9/23/2016

[biz law] 電通、ネット広告事業でトヨタ含む100社超に詐欺

を働いていた事が判明したそうで大騒ぎです。発覚と同時に公表されたその概要は、直近4年間で633件、対象となる顧客(広告主)は111社にも上り、被害総額は約2億3千万とのこと。これだけでも相当な規模と言えますが、海外の報道では、少なくとも5年前から行われていたという情報もあり、これから余罪が出る事も殆ど確実なようです。

問題とされた行為は、電通自身の発表によれば過大請求、未掲出、運用実績の虚偽報告等で、これに伴い虚偽の請求書作成等も行われていたとか。未掲出はそもそも公告自体しなかったもの、運用実績の虚偽は公告の掲載数や閲覧数の水増し等ですね。で、それに関連する文書類を偽造し、顧客に提示ないし交付して利益を得ていたというわけです。これは明らかに詐欺と私文書偽造・行使に該当します。何やらメディア上では不適切業務、とかまるで適法であるかのように表現されているようですが、違法行為であり、刑法犯です。いけませんね、表現は正確にしなければ。

元々、ネット公告はその実態・実績の把握が困難な事から、この種の虚偽表示・報告等による詐欺が横行しやすく、実際のところも程度は様々ながら蔓延している、と言われていたところではありました。しかし、まさか電通クラスの大手がやっているとは、と多くの向きが残念に思ったところではないでしょうか。もっとも、電通自体はネット広告の中では直接のシェアを持っているわけではないし、従来のメディアと比べて勝手が効かない事も事実ですから、やはりか、と思った向きもそれなりに多いかもしれませんけれども。

さて。本件犯罪の評価にあたっては、その被害の規模、個々の行為の態様、悪質性等の全事情を考慮しなければなりません。しかし、個々の行為の内容については、未だ詳細が公表されておらず、現時点での評価は困難と言うべきでしょう。それでもあえて評価を試みるなら、それは一般論による他はないわけです。

まず規模についてはどうか。上記の被害額が正しいとして、それは少額とは到底言えないものの、同社の事業規模との比較で見ればそれほど巨額という程でもない、とも言えなくもないかもしれません。しかし、その件数、また被害社数のあまりの多さからすれば、組織的な犯行である事は疑いようもないところです。個々の行為についてはどうか。詳細は不明ながら、悪意なくして成し得ない行為ばかりである以上、その悪質性の高さは疑いようもないところです。また、上記個々の行為は往々にして社会的地位に基づく信用を濫用することによって達成される犯行である事から、甚だしく信義と公序に反するものである事も間違いないものと言えるでしょう。詳細は不明でも、行為全体の性質として、まずもって反社会性は著しく高く、言語道断と評価すべきものである事は疑いようもなく思われるところです。

そうであれば、損害の賠償責任を負うことは無論として、それ以上にその悪意の高さ、社会的な信用を裏切り、ひいては公共的な取引の安全を害したその悪質さに釣り合うだけの懲罰をも加えられて然るべきものと言えるのではないでしょうか。少なくとも、関わった社員、決定権者らはもれなく告発され、しかるべき司法の手続きを経て全員刑事罰を受けなければならないところでしょう。

まず間違いなく組織的な犯罪である以上、同社自体も相応の報いを受けるべきところです。ただ、損害賠償については、当該被害を受けた111社のクライアントにしか請求権がありませんし、請求がされたとしても総額自体が電通にとっては少額ですから、あまり意味があるとは言えないでしょう。それよりは、大手広告代理店としての信用を著しく毀損した事によってクライアントの離別が起これば、そちらの方が電通にとっての罰則となるでしょう。本件を、電通のような旧来型の広告代理店から離れ、世界的には主流であるところの、メディア毎に支配的シェアを持つ専門業者に乗り換えるいい機会、と考えるクライアントがあるならば、ないではないだろうけれども、この種の犯罪行為にも不可解なまでに寛容な事の多い日本企業の事ですから、実際のところその可能性はあまり高くないようにも思われるところですが。

ちなみに、本件は海外メディアでも大きく取り上げられていますね。日本の支配的公告事業者による大規模な組織的詐欺発覚、とかなんとか。元々海外では電通のようなメディア全体をカバーするような代理店形態自体が殆ど存在しないので、日本の公告業界の構造が世界的にスタンダードなものに変わる契機になるかもしれない、と見ている向きが多いのかもしれません。それがいい事なのかどうかはともかく、注目に値するものだという事には間違いないのでしょう。その注目の中、もし何らの変化もなく、反省も改善もなされないまま、従来通りの構造を維持するだけに終わるような事になれば、日本国内の広告業界の倫理性の欠如ぶりが改めて周知されてしまう事になるだろうわけですけれども、、、まあそうなるならそれはそれで仕方ない、と納得すべきところなのかもしれません。如何に客観的に奇異で非合理的と評価されようと、当事者双方がそれで構わない、というのですから、原則として第三者がどうこう言う筋合いではないとも言えるのです。

しかし、本件を報じたのはFTやWSJら海外メディアが先なんですよね。下記とか9/21付です。それからまる一日以上国内メディアは全くといっていい程報道しなかったというのだから、よく言われるところの電通の国内メディアへの支配力というのはやはり強力なものがあるのだなと。以前発覚した五輪招致に係る贈収賄事件でも、国内報道では同社の関与が隠蔽されていた件と同じく、無論社会的には到底容認し得ない不当なものと言わざるを得ないのであって、やはり電通、また殆ど日本特有とも言うべきメディアの支配関係は除去されてしかるべきもののように思えてならないのです。

Dentsu Finds ‘Irregularities’ in Transactions for Client Toyota