5/20/2015

[biz law] タカタ製エアバッグ全面リコール、責任逃れの果て

全面リコールを頑なに拒否し続ける事半年余り。その間安全が確認されるどころか逆に問題は拡大の一途を辿り、新たな死亡事故も発生するに至ってもはや産業犯罪の様相を呈していたタカタ製エアバッグの件ですけれども、ようやく全米でのリコールに応じる運びになったそうです。しかしGMの件といい、自動車業界の人命軽視と不祥事の隠蔽ぶりは目を覆わんばかりです。一体どうなってるんでしょう。

本件の対象台数は約3380万。従来のおよそ2倍、リコールの規模の巨大化が著しい昨今にあってもなお突出した数字で、GMが連発した不具合に伴うリコールの合算に一件で匹敵するという凄まじい案件になりました。しかしこれは米国単独の話で、他地域のものも合算すればさらに増えるというのもまた。。。聞くだけでも恐ろしい話です。タカタ並びに各自動車メーカーが被る損失にも、それほど多くのユーザーが今なお危険に晒されているという事実にも。

しかしタカタ自身については、当然ながら同情の余地はありません。問題が広く認識され、あれだけの批判と要請を受けてなお頑なに対応を拒否し続け、この事態を招いたのはタカタ自身なのですから。あまつさえ、10年以上前に少なくともこのような瑕疵が存在する可能性を認識し、その上で隠蔽に走っていたとされるのであって。結果、少なくとも米国においてタカタへの信用は最早欠片も存在せず、むしろ自社の金銭的利益を人命に優先する社会の敵と評価されるに至っています。

本件でタカタが被る損失は、リコール費用だけでも数千億のオーダーに上るだろう事は確実。巨額の損失ではありますが、しかしそれが一時的なものであれば、まだ存続は十分に可能だったでしょう。しかし一連の対応を通じてメーカー、ユーザー、各政府機関等、すなわちおよそ社会全体から評価や信用を決定的に失って、一体これからどうやって事業を続けていく事が出来るというのでしょうか。

そもそも、この期に及んでタカタは本件不良の原因は未だ不明としているのです。原因も把握せず、ただ新規に製造した部品に交換したとして、それで安全になるなどとどうして言えるのでしょうか。本来なら、誠実な対応をしていれば得られただろう社に対する信用がその担保になり得たのでしょうけれども、それすらもないのですから。その結果、自動車メーカーの中には、タカタを見限って他社製品への交換を宣言する所も出ています。只でさえこの種の供給先は一端切り替われば容易に元に戻る事は無いのですし、ここに至る経緯と現状を鑑みれば尚更、これから先同社製エアバッグを再び採用する可能性が極めて低いだろう事は確実でしょう。

結局、本件によって、タカタは巨額のリコール費用として目先の金銭的な損失を被ると共に、将来に渡ってその事業の拠って立つ基盤をも失ったというわけです。代わりに得たものは不信と憎悪、あるいは被害者や遺族の恨み等、およそ事業継続の障害になる不利益ばかり。リコール費用は不具合を出した時点で避けられないものでしたが、それ以外は違います。誰もがそうなるだろうから速やかかつ誠実に対応せよ、と諫言していたのにも関わらずのこの始末、全く以って救い難いと言わざるを得ません。リコールが完了次第、速やかに退場願いたく思う次第です。

Takata will declare 33.8 million vehicles defective due to exploding airbags

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