11/01/2014

[biz] 内在する不備と矛盾、普及に躓くApple Pay

案の定と言うか。Appleが今秋の目玉として売り出した小売向け決済サービスApple Payですが、小売大手を中心に導入・対応を拒否するグループが続出して立ち往生しつつあるようです。

これは意外な話とは言えない、どころか、ある意味当然の話に思われるところです。というのも、これまでAppleが成功を収めて来た商品、サービスは基本オリジナルのものだったところ、Apple Payはその逆、というか最後発なのですから。同様の決済サービスを先行して展開している小売各社とは競合して拒絶されるのも当たり前だし、大半の利用者もよほどの利点が無ければわざわざ移行しようとはしないでしょう。Appleと言えども、それなりの実力・規模もある競合を相手取って、それも一からのシェア奪取ですから、むしろ失敗する方が普通なのです。

加えて、Apple Payは原則として最新版のiPhoneからしか使えない、すなわち利用者が著しく限定される欠点があるのですし、小売業者にとってはあまりに中途半端、わざわざシステムを改修してまで対応させる理由に乏しいだろう事も明らかなわけで。Apple watchも対応する予定ではありますが、それにしたところで状況はほとんど変わらないものと思われるところです。

元々、従来の小売決済サービスを巡っては、手数料等の負担コストに対する業者と利用者双方の不満が強かった事に加え、類似サービスの乱立による弊害も目立つようになり、またクレジットカードや小売チェーンのシステム周りで深刻な顧客情報の漏洩が相次ぐなど、決済システム全体に色々と問題が積み上がり、改革の要求が高まっていたところです。Apple Payが宣伝文句に謳うように、決済に関する余分なコストを下げつつ利便性とセキュリティを改善するような統一的なサービスの出現が望まれてはいるのでしょうし、それが実際に生まれ、普及するのであれば、競争はあるにせよ、概ね歓迎される事でしょう。

が、実際のところ、Apple Payがその要件を満たしているかというと、そうではないというか、むしろ満たしている点がないのですね。手数料面では、ある程度自腹を切って普及を図る必要のある当面はともかくとして、Appleのこれまでのサービスの運営のやり方から見て将来支配的なシェアを握った後にはそれこそ過剰な位にまで上げてくるだろう事は確実に思われるし、iPhoneユーザ限定につき決済サービスのデファクトになる事は元より不可能、セキュリティ面でもiCloudで盛大にやらかして信用を失ったところでもあります。

そもそもAppleは、事業構造からしてもロイヤリティの高いユーザだけにフォーカスしてそれ以外はさっぱり切り捨てて来たわけです。決済システムのような、誰もが使うような一般向けのユニバーサルなサービスには本質的に向いてない、というより真逆な性質の会社な筈なんですよね。

結局、AppleはやはりAppleで閉じてるというか、Appleのエコシステム圏内限定のサービスとしてしか成立しようもないように思われるわけで、決済システムもその例外ではないのだろうと。最初からそれは想定されていて、閉じた範囲内の運用でも十分に規模もニーズもあり、多数のユーザーの常用が見込まれて採算も合う、というのならいいんでしょうけど、、、Apple watchの宣伝の仕方とか、諸々からしてどう見てもそうじゃない風なのがなんとも。

携帯決済が十分に普及しきった日本国内には関係ない話、混乱するのも欧米限定の話だろうとは思うんですが、もしSoftbankあたりが暴走したりして、このノリで国内も引っ掻き回されるような事になったら、とか思うだけでうんざりします。Samsung程ではなくとも、色々と頭打ちになりつつある事に加えて後方からの突き上げが厳しいのもあって焦燥感は相当にあるんでしょうけど、無理なものは無理なわけですから、乱心するのも程々にして頂きたいものです。

Apple Pay Is Disabled by Rite Aid and CVS as a Rival Makes Plans

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