7/06/2015

[pol] ギリシャの社会保障削減拒否、瓦解する欧州の夢

ギリシャで財政縮減策受け入れを問う国民投票が大差で否決され、改めて当国民の意思に変わりがない事が示されたそうですね。

結果としては概ね理解し得るところです。現政権の成立の経緯からしても、受け入れた場合のデメリットにしろ、国民が今更転換を受け入れられないと思うのは当然でしょうから。もっとも、これで従来通りの他国の支援は実施しづらくなりましたから、国内に無い袖は振れず、結局は実質的に年金削減等の縮減策を実施せざるを得ない点は変わりがないんでしょうけれども。

それでも、自主的な国家運営の結果か、外国の要求に屈してするかでは、やはり小さからぬ違いはあると言えるだろうのも事実なのであって。極言すれば、仮に結果としては変わらずとも、国家運営の主権を金策のために放棄する事を拒否したと見れば、それはそれで十分に正当性があると言えるのでしょう。そもそも借金を借金で返しても先送りにしかならないわけですし、現実として返済が不可能である以上、それなら踏み倒すなり破産するなり、清算に踏み込む事を含め、それにどう対応するのかは、当事者の問題、あり得べき選択というものではないかと思うのです。

そもそも、赤字だから社会保障費を削れ、というのは、借金を背負った家庭に口減らしをしろと言っているようなものであり、一般に不法なのであって、私企業のコストカット等と同じように扱う事自体不適切な筈なのです。EUの他の国も同様に困窮しているというのならともかく、そうではないのだし、この種の生活保障は国家運営上不可欠なものなのだから、EU国家間で共通して補完するべきものだと個人的には思うのですが。

財政赤字が問題なら、生産性を改善するべきなのであって。私企業経営者がするように単に切り捨てればいいというのは無責任というものです。少なくとも、国民の代表者たる政権が取っていい方針では有り得ません。産業振興策を取るなり、全体的に労働時間が短すぎるというのなら長時間労働を容認するなりすればいいのです。その前に、生活基盤たる社会保障費から削りに行くというのは、流石に有り得ないだろうと。それを拒否した今回の結果は、主権国家の国民のそれとしてはむしろ当然と理解し得るものだと思うのですよ。

もっともギリシャに取っての今後は、仮に可決されていた場合と比べても大変になるでしょうけれども。しかし単に老人を切り捨てて終わり、というのが安直で簡単に過ぎるだけなのであって、何らかの能動的な解決を図るのなら、どうしたってそれよりは大変になるのは分かり切った話、それも致し方ないところというもの。EUは社会保障費位は直接負担をするべきでしょうが、もしそれを拒否すると言うのなら、それはもはや共同体とその一員との関係ではないと言うべきところ、袂を分かつのが筋だと思われるわけですけれども、さてそこまで割り切れるのかどうか。

そもそも経済的な面だけを共通化した国家連合というのに無理があったんだろうと思ったりもするんですけれども。ロシア絡みの事といい、英国の脱退が公然と主張される事といい、都合のいいところ以外を捨象して作り上げられた欧州の夢は、やはり夢、 儚くも散る定めにあるのでしょうか。それとも踏みとどまり、今後は負の側面も正面から協力し、連帯を強めるのでしょうか。後者の方が望ましいのは無論ですが、現状では想像しづらいのがなんとも残念です。