2/07/2012

[pol] イラン泥沼

Hormuz海峡での睨み合いが続き、いつ戦火が発するかと全世界的に冷や汗出まくりのイラン情勢ですが、2012年に入っても落ち着くどころか西側諸国による経済封鎖の動きが立て続けに出て、逆に緊張が高まってしまっているようで。今回は同国による輸出の大半を占める石油売買、その大半を仲介するイラン中央銀行の米国内資産凍結及び取引禁止、すなわち事実上のイラン貿易禁止に踏み込んでしまったとのこと。ロシア・中国はもちろんEUも一枚岩ではないとはいえ、世界大戦前夜の経済的な包囲網を彷彿とさせて心臓に悪い事この上なく、全く以てご勘弁願いたい話です。

まあ歴史的なトラウマ云々はともかく、しかし実際問題どうすんでしょうねこれ。考えうる終着点としては、イランが白旗挙げて核開発を放棄するか、逆に米国が引くか、暴発して戦争になった挙句イランがイラク的に焦土と化すかのいずれか位でしょうけれども、どちらも引くことを知らない、というか人の話を聞かない国だから、結局の所は緊張を高め続けた挙句に暴発する可能性が一番高いように思われるところです。しかしそれは非常に厳しい話になるわけで。戦争になった場合、イラクの場合と違ってある程度はHormuz海峡での海戦が含まれる筈だけれど、イランには潜水艦とか海軍力もそれなりにあるし、欧米軍に勝つ事は不可能にしても欧米側の損害も甚大になる筈なんですから。

何よりも勝ち負け云々以前に、そもそも米国が主張している所のイランによる核兵器開発自体、まだ証明はなされていないわけでね。単なる建前との疑いがあるにせよ、イランは平和利用のためと言っているのですし、イラク戦争の際に米国が開戦の主たる理由とした大量破壊兵器が結局出ず、米国の捏造であった事が明らかになった件と同様の結果も当然に懸念されるところ、経済封鎖も含めて実効的な制裁を行う前に、まず米によってその証明、十分な証拠の提示がなされなければならない筈なのに、未だなされていない。一方的に嫌疑をかけておいて、その立証がなされないままに制裁が進められている、それはやはり理不尽というものでしょう。理不尽で強引な振る舞いというのは、往々にして、道理の通らないまま実行してしまったが故に、後からその誤りが明らかになっても後戻り出来なくなってしまうものですが、本件はその典型的な形になっているように見えるのです。

要するに、現状を客観的に見れば、イラク同様、米国が戦争をしたいだとか、イランを支配下に置きたい等の利己的な理由で、言いがかり的に容疑をでっち上げているように見えるわけです。あるいは欧米各国の国内政治的な、人気取りのためだとか。大統領選も近いし。無論、そのあたりの理由とか内部的な事情は一般からは窺い知れないところですし個人的な妄想に過ぎませんけれども、少なくとも、イラン国内の一般の人々には何の責任もない事は間違いなく、しかも政府に責任があるかすらも不明で、経済的にせよ暴力的にせよ、何ら攻撃され、被害を受けるべき正当な理由はないのですから、その中で徒に制裁を実行し、あまつさえ後戻りも出来ない泥沼に進みつつある欧米各国、特に主導する米国政府は強く非難されて然るべきだろう、との思いを抱かざるを得ないのです。どうするんでしょう本当に。

Obama Imposes Freeze on Iran Property in U.S.