4/24/2012

[biz law] SNS課金の反社会性と規制の流れ

ここ数年来、非常に悪質な社会問題と化し、多方面で広く議論というか非難を浴びながら、その法的処理の困難さから殆ど放置され続けてきたDeNA、GREE両社に代表されるソーシャルゲームにおける有料サービスですけれども、ようやく実効性のある対応がなされ始めているとか。とりあえず、傍から見ても超渋々にしか見えないながらも活動を始めた”ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会”なる業界団体の第一回会合も終わり、その結果に従って低年齢層への課金上限規制の導入も決まったとのこと。諸意見ありますがそれらの自主的な動き自体は歓迎されて然るべきものと思われます。

ソーシャルゲームの現状、その実態については既に情報が溢れていて、その分析も山ほどなされていますからそのあたりについては今更繰り返すまでもないでしょう。ただ、個人的には、サービスが社会的に問題視されている理由、そしてその帰結として動き始めた規制の流れと併せて行き着くだろう先については、色々と興味も惹かれるところです。

社会的に問題視される理由、その本質は、大雑把に見て2点あるように見えます。第一に、パチンコにおける三点方式と極めて高い類似性が指摘されるところの賭博類似のデータ取引市場の存在によって、社会に対し同様の、大多数から放置し難いと見做される悪影響が発生していること。第二は、そもそもネット上でのデータ取引、またその運営業者自体、直接に律する法令も慣習すらも存在しないために、類似業であれば規制法によって違法とされるべき疑いの強いものと同種の行為が悉くグレーゾーンと称して規制を免れ、事実上の無法状態にあること。本当に大雑把だし別段珍しくもないものですけれども、結局はそのあたりに集約されるように思われるのです。

第一の点については、多額の課金を伴うアイテムデータのくじ引きゲーム、いわゆるガチャ及び当該データのユーザ間での譲渡機能によって成立するデータの換金性、そしてその換金性を実体化するものとして外部オークションサイト等に当該希少データの現金取引市場が形成されている事は周知の通りです。無論、だからといって直ちに違法云々にかかるわけではありませんけれども、そのしくみの中には、パチンコ等と異なる、違法性の疑いの強い要素も見られて、それはやはり問題なわけです。特に、その射幸性の大きさを定める基準であり、パチンコでは風適法等により保証を義務付けられている客の正常な判断、それを担保する要素であるところのガチャにおける各パターンの発生確率、これが不明な点は致命的と言わざるを得ません。

上記の発生確率が不明な点は、仮に今後風適法の改正により対応がなされるとすれば、まず違法な旨が明文化されるものと予想されるところです。しかし、自主規制関連の報道を見ても、この点には一向に触れられないし、その方向性すら感じられません。それが分かったらゲームじゃなくなる、って建前なのかもしれませんが、そもそも単なるくじ引きなのだし、その当たり外れの確率が分かったからって本質は変わらないでしょうと思うんですけれども。完備情報の方がゲームらしいとも思いますしね。明かせないって事は、各所で噂される通りに確率操作とかやってるって事なんでしょうか、との疑念も浮かびます。このあたり、現状法的には困難もあるでしょうけれども、是非とも公取あたりのガサ入れで明らかにされて頂きたいところです。

第二の点、規制法の不備については、 そろそろ公取が着手するかもしないかも、といった噂もそこかしこであって、でもやはり色々と法整備が出来ておらず、既存法令の解釈では無理も無駄も大きいし限界もあるということで、こちらもそれなりに深刻そうに見えます。当然これは一義的には立法の問題なのだから、国会に早急な法改正を望むべきところで、多分に風適法と景品表示法の改正による対処が予想されますけれども、法技術的には従来法の転用の組み合わせで済むでしょうし、特段の問題も無さそうに見えます。その場合になされるだろう改正内容の予測も凡そ容易に思われるところです。なのだから速やかに進めて頂ければ良い話だと思うんですが、しかし肝心の立法府が全く機能していないという。うーん。しかしこれはもう待つしかないんでしょうけれども、困ったものです。

キリがないのでこの辺で。兎にも角にも、本件は、その構造が複雑かつ規模も大きく、にもかかわらず変化のスピードも速いとあって、その解決に非常な困難を伴う事は間違いないでしょう。当然業者は何としてでも規制を回避しようとするでしょうしね。低年齢者限定の上限規制にしても、いかにも問題のすり替え的な業者側の意図がありありと見えるし、対処しあぐねていたちごっこを続けた挙句にうやむやのまま規制事実化して定着、とかそういうグダグダなところに落ち着いちゃったりしそうで、今のうちからげんなりもします。関係者の方々には、その面倒さ加減に挫けず、また業者側の目くらましに惑わされず、本来あるべきところの法による秩序の実現を期してご尽力頂けますよう、心から願うところであります。

しかし、社会的である事をその特徴とするSNSが、その成長に伴って反社会性を強めるというのも皮肉な話で。事業なのだから利益を確保するのは当然ですが、かといって人の無知に付け込んで暴利を貪り、その結果少なからぬ人を望まぬ困窮に陥らせる、というのでは社会の反発を招き排斥されるのもまた当然、そんな事が分からないわけでもないでしょうに。そこかしこで垣間見える考え方からして詐欺師同然ですし、正当化で何とかなると考えてあえてやってるんだろうとも思われますけれども、極めて残念な事ですね。

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そして、まもなく摘発開始のお知らせ。年貢の納め時ですかね。
[biz law] SNS課金の違法化開始