を切られておきながら、の話でもあるわけで。学習能力が絶望的に欠けているのか、逆に救えない程にNECと癒着していると言う事なのか、それともその両方か。いずれにしても関係者は須く救い難いまでの愚か者揃いだと言う他無く思われるところです。実用に耐えるか位、導入する前に検証しておけば回避も出来たでしょうにね。やれやれです。

先日お手盛りの実証実験で無理やりお墨付きを出し、さらに巨額の税金を注ぎ込んで導入される見込みとなった所の顔認証システムについても、実用に耐える能力が無いだろうハリボテ技術な点では同じですし、その結果もおそらくは本件と類似した帰結に至る可能性は非常に高いものと予想されます。問題は、その影響の及ぶ範囲、程度が共に本件とは桁違いに広くまた深刻になるだろう点でしょうけれども、それでもNECは無責任を貫くのだろうでしょうか。きっとそうなるのでしょう。想像するだに暗鬱たる気持ちにならざるを得ないのです。

しかしねえ。この手の話って、どれも紛う事なき詐欺なのに、何故繰り返し起こっては何事も無かったかのように見過ごされるんでしょう。いい加減予防なり事後罰なり、司法による歯止めが掛けられて然るべきだと思うのです。さしあたっては、国交省は本件に関してNECに損害の賠償を請求する位はして頂きたいところなのですが、さて。

ちなみに、本件システム導入時のプレスリリースはこちら。アレもコレも出来ると言いつつ、具体的な検出率とか性能に一切触れてない辺り、確信犯的でとてもテンプレな感じです。
NEC、鳥位置検出ソリューションを国内外で販売開始

10億円かけた羽田の鳥衝突防止装置、機能せず

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1/06/2015

[biz] トヨタの特許無償化に透ける水素車事業の行き詰まり

これは吃驚。トヨタ本体が保有する水素燃料車関連の特許5680件について、相手を問わず無償で公開、提供される事になったんだそうです。

部品メーカー等、子会社の保有する特許は対象外だし、一部を除いて2020年までの期限付きではありますけれども、利用者の資格を問わず全て使い放題。特許は保有にも相応のコストがかかる事からしても、競合他社に寄付をするに等しい、極めて異例な話ですね。といっても、競合する大手自動車メーカーとの関係で言えば、元々クロスライセンスで相殺するなり、開発時点で住み分けが図られていて、それ程大きいメリットがあるとも限りませんから、これは実質的に、主にベンチャーや他業種等の新規参入組向けの話、という事でしょうか。トヨタのリリース中の記載を読むに概ねそういう解釈で正しそうです。

とはいえ、水素燃料車は延々と開発を引っ張った挙句にようやくトヨタがmiraiをリリースしたところで、商業的にはそれ以外の実績は事実上無いも同然だし、これから普及を図るにあたっては周知の通りの課題すなわち、触媒に白金を必須とする事による高コスト性と、また燃料としての水素供給のための諸々のインフラが全く整備されておらず、またその設置コストも一件あたり数億円と、競合する電気自動車の充電設備と比較しても桁違いに高く、整備困難な点が致命的な障壁として聳え立っているのでありまして。それらを悉く乗り越えない事には特許を保有する益はないわけです。しかしながら現時点では解決の目処すら立っていないそれらの課題の難度と、仮にクリアするにしてもそれに必要となるだろうリソース、殊に時間を考慮すると、モノになる前に特許切れになってしまう可能性が高いのですね。

そういう事情を考慮すると、このまま特許を後生大事に抱えていても意味はない、ならばいっそ課題解決のためのツールとして役立てるべく放出してしまおう、というような考え方は確かに成立し得るでしょう。それで広く新規の協力を募りつつ、併せて競合他社にも同様のアクションを促し、基盤の整備を推進しよう、と。そういう事なら、理屈としては分からなくもありません。

ただまあ、そうだとしても、その辺は建前なんだろうなと。というのはそもそもの話、この辺の知財とかはあくまで補助的というか、少なくとも諸々の根本的な問題を解決するものではないのであって。触媒等の技術的な課題については当然それを解決する技術が必要になりますが、その開発についてトヨタは白旗を挙げたものと解釈する他ないし、インフラ整備にしても、その膨大な設備投資には民間に担い手が必要になるわけで、仮に成功すれば巨大な利益が見込めるにも関わらず、自ら担おうとはせずに他所に丸投げした、と言う事はすなわち、採算が採れるとは考えていないものと読む他ない話なわけで。

結局のところ、水素車自体、事業として成立する見込みが薄く、ぶっちゃけ出来ません、と宣言したようなものだと思うのです。ハイブリッドを投入した時のやり方と比較すれば明らかですけれども、実際、本当に事業として成立させる成算があるのなら、トヨタ単独進める事も厭わなかったでしょう。それを可能にする規模もリソースもあるし、後発というわけでもないのですし。しかるに、そのトヨタをして匙を投げるような問題を、他社、いわんや新規参入組に解決出来るだろうか、というと。。。その可能性は極めて小さいものと考えざるを得ません。

そんな本件。一見前向きに見える施策ではあるものの、一方で同時に水素車全体の先行きの暗さをも浮かび上がらせるものなのでありました。自治体や政府はミライ発表からこっち、補助金をえらい勢いで注ぎ込んでるようですが、高確率でトヨタに無駄金をバラ撒いただけで終わりそうです。といってこの種の建前ドリブンな案件の常として一旦動き出してしまうとしばらくは引き返せないんでしょう。残念な話ですが。

Toyota shares its fuel cell patents to help its hydrogen dreams come truets

12/24/2014

[law] 警察と市民が殺し合う米国

先日NYで起きた警官の射殺事件は明らかに決定的でした。警察側からすれば、黒人市民は全て警官の命を脅かすテロリスト、という事になったわけです。黒人側から見た警官のそれと同じように。結果、双方の疑心暗鬼は際限なく深まり、そして、黒人市民もまた無力ではなく、銃を所持している以上、その対立は感情的なものに止まらず、従来なら起こり得なかった筈の致命的な衝突すなわち、市民と警察とが互いに際限なく殺し合いを続ける、という最悪の形で現実化するだろう事も、殆ど避け難いものに思われるところです。

ただ、当然ながら両者の関係は対称的ではなく、元より警察側に著しく偏ったものにつき、その威力がさらに強化され、防衛のためと称して誤用あるいは濫用される結果、死者はこれからも主として黒人市民側に発生し続けるのでしょう。そして、それより遥に少ないながら、警察側にも死者が発生し、それがさらなる殺人の増加を導くのだろうと予想されるのです。しかもそれが分かっていながら、その是正はなされません。結果として、既にその兆候は複数現れているようです。Missouri州Berkeleyではまたしても十代の黒人青年が警察官に射殺されました。

本来守るべき市民を、その担い手である筈の警察が積極的に殺しているわけです。これは到底個別独立の突発的な事件と評価する事は出来ず、すなわち社会の秩序、法の公平や正義といった、社会の拠って立つべき基盤もまた、致命的に破壊されていると言えるでしょう。他人事ではありますが、その救い難い愚かな社会の有り様には、侮蔑の念を禁じ得ません。

尤も、殺し合うのも当人達の勝手ではあります。ただ、長きに渡って、justiceのため安全のため、と綺麗事を並べ立て、米国民を守る、として散々対立する他国の権利、またその市民の人命・人権を蹂躙して来た当人達が、いざ自分たちの事になればそんな事は知ったことかと言わんばかりに自らの犯罪を正当化し、自国の、それも弱者たる市民を平然として殺して責任も問わない。それも、大統領自らも加担するのですから。いっそ滅んでしまえばいいのですそんな国。

Police shoot dead black teen in Missouri

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12/21/2014

[law] NYPDの警官2人が襲撃され死亡、容疑者自殺

ついに起こってしまいましたか。。。New York、Brooklynでパトカーに乗って勤務中の警官2人が銃を持った男に襲撃され、共に死亡したそうです。

被害者の警官は Wenjian LiuとRafael Ramos、それぞれ勤続7年と2年。容疑者は28歳の黒人Ismaaiyl Brinsley、襲撃後に頭を撃って自殺した、とのこと。

犯人が事前に発信していた諸々のメッセージを考慮するまでもなく、原因の一端が警察、警官による人種差別的殺人への報復にあるだろう事に疑いの余地は殆どないでしょう。ここ数ヶ月、Fergusonの件を発端に、NYでも警官が丸腰の黒人を死亡させておきながら当該警官らは裁判にすらかからない、という、到底妥当とは考えられない事案が続き、即デモと暴動を発生させていた事は周知の通りです。しかも大統領含め誰一人としてそれを正そうとするどころか被害者の反発を非難するだけという、緩和が絶望的に思える程に悪化する人種対立の最中にあって、もはや多くの黒人については敵対感情にまで至っていただろうそれを考慮すれば、この種の私刑が発生するのも時間の問題だったと言えるでしょう。

すなわち本件は、犯罪性の強い行為、少なくとも多くの市民はそう捉えている事案を人種と地位に基づく特権により恣意的に不問にし、その結果発生した深刻な対立状況をただ威力をもって抑止するのみで実質的に漫然と放置した米司法ならびに政府の失敗あるいは自業自得と言う他ないものなわけです。

といって、あれだけの殺人を犯しながら単なる身内の擁護と責任逃れに終始して来た米司法が法制等の本質的転換に踏み込むとは考え辛く、おそらくはこの期に及んでも現状のまま、せいぜいが警官の装備や体制の強化をするだけで終わり、実質的な放置もしくはさらなる悪化が継続されるものと思われるわけですが。結果、その報いも余計に増える事になるのでしょう。その救い難い愚かさ加減には呆れるばかりなのです。他人事ですけど。

Two Police Officers Fatally Shot in Brooklyn; Suspect Is Found Dead

Officer’s Errant Shot Kills Unarmed Brooklyn Man

Grand Jury Declines To Indict NYPD Officer In Chokehold Death Of Eric Garner

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12/20/2014

[IT biz] Sony Picturesハッキング、愚かで哀れなソニーと無責任なオバマ

ソニーの映画事業子会社Sony Picturesがハッキングされた件、そろそろ全容が明らかになってきた感じということで、少しまとめと所感を。

被害の内容は同社内部情報のおよそ全て。未公開映画の元データや脚本、他社との交渉記録、従業員や出演者等のssnを含む個人情報までがほぼ完全に流出したとの事。犯行はGuardian Of Peace(GOP)なるどこぞの政党と同じ頭文字のグループが声明を出しているものの、詳細は不明。ただ、その公開中止要求の対象たる映画The Interviewの内容が北朝鮮指導者の金正恩の暗殺を扱っている事から、北朝鮮の機関である事が確実視されています。正直、それだけで決めつけるのはあまりに短慮に過ぎるように思われるのですが、それはともかく。

で、社外秘どころか関係者外秘の絶対に外部に漏れてはいけないあれこれを全部握られてしまったSony Pictures社はその要求を受け入れ、当該映画は公開中止となってしまいました。損失は少なくとも数億ドルに上るものと見られています。数年分の利益が吹っ飛ぶわけですけど、少なくとも短期的には映画一本丸々損失になった上に、ジェームスボンドシリーズ次回作とか計画中の案件までお釈迦になった、とあってはそれも仕方ないでしょう。むしろ各方面への賠償等を考えたらそれで済むのかと疑問に思う位です。Picturesの事業存続が危ぶまれるのは当然として、ソニー本体にとっては数少ない黒字部門の一つが爆死してしまったわけで、本気で早晩金融専業ともなりかねない勢いです。どうするんでしょう、といってどうしようもないし、なるようにしかならないんでしょうけど。

ところで、そのハッキングの手口について、内通者の手引きによる内部からのものらしい、との噂が流れています。今のところ真偽不明ではありますが、尋常でない流出の範囲・規模や態様からしてありそうではあるし、本当だとすればそれはもう仕方ないのではないかと思うわけです。実際、その手のソーシャルハッキングを防ぎうるフィジカルセキュリティまで完備してる所なんて、政府、軍や金融関係の一部、あと大手のデータセンター位のものでしょうから。 民間会社なんて狙われた時点で詰みだと言っていいでしょう。誠にご愁傷様です。

なんですが、政府関係とかセキュリティー専門家とかの外野の反応は、同情どころか非難の大合唱。オバマ米大統領なんかは某番組のインタビューで、テロに屈した云々的に公な非難を加えたそうで。そんな無茶な、と思うわけです。現時点で早々と北朝鮮の犯行と決めつけているのもアレですし、仮にそうだとしても、テロリストの要求に応じればエスカレートするだけだ、というのはそうなんでしょうけど、何ら対抗する術を持たない一民間会社にどうしろって言うんでしょう。実際問題として、下手に逆らえば、事業的には無論の事、個人情報もがっちり把握された関係者について物理的な危険すら生じるわけです。それを保護もせず、損失を補償する気もない癖に一方的に非難だけを加えるとは。。。米政府もつい最近クラッキングされたとかいう話もあるし、実際迷惑なのはその通りなのでしょうけれども、そもそもそういう外敵の攻撃から市民を守るのはお前らの仕事だろうと、あまりの自己中心かつ無責任ぶりには驚愕せざるを得ません。そりゃ支持率も地に堕ちようというものです。

ただ一方で、ソニーをして単に不運な被害者と言う事も出来ないわけで。よりによって北朝鮮の、それも現在の指導者を題材に作品を出した時点で国を挙げての反発を買うだろう事を予想出来なかった筈はないし、その反発が一民間会社に向けられる事の意味、その帰結を甘く見ていたというのなら、それは救いようもない愚行なのであって、まだ人命が失われていないだけマシだと考えるべきなのですから。その動機にしても、センセーショナルな作品を売り出す事で利益を得ようとしただけに思われますし、特に汲むべきものもないでしょう。タブーに突っ込む時はそれなりの覚悟と備えが必要なわけで、それを怠ったソニーの自業自得とも言えます。そうでないと言うのなら、それなりに攻撃を防ぐか、要求を無視して公開を続けたか、いずれにせよこのような結果には至っていなかったでしょうから。

まだしばらく後を引くだろう本件、いずれの関係者も見るに堪えない惨憺たる有様で、もうどうにでもなればいいんじゃないの?と、うんざりするとともに、冷やかな思いを抱くだけなのです。

How The Hackers Broke Into Sony And Why It Could Happen To Any Company

んで結局、オバマの殆ど脅迫同然の要請に従う形で公開、当然のように北朝鮮は反発、と。勿論その辺はソニーの勝手ですから、それならそれでいいんでしょう。一連の報道による広告効果は半端ではないし、流出済みである点を差し引いても興行収入は相当に見込めるでしょうから。ただ、一般論として、一私企業に過ぎないソニーが、当然ながら非合法の強行措置を全く辞さない類の国家相手に正面から喧嘩を売っておいて、このまま炎上マーケティング大成功、で終わるとはとても考えられないわけで。さてどうなることやら。そういうリスクより目先の利益を取っただけの話だし、何があろうと同情する事もないんでしょうけどね。

評判を聞く限りでは、作品とも言えない駄作との評が大半のようなのですが、色々と愛国心やらに駆られて見てしまった人にはご愁傷様。なお個人的には、この手の悪趣味な映画には全く興味が沸かないので見てませんし、これからも見るつもりはありません。

Sony Streams ‘The Interview’ on YouTube, Google Play and Xbox

12/04/2014

[biz law] リコールを拒否するタカタ、その主張の非論理性

タカタ製欠陥エアバッグ大量リコールの件、米での公聴会におけるタカタの振る舞いがもう酷すぎて見てられません。どうにかならんのでしょうか。

件の会でのタカタの言い分、その骨子は概ね以下の3点に集約されるようです。

1.原因について
 (主張)主たる要因は高温高湿の環境であり、それ以外では発生しない 
 (理由)米南部州やプエルトリコ等、高温・高湿地域でのみ発生確認のため

2.欠陥品の判別について
 2-1.種別
   (主張)助手席用部品のみ対象。運転手席用の部品は対象外
   (理由)助手席用の部品でのみ発生確認のため

 2-2.構造別
   (主張)設計及び構造自体に問題は存在しない
   (理由)製造過程の問題(溶接不足等)の発生が確認されたため

で、まあ・・・。どれも具体的な原因や因果関係が明らかでないし、なぜその理由でその結論が導けるのかというような主張なわけです。が、これをもって、現在実施しているところの、南部地域登録車の助手席用部品に限定したリコールは必要十分、として米議会はじめ社会側が求めている全米における全車全部品のリコールを拒絶しているのですね。一々突っ込むのもアレですが、あまりにその影響が大きすぎるのもあって無視するわけにも行きませんから、以下、一応メモがてらに以下、各主張の問題点を指摘しておきます。

まず1.については、南部地域でしか発生していない一事をもって気候が主要因である等とは言えるわけもない上に、仮に高温・高湿が主要因だと仮定しても、それ以外の地域でも局所的に高温・高湿になる場合はいくらでもあるのであって。それに今現在地域外にあるからと言って、今後引越しや売買によって南部に移動する可能性も普通にあるわけです。そもそもリコール対象を製造側の条件ではなく販売・登録地域で区別するという発想自体が意味不明と言うべきでしょう。

次に2-1.は、それこそ構造的な原因が判然としない以上は区別のしようもない筈なわけで。理由が分からない以上交換しても無意味、というのはそれはその通りなのかもしれませんが、一方で助手席用と運転席用を区別する理由も無い結論になる筈だし、そもそも既に部分的にせよリコールに踏み切った以上、具体的かつ合理的な説明もなしに対象を限定出来る筈もありません。今更何を言ってんだって話です。

最後に2-2.はもう、何をか言わんや。 そもそも殆どのリコールを起こさしめる原因は、設計の問題ではなく製造上の欠陥によって発生するものでしょうに。製造上の欠陥の可能性を認めるのなら、その可能性が完全に否定出来るロット以外は全てリスクがあるし、当然リコールの対象になる筈です。少なくとも対象を特定地域に限定するポリシーとは全く整合しません。まさか問題のロットは南部でしか使われていない、なんて訳もないでしょうし。支離滅裂です。

かように、仮説とすら言えない戦慄すべき代物なわけです。清水副社長は公聴会でこれらの主張を並べ立てた挙句、「現状のリコールを拡大する科学的理由はない」と臆面もなく言い放ったそうですが、常識的にはむしろリコールを限定する理由はない、と理解するべき話でしょう。この逆転ぶりは尋常ではありません。結論から理由をでっち上げたか、でなければ適当な思い込みや願望をそのまま事実とすり替えた詭弁の産物か。仮に、公聴会に出席して件の主張を繰り広げたところの清水副社長以下タカタ側が事実その通りに考えていた、と好意的に捉えたとしても、それは数少ない確認された問題事例から適当に思いつきで抽出した共通点をそのまま事実と断定したものとしか解釈のしようもないわけで。いずれにしろ、論理的とも科学的とも到底言えません。タカタの経営陣、法務、担当含め、全関係者の正気を疑わざるを得ない酷さなわけです。お前ら本当にメーカーかと。

そして当然のように米国全体から激烈な怒りを買って大炎上中なわけです。'Defiant Takata'(聞く耳を持たないタカタ)とか言われちゃって、ここまで広く社会の敵と見做されてしまうと、仮に本件を乗り切ったとしてももう再起不能だろうし、何処かに買収されて消滅するしか無くなってしまったんじゃないでしょうか。

もっとも、全リコールに応じたら応じたで、その場合には全米に止まらず、日本や欧州も含め全世界の全製品までもが対象になるだろう結果、その空前とも言うべき巨大な負担にタカタが耐えられないのかもしれませんし、どちらにせよタカタの行き着く先に大差は無いのかもしれません。ただ、最も優先されるべきは利用者の安全であって、その点からすればタカタの振る舞いは残念としか言えないのです。こうして不毛な対立を続け、本来なされるべきリコールが実施されないでいる間に新たな犠牲が出ないとも限らないのですから。10年以上に渡って隠蔽を続けた悪意の塊のようなタカタに今更言ってもしょうがないのでしょうけれどもね。

Honda Decides to Expand Airbag Recall as a Defiant Takata Resists

焦点:タカタのエアバッグ問題、影落とす海外工場の安全管理

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11/25/2014

[law] 米Missouri州Fergusonの白人警官による黒人少年射殺事件、不起訴決定で即暴動

まさかの不起訴。米Missouri州Fergusonで起こった黒人少年Michael Brownの射殺事件で、州裁判所での審理に付されていた犯人の白人警官Darren Wilsonですが、法の裁きを受けるどころか、起訴すらされないという決定がなされたそうです。

正直信じられません。いや、白人+権力至上主義に染まり、今なお人種差別の塊のような米国支配層を代弁する司法、それを象徴するところの白人が多数を占める大陪審の人種構成からすればむしろ当然の決定と言えなくもないのですけれども、流石にこれだけ嫌疑が強く、かつセンシティブな案件で、いくら法の規程があると言っても少数人の独断で無罪にするとか、それで市民の納得が得られよう筈もないし、暴動が起こるだろう事も火を見るより明らかなわけで。内戦がしたくてわざとやってるんじゃないかと、正気を疑わざるを得ないのです。

ともあれこれで、Wilsonはもちろんの事、地元警察の関係者を含め、相当な範囲が黒人民衆から決定的に敵対視されてしまったでしょうし、あるいは法の裁きが無いならと、私刑的な行為に及ぶ人も相当に生じ得る結果、死者の発生も避けられないでしょう。つくづく馬鹿な事をしたものです。他国の事とはいえ、救えませんね。

Ferguson Grand Jury Will Not Indict The Cop Who Shot Michael Brown

んで戒厳令ですか。本来なら即介入して事態の収拾に当たるべきオバマ大統領も日和ってるというか関心が無いと言わんばかりのおざなりな対応に終始するとあっては、もうどうにもならないんじゃないでしょうか。

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[biz law] ホンダの米における重大事故6割隠蔽発覚

これほどとは。公表されたホンダの米における重大事故報告漏れの件数が、実に2003年からの11年で1729件とか。タカタ製エアバッグ関連8件を含め、本来報告すべき事件のうち6割が漏れていたというのですが・・・それはもう漏れとは言えないだろうというか、組織的隠蔽の結果としか解釈しようがない規模なわけで、まさかあのホンダが、と、尋常ならざる衝撃が広がっているようです。

いやほんと、GMの事を言えないどころか悪質さではそれをも上回る話なわけですが、どうなっちゃうんでしょう。多分にタカタの件で追跡調査してみたら芋づる式に、って話なんでしょうけど、蔓の先が大きすぎて当局も困惑してるんじゃないかと。タカタもタカタで、10年ほど前に障害を把握しておきながら意図的に隠蔽した嫌疑がかかって最高に追い込まれてる最中なわけだし、只でさえ最悪レベルの案件が連鎖併発した本件、そのあまりのヤバさ加減に戦慄が走ります。

ともあれ、少なくともタカタ絡みの件については、自動車メーカー各社の中では最も採用率が高く、その疑惑の中心にあったホンダも、今回の隠蔽発覚によってめでたく完全にグルだったものと認定され、以降はセットで追及を受ける事になるんでしょう。タカタやホンダ、その他メーカー各社が受けるだろうあれこれについては自業自得ですが、質も量もヤバすぎで、影響を受ける範囲も相当なものでしょうし、とばっちりを食らう向きには誠にご愁傷様であります。

しかしホンダ。去年までは何の問題もないかのような風だったし、利益も激増を続けて順風満帆にしか見えなかったのに、フィット・ヴェゼルのリコール連発からこっちの急転直下ぶりは何というか・・・非常にアレです。むしろ、あの華々しい成功ぶりは元々こういう隠蔽による取り繕いの産物に過ぎなかった、という事なんでしょうか。とても残念です。

ホンダ、米当局に重大事故報告漏れ 03年以降1729件

Investigation of Honda Centers on Failure to Report Deaths From Takata Airbags
Takata Offers Its Rebuttal to Report of Secret Airbag Tests

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11/18/2014

[IT] 顔認証による入出国実証実験結果の出鱈目さに脱力

先日成田・羽田で実施された出入国の実証実験の結果、誤認識率0.26%、ね。。。定義が不明な以上正確な評価は出来ませんが、仮にEERとか、言葉通りに認証システムの実力に近いものだとすれば、従来の顔認証技術の限界どころか、現在標準的に実用されている指紋や静脈すら超える凄まじい値です。あらゆる本人確認の方式を顔認証で統一する事すら可能にする、革命的な性能と言えるでしょう。

勿論、そんな話を真に受けられるわけはないし、逆に嘘と確信させられてしまうわけですが。案件継続のアピールのために盛ったにしても程があるでしょう、と。大方、判定の基準を甘くすればいくらでも作為的に下げ得るFRR(誤排除率)だけを言ってるんでしょう。生体認証一般において、その方式の精度の測定・評価においては、FRRとトレードオフになるFAR(誤受入率)と合わせて見なければ意味をなさないところ、定義も不明な数値を一つだけ出されても、むしろ誤魔化しや詭弁の類かとの疑念が深まるだけ、それもこんな通常の評価ならありえない数字を出されても、困惑するしかないのですよ。

推測ながら、おそらく本実験では、なりすまし等の不正のチェックは全くやってないのではないでしょうか。テストの対象が日本人で、かつ実験参加に同意した人だけなのだから、その時点で不正すなわちパスポート内の画像と参加者が異なる可能性は極めて低く、逆に言えば本人性は殆ど保証されたデータセットになっている事は間違いありません。当然、実際になりすましが行われる場合に想定されるような変装等の類はそもそもデータに含まれておらず、従ってなりすましのチェックは事実上なされ得ないものと推測されるのですね。

そして、参加各社はその事を当然知っていたでしょうから、今回の実験において不正の検出は不要として、本人と他人を判定する基準を極めて甘く、本来であれば当然想定されるべきなりすましがあったとしても検出し得ない程度まで緩めた判定ソフトを投入した可能性が強く示唆されるところです。とすればその結果、本人を他人と誤認識する率は極限まで下がる事になりますから、件の異常に良い誤認識率と辻褄が合うのですね。

というかそうとしか考えられません。なりすましを十分に防止可能なレベルで他人受け入れが少なく、かつ本人を弾く確率が1%未満というのは、前述の通り、もう指紋や虹彩、静脈やら、その他の顔認証とは比較にならないほど情報すなわち個人的特徴が多く変動も極めて小さい高精度な部位による認証のそれと同等か超えてすらいるわけで。仮に本当にそこまで出来るなら、入出国どころかATMとか一般の入退出とかセキュリティ用途も含め、あらゆる本人確認の殆どが顔認証で代替可能になるのですし、少しでも顔認証含め実際の生体認証に触れた経験のある人なら、もう失笑するしかないような話なわけです。んなわけないだろ阿呆か、と。

ところで、そこまで緩めてなお本人排除が残った事については、意外に思うべきか、それともそれはやり過ぎによる発覚を恐れた結果と考えるべきか。発覚を恐れたにしては行き過ぎに思われますが、まあその辺はやり直しが効かないとか、参加5社間の競争とか、色々と歯止めが効き難かった部分もあるんでしょうか。

兎も角、この辺の作為、倫理的には勿論不適切な類の話だし、国際規格等で定められている精度評価の基準等に照らしても完全に不正な筈なのですが、法務省はその辺分かっているのかいないのか。もっとも、今回の実験を行うと決めた時点で既にNECやらは後に引けない状態だった筈、今更この程度の作為をやったところで大した違いもなかっただろうし、法務省側がどうあれ、業界ぐるみで丸め込む位はどうとでもしたでしょうけれども。何せ、10年以上に渡る巨大案件の存続がかかってたんですから。

ともあれ、元々出来レースの本件の進捗にその辺の実態は何ら関係しませんから、何処からも公的な指摘・追求がなければ、これで当該計画は17年度までは継続し、さらに実際のシステム構築も含めてさらに多額の予算がつぎ込まれる見込みとなりました。こういう不正でその場をしのいでも、実際に運用されるようになれば、身も蓋も容赦もない現実に晒されるわけで、不可避的に発生するだろう本当の不正や、複雑なシステムによる人手も含めた運用コストの増加によるデメリット等が顕在化するだろう事も明白なのですが、その予想される破綻も含めて、もうどうにもならないのでしょう。遺憾な限りです。

出入国審査に顔認証導入へ=17年度にも、実験で精度向上-法務省

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で、下記公式の結果報告書を読んでみたわけですが。

日本人出帰国審査における顔認証技術に係る 実証実験結果(報告)

一応本報告では認証方式評価の基本に沿ってFAR値別のFRRという形で評価されていますが、FAR0.001%、すなわち他人を誤って本人と判定する割合が10万回に1回程度になるよう厳しく判定した場合に本人を誤って他人と判定してしまう確率がA社は0.26%、D社は0.56%。やはり実際の場面ではありえないと言わざるを得ない結果です。というか、何故FAR0%の値が掲載されてないんでしょうか。特に変装等によるなりすましが無いだろうデータセット程度なら、当然誤認はゼロに設定されて然るべきところでしょうし、少なくとも参考としては必須でしょうに。やりすぎと思って自重したんでしょうか。だとしたら今更な気もするんですけれども。

ちなみにその他3社の結果は、C社が6.88%、D社が9.59%、E社が22.56%。上位2社に比べて大きく劣るC社とD社ですら、指紋認証その他に比肩する高レベルにある事になるわけですが、当然そんな筈はありません。E社だけは大きく劣っていますが、むしろこれ位の方がリアルに近いと思われるところです。この現実と建前が逆転したようなというか、もはやファンタジーとも言うべきあまりのクレイジーさに戦慄を禁じ得ません。

11/14/2014

[IT biz] Googleの決済サービスwallet一部廃止

毎度お馴染み、Googleによる突然のサービス廃止宣言がやって参りました。今回の犠牲者はオンライン決済のGoogle wallet。2015年3月に一部APIを廃止するとの事。これまでその度に数多のユーザー、デベロッパーを絶望のどん底に叩き落として来た同措置ですが、今回はその中でも飛びきりと言っていいでしょう。何せ、同社のサービスを介して金銭をやり取りする際に事実上利用が必須な基盤部分なわけですから。関係者はみんなまとめて大混乱必至です。

無論、対象が決済機能という事で、全廃止などすればそれはGoogleが事業を放棄するに等しいわけで、廃止対象は限定的ではあります。具体的には音楽やゲーム上の課金アイテム等、デジタル商品の決済APIのみが廃止。例外的に、Google Playで配信されるアプリがその中で決済をする分には引き続きサポートされるとの事なので、Google専用アプリに関しては影響が無い事にもなっています。しかし、マルチ対応のアプリでは、iOS等、Android用以外でGoogle Walletによる決済が不可能になるわけで、その点修正を強いられる時点で広範囲に甚大な影響がある事は間違いないし、少なくとも歓迎する向きは皆無でしょう。

ただ、理由は想像がつくのですよね。送配等引き渡しが必要となる都合上、自然とある程度利用者の限定・確認もなされる実物の販売と違い、取引の全プロセスがオンライン上で完結するために詐称が容易な電子データの販売は不正の温床そのものでしたし、GoogleにしろAppleにしろYahooにしろ、NSAの件からこっち、何から何までザルな事が周知され、不正利用も頻発して信用が地に落ちた現状の基盤を使い続けるのは無理がある事は明白、全面改修を考えなければならない状況にあるわけで、その後継導入の前準備といったところかな、と。実際Appleが先日リリースしたApple Payの仕様を見ても、事実上iPhone6系に利用が限定されている点からして旧システムを切り捨てる意図が見えますし。勿論あっちはあわよくば囲い込み、との思惑もあるんでしょうけれど、既存の膨大な顧客を切り捨てるデメリットを考えれば、それよりもセキュアな決済システムの確立を優先した結果と解釈するのが妥当に見えるのです。色々とちぐはぐで、傍目には全く上手く行ってない、どころか崩壊気味なのがなんとも微妙ですが。まあ意図だけはあるらしい、という事で。

勿論その辺は憶測に過ぎないし、昨今報じられるFBIの意向なんかがうっかり重視されて、むしろ後継ではトレーサビリティの確保とか言ってバックドアが仕込まれる可能性もありえないではないのですけれども。この期に及んでGoogleの良心に期待出来よう筈もありませんしね。

ともあれ。本件にしろ、Apple Payにしろ、不安定な上に四分五裂する決済サービスの乱立にはデベロッパーもユーザーにとっても、どう転んでも結局は迷惑な話で終わりそうで、誠に遺憾な限りです。汎用性は皆無でかつ継続性は絶望的、とくれば、現状ではどちらも利用に値しないと言っていいんじゃないでしょうか。さしあたりPaypalで統一してもいいように思える位ですね。もっともPaypalにしても事業自体の立場が不安定だし、ローカライズが微妙とか色々問題もあるわけですが。そういったあれこれは今に始まった話ではありませんが、ますます面倒になる一方に見えるこの状況、本当に困ったものです。

ところで、ようやく国内でもChrome Bookが販売されるようになったそうですね。海外に比べて値段が為替レート以上に超割高なのはさておき、Chrome Bookの作り自体は悪くないと思うのですけれども、その寄って立つ筈の各種Google提供の基盤サービスが本件の如き体たらくでは、とても安心して使えないし、嗜好品以上の何かにはなり得ないと思うのです。なのにWindows系OSのPCと同カテゴリの商品として売り出されているあたり、全く以て不合理に見えるのですが、その辺どう考えてるんでしょうか、Googleは。何も考えておらず適当やってるだけで、上手く行かなければあっさり廃止すればいい、とかいうつもりなんでしょうか。であれば何という迷惑な。もはやそういう時代は過ぎたように思うんですが。。。言うだけ無駄ですかね。

Google Wallet for digital goods Retirement
Google Wallet won't let you buy digital goods past March 2015

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11/05/2014

[pol] 米中間選挙、野党共和党が上下両院の過半数確保し完勝、の不合理

米国の中間選挙は事前の予想通り野党共和党の圧勝に終わったそうですね。国会においては従来から支配していた下院の勢力を伸ばしつつ、新たに上院の過半数も獲得、地方においても複数州で新たに知事職の奪取に成功する、という、文字通りの完勝です。

まさに予想通りの結果ということで、今更本選挙の分析をする必要は無いでしょう。結局のところ、その理由はオバマ大統領が華々しい成功を示す事が出来なかったために国民の失望を買って支持を落とした事に帰着されるのですから。

ただ、外野から見ていると違和感も感じます。特に、オバマ大統領の実績、それに対する評価については、全体を通して具体的に何が悪かった、というべき失政も無いように見えるわけで。ここまで低い評価を受けている事には、今ひとつ合理性を見出せないのです。経済的危機からわずか数年、ここまでよく回復させたなと感心する位だし、対テロ政策についても、あの泥沼から抜け出し、一定の距離感を保つところまで漕ぎ着けた時点で相当なものだとも思うのですが、米国民はもうそんな過去の事は忘れてしまったのでしょうか。それとも覚えているけれども、全く満足していないという事なんでしょうか。

直近の政策に対する低評価が直接の原因、という見方もそれなりにあるようですが、それは具体的に言えばISISへの対応が手ぬるいとか、エボラへの対策が不十分だとか、ウクライナを巡るロシアへの対応が弱腰だとか、それぞれの問題への対処の難度からしていささか理不尽に見えるものばかりです。むしろ、色々と思慮の浅めな人が多い共和党が仮に対処したとして、より有意に上手い対処を彼らが成し得たとは到底思えないわけで。

かろうじて政権の失点と断言出来る事と言えば、ヘルスケア関連の失態位でしょうけれども、これは現時点で概ね問題は解消されていたし、問題になっていなかったというか、今回の選挙においては忘れられていたような感じでしたしね。NSAの件はいわずもがな。その手の権力拡張・行使に積極的な共和党ならもっと派手にやっていただろうし、その分露見した後の反動も大きくなっていたでしょう。予算案を巡る行政停止やらは、野党との責任がイーブンですから、これもやはり野党との相対的な評価の優劣には影響しない筈です。

そもそも過去を振り返って見れば、一連の戦争にしろ経済の危機にしろ、現政権が直面した主要な問題は概ねブッシュ政権時代の負の遺産に他ならないわけで。その後始末をこなした実績を無視し、上記のような誰であろうと即座の解決は不可能に思える事案の進捗が今ひとつだからと言って、よりによって共和党に回帰するというのは、流石に理屈に合わないと思うのです。元の木阿弥になってもいい、という事なのか、それともやはり単に忘れているのか。

共和党自体、以前から内部分裂して寄せ集め状態だし、その活動も単に現政権に難癖を付けているだけで、諸々の問題に対して自らが行っている批判、それらに耐えうるだけの具体的な政策の立案・実施を期待し得るかというと、評価以前に立案すら覚束ず、恐らくは不可能だろうという状態なのですから。その辺、日本で言えば少し前の民主党政権の醜態やらがフラッシュバックしたりして、どうにも危うく見えて仕方がないのです。

無論、どのような選択をしようと、それは米国民の自由だし権利なわけで、外野がとやかく言う筋合いもありません。ただ、現政権はその実績の割にあまりに報われないように見えて、同情を禁じ得なく思うのです。

実際問題としても、米国が機能不全に陥ったり、迷走したりすると他国への影響も半端ないので、大統領も共和党も、少なくとも次の大統領選までは程々にして頂きたいものですが。。。難しいでしょうかねやっぱり。

Riding Wave of Discontent, G.O.P. Takes Senate


[IT biz] Appleの製品・サービスに相次ぐ致命的脆弱性

広範囲にセキュリティ上の深刻な被害を及ぼしたBash脆弱性の件も未だ完全には終息していないところに、同レベルの脆弱性が指摘されたそうです。対象は"Yosemite"ことOSXの最新版10.10。旧バージョンについては調査中とのこと。通称は"Rootpipe"で、その名の通り認証プロセスをすっ飛ばしてルート権限を取得出来る、最悪レベルの脆弱性ですね。

発見者のスウェーデン人技術者Emil Kvarnhammarが、寛容にも公表を控える旨のAppleからの要求を受け入れたために、来年(2015)1月中旬までは一応模倣による攻撃は抑制される見込みではあります。が、数多いる攻撃者の強力な解析力の前には気休めにしかならないでしょう。むしろ、bashの件の直後につき同様の致命的な脆弱性を探していた向きは少なくなかっただろうし、その大半にAppleに事前報告する理由も益も無い事を考えれば、既に知っていた者がいても全く不自然ではないわけです。仮にEmilが第一発見者だとしても、こういう脆弱性がある、という事実が知れた時点で当たりもついて発見は容易でしょうし。

ともあれ。このレベルの脆弱性を連発した、というのでは流石に擁護しようがないし、Apple製品のセキュリティ周りは以前のMS以上に終わっている、と評価せざるを得ません。

で、それだけでも酷い話なんですが・・・問題のYosemite、密かにユーザーのデータをiCloudに自動アップロードもするんだそうで。バックアップ機能の一つに、編集中の各種データを自動セーブしておく機能があって、従来はオプション扱いだったのがYosemiteになって密かにデフォルトでONになる設定に変更されたんだとか。何でこのタイミングでそんな事するの、と。

元よりこの種の機能は脆弱性に直結する可能性が非常に高いところ、このようにユーザーの管理外で常時有効に設定されているような場合は、それだけ攻撃に晒されやすくかつ事実上管理がなされないためにとりわけ極めて危険なわけです。bashやRootpipeの件を別にしても、iCloud自体が大量の情報流出をやらかして、プライベート写真を流された芸能人らが訴訟も起こしているところにこれ、もうユーザーの情報を保護する気が無い、というよりわざと漏らそうとしてるとしか思えません。

もっとも、その辺の杜撰なやり方自体は別段目新しいものではなく、むしろAppleとしては一貫しているとは思うのですが・・・そんな事でこの先やっていけるんでしょうか。というより、やってほしくないと思わされてしまうのです。

周知の通り、これまでAppleは、少なくともセキュリティ関連については一貫して傲慢な振る舞いを続けて来ました。深刻な脆弱性を把握しても悉く漫然と放置し、時折まとめて、充分なのかも定かでない大量のパッチをリリースするだけ。懸念の声には、"問題ない"とだけ返答して後は無視するのが通例だったわけです。

これまでは、その立ち位置自体が比較的マイナーで、またMSがあまりに酷かったために、その影に隠れる事でAppleのあれこれも見過ごされて来ましたが、ここ数年で状況は変わりました。OSXのシェアも拡大し、クラウドサービスのプッシュも進み、iOSやiCloud等のプロダクト・サービス間の連携を強めつつコンシューマ向けITサービス全般におけるシェアを確立した結果、その社会に対する責任は以前とは比較にならないほど大きくなりましたし、他社を引き合いにした責任回避も許されないポジションに立ってしまっている、と言えるでしょう。

それを理解しているのかいないのか。相次ぐ致命的な脆弱性の発覚、また情報漏洩の発生、そしてそれに対する対応の絶望的なまでの杜撰さ、緩慢さ。不合理な施策にサービス・機能間の不整合。Apple payの投入には、法人周りも含めた社会基盤的なカテゴリーへの進出を目指す意図が明白に見られる同社ですけれども、現状を鑑みるに、そもそもそのポジションに立つ資格に欠けるものと言わざるを得ないわけで。むしろ、適当好き勝手余計やって引っ掻き回した挙句にあっさり投げ出されたりしては堪らないし、それは御免蒙りたいところなのです。

Serious security flaw in OS X Yosemite 'Rootpipe'

Apple's OS X Yosemite slurps UNSAVED docs into iCloud

Report: Apple Knew of Security Problems Long Before iCloud Breach

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