3/03/2012

[biz law] ここ数ヶ月の経済犯多すぎ

何なんですかね。横領、詐欺、粉飾、インサイダー、地位濫用その他諸々の、所謂経済犯がこのところやけに多い感じがするのですよ。より正確には摘発検挙とその報道が多いわけなんですけれども、あまりに多すぎてフォローするのも大変です。ていうか多分フォロー出来てません。

個人・法人の別を問わずざっとここ二ヶ月位に告発や逮捕等が報道された事例を列挙してみると、大体以下のような感じ。特に多いのは横領と贈収賄、粉飾は詐欺横領等とセットですかね?厳密には横領あたりは経済犯とは違いますが、類似性が高かったり経済活動との関連が強いという事で。

・横領
 成年後見人による被後見人財産横領 預金着服
 (全国数百名 元沖縄県司法書士会会長・小泉勝等司法書士数名含)

 業務上横領
  東芝ライテック元課長・氏名非公表、架空発注
  富士重工元部長・青山元、架空発注
  盛岡市職員・大宮幸司 道路工事代金水増
   共犯:恵工業・佐藤雅俊、協積産業・中村克志

 市税横領
  奈良市都祁行政センター元所長・土井義文 納税通知書偽造等による
   共犯:市債権整理課元課長補佐・西田芳光 
      
・粉飾、詐欺
 出資金詐取
  AIJ投資顧問(株)
   共犯:アイティーエム証券、社保庁OBコンサル・氏名非公表
  安愚楽牧場・三ケ尻久美子代表取締役他二名

 株価操作
  セラーテムテクノロジー 買収及び出資偽装・虚偽記載

・インサイダー
 株取引
  黒崎播磨営業企画部マネジャー・秋吉晃男 社内情報利用
   共犯:運送関連会社社長・高山豊 
  厚労省審議官・木村雅昭及びその妻 監督用情報利用

・地位濫用
 下請代金支払遅延等防止法違反
  ダイソー 代金減額強制
  たち吉  受領拒否、代金減額強制

 独占禁止法違反
  アディダス 取引停止の脅迫による再販売価格拘束
  矢崎総業、住友電気工業、フジクラ、古河電気工業 
   ワイヤハーネスの価格カルテル

 贈収賄
  明和町環境水道課係長・柿沼憲行 下水道工事受注便宜に伴う収賄
  共犯(贈賄):司建設社長・小松原雅司、同役員・小松原美智子

  盛岡市職員・大宮幸司 道路工事発注金額漏示に伴う収賄
   ※上記道路工事代金水増しによる詐欺横領でも逮捕
  共犯(贈賄):協積産業・中村克志

  室蘭市都市建設部建築課主幹・豊田法雄 住宅改修工事受注便宜に伴う収賄
  共犯(収賄):古川土建社長・古川秀明
  共犯(贈賄):北営工業社長・津川圭三

  NTT東日本・伊藤慶信 新事業への参加便宜による収賄
  共犯(贈賄):アンビション社長・竹内俊之

とまあ、いずれも従来であればそれなりに社会に衝撃も与えてきただろう位には悪質なものがちょっと記憶にない程の頻度で摘発・報道されているわけですね。あまりに多すぎて、またかと思う間すら怪しい感じで。被害額等は数百万から数千億と幅広いのですけれども、いずれも容疑自体は何故に今更こんなベタな犯罪に手を染めようと思ったのか不思議な位に典型的なものばかりなのも相俟って、個人的にも社会的にも、殆ど麻痺しつつあるようにも感じます。当然、報道も分散して個別事案の掘り下げも浅くなるし、特にそれらの帰結として社会的に無反省的な空気も広がりつつあるように感じられるのには、流石にどうかと思わなくもないところです。

もっとも、各事案とも動機については金銭的な利益で説明は付くし、それを求める理由はそれぞれ概ね個人的なものだし、典型的な犯罪に対してそれ自体を外部から云々しても元々詮ない話なんでしょう。ただ、その数が急増した原因については少々気になります。経済的な環境の悪化や、経済犯的な行為に対する倫理感の低下、また合理的思考の欠如等所謂親犯罪的性向の高い人の増加等を背景にして実際にその数が増加しているのか、それとも司法行政の監視強化等によって摘発率が上昇したに過ぎないものなのか。

今の所、それらの要因、その実態を確かめる事は殆ど不可能なように思えますし、これまたあまり考えても仕方のない事なのかもしれませんが、しかしそこの所が判然としないと、犯罪の増加を嘆くべきなのか、摘発率の向上によって期待される犯罪の減少を歓迎すべきなのか、そのいずれとも知れない事になってしまうわけで、非常に気持ち悪いのであります。おそらくは多分にその両方の側面があるんでしょうけどね。もしそうであれば、犯罪自体の増加がさほど大きくない事を願う次第です。